変更手続きをしなければならない3つの状況
介護事業所の数が増減する場合
まず、介護事業所の数に変更があった場合です。事業所の数が増える場合、減る場合に関わらず変更手続きをする必要があります。
このとき、届出方法は郵送となります。
提出書類や算定開始時期、提出期限は、以下の状況によって異なります。
変更のために必要な書類 | 算定開始時期 | 提出期限 | |
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事業所の数が増える場合 (新規開設)
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①介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 ②介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ③(別紙様式3-1)介護職員処遇改善加算変更届出書(事業所番号・事業所名称・サービス種別を記載) ④(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 ※④は県内の複数事業所分の計画を提出している場合に必要 ※③.④は計画書等を提出した各指定権者へ提出すること。
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・居宅系サービス 毎月15日までは翌月、16日以降は翌々月から算定
・施設系サービス (短期入所サービス,特定施設含む) 届出日の翌月から算定
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・居宅系サービス 変更する予定の前月の15日まで
・施設系サービス (短期入所サービス,特定施設含む) 変更する予定の月の初日まで
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事業所が減る場合 (事業所の廃止や休止、加算の取り下げ) |
①(別紙様式3-1)介護職員処遇改善加算変更届出書(事業所番号・事業所名称・サービス種別を記載) ②(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 ※法人一括ではない場合は,最終の加算の支払いのあった翌々月の末日までに実績報告が必要。 |
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廃止・停止予定日の1ヶ月前までに提出 |
就業規則・給与規定等を改正する場合
次に就業規則や給与規定等、介護事業所の人事制度の変更等を行った場合です。
このとき、届出方法は郵送となります。
変更のために必要な書類 | |
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会社法による吸収合併,新設合併により処遇改善計画書の作成単位が変更となる場合
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①(別紙様式3-1)介護職員処遇改善加算変更届出書 当該事実発生までの賃金改善の実績及び承継後の賃金改善に関する内容を記載 ③(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 |
就業規則を改正する場合 (介護職員の処遇に関する内容である場合のみ) |
①(別紙様式3-2)介護職員処遇改善加算変更届出書 ②(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 ③改正後の就業規則 |
加算区分の変更をする場合
最後に、処遇改善加算の加算区分を変更したい場合です。加算区分を上げたい場合、下げたい場合、現在取得している加算を取り下げたい場合、いずれのケースでも変更手続きが必要となります。
この場合、届出は予約をした上で来庁し行ってください。
提出書類や算定開始時期、提出期限は、以下の状況によって異なります。
変更のために必要な書類 | 算定開始時期 | 提出期限 | |
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区分を上げる場合 (例) 加算2→加算1 加算4→加算2 |
①介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 ②介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ③(別紙様式7)キャリアパス要件等届出書 ④就業規則・給与規定等(加算Iを算定する場合) ⑤(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 ※⑤は県内の複数事業所分の計画を提出している場合に必要 |
・居宅系サービス 毎月15日までは翌月、16日以降は翌々月から算定
・施設系サービス (短期入所サービス,特定施設含む) 届出日の翌月から算定
