介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

処遇改善加算について(2017年変更:対応済)

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2017年6月現在 最新

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 あなたの事業所では、介護職員処遇改善加算を取得されていますか?

 

キャリアパス要件ってなに…? 

介護報酬改定でなにが変わったの…?

そもそも処遇改善加算ってなんだろう…?

 

このように悩んでいる方がいると思います。

 

 

また、処遇改善加算を取得できていたとしても

 

加算1は面倒で手をつけていない…

もっとカンタンに取得できないかな…

 

そんな方もいるかもしれません。

 

 

そこで今回は、平成24年4月より施行された介護職員処遇改善加算について解説します。

平成27年度介護報酬改定で複雑になったこの制度を、できるだけわかりやすく解説します。また、平成29年度における改正事項も追加しました。新しい加算区分やキャリアパス要件Ⅲについて知りたい方はぜひご覧ください。

 

 

 

介護職員処遇改善加算とは

処遇改善加算とは

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 処遇改善加算とは、介護職員の給与を月額平均1.5万円アップさせるために、平成21年度創設された介護職員処遇改善交付金が元になっており、これを継続する形で平成24年度から新たに介護報酬に創設された制度です。

 

さらに、平成27年度の介護報酬改定において、今までの仕組みを残しつつ、職員の資質向上の取り組み、雇用管理の改善、労働環境の改善の取り組みを行う事業所を対象とし、さらに月額平均1.2万円相当を上乗せ評価する加算区分が創設されました。

加算区分等は後ほど解説します。

 

 

処遇改善加算の目的

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処遇改善加算の大きな目的の1つに、介護職員の職業定着が挙げられます。

2025年には、国民の4分の1が75歳以上の高齢者によって占められることが予想されており、より一層の介護職員が求められる時代がくるでしょう。

現在の介護業界の離職率は16.5%と他業界に比べ少し高い程度の水準です。

この理由としては、賃金水準が低いというだけでなく、職場環境が合わなかったり人間関係のトラブルが原因と考えられています。

今後の超高齢化社会を考慮すると、より定着率が高く、求職者が安心して就職できるような職場環境を目指す必要があり、そのためにつくられた制度の1つが処遇改善加算となります。

 

なので、処遇改善加算を取得するためには、賃金改善をするだけでなく職場環境やキャリアパス制度を整備することが求められ、事業所全体として働きやすい環境を目指す必要があります。

 

処遇改善加算の特徴

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  • 公金+利用者負担であること

処遇改善加算は90%を公金が負担、10%を利用者が負担することで賄われています。

この点が100%公金負担であった処遇改善交付金との異なる点です。

 

  • 介護職員へ還元する義務があること

支給金額は、まず介護事業者へと給付されますが、事業者は支給額の全てを介護職員へ還元させることが義務づけられています。

 

もし、設備代や研修費などその他の用途に使われた場合、支給額は行政に返還することになります。

また、加算取得後の対象職員への給与に関して、加算取得以前の給与水準を上回るように給与体系を設定しなければなりません。

 

処遇改善加算の算定要件

[2017年1月16日追記]

 

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 平成28年6月の閣議決定により、平成29年度から新加算が増設、加算区分が5つになることが決定しました。詳しくは 平成29年度、新加算およびキャリアパス要件3の増設 にて解説していますが、こちらは平成27年度の処遇改善加算が前提知識となるので、順を追って読まれることをおすすめします。

 

平成27年度の算定要件とは

前述の通り、平成27年4月より介護報酬改定が施行され、処遇改善加算のが15.000円から27.000円に修正されました。

 

平成27年度以前との比較が下の図となります。

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[参考:平成27年度介護報酬改定の概要(案)骨子版

  • 処遇改善加算1:27,000円相当(加算Ⅰの15,000+Ⅱの12,000)
  • 処遇改善加算2:15,000円相当
  • 処遇改善加算3:加算2× 0.9相当
  • 処遇改善加算4:加算2× 0.8相当

 

もちろん、限度額が増えることにより、事業所に求めるハードルも高くなります。

 

上の図を見ればわかるように、現在の算定要件で加算Ⅰを取得するためには、キャリアパス要件Ⅰ及びキャリアパス要件Ⅱ、そして職場環境等要件(旧定量的要件)を満たす必要があります。

 

では、加算1を取得するための3つの要件について解説したいと思います。

 

キャリアパス要件1

キャリアパス要件1は厚生労働省によって、以下のように定められています。

①介護職員の任用の際における職位(役職)、職責または職務内容に応じた任用等の要件を定めていること

②1.に掲げる職位(役職)、職責または職務内容に応じた賃金体系について定めていること

③1.および2.の内容について就業規則などのもので書面で明確にし、周知していること

 

