介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

介護ソフトウエアとは?導入するメリットや選定方法

介護事業運営において、今では欠かすことのできないソフトウエア。月々の請求や実務処理に様々な会社のソフトウエアが使われています。

介護保険がスタートした時は、ほとんどの事業所が手書きから業務を始めていたなんて今ではとても考えられませんね。

そんな介護ソフトウエアについて、今回は記事をまとめてみました。ぜひご一読いただき、あなたの事業運営に役立ててください。

 

ソフト

 

介護ソフトウエアとは 

介護事業を始めた場合に、必ず行なうのが月々の利用料の請求です。ほとんどの介護事業所は、介護保険制度などの公費による事業収入を得てサービスを提供しています。このため請求先は市町村や国保連になります。

これらの公的機関への請求に必要な物は、ご利用者の月々の利用回数やサービスの種類の記載と利用額の計算がされたデータです。ご利用者1人1人に対してこれらのデータを、月々決められた請求期限までに作成するわけですから、その仕事は量が多く非常に大変なものになります。

また、介護保険などのサービスの利用料金は定期的に改定され、請求できる業務もたびたび変更されます。介護事業所では、都度変更された内容に対応した請求書を作成しなければなりません。しかも1か所でも間違っていたら、そのご利用者の分の請求は通りません。

介護保険の場合、請求するデータは国保連に伝送しますが、それまでの確認作業を人力で行うことは非常に大変です。

これらの計算や内容の確認作業を、人間の代わりに行ってくれるのが介護ソフトウエアです。 

 

介護ソフトウエアを導入するメリット

 それでは介護ソフトウエア導入のメリットを考えてみましょう。 

計算作業が改善される

介護請求業務での金額の計算は、非常に細かい物が多いため手作業ではどうしても時間がかかります。

また、提供するサービスによって報酬額が変わります。1つ1つ人力で入力することは時間もかかりますし、ミスも起こります。これらの作業は介護ソフトウェアを導入することで圧倒的に楽になります。

ミスの防止ができる

介護請求業務の場合、請求データではミスが許されません。いったん間違ったデータで請求を行ってしまった場合は、後から返還等を行わなくてはならず、その実務作業もかなり大変です。介護ソフトウエアを導入するメリットの1つは、こうしたミスの防止です。実際に提供されたサービスを毎回入力していくことで、人的なミスは防ぐことができます。

制度改正に対応できる

介護保険法は改正の多い法律です。法改正や報酬改定に伴って報酬額が変動しますので、介護事業所ではその都度請求する業務に変更を行わなくてはいけません。

介護ソフトウェアによっては、インターネットやクラウドを通じてソフトウェアが自動的に更新されるものが多いため、制度の改正があっても安心して使うことができます。

スケジュール管理ができる

介護ソフトウエアによっては、介護事業を行うスタッフの行程把握や勤務形態に応じたスケジュール管理ができる機能がついた商品もあります。そして多くが、スマートフォンなどを通じてスタッフが現場で確認できます。

事業所がまだ小さくスタッフが少ないうちは不要かもしれませんが、ホームヘルプなどの訪問型の業務の場合は、行程の急な変更などが現場で確認、入力できるため非常に重宝します。

また、請求業務そのもののスケジュール管理も可能なソフトウエアもあります。

 

介護ソフトウエアの選定方法

 介護ソフトウエアは商品によって、大きく分けると2つの形態になります。

パッケージソフト型

CD-ROM等に入力されたプログラムを購入します。

現時点での制度に適応した内容になりますが、制度の改正においてはバージョンアップしていく必要があります。この場合は月々のメンテナンスサービスが販売会社に用意されているかで値段が変わってきます。パッケージソフトの場合は、複数の介護サービスの請求ソフトが初めから入っている商品もあります。

パッケージソフトのメリットは、通信環境を一時的に中断していても入力作業ができること。

また、個人情報などのセキュリティーが漏えいしにくいというところでしょう。

加えて、ソフトウエア会社が事業所に合わせて、請求ソフトをアレンジしてくれることもあります。

デメリットはパッケージ導入の費用が高くつきやすいことと、制度の変更などで多くの場合ソフトウエアの更新を自分で行わなくてはならないことになります。国保連への請求もご自分の事業所から直接行わなくてはいけません。

