今回は、機能訓練指導員に関して、所定の要件を満たすことによって修得できる、個別機能訓練加算について解説いたします。
個別機能訓練加算については、(Ⅰ)と(Ⅱ)がありますが、これは機能訓練指導員の配置の仕方等によって修得できる加算が変わるという特徴があります。
また、機能訓練指導員はどうやって資格を保持することができるのかなどについても解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
個別機能訓練加算の加算要件
個別機能訓練加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。
機能訓練指導員の配置の仕方や、リハビリを行う目的、また訓練の内容などによって変わってきます。
それぞれについて解説していきます。
個別機能訓練加算(Ⅰ)
- 単位数:46単位/日
- 目的:座る、立つ、歩く等の身体機能の維持と向上
- 訓練内容の選定:複数種類の機能訓練項目を準備し、項目を選択する際は機能訓練指導員が利用者を支援する。
- 人員配置:常勤の理学療法士等1名が機能訓練指導員のみとして従事。なお、提供時間内終日にわたり配置されていること。
- 実施の範囲:グループに分かれて行う。(具体的人数の記載なし)
- 実施者:機能訓練指導員等が実施
- 実施環境:記載なし
個別機能訓練加算(Ⅰ)の目的は身体機能の維持と向上となっており、自分でベッドから立ち上がる、車いすを自走するなど、単純な一つの行為を達成することが目標となります。
訓練の実施者については機能訓練指導員等となっており、理学療法士等の資格を持っ
た者でなくても、介護職員や生活相談員が行うことも可能です。
機能訓練に関して、助言をするような立場にあると言えるでしょう。
個別機能訓練加算(Ⅱ)
- 単位数:56単位/日
- 目的:①身体機能だけでなく、精神の働きも含んだ心身機能の維持と向上 ②ADL、家事、職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である活動 ③家庭や社会生活の中で役割を果たす「参加」など生活機能の維持と向上
- 訓練内容の選定:ADLだけでなくIADLも考慮し、可能な限り自立していけるような生活機能の維持と向上に関しての段階的な目標を設定する。
- 人員配置:機能訓練の実施する時間内に勤務し、機能訓練指導員のみとして従事する職員が1名必要。
- 実施の範囲:個別対応もしくは5名程度以下である。
- 実施者:機能訓練指導員が直接実施する。
- 実施環境:浴室設備や調理設備、備品等を備えており、実践的な環境
個別機能訓練加算(Ⅱ)の目的は生活機能の維持と向上とされており、例えば週に一度カラオケに出かけるなど、複数の行為が組み合わさった活動を達成する目標を設定する必要があります。
カラオケに出かけるためには、着替えて、整容を行って、カラオケの場所まで移動する、皆さんと交流するなどの一連の流れが組み合わさっていることが理解できると思います。
また、実施の範囲において、個別対応か5名程度以下と決められています。
そのため、グループで行われる個別機能訓練加算(Ⅰ)よりも、個別のニーズに即した内容の濃い訓練が実施されると解釈することができます。
施設の調理場を使って料理をするなど、実際の生活において役立てられるような内容となっています。
機能訓練で行ったことを、自宅に帰ってもできるような支援の在り方が求められるでしょう。
そして生活機能が維持・向上することで、社会との繋がりが持て、精神的にも明るくなるなどといったことに繋げていければ、なおよいと思われます。
機能訓練指導員になれる資格
ここでは、個別機能訓練を行うことができる機能訓練指導員について、資格を紹介します。
機能訓練指導員となれるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復士、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を持つ者が行えます。
ただし、看護師が機能訓練指導員として配置された場合、看護業務は同時に行うことができません。
機能訓練指導員として配置された看護師とは別に、看護業務を行う看護師を配置する必要があります。
なお、個別機能訓練加算(Ⅰ)については実施者が機能訓練指導員等となっており、上記に示した有資格者だけでなく、介護福祉士や生活相談員等が行うことも可能となっています。
機能訓練指導員の配置による違い
機能訓練指導員の配置の仕方によっては、受けられる加算が違うため、加算が受けられない場合があります。
機能訓練指導員が常勤の専従である場合、個別機能訓練加算(Ⅰ)の算定要件を満たすことになります。
必ずしも常勤専従の機能訓練指導員が訓練を実施する必要はありませんが、訓練を実施する時間帯には常勤専従の機能訓練指導員が配置されていなければなりません。
ただし、個別機能訓練計画の見直し等のため、機能訓練指導員が利用者の居宅を訪問しなければならない時は、プログラムに支障がない範囲において、配置時間として含むことが認められています。
また機能訓練指導員として、病院や訪問看護ステーションと連携して看護職員を充てることは認められていません。
一方非常勤の専従の場合は、機能訓練を実施する時間帯に勤務することが可能であれば、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定できることになります。
また、個別機能訓練加算(Ⅰ)において、常勤の理学療法士等が欠勤、あるいは遅刻や早退となった場合は、仮に非常勤の理学療法士等が配置されていたとしても算定が不可となります。
一方、個別機能訓練加算(Ⅱ)については、機能訓練指導員が実施時間内に勤務することができれば、遅刻や早退をしても算定は可能とされています。
次に、個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定している利用者に対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)に係る訓練を実施した時は、同一日であっても算定は可能です。
但し、個別機能訓練加算(Ⅰ)に従事した常勤専従の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算(Ⅱ)に係る機能訓練指導員としては従事できません。
別に機能訓練指導員の配置が必要となります。
それでは、なぜ機能訓練指導員の配置の違いによって、加算が変わってくるのでしょう。
これについては、個別機能訓練加算(Ⅰ)が身体機能の維持と向上を目的としているのに対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)は心身機能だけでなく、ADLやIADLへの働きかけ、社会参加の実現などといった、生活機能の維持と向上を目的としているという違いがあるからです。
個別機能訓練加算(Ⅰ)では目が届きにくく対応しきれない訓練内容や、個別や
少人数の訓練でないと効果が望めないような内容を行った場合、個別機能訓練加算(Ⅱ)で算定しようという考え方になります。
まとめ
今回は、個別機能訓練加算の加算要件について解説しました。
個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いについて理解できたと思います。
個別機能訓練加算(Ⅰ)では身体機能の維持と向上を目的としているのに対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)では生活機能の維持と向上を目的としています。
要介護者が、長年住み慣れた自宅での生活を継続できるよう、適切な機能訓練が実施されるようにしたいものです。
そして、それぞれの算定要件を満たすことで、正しく加算が受けられると良いですね。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)