詳しくは「キャリアパス要件1とは」にて解説しています。

 

キャリアパス要件2

キャリアパス要件2は厚生労働省によって、以下のように定められています。

①次のア)またはイ)の条件を満たした計画を作成していること                        

ア) 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供または技術指導等を実施(OJT、OFF-JT)するとともに介護職員の能力評価を行うこと      

イ) 資格取得のための支援(金銭、休暇の取得など)を行うこと

②上記の内容をすべての介護職員に周知していること

詳しくは「キャリアパス要件について」にて解説しています。 

 

職場環境等要件(旧定量的要件)

職場環境等要件は厚生労働省によって、以下のように定められています。

平成27年4月から計画書の届出の日の属する月の前月までに実施した介護職員の処遇改善の内容(賃金改善に関するものを除く。)及び当該介護職員の処遇改善に要した費用を全ての職員に周知していること。

 

詳しくは「職場環境等要件とは」にて解説しています。

 

                平成29年度、新加算およびキャリアパス要件3の増設

現在では、処遇改善加算Ⅰを満額算定しても1人あたり27,000円が限度額ですが、平成29年度からはさらに10.000円上乗せされ、満額37.000円となる新加算の設立が平成28年6月2日に閣議決定されました。

この変更に至った背景や目的、新たな算定要件に関して「第132回社会保障審議会介護給付費分科会資料」に基づいて解説したいと思います。

まず、増額に至った背景として介護業界の給料が他業界の給料よりも安価であることが挙げられます。これが1つの要因となり、介護業界は離職率が比較的高く勤続年数も短い業界として危惧されていました。この現状に対し、平成28年6月1日に安倍総理は、

保育士、介護職員等の処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して、優先して実施していく考えであります。

と提言しています。この発言からもわかるように今回の増額の目的は、介護職員の給与を優先的に増額することで介護業界の雇用を安定化させることと考えられます。

そしてその翌日、ニッポン一億人総活躍プランの一部として、新加算の設立および加算の増額が閣議決定されました。詳しい図説は以下の通りです。

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ただし、どのような事業所に対しても給付されるということはありません。

上記の通りその算定には、「キャリアパス要件Ⅲ」を新たに満たす必要があります。よって新加算では、

  • キャリアパス要件Ⅰ
  • キャリアパス要件Ⅱ
  • キャリアパス要件Ⅲ
  • 職場環境等要件

以上を全て満たすことが条件となります。

では、キャリアパス要件Ⅲとは、どのような基準なのでしょうか?

 

厚生労働省は、キャリアパス要件Ⅲについて以下のように示しています。

経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること

これを受けて、今一度キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲについて整理すると、

Ⅰ…役職や役職ごとの職務、能力、給料等のキャリアパス制度を定めること

Ⅱ…職員の能力向上のための目標や研修計画を策定、それに対する評価制度を定めること

Ⅲ…職員の昇進・昇給に対して、経験年数や保有資格等の明確な基準を定めること

と解釈できるでしょう。

なぜ、このような要件となったのでしょうか。

キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱだけでは、昇給条件が曖昧であることが懸念されていました。それを明らかにするために追加された条件がキャリアパス要件Ⅲといえます。その事例について厚生労働省は以下のように示しています。

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画像で明示されているように、昇給・昇格に対する経験年数や保有資格、能力評価などの条件を整備することが新加算算定のために必要となります。

 

今回、介護報酬改定の年度ではないにもかかわらず、新加算の増設という比較的大規模な改革を実施することとなりました。しかし、今後も平成29年度の介護報酬改定を含め、さらに処遇改善加算の内容がバージョンアップすることが予想されます。分科会資料においても、職種によって処遇改善加算が適用されないことや、加算額が職員の賃金改善のみにしか用いることができないことが問題視されています。現在実施されている処遇改善加算を十分に理解し、将来起こりうる改定に対しても無理なく順応することが重要となるでしょう。

 

処遇改善加算の対象者

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 処遇改善加算は全ての介護職員が取得できる制度ではありません。

従事している介護サービスや職種、兼務している場合や役員の場合、様々な制約があります。

処遇改善加算の対象者について」にて詳しい加算対象者ついて解説していま

 

処遇改善加算の計算方法

処遇改善加算=1ヶ月当たりの総単位数×サービス別加算率

1ヶ月当たりの総単位数=サービス別の基本サービス費+各種加算減算

 

上記が処遇改善加算の大雑把な計算方法となります。

 「処遇改善加算の計算方法とは」にてもっとわかりやすく解説しています。

 

処遇改善加算取得までの流れ

  • 計画書の作成
  • 職員への周知
  • 計画書の行政提出
  • 賃金改善の実施
  • 報告書の行政提出

上記が処遇改善加算取得までのカンタンな流れとなります。

 