事業所のパソコンの故障などが起きると情報が損傷しますから、バックアップなどの対策が必要になります。 

ASP型

インターネット回線を用いて介護ソフトを利用します。

大きなメリットは、ソフトウエアの更新等はすべてソフトウエア会社の方で自動的に行ってくれることです。

また、導入するサービスによって価格が変動します。サービスの組み合わせにより比較的低価格から使用できるソフトウエアもあります。このため、小規模事業所や創業したばかりの事業所に使われることが多いです。月々の利用料金にメンテナンス費用を含んでいる商品と、オプションとして別価格で用意している商品と様々ですのでよく検討されると良いでしょう。

国保連への請求は、ソフトウエア会社に代理で依頼することも可能です。データの保管はソフトウエア会社で行われます。このためパソコンの故障等でもトラブルになりにくいこともメリットです。

デメリットとしては、通信環境の悪化や使用するパソコンのバージョンによっては、動きが悪くなることがあることです。特に事業所内でのパソコンのバージョンが古い場合は、要注意です。

また、セキュリティー対策としてパスワード管理などが重要になります。

 

介護ソフトウエアの導入コストについて 

介護ソフトウエアが開発された当初は、数百万するなど非常に高額な商品でした。

ところが、中小の介護事業者とソフトウエアを開発する会社の増加により、高額な商品から月々数千円での利用が可能なものまで、様々な価格帯のものが販売されています。

大規模な事業所の場合はパッケージ型のソフトを導入し、事業所用にアレンジを行っても良いでしょう。創業間もない小規模の事業所の場合は、まずは比較的低コストな介護ソフトウエアを導入し、ご利用者の増加やサービスの追加に伴い、多機能なソフトへの乗り換えを考えるのも一つでしょう。

パッケージソフトの場合は商品として購入する形になりますが、ASP型(クラウド型)のサービスの場合は、月々の利用料金を支払ってサービスを利用する手数料型になります。

どちらが有利ということはありませんが、会計処理での勘定科目が変わってきます。

コストも大切ですが、提供されるソフトウエアの質によってかなり使い勝手が変わってきます。金額面だけで選ぶと、後々苦労しますので注意しましょう。

 

介護ソフトウエアの減価償却方法について

ソフトウエアの減価償却年数

  1. 研究開発や販売用に作成されたもの 3年
  2. それ以外のもの 5年

 

介護ソフトウエアの場合は「2それ以外のもの」に当てはまると考えられます。このため、5年間の減価償却が可能です。

この場合、対象となるのは「パッケージソフト型」のソフトウエアです。勘定科目「ソフトウエア」として記載されます。

「ASP型」は、利用料を支払っての使用になるため「通信費」や「雑費」として勘定科目には計上されることが一般的です。

パッケージ型と言っても10万円以下の商品購入の場合は、「消耗品費」として計上するのが一般的です。

また、どちらのサービスでもメンテナンス費用などの支払いは「諸会費」「支払手数料」として計上されます。このため、介護ソフトウエアを減価償却する場合は、主に高額なパッケージソフトを購入した場合になります。

 

介護ソフトウエアの耐用年数について 

ソフトウエアの耐用年数は、介護ソフトウエアとして利用する場合は5年になります。

とはいえ、ソフトウエアはアップデートや更新を繰り返されるものですから、5年前のソフトウエアを更新もせず、そのまま使用し続けているという状態はほとんど考えられません。

ASP型の場合は、利用を続けていく限り更新されていきますから、耐用年数という概念には当てはまりません。

 

まとめ

ここまで介護ソフトウエアについてまとめてみました。

介護業界は慢性的な人手不足であり、効率的な業務を行うために介護ソフトウエアの導入を真剣に考えることは不可欠です。

ただし、ご自分の業務に適応しないソフトウエアを購入してしまっては、金額に関わらず不都合なことが多くなります。

ソフトでどのような業務を効率化したいのかを考える際に、【ASP型の介護ソフト「カイポケ」】の資料から考えてみてはいかがでしょうか。

この記事を読んで失敗のない介護ソフトウエアを選んでいただければ幸いです。

訪問介護事業を開設・開業する際に知っておくべきこととは?

