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処遇改善加算の算定要件について、キャリアパス要件をはじめ詳しく解説

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 今回は介護事業者の皆様の間で話題になる、介護職員処遇改善加算(以下「処遇改善加算」)について取り上げます。

 事業所の人材を安定して確保するために、加算の算定要件を満たすことは大切な視点となります。

 そこでキャリアパス要件をはじめ、処遇改善加算の算定要件について解説いたします。

 ぜひ参考になさってください。

 

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処遇改善加算の算定要件とは?

 

 処遇改善加算を取得することで生まれるメリットは、離職率の高いとされる介護職員において、賃金改善や職場環境等を充実させることで、より定着して働いてもらうということです。

 就職した者が、より安心して働きやすい職場で仕事を続けられるようになるために、この加算を取得して職場環境を整えていくことが大切です。

 

 加算を受けるには算定要件を満たす必要があります。

 キャリアパス要件には区分があり、それぞれの要件を満たすことで、介護職員に対する加算が取得できます。

 

平成27年度の処遇改善加算の算定要件とは?

 

 2015年度(平成27年度)の介護報酬改定において、処遇改善加算の加算区分が変更となりました。

 具体的にはそれまで3つの算定区分であったのが、加算Ⅰが新たに加わって、加算Ⅰ~Ⅳまでの4つの算定区分となりました。

 

 この中で新たな区分として加わった加算Ⅰについてですが、キャリアパス要件Ⅰとキャリアパス要件Ⅱの両方を満たす必要があります。

 加えて、定量的要件も満たさなければなりません。

 加算額については、それまで15,000円だったのに対して、平成27年度より介護職員一人当たり12,000円増額して、27,000円の加算が取得できることになりました。  

 

 それでは加算Ⅰを受けるために必要な、キャリアパス要件Ⅰについてみていきましょう。

 キャリアパス要件Ⅰには、任用等要件、賃金体系要件と周知方法の3種類があります。  

 

 任用等要件とは、介護福祉士などの資格要件や職務の経験年数、また介護技術や受講した研修歴などを踏まえた上で、介護課長や介護主任などといった職位や職責を決めることを言います。

 非常勤職員等を正規雇用職員として契約するなどの場合において、要件を決めることもこれに当たります。  

 

 賃金体系要件とは、職務や職能などに応じて等級を決定したり、役職や資格、経験などに応じて手当を決定したりすることなどです。

 具体的には勤務態度評価や能力評価といった人事考課制度を踏まえたうえで、昇給や賞与などといった賃金への反映をしていくことを指します。  

 

 周知方法とは、上記の任用等要件や賃金体系要件に関して、就業規則等きちんと根拠のある規定を書面にて整えて、事業所の全介護職員へ通知や掲示を通して、明確に周知することを言います。

 就業規則作成義務がない事業所においても、内規などで全介護職員に対して示す必要があります。  

 

 続いてキャリアパス要件Ⅱについてみてみましょう。

 キャリアパス要件Ⅱには、介護職の職務内容を踏まえたうえで、介護職員と意見交換を行いながら、職員の資質向上を図ったり、具体的な計画を立てて研修を行ったりすることがあります。

 OJTやOFF-JTなどの技術指導等を行い、行った結果どうだったかという能力評価を行います。

 また事業所全体として介護福祉士やケアマネジャー等の資格取得を勧めるため、職員が個人の時間を有効に活用できるよう勤務シフトを調整したり、休暇を与えたりするなどが挙げられます。  

 

 最後に職場環境等要件をみてみましょう。

 加算Ⅰについては、平成27年4月以降の、加算ⅡとⅢについては、平成20年10月以降実施した、以下の項目について、必ず一つ以上○をつけることとされています。  

 

 研修を受講するために代替の職員を確保する、専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対して中堅職員に対するマネジメント研修等の受講を支援するなどといった「資質の向上」、職員の腰痛対策のための介護ロボットやリフト等の介護機器を導入する、子育てと両立を目指そうとする職員に対して育児休業制度を充実させるなどの「労働環境・処遇の改善」、障害がある者でも働きやすい職場環境が構築されている、地域のこどもたちや住民らと交流によってモチベーションを向上させるなどの「その他」のいずれか一つに○がつけられなければなりません。

 

 

平成29年度の処遇改善加算の算定要件とは?

