2018年度の本改定に向けて、「介護報酬の事がよくわかっていない…」「介護報酬の改定はどのように実施されてきたの?今後は?」といった疑問を持たれている方々に今一度理解していただくために、これまでの介護報酬改定の推移を中心にまとめてみました。
介護報酬改定とは?
「介護報酬」とは、介護保険が適用される介護サービスを提供した介護事業者や施設に、その対価として介護保険から支払われる報酬のことをいいます。
少子高齢化や介護人材不足の深刻化など、様々な課題を解決するための取り組みの一つとして、2000年度の介護保険制度開始以降、介護報酬の改定が行われることになりました。
介護報酬は原則1割が利用者負担で、9割が保険料や公費で賄われています。
限られた介護保険の財源の中で、高齢者が質の高い適切な介護サービスを受けられるよう、原則3年ごとに介護報酬が見直されています。
その具体例としては介護サービスに対する介護報酬、各事業所の人員配置基準、職員の処遇改善に関する原資などがあります。
介護報酬改定のこれまで
これまでの介護報酬改定について、当時の背景や改定内容、改定に伴う影響などについて時系列で記載しています。
なお、介護報酬率については次の項で説明しますので、ここでは省略します。
2003年度改定
在宅重視と自立支援の観点から、要介護者の軽減、在宅生活の継続あるいは復帰に重点を置いた見直しを行うことが目的とされ、「施設サービスの適正化」等が図られました。
自立支援を志向する在宅サービスの評価
訪問看護における生活援助の適正化、個別リハビリテーション加算の新設など。
施設サービスの質の向上と適正化
施設の収支状況を勘案してのサービス費用適正化、在宅復帰及び自立支援の促進など。
2005年度改定
介護保険法の改正が行われ、主な変更点は「介護予防重視」「施設給付の見直し」等でした。
これらの改正に伴い、「在宅と施設サービスの公平性を確保」するという観点から、施設における食費や居住費に関連する報酬の見直しが行われ、食費等は原則的に利用者負担となりました。
2006年度改定
要支援者や要介護1に該当する高齢者の大幅な増加に伴い、「予防重視型システムの確立」や「新しいサービス体系の確立」が改正の大きなポイントなり、報酬改定においても「自立支援と在宅介護の促進」等が図られました。
介護予防・リハビリテーションの推進
介護予防給付をそれまでの出来高払いから月単位の包括払いに変更など。
中重度介護者の支援を強化
訪問介護・訪問看護における中重度者向けの対応への加算など。
2009年度改定
介護職の離職率の増加や人材確保が困難な状況であったため、介護職員の処遇改善を図り、質の高いサービスを提供して、経営の安定化を図る必要がありました。
介護従事者の人材確保・処遇改善
負担の大きな夜勤業務などへの適正な配置、職員の専門性や勤続年数等への加算など。
医療との連携や認知症ケアの充実
居宅介護における入院時や退院時の評価、認知症対応サービスに関する各種加算など。
2012年度改定
前年に行われた介護保険法の一部改正に伴う、新たな介護サービス等への対応や診療報酬との同時改定に伴い、医療との連携強化が求められる状況のもと、介護職員の処遇改善、賃金・物価の下落、介護事業者の経営状況及び地域包括ケアの推進などを踏まえて改定が行われました。
介護職員処遇改善に関する見直し
介護職員処遇改善加算の新設など。※所定単位数にサービス別加算率を乗じた単位数で算定
地域包括ケアシステムの推進
高齢者が地域に住み続けられるように、高齢者の自立支援に重点を置いたサービスの強化、医療と介護の任務を明確にするとともに連携の強化を図る。
また、認知症対応サービスの提供について必要な見直しを行うなど。
2015年度改定
地域包括ケアシステム確立に向け、高齢者の増加、在宅及び施設サービスの増加対応することや職員の処遇改善、介護事業所の経営状況などを踏まえた経費を確保することを目的として改定が行われました。
中重度介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化
在宅生活を支援するサービスの充実を図る。