高齢社会の中で、介護事業にビジネスチャンスを見出している方、その中でも訪問介護事業開業を考えている皆様。

訪問介護事業開設の際の手順や留意点に関して、しっかりと理解はできていますでしょうか。今回の記事では、訪問介護開設の際に知っておくべきポイントに関して詳しくご説明していきます。

一読してビジネス成功に役立ててください。

始まり

訪問介護事業開設・開業の前に

この章では、訪問介護事業に関する基礎的なことを説明します。

訪問介護とは

訪問介護とは、ご利用者が在宅で自立した日常生活を送れるように支援を行います。介護福祉士などの有資格者が、訪問介護員として、要介護者・要支援者の自宅を訪問し提供する介助サービスです。

介助内容には、入浴・食事・排泄などの身体介助と、掃除・洗濯・調理などの生活援助があります。

また、通院時の移動サポートなども行います。

訪問介護事業が他の介護事業と異なる点は、入所や通所施設とはサービス形態が異なるので、大規模な設備や広いスペースを用意する必要がないことです。

そのため、建設費及び施行費等がかからないため、初期投資が少なくて済み開業しやすいとされています。自宅の一角を、訪問介護事業所として開業している方もいらっしゃいます。

訪問介護事業には、介護保険に基づく事業ですが、障害者総合福祉法に基づく居宅介護事業という同じようなサービスがあります。

訪問介護事業開設・開業の手順

この章では、訪問介護事業の開設の手順を説明します。 

法人の設立

訪問介護事業を行うには、法人を設立する必要があります。法人形態には、株式会社・合同会社・NPO法人・社会福祉法人・医療法人があります。

各法人によって設立機関や、費用が異なりメリット、デメリットがあります。 

今回は、医療法人を例に、訪問介護事業を始めるまでの流れについて説明したいと思います。

 医療法人の設立の流れは以下の通りです。

  1. 医療法人化の意思決定
  2. 医療法人設立説明会への参加
  3. 医療法人設立相談・必要書類の収集
  4. 医療法人設立申請書原案提出(都道府県)
  5. 事前審査
  6. 医療法人設立申請書提出(道府県)
  7. 設立認可
  8. 登記申請(法務局)
  9. 登記完了届提出(都道府県)
  10. 訪問介護事業開始申請

一般的に医療法人の設立の認可が下りるまでには約6ヵ月かかります。 

すでに法人格をお持ちの場合は、「介護保険法に基づく訪問介護、介護予防訪問介護事業」という文章等が事業目的欄に入っているか確認してください。

事務所の設立

法人の設立が認可されたら、訪問介護事務所を設立しましょう。

事務所(事務室)は、訪問介護事業に必要な設備として定められています。賃貸借契約時には、契約者は法人名で行うことと、用途が「事務所」となっていることにご注意ください。

事務所の明確な区画は定められていませんが、事務作業を行うのに適しスペースが必要であり、利用申し込みの受付や相談に乗るスペースも必要となります。

相談スペースは、パーテンションを設置するなどプライバシーに配慮しましょう。

訪問介護事業所とそれ以外の事業を併設する場合は、事務スペースを別々にする必要があります。

また、アパートやマンションの一部屋を賃貸した場合は、トイレを事務所の「感染予防の手洗い設備」として共有が可能です。

しかし、ビルの一室を借り、ほかのご利用者との共有トイレの場合、「感染予防の手洗い設備」としての認可が必要になるかもしれません。

自宅に事業所を設置する場合は、管轄の行政区によって異なりますが、住宅スペースと事業所スペースが区切られていることが必要とされる場合があります。

人員の確保

事務所が設置できましたら、次は訪問介護事業を担う人員を確保しましょう。

人員に関しては「訪問介護事業の開設の手順」で詳しく述べますが、以下の人員が必要です。

  • 管理者
  • 訪問介護員
  • サービス提供責任者

人員は最終的に雇用できれば問題ありませんので、申請段階では雇用契約書を締結してください。

事務所備品の準備

次に、事務所備品の準備が必要です。

以下のような備品が必要で、申請段階で「いつでも事業開始可能な状態」にあらねばならず、確実に準備を行いましょう。

  •  机
  • 椅子
  • パソコン
  • 複合機プリンター
  • 相談業務用テーブル、椅子
  • 消耗品
  • 電話、FAX
  • 書棚
  • 金庫
  • 自動車や自転車
  • タイムカード 

