介護支援ブログ

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介護保険改正と介護報酬改定とは ~介護業界の成り立ちと未来~

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来たる2025年、団塊の世代が後期高齢者になることで、日本人口の4分の1、数にして2200万人は 75歳以上になるといわれています。

 

超高齢化社会を迎えることになる日本では、おのずと介護の必要性が示唆されており、介護職員処遇改善加算地域包括ケアシステムをはじめとした、様々な施策が考えられてきました。

 

また、2018年には介護報酬と診療報酬の同時改定が予定されており、大きく変化するであろう今後の介護の在り方について国としての見解が示されます。

 

今回は、将来現実になるであろう超高齢化社会と向き合う前に、今まで日本で行われきた施策を振り返りたいと思います。

 

 

 

 

介護保険制度はなぜ誕生したのか?

わが国の高齢化率は、90年代初頭から伸び率が加速し、それとともに家族にかかる介護負担が国民生活に大きな影響を与え始めました。

こうした状況を受け、「高齢者の介護を社会全体で支える」というしくみが模索され、2000年に年金、医療に加えた第三の社会保険制度として介護保険制度が誕生しました。

 

具体的には、40歳以上の国民が負担した保険料と公費を財源とし、介護が必要な人へのサービスを(原則)現物で給付するしくみです。

公的医療保険と比較した際の特徴としては、利用できる年齢を40歳以上とした点と、「介護が必要な状態」を公的に認定する(要介護認定)ことを利用要件とした点です。

 

 

介護保険制度改正と介護報酬改定の流れ

介護保険制度は、6年ごとの制度見直し、3年ごとの給付単価である介護報酬の改定が定められました。

このサイクルは、2012年度まで続きました。その間、介護保険の利用者数は急増し、制度開始から5年で給付費総額は3.6兆円から6.4兆円へと拡大しています。

 

  • 2006年度改正で「予防給付」サービス誕生

国は、社会保障財政への影響を緩和すべく、最初の制度改正となる2006年度に主に2つの大きな改革を行いました。

  • 1つは、軽度者である要支援認定者を1・2に分け、要介護にならないための「予防重視」の介護予防給付を設けたことです。
  • もう1つは、施設等の居住費・食費を保険給付から切り離し、利用者の所得等に応じて原則自己負担とした点です。

さらに、居宅介護、施設介護に加え第3の類型となる地域密着型サービスを創設、事業者指定の権限は市区町村が担うこととしました。

 

この予防重視と施設給付の見直しに加え、3年ごとの報酬改定も2003年度にマイナス2.3%、2006年度(2005年10月分含む)にマイナス2.4%と引き下げが行われました。

 

  • 2度目の改正を経てさらなる改革が進む

そうした中、リーマンショックによって景気が大きく後退します。

国は、景気対策の一環として2009年度の報酬改定をプラス3%とし、10月には現行の介護職員処遇改善加算の前身となる処遇改善交付金を設けました。

その後、2012年度には2度目の制度改正が行われ、地域密着型サービスに「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と、小規模多機能型に訪問看護を組み合わせた「複合型」が加わりました。ともに介護現場での療養ニーズの拡大を想定したサービスといえます。

 

ちなみに、2012年度改正では、介護保険財源が使われる地域支援事業に介護予防・日常生活支援総合事業が誕生しました。

これは、主に二次予防事業対象者に市町村が定める訪問・通所型の予防サービス、それに配食や安否確認などの生活支援サービスを組み合わせたものです。

注意すべきは、要支援1・2の人も利用対象(この段階では予防給付との併用可)となったことです。この要支援者へのしくみが、2015年度に誕生した「新しい総合事業」の原型となっています。

 

  • 初の3年後改正となった2015年度の改革

それまで6年ごとの制度改正となっていたサイクルが変わったのが、2015年度です。この年にいわゆる団塊世代が全員65歳以上となるのを受け、「重度化しても住み慣れた地域で暮らし続けること」を目指した地域包括ケアシステムの構築に向け、医療と介護の一体的な改革が行われました。介護保険制度に関連する主な変更点は以下のようになります。

 

  • 1)要支援1・2の人の予防給付のうち、予防訪問・通所介護を地域支援事業(新しい総合事業のうちの介護生活支援・介護予防サービス)に移行
  • 2)特別養護老人ホームの入居者を要介護3以上に
  • 3)一定以上所得者の利用者負担を2割に引き上げ(現役並み所得者の自己負担限度額もアップ)
  • 4)小規模型通所介護を地域密着型サービスへと移行(2016年4月より)