 

 2017年(平成29年度)介護報酬改定において、介護職員が定着することの必要性、また介護福祉士に期待されるための役割を増やすこと、介護サービス事業者などの賃金制度の状況を踏まえた上で、昇給と結びついてキャリアアップできるような仕組みを作れるよう、加算の拡充が行われます。

 月額平均1万円相当の処遇改善が実施できるよう、臨時に1.14%の介護報酬改定が行われます。

 

 事業者は都道府県などに対し、加算を取得したい旨届出を行い、加算の請求は国民健康保険団体連合会に行います。

 加算の申請には、介護職員処遇改善計画書や就業規則、給与規定などといった必要な書類を提出する必要があります。

 それまでの加算Ⅰを取得している場合でも、新たに届出が必要であり、該当する事業者であると判定された場合、新設された加算Ⅰを取得できることになります。

 

 それまでの4つの算定区分に加え、新たに加算Ⅰとして新設されます。

 旧加算Ⅰは加算Ⅱに、旧加算Ⅱは加算Ⅲに、旧加算Ⅲは加算Ⅳに旧加算Ⅳは加算Ⅴに、それぞれ変更となります。

 新設された加算Ⅰは、キャリアパス要件Ⅰとキャリアパス要件Ⅱに加え、キャリアパス要件Ⅲと職場環境等要件のすべてを満たす必要があります。

 この加算Ⅰにおいて取得できる加算額は、月額37,000円相当となります。

 

それではキャリアパス要件Ⅲについて解説します。次にあげるすべての項目において、適合している必要があります。

 

  1. 介護職員に関して、経験や資格などに応じて昇給できる仕組みであるかまたは、一定の基準に基づいて定期的に昇給できるか判定するような仕組みが作られていること。具体的には以下のいずれかに該当することです。

     

    • 経験に応じて昇給できる・・事業所に勤める勤続年数や、介護職としての経験年数などによって、昇給ができる仕組み。
    • 保有している資格などに応じて昇給できる・・介護福祉士や介護職員実務者研修の修了者など、保有している資格に応じて昇給できる仕組み。すでに介護福祉士を有している場合も、昇給がされるような仕組みであること。
    • 法人や事業所の一定の基準に基づいて、定期的に昇給できるか判定する・・・実技試験をしたり、人事評価をしたりして、その結果に基づいて昇給できるか判定される仕組み。客観的な評価基準や、昇給できるための条件が明文化されていることが必要です。判定する時期については、経営状況などによって設定し、明文化することは忘れないようにしなければいけません。

     

  2. (イ)の内容に関して、就業規則など明確な根拠となる規定を書面にて整備し、全介護職員に対して周知がなされていること

 

以上です。

 それではキャリアパス要件Ⅲとキャリアパス要件Ⅰの具体的な違いはどこにあるでしょう。

 これについては、キャリアパス要件Ⅰに関しては、職務や職責といった任用要件と、賃金体系についての要件は述べられているものの、昇給に関しては含めていませんでした。

 

 これに対してキャリアパス要件Ⅲについては、経験年数や保有資格などによって、昇給できる仕組みを作ることが要件とされています。

 なお、昇給の方式について、基本給であることが望ましいが、ほかに手当や賞与などでも良いとされています。  

 

 昇給できる対象者ですが、正職員のみではなく、非常勤職員や派遣労働者も含まれます。

 派遣労働者は、派遣元と相談を行い、派遣料金を値上げする等充てることは可能とされています。  

 

上記2の条件の中で、すでに介護福祉士を有している者も、昇給できるような仕組みとありますが、これは例えば介護福祉士資格を有している者が、ケアマネジャーや社会福祉士といった資格を取得した際、昇給ができる仕組みなどが考えられます。

 

 

まとめ

 今回は処遇改善加算の算定要件とはについて解説してきました。

 キャリアパス要件を満たすことで、介護職員に対してより多くの加算が受けられます。

 きちんと加算が受けられるよう、しっかり要件を満たしましょう。この記事が参考になったという方は、シェアをお願いします。

 

 

処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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