 また、衛生に関する備品として、次のようなもの等が必要です。

  • 洗面台
  • 液体せっけん
  • 消毒液
  • タオル

指定申請書類の準備

訪問介護事業を開始するには、指定の申請書類を提出し認可を受ける必要があります。

そのための書類を準備しましょう。必要な書類は以下の通りです。

  • 訪問介護・介護予防訪問介護事業者の指定に関わる記載事項
  • 指定居宅サービス事業者、指定介護予防サービス事業者申請書
  • 添付書類 

詳細な書類内容は後述します。

指定申請書類は煩雑なため代行サービスの利用も考えましょう。

指定申請書類の提出

指定申請書類が準備できましたら、開設する事業所の所在地を管轄する行政区の配置する福祉事務所に提出します。

分からない場合は、事業所の所在地の近くの役所に問い合わせるか、管轄自治体のサイトで確認してください。

指定申請料は自治体で異なる場合があります。相場は2~3万円です。

指定を受け開業

申請から約30日で審査が行われ、認可されたら指定を受けます。

指定がされたら指定業者として公表されると共に、事業が開始できます。

訪問介護サービス事業者指定申請に必要な書類

ここでは、指定申請に必要な書類の一覧を紹介します。     

  1. 指定申請書
  2. 訪問介護・介護予防訪問介護事業所の指定に係る記載事項
  3. 定款の写し
  4. 登記事項証明書(3ヵ月以内のもの)
  5. 欠格事由に該当していない旨の誓約書
  6. 土地・建物の賃貸借契約書等の写し
  7. 事業所の平面図
  8. 事業外部・内部の写真
  9. 管理者・サービス提供責任者の経歴書
  10. サービス提供者責任者の資格証の写し
  11. 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  12. 就業規則
  13. 訪問介護員の資格証明書
  14. 運営規程
  15. 苦情を処理するための措置の概要
  16. 申請法人の資産証明書(直近の決算書など)
  17. 収支予算書
  18. 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  19. 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
  20. 損害賠償保険証の写し
  21. 雇用契約書
  22. 関係法令を遵守する旨の契約書
  23. 組織体制図
  24. 重要事項説明書 

※以上、指定申請担当窓口より提出を求められた書類の例です。

訪問介護事業の開設要件

この章では、訪問介護事業開設の要件の詳細について説明します。

法人

訪問介護事業を開設するには法人格が必要となります。法人格には、株式会社・合同会社・NPO・社会福祉法人・医療法人などがあります。

また、事業目的欄に「介護保険法に基づく訪問介護、介護予防訪問介護事業」の文言が明記されている必要があります。 

指定基準を満たしていること

訪問介護事業では、人員・設備・運営の3つの分野での基準を満たしていることが求められます。

人員基準

管理者

事業所の責任者で、もっぱら管理職務に従事する、常勤者1人が必要となります。 
ただし、職務上支障がなければ、同じ事業所内の他職務(サービス提供責任者)や、同じ敷地内の他事業所の職務との兼務が認められます。 資格は必要ありません。 

サービス提供責任者

常勤職員でもっぱら訪問介護業務に従事する者のうちから、1人以上のサービス提供責任者を配置する必要があります。 サービス提供責任者の資格要件は、次のいずれかの要件を満たすことが必要です。

  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 訪問介護員養成研修1級課程修了者
  • 訪問介護員養成研修2級課程修了者で3年以上の介護業務従事経験者
  • 看護師または准看護師

(訪問介護員養成研修2級課程修了者によるサービス提供責任者は経過措置であり、報酬減算となります)

ただし、ご利用者の人数が40人を超えるごとに、1人以上追加配置する必要があります。 
また、40人を超える場合は常勤換算での計算も可能となります。

常勤換算方の場合、以下の配置が必要です。

  • ご利用者数÷40(少数第1位を切り上げ)以上配置
  • ご利用者数が40~200人の場合は、計算した数より1引いた以上の人員が必要。
  • ご利用者数が200人~の場合、計算した数の2/3以上の人員が必要 

