総合事業が開始されているのは知っているけど、一体どうやって移行すればいいの?どういうシステムなの?など疑問を持っている方はいますでしょうか。
知っているようで知らないことがまだ多い総合事業ですが、今回は、そんな総合事業ガイドライン案に則って、なるべく簡潔に説明を加えていきたいと思います。
総合事業のことを全く知らない方や、これからサービス提供をするにあたり、確認したいと思っている介護事業者の方は必見です。
総合事業ガイドラインってどういうもの?
ガイドラインとは様々な解釈がありますが、一般的には、組織や団体に対して、守るのが好ましいとされる規範や、目指すべき目標を明文化し、その行動に具体的な方向性を与えることや何らかの縛りを与えることを指します。
このガイドラインは、介護保険法で規定された総合事業を円滑に実施するため、基本的考え方や事務処理手順、様式等を厚生労働省が定めたもので、実質的には多くの地域でこれ従って事業が行われることになります。
総合事業は、厚生労働省による平成24年度介護保険制度改正で創設された「総合事業」を発展的に見直し、新しい総合事業として平成29年4月までに全ての市町村で実施することを定められています。
この総合事業ガイドラインは、全ての介護事業所にむけて発信されているものですが、中でも介護予防訪問介護、介護予防通所介護サービス提供事業所については、地域支援事業に移行しなければなりませんので、こういった事業所がより理解を深める必要があるでしょう。
ガイドラインの概要を簡単に解説!
総合事業ガイドラインは、3つの大項目と、7つの小項目にまとめられております。簡潔にまとめたものが下表になります。今回は、小項目①~⑦について、出来るだけ簡潔に紹介していきます。
大項目 |
小項目 |
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はじめに |
① 総合事業に関する総則的な事項 |
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事業所の具体的な内容 |
② サービス類型 |
④ サービス利用の流れ |
⑥ 制度的取り組み |
基盤整備 |
③生活支援・介護予防サービスの充実 |
⑤関係者間の意識共有と、介護予防ケアマネジメント |
⑦ 円滑な事業への移行・実施 |
総合事業に関する総則的な事項
総則的とはあまり聞き慣れないですが、全体に通用する基本的な事項のことをいいます。つまり、言い換えるのであれば、総合事業とは一体なに?と簡単に説明してくれているのがこの第一項目「総合事業に関する総則的な事項」になります。この大まかな内容については下記の構成になっています。
- 事業の目的・考え方
- 各事業の内容及び対象者
- 市町村による効果的・効率的な事業実施
- 都道府県による市町村への支援
- 好事例の提供
このように、総合事業の理解を深めていく上で、総合事業の全体像をまとめて記載しているのがこの総則的な事項になります。理解するのは時間を要するかもしれませんが、今後、”総合事業に関わりがない事業所はない”ということも予測されますので、できるだけ介護関係の職員並びに介護事業所の方々には理解をしてほしいところです。
サービスの類型
総合事業では、要支援者の方々に対して、様々なサービス提供を行っていくために、市町村は、サービスを類型化し、基準や単価などを定める必要があります。
そのサービスは大きく分けて3つあります。
- 訪問型サービス※
- 通所型サービス※
- その他の生活支援サービス※
各々のサービスにおいて、そのサービス種別、サービス内容、対象者とサービス提供の考え方、実施方法、基準、サービス提供者を定めた事例が、厚生労働省発信の総合事業ガイドラインp10(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000088276.pdf)がありますので、こちらを合わせて参照してみてください。
※訪問型サービスとは、現行の(介護予防)訪問介護に相当するもので、通所型サービスとは、現行の(介護予防)通所介護に相当するものを指します。その他の生活支援サービスとは、栄養改善サービス、ボランティアによる見守り、自立支援に資する生活支援からなります。