 

事業者側から見て、大きな変更となったのが1)です。

2017年4月までにはすべての市区町村での実施が義務づけられています。予防給付から移行する部分の受け皿は、それまでの予防訪問・通所介護の指定事業(現行相当サービス)に加え、基準を緩和したA型、ボランティアなど住民主体で行われるB型、短期集中での介護予防に特化したC型(他に訪問系では移動支援のD型あり)となっています。

サービス提供の主体は、市町村による指定(現行相当サービスなど)のほか、委託(A・C型)や補助(B型)と多様な運営形態となります。現行相当の報酬単価は予防給付のものを上限として市町村が決定できます。

 

なお、ケアマネジメントのしくみも変わり、従来の予防訪問・通所サービスのみを使う場合は、市町村事業による予防マネジメントとなり、現行相当サービス以外をマネジメントする場合はケアマネジメント過程も簡易なしくみでOKとなります。

一方、訪問看護や通所リハビリなど1つでも予防給付に残るサービスを使った場合には、従来とおり予防給付によるケアマネジメントとなります。

この制度の見直しに加え、5回目となる報酬改定も行われました。中重度の人への対応や介護職員の処遇改善にかかる部分は手厚くなりましたが、全体では2006年度以来のマイナス改定(マイナス2.27%)となり、重点化以外の部分はマイナス4.48%にいたります。

 

介護サービス別のこれまでの流れ

居宅介護支援 

2015年度の制度改正により2018年度から事業者の指定権限が都道府県から市区町村へと移行します。また、地域ケア会議が正式に介護保険法に位置づけられたことに合わせ、ケアマネが事例提供などに協力するよう努める旨の基準改定が行われました。

他にサービス提供事業者に対して個別サービス計画の提出を求めるという努力義務も設けられています。

 

報酬改定については、認知症加算独居高齢者加算が基本報酬に包括化され、その分基本報酬は引き上げられました。

また、特定事業所加算が2類型だったものが3類型となり、常勤専従のケアマネや主任ケアマネの配置を手厚くしたり、法定研修等による実習受入れ事業所となるなどの要件が加わるといった変更が見られます。後者については、ケアマネの研修体系やカリキュラムが変更になったことで、その受け皿強化の一つといえます。

一方、特定事業所集中減算の適用範囲が広がり集中率も引き下げられた点など、事業者にとって厳しい内容も見られます。

 

通所介護 

大きな改正点は、利用定員18人以下の小規模事業所が2016年度から地域密着型サービスに移行したことです(小規模多機能型や通常規模・大規模型のサテライト事業所は除く)。指定権限は市町村に移り、条例で市町村独自の人員、設備、運営基準の設定が可能です。

報酬改定では、他サービスと比較して基本報酬の引き下げ幅が目立ちます。特に地域密着型に移行する小規模型は9~10%程度の引き下げとなりました。その分、重度者比率などを要件とした中重度者ケア体制加算や、重い認知症者対応にかかる認知症加算を設けるなどの重点化策がとられています。

ちなみに、重度者が増える中での看護師確保を容易にするため、訪問看護等と連携して利用者の健康確認などを行なった場合、看護師配置基準を満たすものとする緩和も行なわれました。

また、介護者のレスパイト強化などに対応するため、延長加算が最大14時間未満まで拡大し、送迎時での送り出しケアをサービスの所要時間に含める改定も行われています。

 

訪問介護

2012年度の改定で生活援助の時間区分が短縮されましたが、2015年度改定では基本報酬全体が引き下げられました。また、旧ヘルパー2級修了者をサービス提供責任者(以下、サ責)として配置している場合の減算が1割から3割へと厳しくなっています。

一方で、特定事業所加算が従来の3類型から1つ増えて、所定単位数に5%を加算するIVが誕生しました。中重度者を多く受け入れたり、サ責を基準より手厚く配置した場合に取得できます。ただし、人手不足でサ責の確保が難しい状況もある中、一定以上のサービス提供規模がある事業所に対し、サ責の配置基準を緩和する策も設けられています。

もう一つの改定点としては、基本報酬の引き下げが抑えられた「20分未満の身体介護」について、日中におけるサービスが「頻回」でない限り重度者要件などがクリアできていなくても取得できることになりました。

