通所介護・通所リハ事業者の皆様の中でも関心の高い、サービス提供強化加算。
基準を満たすことで、サービスの質が保たれた事業所としての評価が受けられます。
今回はそのサービス提供強化加算について詳しく解説していきます。
事業所の運営にぜひご活用ください。
サービス提供強化加算とは?
サービス提供強化加算の概要
サービス提供強化加算は、サービスの質が一定以上保たれている事業所を評価するために、平成21年度より設けられた加算のことです。
介護福祉士資格を保持している者や常勤職員、勤続年数3年以上ある者を一定以上雇用していることが、加算の算定要件となります。
サービスの質の向上を図っている事業所を評価するとともに、離職率の低下やキャリアアップを促進することを目的として導入された加算です。
この評価の基準は国が定めていて、加算を得るためには、毎年3月に当該年度の雇用状況を都道府県知事へ申請しなければなりません。
評価基準を満たしていると認められた事業所は、サービスを利用する者すべてに対してサービス提供強化加算が算定されることになります。
サービス提供強化加算の背景と目的
その背景には、介護職員の安定的な確保が困難になっていることが挙げられます。
介護職は、他の職種と比較して賃金水準が低い、その専門性が評価されにくいなど、他業種と比べて離職率が高い状況にあります。
そのほかにも、職場の人間関係に問題がある、法人の理念や運営のあり方に不満をもっているなどが離職の要因となっています。
また、介護で働きたいという求職者も減少傾向にあり、慢性的な人手不足が懸念されています。
そのため、介護職員の処遇改善等を行い、安定的に人材を確保していくこと目的として、離職率の低下を防いだり、人手不足を解消したりすることに繋げていくことが期待されています。
平成27年度に行われた介護報酬改定において、介護職員に対する処遇改善への取り組みを一層強化するため、サービス提供強化加算を拡充する動きがありました。
介護福祉士の資格を有している者を多く配置している事業所への加算が、増額となっています。
例を見ますと、通所介護事業所において介護福祉士の割合が全体の40%以上配置されている事業所が最上位区分とされていましたが、改定してからは、介護福祉士が50%以上配置されている事業所に対しての加算が新設されています。
単位数
単位数については、要介護と要支援それぞれについて以下の通りです。
①要介護(通所介護・通所リハ)
(Ⅰ)イ 18単位/回
(Ⅰ)ロ 12単位/回
(Ⅱ) 6単位/回
②要支援(通所介護・通所リハ)
(Ⅰ)イ 要支援1 72単位/人・月
要支援2 144単位/人・月
(Ⅰ)ロ 要支援1 48単位/人・月
要支援2 96単位/人・月
(Ⅱ) 要支援1 24単位/人・月
要支援2 48単位/人・月
サービス提供強化加算の算定要件
それでは、サービス提供強化加算の算定要件について見ていきましょう。
さきほどの単位数と照らし合わせながら確認してください。
算定要件の前提条件として、人員基準を満たしていることと、定員超過がないことの二つがあります。
以上を満たした場合、通所介護や通所リハにおいては、下記に示す区分ごとの要件が満たされることによって、加算の取得に繋がります。
- (Ⅰ)イ・・介護福祉士が50%以上配置されている
- (Ⅰ)ロ・・介護福祉士が40%以上配置されている
- (Ⅱ)・・3年以上勤続年数のある者が30%以上配置されている
また、留意事項については以下のようなものがあります。
- 同一事業所において、介護予防訪問入浴介護を一体的に行っているところは、サービス提供強化加算の計算も一体的に行います。
- 勤続年数とは、各月の前の月の末日における勤続年数をいいます。
例えば、平成27年4月における勤続年数3年以上の者とは、平成27年3月31日時点において勤続年数が3年以上経過している者のことをいいます。 - 勤続年数の算定については、当該事業所においての勤続年数に加えて、同一法人が経営する他事業所、また病院や社会福祉施設等でサービスを直接利用者に対して提供していた期間も含むことができます。
- 指定通所介護を直接利用者に対して提供する職員とは、生活相談員や看護職員、介護職員と機能訓練指導員のことを指します。
- 指定通所リハを直接利用者に対して提供する職員とは、理学療法士や看護職員、または介護職員を指します。
ただし、1時間以上2時間未満の通所リハを算定している事業所で、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師がリハビリテーションを行う場合は、これらの職員も含まれます。
サービス提供強化加算のQ&A
この項では、厚生労働省が公開している、「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」に記載れている、サービス提供強化加算についてのQ&Aを要約と解説していきます。
URLを載せておきますので、参考になさってください。
問63
職員割合の算出については、常勤換算方法によって算出した3月を除く前年度の平均を
用います。
但し、前年度実績が半年に満たないところについては、届出日の含む前3ヵ月について、常勤換算方法によって算出した平均を用います。
新たに事業を開始した、または事業を再開した事業者については、4カ月目以降に届け出が可能となります。
加えて介護福祉士保有者または実務研修修了者、もしくは介護職員基礎研修課程修了者に関しては、各月の前の月の末日の時点で資格を有しているか、研修家庭を終了している者に限られます。
また届出を行った後についても、直近3カ月間の職員割合については、毎月継続して所定の割合を維持しなければなりません。
さらに、その割合について毎月記録を残し、所定の割合を下回った際は、届出を提出しなければならないとされています。
問64
サービス提供強化加算(Ⅰ)イとサービス提供強化加算(Ⅰ)ロの両方の要件を満たしている場合であっても、同時に取得することは認められていません。
この場合、上位であるサービス提供強化加算(Ⅰ)イを取得することとなります。
また、実地指導などによりサービス提供強化加算(Ⅰ)イの算定要件を満たしていないと判断された場合は、都道府県知事等が、支給された加算の一部または全額を返還させることができるとされています。
この場合、サービス提供強化加算(Ⅰ)イの算定要件は満たさないが、サービス提供強化加算(Ⅰ)ロは満たすというケースが考えられます。
その場合においても、一度サービス提供強化加算(Ⅰ)イの返還を行い、さらにサービス提供強化加算(Ⅰ)ロの加算取得のための届出を行う必要がありますので注意しましょう。
問65
特定施設入居者生活介護では、介護や看護職員の人員が基準を上回る部分について、上乗せ介護サービス費用として、利用者に費用の負担を求めることが可能とされています。
一方サービス提供強化加算については、介護福祉士等の職員割合など、質の高いサービス提供体制が整備されているかということについて評価され加算を受けることができるため、先の上乗せサービス費用とは別物として考えられます。
そのため、両者を同時に受けることは可能です。
まとめ
今回はサービス提供強化加算について、主に通所介護や通所リハに関する部分を取り上げて解説してきました。
算定要件も明確に決められていますので、見落としなく届出を行って、適正な加算が受けられると良いですね。
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サービス提供体制強化加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)