取得するためには、ます処遇改善加算計画書を作成し、すべての職員に対して賃金改善等の内容を周知するとともに、都道府県もしくは市町村に届け、加算の算定額に相当する賃金改善を実施、事業年度ごとに報告書を作成し、都道府県もしくは市町村に届けなければなりません。

 

また、処遇改善加算における賃金改善実施期間は原則4月から翌年の3月までと定められています。そのため、次年度の処遇改善加算計画書の届出については通常2月末が提出期限となっており、それまでに地域ごとに定められた各行政に届出を行わなければなりません。

 

そして、処遇改善加算を受給した全ての事業所では実績報告をする必要があります。

こちらの提出期限は、基本的には賃金改善期間から2ヶ月以内とされていますが、各都道府県、市町村によって異なります。

実績報告については、後ほど詳しく説明します。

 

処遇改善加算の提出期限

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 提出期限に関しては、翌年度にも算定したい場合は2月末(28,29日)までに指定権者に所定の書類を提出する必要があります。各指定権者によるローカルルールによって異なる場合もありえますので、各行政のホームページをご参考されることを強くおすすめします。

また、提出期限までに提出が完了したとしても、内容に不備がある場合、加算の算定が次月に持ち越される可能性もあるので、余裕を持って提出、提出前には内容をよく見直しましょう。

 

平成29年度の処遇改善加算における提出期限

平成29年度(2017年4月~)も処遇改善加算を継続算定されたいという方、今回の提出期限に限ってイレギュラーな仕様となります。

先ほど、「算定要件」のトピックでも解説しましたが、平成28年度では法改正の時期でないのにも関わらず制度に修正が加えられました。新しく加算区分が追加され、事業所として積極的に算定することが望まれています。

しかし、時間がありません。

キャリアパス要件Ⅲを満たすことができるような制度を構築するためには、少なからず事業所内にて会議を行い、それを職員に周知する必要があります。もし事業所が忙しく、2月末までに制度が作れない、職員に伝えきれないようでは、国としても新たな制度をつくった意味がありません。

さらに、行政からしても問題が発生しています。事業者の方は既にご存知とは思いますが、加算率や要件が変更しているのにも関わらず、告示の公布や書類の様式例等が2017年2月7日現在でも示されていません。上記、公文によれば3月に公表されるようです。

 

よって、平成29年度分の処遇改善加算に限り、提出期限が変更されることとなります。

提出期限は、4月15日となります。この期限までに所定の指定権者に書類を届け出れば、4月分から加算を算定することができます。総合事業における処遇改善加算も同じ扱いとなります。

[参考資料:介護保険最新情報Vol.580]

 

加算区分変更時の届出方法

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 事業所を新設、開設したときや職員人数の増加、減少したとき、また、処遇改善加算1を取得に挑戦したい場合、加算区分変更を行政に届け出る必要があります。

 

事業所の環境が変わったとき、行政に報告をせずに実績報告を迎えてしまうと、加算支給額が没収されてしまいます。

事業所の環境変化に常に気を配り、適切な届出を心がけましょう。

 

詳しくは「加算区分変更時の届出方法とは」で解説しています。

 

処遇改善加算の実績報告

先述した通り、処遇改善加算を算定した事業所は必ず実績報告をしなければなりません。もちろん、実績報告には所定の書類や提出先、提出方法が定められています。

適切な方法で実績報告を完了しないと、最悪の場合では受け取った加算額を全額返金しなければなりません。

実績報告について、上記のような手順や注意事項について「処遇改善加算の実績報告を適切に行うためにすべきことは」にてまとめましたので、ぜひご覧ください。

 

処遇改善加算の現状

一見、どの介護事業所にとってもメリットを感じる処遇改善加算ですが、加算1を取得している事業所は75.1%に留まります。

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 [参考:厚生労働省 平成27年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(案)

 

さらに、加算1を取得しない理由を見てみると、

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キャリアパス要件1を取得することを困難と考えている事業所が多いことが分かります。

キャリアパス要件1を満たすためには、具体的なキャリアパス制度を考え、職員に知らせ、行政に提出する必要があるため、少しハードルが高くなっているのかもしれません。

 

そこで、詳しいキャリアパス制度の解説、事業者のキャリアパス制度導入事例を用意しました。

キャリアパス制度の具体例と行政が求める理由

 

処遇改善加算のよくあるQ&A

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 処遇改善加算に関するよくあるQ&Aをまとめました。

加算取得にあたり、職員への周知方法や支給金額の配分方法、賃金の改善方法、総合事業との兼ね合いも記載しています。

 

処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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