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・居宅系サービス 変更する予定の前月の15日まで
・施設系サービス (短期入所サービス,特定施設含む) 変更する予定の月の初日まで
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区分を下げる場合 (例) 加算1→加算3 加算2→加算3 |
①介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 ②介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ③(別紙様式7)キャリアパス要件等届出書 ④(別紙様式2・添付書類1)県内事業所一覧表 ※④は県内の複数事業所分の計画を提出している場合に必要 |
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速やかに提出 |
加算を取り下げる場合 |
①介護給付費算定に係る体制等に関する届出書 ②介護給付費算定に係る体制等状況一覧表 ※法人一括ではなく単独で計画書を提出後に取り下げの場合は,最終の加算の支払いのあった翌々月の末日までに実績報告書が必要。 |
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速やかに提出 |
届出の提出先
区分変更時の提出先は処遇改善加算の提出先と変わらず、地域ごとの指定権者となります。
※指定権者…介護保険サービスを提供しようとする組織は、自治体に認められることが必要です。様々な組織に介護保険サービスを提供する組織として指定する自治体を「指定権者」といいます。一般的に、広域型サービスと呼ばれる居宅サービスや施設サービスでは各都道府県が指定権者となり、地域密着型サービスは市町村が指定権者となります。ただし、横浜市や大阪市、札幌市などの政令指定都市の場合は、その市が全てのサービスの指定権者となります。
変更届の記入例
記入方法の一例として、東京都福祉保険局にて紹介されている記載例を紹介します。
提出書類や期限、提出先等は、各地域によって異なる場合があります。
詳しくは各地域の公式ホームページをご覧ください。
平成27年度介護報酬改正における変更点
平成27年度介護報酬改定における最大の変更点は、処遇改善加算に新たな加算区分が増設されたことでしょう。これにより、最大27.000円相当の加算が受け取れるようになりました。
元々、処遇改善加算は、適切な環境整備に取り組んだ事業所に対して、職員の賃金改善を行うことを目的に実施されています。改定後には、今までよりも難易度の高いルール(算定要件)を設けることで、それを達成した事業所に対して、より多額の加算支給が為されることとなりました。
その他、処遇改善加算に関する細かな変更点を含め、解説したいと思います。
加算区分の増設
先ほど記載したとおり、平成27年度改定での最も大きな変更点が加算区分の増設です。
変更後のイメージは以下の通りとなります。
[参考:厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内(リーフレット)」 の送付について]
図のように、加算区分が3区分から4区分に変更され、新たに加算1が増設されています。加算1を取得することで、今までの加算限度額15.000円に対し27.000円を限度に支給がされることとなりました。そして、加算1を取得するには、以下の3つの要件を全て満たすことが必要です。
キャリアパス要件1:職員の職位・職責・職務内容に応じた任用要件・賃金体系が設定されていること
キャリアパス要件2:職員の職務内容に応じて、資質向上のための目標・計画が設定されており、そのための研修が実施・予定されていること
職場環境等要件:平成27年4月以降、賃金改善以外の処遇改善に関する取組を新たに実施すること
また、サービス別加算率に関しても、増設された加算1に伴う加算率が新たに設定されています。
※サービス別加算率…加算額を算出する際に必要な率。サービスごとに率が設定されており、以下の式によって加算額が導き出せる。
加算額=1ヶ月あたりの総単位数×サービス別加算率
加算1のサービス別加算率は以下の通りです。
なお、介護予防のあるサービスは同じ項目の率に該当します。
サービス | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | 加算Ⅴ |
訪問介護 夜間対応型訪問介護 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
13.70% | 10.00% | 5.50% | 加算Ⅲの90% | 加算Ⅲの80% |
訪問入浴介護 | 5.80% | 4.20% | 2.30% | ||
通所介護 地域密着型通所介護 |
5.90% | 4.30% | 2.30% | ||
通所リハビリテーション | 4.70% | 3.40% | 1.90% | ||
特定施設入居者生活介護 地域密着型特定施設入居者生活介護 |
