介護事業者の皆様とっては、今後の介護保険改正がどのように行われていくか気になられているかと思います。
ここでは、介護保険改正の歴史から介護保険制度がどのように変わってきたかの紹介と、今後の改正法についても触れていきますので、ぜひご参考にしてみてください。
介護保険制度改正の歴史について
2000年
- 介護保険が施行
2003年
- 介護予防について
- 支援者給付を介護予防給付へ変更
- 介護保険料、介護報酬の改正
2005年
- 予防重視型システム
- 地域密着型サービス
- 地域包括支援センター
- 地域支援事業
- 移住、食費の見直し
2008年
- 介護事業者の違法営業問題
- 法令遵守より業務管理体制の整備実施
2011年
- 介護保険料及び介護報酬の改定
2012年
- 地域包括ケアの推進
- 定期巡回、対応サービス
- 複合型サービスや日常生活支援事業が設立
2015年
- 予防給付を地域支援事業へ
- 介護予防・日常生活支援総合事業
- 特別養護老人ホーム入所を原則、要介護3以上へ
- 一部利用者2割負担
- 地域密着型通所介護の新設
介護事業者にどのような影響を及ぼしてきたか
介護保険制度改正にあたり事業者の皆様が頭を抱えたのは、介護報酬の引き下げではないでしょうか。
今後の施設を運営するうえで、介護保険制度の改正はとても大きな影響を及ぼしています。
ここでは内容を掘り下げて明記していきます。
介護報酬の引き下げ
介護事業者は介護報酬の収入により施設を運営しているといえます。
利用者から1割から2割の利用料を回収し、職員の給与や施設の運営に当てています。
介護報酬の引き下げも小幅と考えられますが、今後の処遇改善を図るための手段として、他サービスにも参入することで処遇を確保したい考えがあります。
この手法は、地域包括ケアの利用が該当されます。
そこで地域との相互扶助、家族や近隣の人たちのサポートを得ながら処遇を
確保していく流れができています。
今までは施設のみで高齢者をサポートすることが主流とされてきましたが、地域包括ケアが設置されてからは、市区町村を主体として地域で支えることが重要となりました。
また、介護保険以外のサービスを受け入れ、処遇を確保する働きも出てきています。
介護報酬に関して上手く理解できない施設、事業者は運営が厳しくなると同時に、職員離職という負の連鎖ともいえるケースが多くみられました。
研修制度や資格優遇するなど、工夫をして人材確保に尽力していきたいものです。
運営
介護事業者が新しいサービスを始める財源に関して、厚生労働省の介護給付において、今までのサービスの介護報酬を引き下げる案が出ています。
新サービスへの参入には補助金の支給案も浮上しており、事業者にとってはありがたい支援です。
ここで利用者1人に対し30万円の介護報酬があった場合、重度の要介護者を取り込む積極的な体制が必要だと考えられます。
事業者は新サービスを迅速に取り入れていくことが重要です。
介護の世界でも、時代のニーズに備えて大手事業者はすでに着手している事例があります。
また、地域総括ケアの設置により自治体を利用した新サービスを受託するケースも出ています。
介護保険制度改正に伴い新マーケットにいち早く着手し従来のやり方とは違うケースで取り組んでいる事業者はそこで成功しています。
今後同じ様な運営では同業者との競争にも勝つことはできません。
サービスの質と人材確保がポイントとなっていくでしょう。
また、今後は介護全体でサポートするのではなく、医療関係との連携が不可欠となります。
看護師が24時間体制で利用者をサポートできるとなると、そのご家族にとっては安心材料になります。
この体制の有無が家族との信頼関係にも繋がっていくことで評価にもつなが
るでしょう。
今後運営していく上で、看護師を確保し介護と医療のサービスがいかに円滑
に回っているかが他事業者との差別化にもなるといえます。
今後の介護保険制度改正はどうなるか
介護保険の財政状況は年々厳しくなっています。
高齢者の人口増加と、介護保険や医療費、年金など社会全体を通じても費用負担が格段に増加傾向になっています。
今後どのような風潮になっていくのか考えてみます。
介護保険改正は、地域包括ケアを重点において以下の通り構築されています。
要介護者の状況改善、支援
今後、国の財政費用の抑制を促すため、介護予防に力を入れていきます。
要介護状態にならないように事前にリハビリや自立支援を促し地域でサポートしていく考え方です。
今後の課題としては、市区町村によって取り組み方が多様化されていくので地域格差がでることが予想されます。
介護医療院の創設
医療費の圧迫が問題視され、2006年に医療の診療報酬と介護報酬が同時に改
正されました。
2011年までに介護療養が廃止となりましたが病院から特養への転換がスムーズにいかず2017年末まで延長となりました。
そこで新たに介護医療院が創設される案が浮上されています。
この介護医療院は医療が必要な高齢者が対象ですが、医療機関とは違います。
介護老人保健施設と同様な施設であり、これから介護報酬や人員配置等は法案により決まりますが、医師や看護師を手厚く配置することは間違いないでしょう。
障害者福祉を一体的に行う共生型サービス
ホームヘルプやデイサービス、ショートステイなどを共生型サービスと位置づける方向で進んでおり、高齢者と障害者の垣根を切り離したい考えもある といえます。
課題としては、高齢者と障害者の専門職の確保ができるかどうか。
そして人材が確保出来ない場合、サービスの低下が懸念されます。
一方、共生型サービスはすでにモデルケースが存在しており、相乗効果が発揮されています。
既に地域の連携ができているところはスムーズにいくことが予想されますが、都市部で実施していけるかどうかが課題とされています。
利用者の3割負担
今までも介護保険の一部利用者の負担額については1から2割と改正されてきましたが、今回の改正のポイントは総報酬割です。
特に大企業などの高所得者に負担してもらおうという仕組みです。2018年8月から移行する予定です。
介護保険料
今後も高齢者人口増加に伴い、一部所得者を対象に自己負担額の増加は考えられます。
また、現在浮上しているのは20歳以上を対象に保険料の負担をするというもので賛否はありますが、こちらも再浮上していく可能性が十分考えられます。
サービスの自己負担率増
2015年改正時には65歳以上の高齢者は2割負担としていますが、年金以外で何らかの収入がある人は合算しての金額となります。
しかし今後は収入に関係なく高齢者に対し2割にする案も浮上しており、動向が注目されています。
ケアプラン有料化
現在では施設を利用する際には必ずケアプランが必要になります。
ケアマネジャーが在籍しており、一人ひとりにあった介護計画書を作成するものです。
こちらは全額、介護保険より給付されており、利用者の自己負担ではありませんが、今後は利用者が負担するという法案が浮上しております。
介護計画書は、定期的に見直しや改善をしていくものなので、高齢者にとっては避けることはできない問題になるでしょう。
介護給付の抑制
福祉用具の貸与や購入、住宅の修繕に関しても同様に要介護3以上の高齢者が対象となっています。
つまり、他の要介護や要支援者は実費となる可能性が浮上しているということで問題視されています。
まとめ
介護保険制度が制定されてから、介護全体の動向が年々注目されるようになってきました。
高齢社会の日本にとって介護とは自分やその家族の問題でもあるからです。
介護における国の財政がパンク状態である今、国に頼らず、地域でサポートしていくこと、自宅での在宅支援が重要であること、介護と医療が協力していことがポイントです。
国の動向に対し、介護職員の離職が大きな問題となっています。
人員不足により手厚い介護ができず運営が厳しい事業者も増えているので、支援側の管理体制やサポートを今後どうしていくべきかを考えなければなりません。
皆様はこの介護保険制度改正についてどのようにお考えでしょうか。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)