算定する事業所が徐々に増えつつある、特定事業所加算。しかし、実際には算定要件が厳しいのも現状です。
また、研修の義務、職員の配置問題など、様々な問題を抱えますが、一方で、ケアマネジャーのスキルアップになるという声もあります。
皆様はどれ程ご存知でしょうか。
今回は、居宅介護支援における特定事業所加算について解説していきたいと思います。
居宅介護支援における特定事業所加算とは?
まずは、特定事業所加算のおさらいからです。
特定事業所加算とは、通常のケアマネジャーだけでなく、主任介護支援専門員や手厚い人員の確保など働く人の質だけでなく、重度者や困難ケースの受け入れなど、受け入れる人の幅の広い事業所に対して一定単位数加算が算定されるものです。
この加算をとるためには、職員の人員基準や、重度介護者に対しての対応方法などの確立など、要件が定められていますので確認が必要です。
この加算の背景には、今後ますます進む高齢化によって求められるケアマネジメント技術の高度化があります。
地域で増加の一途を辿る高齢者、しかも、健康寿命の延伸が少なく、寿命だけ延びていく中、どんどん要介護の高齢者が増えていくことが予測されます。
こういった重度介護者を受け入れる体制を整備していくことは、その人が地域で住みやすくなる第一歩でもあるため、健康寿命の延伸目的で開始された総合事業だけでなく、こういった受け皿の整備も進められています。
居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件
特定事業所加算には、訪問看護と居宅介護支援で加算の取り方が異なります。
今回は居宅介護支援の算定要件について紹介しますので、訪問看護の算定要件についてはこちらをご参照ください。
http://www.kaigo-shien-blog.com/entry/2017/04/26/090824
居宅介護支援における特定事業所加算も、人員体制や研修の有無、困難事例に対しての支援提供状況などが要件になりますが、特定事業所加算の種類には3種類あります。
「特定事業所加算Ⅰ」「特定事業所加算Ⅱ」「特定事業所加算Ⅲ」と分類され、算定できる単位数も異なってきます。
では、それぞれの算定要件を説明していきます。
算定要件Ⅰ~Ⅲにおいて、それぞれの要件を満たす場合は加算が取れます。
概ね、人員が増えれば加算も増額できるので、加算可能な事業所は今一度検討してみてください。
特定事業所加算Ⅰ |
要件 |
① 常勤の主任介護支援専門員が2名以上配置していること ② 常勤の介護支援専門員を3名以上配置していること ③ 利用者に関する情報又は、サービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること ④ 24時間の連絡体制を確保して、いつでも相談ができる体制を整備すること ⑤ 利用者総数のうち、要介護3以上の利用者の占める割合が40%を超えること ⑥ 介護支援専門員に対して、計画的に研修を実施していること ⑦ サービス提供困難事例に対しても、サービス提供体制を整備し、サービスを提供していること ⑧ 地域包括支援センターなどが実施する事例検討会に参加していること ⑨ 減算対象になっていないこと(運営基準減算、特定事業所集中減算) ⑩ 介護支援専門員一人当たりの利用担当者が40名未満であること ⑪ 介護支援専門員実務研修への協力体制を整備していること |
特定事業所加算Ⅱ |
要件 |
① 特定事業所加算Ⅰの要件②、③、④、⑥、⑦、⑨、⑩、⑪の基準を満たしていること ② 常勤の主任介護支援専門員を配置していること |
特定事業所加算Ⅲ |
要件 |
① 特定事業所加算Ⅰの要件③、④、⑥、⑦、⑨、⑩、⑪の基準を満たしていること ② 特定事業所加算Ⅱの要件②の基準を満たしていること ③ 常勤の介護支援専門員を2名以上配置していること |
居宅介護支援における特定事業所加算の届出
特定事業所加算の算定には、各市町村ホームページに掲載の「居宅介護支援における特定事業所に関わる届出書」の記載・届出が必要です。
内容については、市町村ごとにフォーマットが異なるため、微妙に変わる部分がありますが、概ね、特定事業所加算Ⅰ~Ⅲの要件を満たしているかどうかの確認をするための確認及び記録が出来る用紙になっています。
ほとんどの市町村ではエクセルファイルやPDFファイルになっていますので、確認をしてみてください。
主任ケアマネジャーの氏名や、研修修了年月日、その他ケアマネジャーの在籍状況、会議の開催状況、要介護3~5の方の利用状況などを細かく記載するものですので、書き損じがないように正確に記載する必要があります。
この他、各要件を満たしていることを証明するための書類も提出が必要になってきます。
例えば、主任ケアマネジャー研修修了証の写しや、研修の実施計画及び実施状況を示した書類、実習等の受け入れに同意していることが分かる書面の写し、勤務形態一覧表(加算算定開始月のもの)、チェック表及び誓約書など、必要な付属書類についても各市町村サイトに記載してありますので、合わせてご確認ください。
居宅介護支援における特定事業所加算の注意事項
算定要件に、計画的に研修を行うことが求められていますが、この研修計画について、従業者ごとかつ年度ごとに作成する必要があります。
また、研修計画には、研修内容の全体像、研修実施のための業務体制の確保方法、研修の目標、期間、実施時期が定められている必要があります。
この研修には、「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していることが付け加えられましたが、この協力体制というのが実に曖昧な部分でもあります。
基本的に、OJTの機会が十分でないケアマネジャーに対して、地域の主任ケアマネジャーが同行して、指導、支援を行う研修が望ましいですが、地域で有志の事業所が開催する研修会を引き受けることも、研修内容として含まれる可能性もあります。
このあたりのさじ加減については各市町村判断になりますので、それぞれ確認が必要です。(2017年までは、都道府県の場合もあります。)
そして、2015(平成27)年の介護報酬改定によって、特定事業所加算も2段階から3段階に見直しとなりましたが、元々特定事業所加算(Ⅰ)を算定していた事業所も、継続して特定事業所加算を算定するためには、体制状況等一覧表と同時に特定事業所加算に関わる届出書(居宅介護)を届け出る必要があります。
また、新たに特定事業所加算(Ⅲ)を算定する事業所も、届出が必要です。
まとめ
今回は、居宅介護支援における特定事業所加算について紹介しました。
加算要件はⅠ、Ⅱ、Ⅲと細かく分類されてきましたが、実際特定事業所加算Ⅰを算定できているのはごく一部の事業所です。超高齢社会に向けて、居宅介護支援事業所に求めてられている特定事業所加算においてはシステムの再構築が必要なのかもしれません。
事業者の皆様は、この特定事業所加算に対してどのような意見をお持ちでしょうか。
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