さらに、2015年から特例が加えられ、次の全要件を満たした事業所は、ご利用者数が50人または端数を増すごとに1人人員が必要とされます。

 

要件

  • 常勤サービス提供責任者3人以上配置
  • サービス提供責任者業務を主とする従事者を一人以上配置している

     (訪問介護員としてのサービス提供時間、月30時間以内)

  • サービス提供責任者が効率的に業務を行なうことができる
訪問介護員

常勤換算で2.5人以上配置する必要があります。

訪問介護員の資格要件は以下を満たすことが必要です。 

  • 介護福祉士
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 訪問介護員養成研修1級または2級課程修了者
  • 看護師または准看護師 等 

設備基準

訪問介護事業所の設備基準が法令にて定められています。

事務室や備品等は、必ずしも事業者の所有物である必要はなく、貸与であっても問題ありません。基準を簡単に説明すると、「事務スペース」と「相談スペース」が必要ということです。

ただし、それぞれの部屋の利用目的が果たせることと、区切りがあれば問題ありません。

それぞれに必要な広さは、常勤職員が3~4名の場合であれば、事務スペースがおよそ畳6枚分の広さ、相談スペースはおよそ畳3枚分の広さとなります。

また、事務所内の設備について、感染症の予防のために「手洗いの設備」設置が求められます。通常、住居用のマンションやアパートを賃貸すれば、「洗面所」といった水道設備があらかじめ備え付けられているはずですので問題ないことが多いです。

マンションの共用トイレなどの場合は、「感染予防のための手洗い設備」としての認定を受ける必要があります。

運営基準

運営基準は多く、細かく定められています。

大きく分けると、訪問介護サービスに関する基準と業務運営に関する基準があります。

いくつかピックアップして紹介したいと思います。各行政区によっても基準が異なりますので、サイトなどで確認してください。

訪問介護サービスに関する基準
  • 利用申込者に対するサービスの提供内容および手続きの説明および同意
    →利用申込者に対して運営規定の概要、必要事項説明書の説明を行い同意、交付を行うことです。
  • 要介護認定の申請に係る援助
    →被保険者の要介護認定にかかる申請について、利用申込者の意思を考慮し、必要な協力を行うことです。
  • サービス提供の記録
    →サービスを提供した際は、サービス提供日・内容について、居宅サービス計画に記載した書面またはこれに則る書面に記載することです。
業務運営に関する基準
  • 利用料などの受領 →法定代理受領サービスの場合、そのご利用者からご利用者負担分の支払いを受けます。
  • 介護などの総合的な提供 →入浴、排せつ、食事などの介護または調理、洗濯などの家事を総合的に提供し特定の援助に偏らないことです。
  • 苦情処理 →ご利用者や家族からの苦情に素早く・適切に対応することです。 実地指導により改善命令がだされたのち、改善が見られない場合は事業指定を取り消されてします恐れがあります。そのため、スタッフへの基準の周知や、日々の基準と実態との点検が必要です。

訪問介事業開設にいくらかかる?

この章では、訪問介護事業の開設にかかる費用の説明を行います。

会社設立費用

会社設立費は法人格によって異なりますが、10~30万円です。NPO法人は、設立費用はかかりませんが、書類作成などが煩雑なので代行サービスを利用する場合も多いです。代行サービスの相場は10~20万円です。

物件取得費

約50万円(契約料金+3ヵ月分家賃、駐車料金)

備品費等

40万円

自動車

150万円

人件費(約3ヵ月分)

常勤1名55万円

非常勤1名25万円

求人広告費

約10万円

指定申請手数料

約3万円 

その他(交通費、通信費など3ヵ月分)

約20万円

 

指定申請手数料は、各都道府県・自治体によって異なります。詳細は各都道府県などのサイトを確認してください。

最低でも約300万円必要となりますが、訪問介護事業は設備投資費用があまりかからない一方で、訪問介護員が多く必要であることから人件費がかさむ傾向にあります。

また、現在、介護業界は人手が集まりにくくなっているので、人員確保のための求人広告費等も同時にかさむ傾向にあります。このことを鑑みると、800万円は準備しておけば当面の運営は安心して行えるでしょう。