8.20% | 6.00% | 3.30% | ||
認知症対応型通所介護 | 10.40% | 7.60% | 4.20% | ||
小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 |
10.20% | 7.40% | 4.10% | ||
認知症対応型共同生活介護 | 11.10% | 8.10% | 4.50% | ||
介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 短期入所生活介護 |
8.30% | 6.00% | 3.30% | ||
介護老人保健施設 短期入所療養介護(老健) |
3.90% | 2.90% | 1.60% | ||
介護療養型医療施設 短期入所療養介護(病院等) |
2.60% | 1.90% | 1.00% |
[加算算定対象サービス(参考:介護保険最新情報vol.542)]
※平成28年度より地域密着通所介護が新たに創設されました。
処遇改善計画書・実績報告書の見直し
平成27年度より社会保障費をより適正に配分することを目的に、計画書・報告書の精査を厳格に行うこととなりました。事業所ごとに賃金改善の額の妥当性、加算を取得した場合・取得前の賃金水準を調査することで、報酬請求に関する不正や超過、不足を減らすための取組と考えられます。
処遇改善計画書、実績報告書が受理され、加算額が支給された場合、事業所にはその加算額を適切に職員に配給する義務があります。支給方法に関しては、今までと変わらず、基本給・昇給・賞与、どの手段で支払っても構いません。しかし、その際の注意点として、
支給対象職員のもともとの賃金水準を上回るように賃金設定をすること
支給された加算額は、職員の賃金改善以外の目的で使用しないこと
以上を守る必要があります。
※もともとの賃金水準とは…
これまで加算を取得している事業所の職員の場合
加算を算定する直前の賃金水準
前年度の賃金水準から、加算算定による賃金改善部分を引いた賃金水準
上記2事項の時期に勤務していなかった職員に対しては、
同種同等の職員に習った賃金水準
また、これまで加算を取得していなかった事業所の職員の場合は
前年度の賃金水準
を指します。
賃金水準を低下せざるを得ない場合の手続き
先ほど、もともと賃金水準を上回らせることが、加算支給の際の注意と記載しましたが、以下の要件を満たした場合のみ、例外的に賃金水準を引き下げることが認められます。
サービス利用者数の減少等により、一定期間にわたり収支が赤字であること
資金繰りに支障が生じた状況であること
※資金繰り…事業所の収支の管理を行い、資金の流れをコントロールすること
上記2点の状況が改善された場合、賃金水準をもともとの水準に戻すこと
以上が満たされた場合、経営悪化時でも加算額を受け取ることができます
その際、以下の手続きをする必要があります。
上記について、労使の合意を得るなど適切な手続きをとること
上記に至った経緯について明記された書類を提出すること
制度改正における政府の意図
職員に対する賃金改善が加算1増設の大きな目的とされていますが、政府としては、もう1つ目的があることが、サービス別加算率から読み解けます。
それは、介護保険費用の抑制です。
現在、介護が必要な高齢者が増大する一方、介護保険料を捻出している40歳以上の人口は減少傾向にあります。平成28年8月31日、厚生労働省では、介護保険料の支払いを始める年齢を引き下げることが議論されており、この会では否決はされたものの、2025年問題に向けて、今後何らかの形で介護保険料を補填する施策が打ち出されると考えられます。
今一度、加算1のサービス別加算率を見てみると、在宅系サービスの加算率が高く施設・居住系サービスが低いことがわかります。現在、日本では、高齢者の増加に伴い施設・居住系サービスでの入居者が飽和しています。以上に伴い、2点の課題が考えられます。
本当に施設・居住系サービスを利用したい人が使えていない
元々サービス料が高価なため、介護保険費用が増大している
そのため、政府では、在宅での介護利用環境を充実させることで
利用者がなるべく長く住み慣れた地域で暮らせる世の中
利用者の状況にマッチした介護サービスの提供
介護保険費用の抑制
を実現しようとしています。
この取組みが地域包括ケアシステムと呼ばれる施策の一環であり、サービス別加算率からも施策の意図を読み取ることができるでしょう。
まとめ
処遇改善加算の変更点について、いかがだったでしょうか。
介護保険に関する制度は、3年ごとに大きく改正されます。3年ごととはいえ、制度に合わせて事業所の仕組みを変えるということは、非常に骨が折れる思いと察します。
しかし、変更に対して何もしない事業所と適応していく事業所では、職場の環境や職員の質、あらゆる面で差が出てしまうことも事実です。
厚生労働省の公文を理解されることがベストではありますが、まずは当ブログのような概略を読み、重要な制度を理解し、1歩ずつ事業所をステップアップさせることをおすすめします。
処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。