特に、24時間365日の在宅生活を支援する包括報酬サービスの機能強化を図る。
リハビリテーションの推進に伴う新たな報酬体系、看取り期における対応の評価、施設サービスの専門性の強化など。
介護人材確保対策の推進
処遇改善加算の更なる充実、サービス提供体制強化加算(介護福祉士の評価)の拡大など。
サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築
通所介護や小規模多機能における看護師の効率的な活用の観点から、人員配置の見直しなど。
介護報酬改定率の推移
介護事業者やサービスを受ける利用者が直接影響を受ける介護報酬。
減額となれば事業所は減収となり、利用者は負担が減ります。
2000年度から始まった介護保険制度。
当初の介護費は3兆6億円でしたが、2014年度には10兆円に達しています。
この間、介護報酬は高齢者・要介護者の増加、介護職員の不足、サービスの多様化、近い将来を見据えた地域包括ケアシステムの推進及び物価や賃金の低下などを勘案して、介護報酬は変化しております。
介護報酬の改定率の推移についてまとめていきます。
改定時期 |
主な変更点 |
改定率 |
2003年度 |
在宅重視・自立支援の観点から、「訪問介護」などの在宅サービスは平均0.1%引き上げ。 施設サービスは適正化が図られたことで平均4%引き下げ。 |
- 2.3% (在宅:0.1%) (施設:-4%) |
2006年度 |
2005年度の改定を含めると- 2.4%引き下げ。 「訪問介護・看護」などの中重度介護者向けの報酬を上げて、軽度者向けの報酬を引き下げ。 |
- 0.5% 【-2.4%】 (在宅:- 0.1%) 【-1.0%】 (施設:±0%) 【-4.0%】 ※【】2005年度改定を含めた率 |
2009年度 |
介護従事者の人材確保や処遇改善に関する改定、介護従事者のキャリアに関する加算を実施。 |
3% (在宅:1.7%) (施設:1.3%) |
2012年度 |
介護職員処遇改善加算の創設。 この加算分2%を除くと- 0.8%引き下げ。 在宅や重度者介護を強化。 施設からの在宅復帰や24時間対応型の新サービスに対する報酬を加算。 |
1.2% (在宅:1%) (施設:0.2%) |
2015年度 |
2014年度の消費税引き上げに伴う負担増対応で0.63%引き上げを実施。 介護サービス評価の適正化が求められ、利益率の高いサービスの抑制が図られる。 人材確保のための待遇改善計画を立てた事業所への加算を除くと実質約-4%と言われている。 |
-2.27% (在宅:-1.42%) (施設:- 0.85%) |
介護報酬改定のこれから
2018年度は介護報酬改定の年となります。
ここでは2018年度の改定の話を中心に介護報酬改定の今後について述べていきたいと思います。
2018年度介護報酬改定のポイント
2018年度の改定は在宅重視、自立支援の推進、地域包括ケアシステムの確立といったこれまでの
流れを踏襲しつつ、少子高齢化や労働人口の減少などの影響により、今後も増加すると予想される社会保障費を抑制する必要があるため、多くの事業者にとって厳しい改定になるものと言われていま
す。
「診療報酬」とのダブル改正
地域包括ケアシステムの確立及び機能発揮の狙いから「医療と福祉の連携」から「医療と福祉の一体化」を強調しています。
一人一人に対して24時間365日絶え間なく、医療や福祉のサービスを受けることのできる体制を目指していることから、医療報酬と介護報酬に何らかの連動があることが予想されます。
まとめ
介護報酬とは何か?
これまでの推移や今後の傾向について述べてきました。
社会保障費が逼迫している中、介護報酬が引き上げられる要素が考えにくいのが現状であるという意見が多くあります。
こうした中でも、よりサービスの質を向上させる必要があり、増え続けるニーズにも対応していきましょう。
参考になりましたら、シェアしていただければ幸いです。
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