訪問介護事業開設・開業の資金調達方法

この章では、開業にあたり必要となる、資金の調達先に関しての情報を説明します。記載されている情報以外にも調達方法はありますので、ご注意ください。

公的な融資

まず、公的な融資を行っているところについて説明します。

日本政策金融公庫

新規介護事業を行う際に大きな融資を受けやすいのが、日本政策金融公庫です。政府が100%出資しています。

そのため、新規事業や会社の開業資金に比較的利用しやすくなっています。

また、無担保・無保証人でも融資が受けやすくなっています。

ただし、指定の様式での事業計画書を書く必要があり、計画内容によっては融資額が低くなることもあります。

新創業融資制度

新創業融資制度は、ソーシャルビジネス支援資金など定められた融資を利用する際に扱うことのできる無担保・無保証人の特例措置です。融資の要件は以下のようになっています。

創業の要件
  • 新たに事業を始める方
  • 事業開始後税務申告を2期終了していない方
雇用創出等の要件
  • 雇用の創出を伴う事業を始める方
  • 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
  • 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
  • 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

などの一定の要件に該当する方

(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)

自己資金要件
  • 新たに事業を始める方
  • 事業開始後税務申告を1期終了していない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認可能な方

ただし、「現在お勤めの会社と同等の業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。

新規開業資金

新規事業を始める方、事業開始後の資金を要する方向けの資金融資です。

要件としては、「雇用の創出を伴う事業」「現行の業種と同事業を始める方」などがあります。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。

女性、若者/シニア起業家資金

女性または35歳未満か、55歳以上の方で、 新事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象の融資です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。

なお、公的融資には、都道府県や市町村などの自治体が保証費用を補助するものもあります。

日本政策金融公庫の融資枠と比較すると小額ですが、比較的に融資を受けやすいメリットがあります。詳しくは、各自治体、都道府県のサイトを参照ください。

銀行等からの融資

介護事業に対して各銀行が貸し付けを行っています。近くの銀行やなじみのある銀行が相談・貸し付けを行っていないかを確認してみてください。

介護事業専門に融資を行っていなくても、現在介護事業は伸び盛りの事業のため、融資したいと考えている銀行が多いです。

補助金や助成金を受ける

厚生労働省や各自治体から、開業や人員の採用時に利用できる補助金や助成金があります。

訪問介護事業開業のよくある失敗例

この章では、訪問介護事業での失敗例を挙げますので、参考にして失敗しないようにしてください。

訪問介護員の人員配置

初期費用を少しでも安く抑えようと人件費を低くするため、結果的に訪問介護員の人員配置が基準よりも少なくなってしまうことがあります。

また、人員を集めようとしても、なかなか応募が来なかったり採用にいたらなかったりで、人手不足のままになり、そして、認可が保留・取り消しになってしまうということが起きます。

収益が上がらない

ご利用者がなかなか獲得できず、また訪問回数も増えず、なかなか黒字に転じるまでの収益が見込める状態にならないことが起きます。

介護事業の報酬は、サービス提供から3ヵ月後に入ってきます。開業当初から多くのご利用者を獲得することは難しく、それまでに出費がかさみ経営破綻してしまうことも十分ありえます。

訪問介護事業開設の留意点

この章では、訪問介護事業を開設する上での留意点を説明します。

訪問回数と収支

訪問介護事業は、訪問回数を上げなければ利益を出すことができません。

2017年度介護事業実態調査では、訪問回数が400回を超えると収支がプラスに転じています。

営業日を月に22日で計算すると日に約18回です。訪問介護員が3人とした場合、1人の訪問介護員が6回の訪問を安定的に実施できている状態となります。

この状態に至るまでは収支が厳しい状態であるとも言えるため、それまでの間の資金が必要ということになります。

2018年に介護報酬改定

介護事業は、中小企業や全産業の利益率と比較すると高めの水準にあると指摘されており、訪問介護の利益率は介護事業の中でも高い水準にあります。

しかし、それが故に2018年の介護報酬改定では、他産業ならびに他介護事業との適正化を図るために、報酬がマイナス改定になる恐れがあります。介護報酬改定の動向に注意して、開業の計画を立てて下さい。