総合事業に移行されてから仕組みが複雑化した、この介護予防訪問介護と介護予防通所介護サービスですが、地域包括ケアシステムの名のもとに、このふたつがサービス移行したことは、長い目で見ると、高齢化問題解決の糸口になる可能性が高いため、現状まだ完全にサービス移行できていない事業者の方は、早急に対応することをおすすめします。
生活支援・介護予防サービスの充実
総合事業の真の目的には、元気な高齢者増加による、社会保障費の抑制と、高齢者による介護マンパワーの確保による2025年問題の解決にあります。これらを体現化するために、今まで介護が必要だった人にしか受けられなかったサービスを、徐々に一般高齢者に裾を広げて、幅広く高齢者をサポートしていこうとしています。
地域全体で、多様な主体によるサービス提供を推進していくことが重要で、下記にその取り組み例を紹介します。この項目については、介護従者者だけでなく、地域で対象者に関わるすべての人向けに発信されておりますので、総合事業とは?と尋ねられた時にこの部分については深く説明できるようになれるといいですね。
生活支援・介護予防サービスの開発・発掘のための取り組み
これには、地域支援コーディネーターが必要になってきます。多様な主体による取り組みのコーディネート機能を担い、一体的な活動を推進します。地域に不足するサービスを創出することや、元気な高齢者が担い手として活動する場を確保するのも、地域支援コーディネーターの仕事です。
住民主体の支援活動の推進のための取り組み
生活支援をする側がのスキル・知識向上のための研修会
地域サロン、会食会、外出補助などでボランティアを行った場合、ポイントを付与するボランティア制度などが市町村で始められています。
地域ケア会議、既存資源、他施策の活用
生活支援を行っていく上で、多職腫や住民で検討を行うことで、課題解決に向けて問題共有することが重要です。関係者ネットワークの構築や、資源開発を図っていく地域ケア会議を積極に活用することが推進されています。
サービス利用の流れ
サービス利用の流れについては、ケアマネジャーだけが知っていればいい。なんてことはありません。介護事業所で働いている人ならば誰でも知っているべき事項ではないでしょうか。
在宅にお邪魔してサービスを提供する介護従事者は、特に知識が必要です。在宅では普段聞きにくいこともサラっと聞いてくる利用者の方がいらっしゃることや、ご家族も同伴されていることがほとんどです。その時に、どういう流れで動けばいいか、ケアマネジャーに任せっきりにしてしまうと、信頼関係構築において不利益を生じることがあります。
意外にも、理学療法士、作業療法士などのリハビリ専門職に、こういったサービスのことを聞いてこられる方が多く、リハビリ専門職は最低限の知識は身に付けておきたいところです。
Step1:相談
基本的にサービスを受けるためには、まず市区町村窓口や地域包括支援センターでの受付が必要です。ここでは、窓口担当者が具体的に総合事業の利用か、要介護認定を受けるべきかなど、幅広く相談に乗ってくれます。
Step2:基本チェックリストの活用・実施
窓口で相談をした被保険者に対して、基本チェックリストを活用して、利用すべきサービスの区分の振り分けを行います。基本チェックリストについてはこちらを参照してください。http://www.kaigo-shien-blog.com/entry/2016/12/07/184216
Step3:介護予防ケアマネジメントの実施
介護予防、生活支援を目的に、適切な事業が提供されるよう専門的視点からサポートを行います。基本的に、利用者が居住する地域包括支援センターが行いますが、居宅介護支援事業所が受託する場合もあります。
関係者間の意識共有と、介護予防ケアマネジメント
関係者間での意識共有を図る中で、重要とされる要素について6つに分けられています。
- 地域包括ケアシステムの構築と、規範的統合
- 明確な目標設定と、本人との意識の共有
- ケアプランの作成
- モニタリング・評価
- セルフケア・セルフマネジメントの推進
- 「介護予防手帳(仮称)※等の活用」
とあります。
それぞれの文言には、小難しく、あえて項目立てて記述していますが、この項目で述べていることは当然のことです。一利用者に対して多職種が連携とり、インフォームドコンセントを果たしましょう。また、それを十分に達成するために利用できるツールは積極的に使用するようにしましょう、というものです。