 

訪問看護

訪問看護においても、訪問看護ステーションからの訪問にかかる基本報酬が引き下げられましたが、訪問介護や通所介護と比較して下げ幅は抑えられています。逆に、病院や診療所からの訪問については引き上げが行われました。これは急性期を脱した患者の早期の在宅復帰が進む中、在宅における重度療養ニーズに対応するための将来的な訪問看護従事者の増員を図ることが狙いです。

加えて、重度者対応の部分で加算による上乗せを図る方策も見られます。それが看護体制強化加算(月300単位)です。緊急時訪問看護加算や特別管理加算、ターミナルケア加算などについて一定の取得実績があることが要件となっています。2014年度の診療報酬改定では機能強化型の訪問看護ステーションが誕生しており、介護保険においても今後は拡充が予想されるサービスの一つといえます。

 

通所リハビリ 

リハビリ系サービスでは、生活機能の維持・向上の効果を上げるべく訪問・通所ともにリハビリ・マネジメントの強化が図られました。たとえば、医師や居宅ケアマネなども参加するリハビリ会議の実施などを要件として、より高い加算の取得が可能となりました。

なお、訪問指導等加算はマネジメント加算に統合され、在宅での生活を想定したリハビリの標準化も図られました。また、利用者の生活場面での具体的な行為の維持・向上について、明確な目標設定や実施方法などを定めた計画などを策定した場合に生活行為向上リハビリ実施加算が取得できます。さらに、認知症短期集中リハビリ加算については、認知症の状態に合わせて柔軟な対応を選択できる報酬体系としました。

この他、通所リハビリを「卒業」した後の社会参加活動への参加を要件とした加算も誕生するなど、全体的に利用者の実情に即した「切れ目ないリハビリ支援」を強化する方策が盛り込まれています。

 

高齢者住宅 

高齢者向け住宅には、有料老人ホームのほか、2011年10月に登録制度がスタートしたサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)、比較的軽費で入居できるケアハウスなどがあります。

こうした高齢者向けの住宅と介護保険の関係については、I.自宅と同じくケアプランを作成したうえで居宅介護サービスを利用するほか、II.物件側で介護サービスを一体提供する「特定施設入居者生活介護」の利用が考えられます。なお、サ高住がII.を行なうためには、有料老人ホームの定義に該当することが必要です。

II.においては、認知症ケアや看取りケアのニーズが高まる中、これらに対する加算が創設されたり(認知症ケア加算)、手厚くなったりしています(看取りケア加算)。

なお、II.については、集合住宅や事業所と同一建物に居住する利用者へのサービスについての減算が設けられています。これまで定期巡回・随時対応型サービスについては減算されませんでしたが、2015年度改定でこのサービスについても新たに減算が適用されることになりました。

 

福祉用具貸与

2015年度の基準改定で2つのしくみが設けられました。

1つは、複数の福祉用具を貸与する場合の価格の適正化です。福祉用具については、あらかじめ利用料を都道府県等に届け出る必要がありますが、セット(車椅子とその付属品など)で貸与した場合のコスト減による減額のルールも一緒に届け出ることで減額を可能とするしくみです。

もう1つは、福祉用具専門相談員の資質向上についてです。福祉用具専門相談員に対しては指定事業者による講習が実施されていますが、そのカリキュラムが2015年4月から10時間分の拡充がなされます。これに合わせて、現に従事している福祉用具専門相談員について、福祉用具貸与に関する必要な知識の習得および能力の向上といった自己研鑽に常に努めることとする規定が盛り込まれました。

  

介護保険の未来

介護保険制度については、2018年度に再度法改正を含めた見直しが予定されています。現在、財務省などは要介護2以下の人の生活援助の見直しや福祉用具貸与にかかる原則自己負担などの建議を行なっています。こうした点も踏まえて、すでに社会保障審議会・介護保険部会の議論がスタートしています。

また、同時期には介護報酬の改定も予定されていますが、診療報酬との同時改定にあたるため、医療側との改革と歩調を合わせたうえで「重度療養者へのケア」にさらなる力点をおく変更が考えられます。いずれにしても、2015年度改正の重点化・効率化という流れは今後もさらに続くことになりそうです。

 

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介護報酬改定について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

介護保険制度改正について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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