ファクタリングサービス利用可能

介護報酬はサービス実施から3ヵ月後に入ってくるのが通常ですが、ファクタリングという資金調達方法を利用することで、全額ではありませんが、1週間以内の報酬受け取りが可能となります。

残りの報酬は3ヵ月後に振り込まれます。このサービスを利用することで、ご利用者数を開業当初から増やすのが困難な訪問介護事業を安心して継続・展開していきやすくなりますので、ご検討してみてください。

まとめ

社会の高齢化に伴って、在宅での介護ニーズは増えています。

しかし、訪問介護事業者は増えておらず、地域によっては減少しています。理由の多くは、訪問介護員がなかなか集まらないことにあります。

この記事を読んで、訪問介護員のたくさん集まる事業所運営を行ってもらえる方が、増えることを望みます。そして、高齢化にまつわる日本の課題を、解決に導いていただきたいと思います。

参考になりましたら、ぜひシェアをお願いします。

 

重度訪問介護における特定事業所加算とは?算定要件などを解説

重度介護者を受け入れる事業所によっては、得なくてはならない重要な加算のひとつである特定事業所加算。

今回は、重度訪問介護における特定事業所加算についてまとめていますので、是非参考にしてください。

コスト

重度訪問介護における特定事業所加算とは?

まず、重度訪問介護についてです。 対象になる方は、重度の肢体不自由または重度の知的障害もしくは精神障害により、行動上困難を有する障害者であって、常時介護を要する方が対象です。

障害支援区分が4以上であって、次の2つのいずれかに該当する方になります。

  1. 次の(一)(二)とのいずれにも該当する
    1. 二肢以上に麻痺等がある
    2. 障害支援区分の認定項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「支援が不要」以外と認定されている
  2. 障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等の合計点数が10点以上

※一部例外は除く

 

重度訪問介護における特定事業所加算も、居宅、訪問介護の特定事業所加算と同様、3種類の加算が設けられています。

種類、要件、単位数については下記にまとめておりますのでご参照ください。

 

この背景には、「施設」から「地域生活」への移行の推進があります。

重度介護者を受け入れる体制を整備していくことが、その人が地域で住みやすくなる第一歩でもあるため、居宅介護や生活介護だけでなく、こういった受け皿の整備も進められています。

しかし、実情として、それを支えるマンパワーの確保が十分でないのも現実です。

Ⅱ加算(Ⅰ)の(1)~(6)まで掲げる基準のいずれにも適合し、かつ、(7)又は(8)及び(9)のいずれかに適合する10%Ⅲ加算(Ⅰ)の(1)~(6)まで及び(10)に掲げる基準のいずれにも適合する10%

種類 要件 単位数
次に掲げる基準のいずれにも適合すること
  1. 全ての重度不問介護従業者に対し、重度訪問介護従業者ごとに研修計画を作成。当該計画に従い研修を実施すること
    1. 利用者に関する情報、サービス提供にあたっての留意事項の伝達又は、十行書における重度訪問介護従業者の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること
    2. サービス提供に当たっては、サービス提供責任者が利用者を担当する重度訪問介護従業者に対して、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書などの確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス提供終了後、担当する重度訪問介護従業者から適宜項目を受けること
  2. すべての重度訪問介護従者に対し、健康診断等を定期的に実施すること
  3. 緊急時等における対応方法が利用者に明示されていること
  4. 新規に採用した全ての重度訪問介護従業者に対し、熟練した重度訪問介護従業者の動向による研修を実施していること
  5. サービス提供にあたり、重度訪問介護従業者の24時間派遣が可能となっており、現に深夜帯も含めてサービス提供していること
    1. 重度訪問介護従業者の総数のうち、介護福祉士の占める割合が30%以上
    2. 又は、介護福祉士、介護職員基礎研修課程を修了した者及び、居宅介護従業者養成研修1級課程を修了した者の占める割合が50%以上
    3. 又は、前年度、もしくは算定日が属する月の前3か月におけるサービス提供時間のうち、常勤のサービス提供時間の占める割合が40%以上
  6. 全てのサービス提供責任者が、3年以上の実務経験を有する介護福祉士又は、5年以上の実務経験を有する介護職員基礎研修課程修了者、もしくは1級課程修了者であること
  7. 1人を超えるサービス提供責任者を配置することとされている事業所では、常勤のサービス提供責任者2名以上を配置していること
  8. 前年度、もしくは算定日が属する月の前3か月における利用者の総数のうち、障害程度区分5以上であるものの占める割合が50%以上
20%

