介護における加算や減算は、様々な種類があります。
介護事業者の皆様でもどのようなものがあるか把握することは困難を伴うと思われます。
今回の記事では、実務者研修修了者が勤める介護事業所において、取得できる加算について解説していきます。
人材要件を満たすことで加算に繋がるものもありますので、ぜひ参考になさってください。
実務者研修に対する加算とは
ここでは、実務者研修を修了した者を事業所が雇用した際、どういった加算が得られるかについて解説します。
初任者研修の受講時間が130時間であるのに対して、実務者研修は450時間と、長期にわたります。
一般的なところでは、事業所においてサービス提供責任者がホームヘルパー2級の資格しかない場合、減算の対象となってしまいます。
ここで期間についてですが、1日でも初任者研修修了者が業務に就いた場合、翌月に提供された全ての指定訪問介護について減算となるので注意しましょう。
ただし、月の途中に介護福祉士資格を取得するか、実務者研修を修了した者については、翌月から減算は適用されません。
月の途中でヘルパー2級課程修了者を異動させて、介護福祉士等のサービス提供責任者を新たに配置した場合については、1日以上という部分に引っかかるため減算の適用となります。
一方で、サービス提供責任者が介護職員基礎研修修了者や介護福祉士有資格者、また実務者研修修了者である場合については、減算の対象外とされています。
そのため、サービス提供責任者を行う者は、上記に示したように介護福祉士の資格を保持しているか、実務者研修等を修了している者が就くことで、通常の算定が可能になります。
次に、実務者研修を受講して実践的な知識や技術を習得した者を、事業所に一定数以上配置することによって、事業所に対して評価が行われる場合があります。
これは特定事業所加算といわれるもので、加算の算定を受けるには、要件を満たす必要があります。
計画的な研修の実施、会議の定期開催、文書等による指示およびサービス提供後の報告、健康診断の実施、緊急時における対応方法の明示などといった要件に加えて、人材要件があります。
特定事業所加算(Ⅰ)を算定する場合、事業所の介護職員のうち、常勤換算した者の3割以上が介護福祉士であるか、または5割以上が介護福祉士、実務者研修修了者、基礎
研修修了者、旧ヘルパー1級修了者のいずれかであることが一つ目の要件です。
次いで、サービス提供責任者に関して、実務経験が3年以上ある介護福祉士であるか、実務経験が5年以上あって実務者研修の修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者、旧ヘルパー1級課程修了者のいずれかであることがもう一つの要件となります。
実務者研修と初任者研修での違い
それでは、実務者研修修了者と初任者研修修了者ではどういった違いがあるのでしょう。
実務者研修修了者では、先述したような加算があることが分かりました。
一方、初任者研修修了者に対しての加算はあるのでしょうか。
先に示したように、サービス提供責任者は介護福祉士の有資格者であるか、実務者研修修了者等である必要があります。
初任者研修の修了者である場合は、事業所は減算の対象となってしまいます。
そのため、初任者研修の修了者を配置するより、実務者研修の修了者を配置した方が事業所にとってもメリットが大きくなります。
また介護福祉士を受験するにあたって、実務経験が3年以上であることとともに、実務研修修了者であることが義務付けられています。
そのため、実務研修修了者を配置することにより、将来介護福祉士を取得した職員を雇用するための礎を築くことになるでしょう。
それぞれの研修ではどのような内容が行われるでしょう。
まず初任者研修についてですが、旧ホームヘルパー2級の過程と同様であり、介護の基礎的な資格となっています。
従来は様々な研修や資格が存在していましたが、介護人材のキャリアパスをより分かりやすくして、人材の定着を図ることを目的としてこの初任者研修制度が設置されました。
研修内容は介護福祉士課程への連続性が考慮されており、講義と演習が一体的に展開されているという特徴があります。
ヘルパー2級よりもスクーリングの時間が大幅に増えており、その分実習時間については削除されました。
また、在宅介護と施設介護の両方について網羅しており、どちらの職についても対応できるよう配慮されています。
受講時間は130時間にわたり、これまでの介護の基礎的分野や社会福祉制度等に加えて、医療との連携や認知症の理解といった科目が新たに加わっています。
初任者研修では、受講生同士で食事や排泄といった実際の介助を想定した演習を行います。
講義で学んだ内容を基にして、演習を共に行うので、介助をする際にどういったこと
に注意していけばよいかなど、実践に即した内容となっています。
介護の基礎的な部分を身につけられ、実際の現場においても、利用者の安全に配慮できるというメリットがあります。
次に、実務者研修の内容についてですが、受講時間が初任者研修の130時間に対して、450時間と多く設定されており、初任者研修よりも濃い内容で学ぶことが可能となります。
社会福祉制度、認知症の理解、医療の知識、障害の理解、介護技術、介護過程などに加えて、痰の吸引や経管栄養、救急救命などといった医療的ケアについても学ぶことができます。
これは2015年(平成27年)より、介護福祉士がその業務として喀痰吸引等行うことが可能になったため、介護福祉士養成施設の課程において、医療的ケアについての教育を行う必要が出てきたためです。
講義形式で50時間以上学んだあと、演習が行われます。
喀痰吸引について、口腔を5回以上、鼻腔を5回以上、気管カニューレ内部5回以上となっています。
また、経管栄養について、胃ろうまたは腸ろうが5回以上、経鼻経管栄養が5回以上となっており、これに併せて救急蘇生法演習についても1回以上実施されるよう決められています。
可能な限り、実地研修や見学を実施することとなっており、現場で使えるようにより実践的な内容が求められています。
特定事業所加算の算定要件の中にも、口腔内の喀痰吸引等を必要とする利用者の割合が求められており、訪問介護事業所において、医療的ケアを実践できることが、加算の算定に繋がっていきます。
実務者研修では、幅広い利用者に対しての基本的な介護提供能力を修得することを目的としています。
さらに、新たな課題や技術等について、自分で把握していける能力の獲得が期待されています。
つまり実際の現場においては、サービス提供責任者等リーダー的役割を担う程度の能力を獲得することが期待されます。
実務者研修に関連する加算一覧
実務者研修に関する加算については、特定事業所加算のうち、(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。
まとめ
今回は、実務者研修に関する加算を解説しました。
初任者研修と比較して、実務者研修修了者の方が、事業所側も加算を受けられるなどメリットが多いことが理解できたと思います。
是非、今後の事業経営にお役立てていただけたらと思います。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)