こちらの項目については主にケアマネジャーが注視すべき点にはなりますが、個別機能訓練加算など、リハビリ専門職種が関わるケースもあります。一概に介護関連職に限った知識ではありませんので、医療・介護に関わる誰しもが今一度理解しておいたほうがいいでしょう。
また、セルフマネジメントの推進や介護予防手帳の活用の項目においては、利用者自身ができる取り組みと、その支援方法が記載されています。
※介護予防手帳とは
心身の健康に配慮した生活を送りながら、自分だけで難しいことは支援・サービスを選択して利用する「セルフマネジメント」のためのツールで、本手帳と介護予防手帳にわかれています。前者は保管用、後者は携帯用となっています。保管用はセルフマネジメントに取り組むのに必要な情報を集めたもので、携帯用はセルフマネジメントの目標と計画をたてるものになっています。
総合事業の制度的な枠組み
総合事業には、そのサービスの実施方法、その基準、サービス単価、利用者負担、給付管理など、市町村が独自に定めなければならないものがいくつかあります。介護事業者も、その方針に従うことになります。
サービス実施方法について
市町村による直接実施
昨今では、役所の講堂、公民館などで、「理学療法士による介護されない体作り」「脳梗塞予防のための生活習慣」など、リハビリテーション専門職が講演をするケースが増えてきました。
委託による実施
NPO、民間事業者が行うミニデイサービスがよくある例です。デイサービスでの運動や、レクリエーションがこれにあたります。
指定事業者によるサービス提供
これはそのまま、既存の事業者が、介護予防に相当するサービスを提供する場合に必要です。
NPOやボランティア等への補助
老人クラブ、認知症サポーター養成講座など、予防事業サービスを提供する場合はこれに相当します。
- サービスの基準
市区町村は、総合事業が円滑に進むよう、以下のようなサービスの基準を示す必要があります。
例 |
通所型サービス(現行の通所介護相当サービスの場合) |
人員 |
管理者※ 常勤・専従1以上 生活相談員 専従1以上 看護職員 専従1以上 介護職員 ~15 専従1以上 15~利用者1人専従0.2以上 機能訓練指導員 1以上 |
設備 |
食堂・機能訓練室(3㎡×利用定員以上) 静養室、相談室、事務室 消火設備、その他の非常災害に必要な設備 必要なその他の設備・備品 |
運営 |
個別サービス計画の作成 従事者の清潔保持・健康管理 秘密保持 事故発生時対応、廃止等の届出と便宜の提供 |
※詳細につきましては、厚生労働省ホームページ
総合事業ガイドライン概要をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000088276.pdf
円滑な事業への移行・実施
総合事業とは、繰り返しになりますが平成27年度から始まった新しい介護予防・日常生活支援総合事業のことです。元々あった介護予防訪問介護サービス、介護予防訪通所介護サービスの在り方を全く変えてしまう大きな取り組みですので、総合事業が浸透しきらないまま、現在を迎えているのが実情です。
総合事業への円滑な移行を国は求めており、市区町村が条例で定めている場合は、総合事業の実施を平成29年4月まで猶予可能となっていました。総合事業を実践する側も、総合事業をサポートする側(この場合は市区町村)、どちらも受け皿の整備を行うように努めることが適当です。
このガイドラインにおける総合事業への円滑な移行は、総合事業を実践する側、サポートする側両者に発信されたガイドラインであり、両者とも確認すべき事項でしょう。
まとめ
今回は総合事業ガイドラインにスポットをあてて説明いたしました。どうしても、ガイドラインとなると、堅苦しく、理解しにくい言い回しが増えてしまいます。
厚生労働省が作成したガイドライン概要も簡略化されており、図式での説明がある分非常にわかりやすくなっていますが、今の自分にどこの部分の知識が足りていないのか、ガイドラインのどこの部分をおさえておけば大丈夫なのかわからないため、知識として取り入れるのを先延ばしにしてしまってはいませんか?そんな事業者様のフォローが出来たら幸いです。平成29年度に総合事業が完全移行できるように国は市区町村に働きかけてきました。
それに合わせて、地域で働く医療介護関係スタッフの動向も大きく変化してくることと思いますが、今一度、総合事業の展開の足並みに合わせて、ご自身の働き方を検討してみてはいかがでしょうか。
参考になりましたらシェアの程宜しくお願いします。