重度訪問介護における特定事業所加算の届出

重度訪問介護における加算の届出についてですが、生活介護における人員配置体制加算などと同様に、その事業所の属する市町村に対して、特定事業所加算に関わる届出書の提出が必要です。

内容については各市町村サイトにエクセルファイルや、PDFファイルがありますので、そちらのフォーマットにそって入力、提出するようにしてください。

概ね、どの市町村も体制要件(上記要件の上位項目)や、人員要件、サービス提供責任者に関する要件について記載するところがあります。

漏れがあると加算算定が出来なくなりますので注意してください。 また、それぞれの要件について根拠となる、研修計画書、研修資料、資格証等の書類も提出が義務付けられていますので、各自研修などを実施した際は保管しておくようにしましょう。

重度訪問介護における特定事業所加算の注意事項

重度訪問介護における特定事業所加算のよくある質問について下記に紹介します。

質問1
特定事業所加算の要件にもある「従業者の技術指導を目的とした会議」とは何?

→基本的に、サービス提供の責任者が主催して、サービス提供する人全員が参加しなければなりません。

しかし、一度に全員が参加する必要はなく、何回かに分けて開催する形が推奨されています。定期的とは、おおむね月に1回です。

自治体によっては例外を認めている場合があり、24時間365日、サービス提供を行っている事業所に関しては、毎月行う必要はありません。

適宜、必要と思われるタイミングで開催する形で構わないとすることもあります。

質問2
特定事業所加算の要件にもある「当該利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項」とはどのような内容?

→まず大切になってくるのは「利用者のADL(日常生活動作)の状況や、それを遂行する意欲」です。

根本的に、どの程度介助が必要なのかをわかっていないと、適切なケアが遂行できないのは言うまでもありません。

必要な分だけ、必要な時に介助を行うことが、その人のQOLを最終的に高めます。 また、「利用者の主な訴えやサービス提供時間の特段の要望」についても、きちんと傾聴する必要があります。

重度介助者の多くは、介助に対して受け身な方が多く、この個別に合わせたケアの部分が欠落してしまう事業所も多いため、利用者の訴えについては、直接本人から聞けずとも、ご家族からきちんと聴取した上でサービス提供に従事する必要があります。

その他、家族を含む周辺環境や、前月のサービス提供時の状況など、変化がある事項については記録をとっておく必要がありますので、注意してください。

質問3
重度訪問介護において、事業所外(例えば車内)で介護を行う場合、ヘルパー以外の別の資格が必要?
→これについては別段資格は必要ありません。
質問4
重度訪問介護において、3時間未満のサービス利用は可能?

→原則的に、1日3時間以上が基本ですが、請求そのものは3時間未満でも可能です。

しかしながら、重度訪問介護において、3時間未満の利用を求める声はほとんどありません。ご家族の介護負担や、スタッフの介護効率などを鑑みると、3時間未満の利用は、両者ともにメリットがあまりありません。

まとめ

今回は、重度訪問介護における特定事業所加算について紹介しました。

重度訪問介護は、重度の障害者を支える地域や、これから訪れるさらなる高齢化社会において、最も重要視されるべきシステムのひとつです。

しかし、実際のところ受け皿は増えてもそこでの従業者数が充足していないのが現実です。

そのため、介護業界での人員確保や障害福祉サービスと介護保険を同時に利用できる事業所の増加などが課題ではないでしょうか。

事業者の皆様は、重度訪問介護における特定事業所加算についてどのようにお考えでしょうか。 参考になりましたらシェアをお願いいたします。

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