加算や減算というと、様々な種類があるため、すべてを把握するということは、困難なことかと思われます。
今回の記事では、介護福祉士について着目し、介護福祉士が勤務する事業所で取得できる加算について解説していきます。
ぜひご参考になさってください。
介護福祉士の加算とは
介護福祉士における一般的な加算の一つとして、「サービス提供強化加算」があります。
これは、サービスの質が一定以上保たれている事業所を評価するための加算です。
加算を取得するためには人員基準を満たす必要があります。
加えて定員超過のないことが前提条件となります。
介護福祉士の資格を保持している者が50%以上配置されている場合、または40%以上配置されている場合、それぞれにおいて加算が算定されます。
両方該当する場合は、上位である方を算定することになります。
また3年以上勤続年数がある者を30%以上雇用していることも、加算の算定要件の一つとなっています。
このサービス提供強化加算は、介護福祉士という専門的な国家資格を保持している者を多く雇うことによって、サービスの質を向上させたり、キャリアアップを促進したりすることなどを目的として導入されました。
2015年(平成27年)に行われた介護報酬改定において、サービス提供強化加算を拡充する動きがあり、先述した介護福祉士が50%以上配置されている事業所への加算が新設されるなどしています。
このほかの加算としては、訪問介護における「特定事業所加算」などが挙げられます。
質の高いサービスを提供している事業所を評価するための加算です。
算定要件としては、計画的な研修を実施していることや、定期的な会議を開催しているなどの要件に加えて、人材要件もあります。
常勤換算した訪問介護員のうち介護福祉士の割合が30%以上であるか、又は50%以上が介護福祉士、実務研修修了者、基礎研修修了者、旧ヘルパー1級であることや、全てのサービス提供責任者が実務経験3年以上の介護福祉士であるか、実務経験が5年以上の介護福祉士、実務研修修了者、基礎研修修了者、旧ヘルパー1級であることなどが要件となります。
「介護職員処遇改善加算」も、介護福祉士に関する加算の一つです。
介護職員の職業定着を目的として創設された加算で、事業所が加算を取得するにはキャリアパス要件というものを満たす必要があります。
そのキャリアパス要件を満たすためには、事業所内における介護職員の経験年数や能力評価などに加えて、保有している資格についても大切なポイントとなります。
介護職員にとっては介護福祉士資格を保有していることが、キャリアアップに繋がるという仕組みになっています。
なぜ介護福祉士に加算するのか
介護福祉士についての加算を解説してきましたが、では、なぜ介護福祉士に対して加算されるのでしょうか。
その背景としては、介護職員の安定的な確保が難しくなっているという課題が挙げられます。
日本において、介護を必要とする高齢者数は増大する一方であり、今後もその数は増
えていくことが予想されています。
2015年時点で、65歳以上の高齢者人口は3,395万人ですが、2042年には3,878万人とピークを迎えると予測されています。
75歳以上の高齢者についても、2015年の1,646万人にとどまらず、2055年には2,401万人にまで増加することが見込まれています。
一方で介護職については、他業種と比較して賃金水準が低いことや、その専門性が評価されにくいために、離職率が高かったりするなどの課題を抱えています。
このような課題を要因として、介護の分野で働きたいという求職者も減少傾向にあるなど、慢性的に人出が不足しているという現状があります。
上記のような背景を基にして、介護福祉士に対して処遇改善等を行うことによって、安定的に人材を確保していこうという目的があります。
例えば賃金水準については、介護職員処遇改善加算などをつけることで、他産業の給与水準に追いつけるよう改善を図るなどしています。
また、離職率が高いことに関しては、介護職へ就職した者が安心して働きやすいと感じられるように、職場環境を整えていこうという動きがあります。
キャリアアップ制度などによって、昇給や昇格の仕組みを透明性あるものにしていることもその一つでしょう。
そうした現状の改善によって、より多くの者が介護職を目指すきっかけになり、また、就職した者が一つの事業所に定着して、長期にわたって勤めていくことが期待されます。
もう一つは、専門的な国家資格である介護福祉士を有している者を多く配置することによって、事業所のサービスの質を一定以上に保ちたいということがあります。
介護福祉士を保持していない者も介護職員として勤務することは可能でありますが、職員の介護の質については、事業所に一任されており、その知識や技術などについて個人差がみられます。
しっかりと研修等を行うことによって、知識や技術などの習得度を確認している事業所もあれば、先述したように人手不足などの理由からそういった技術等の確認を行うことができず、個人個人によって異なる介護方法を行っているといったケースも考えられます。
例えば、特別養護老人ホームなどの施設などにおいて、誤嚥しないような食事摂取の姿勢がきちんととることができていないなど、単純に介護職員の知識や技術不足などから、高齢者を事故に巻き込むような例もみられています。
また、入所している高齢者に対して、暴言や暴力を振るうなどの事件も、報道によって明らかにされてきています。
介護職員の質の低下が懸念されています。
介護福祉士は大学や専門学校等において、専門的かつ体系的に介護等について学んでおり、また実際の施設等で行う介護実習を通じて技術を体得したり、知識をさらに深めて疑問を解決したりするなどの過程を経ています。
そのため、そういった専門的な知識や技術を有している介護福祉士が事業所内に一定数以上いることで、上記のような事故を防ぐとともに、介護の質を上げていくことが期待されます。
場合によっては、介護福祉士が資格を持たない介護職員に対して、正しい介護の技術等を教えることで、事業所全体の介護の質を高めるということが期待されます。
またそういった事業所を評価する仕組みがあることで、事業所側も積極的に介護福祉士を採用しようという試みに繋がります。
サービス業種別、介護福祉士に関する加算一覧
ここでは、介護福祉士に関する加算について、サービス業種別ごとにみていきます。
訪問介護
特定事業所加算(Ⅰ)
介護職員初任者研修過程(訪問介護2級課程)修了者のサービス提供
責任者を配置する事業所への減算
介護職員処遇改善加算
通所介護
サービス提供強化加算(Ⅰ)
訪問入浴介護
サービス提供強化加算(Ⅰ)
通所リハビリテーション・認知症対応型通所介護
サービス提供強化加算(Ⅰ)
小規模多機能型居宅介護複合型サービス
サービス提供強化加算(Ⅰ)
特別養護老人ホーム
サービス提供強化加算・日常生活継続支援加算
グループホーム・介護老人保健施設・短期入所生活介護
サービス提供強化加算(Ⅰ)
訪問看護
看護・介護職員連携強化加算
障害福祉サービス
福祉専門職員配置等加算
以上のような加算があります。
まとめ
今回は介護福祉士に関する加算を解説してきました。
サービス業種別で様々な加算があり、また、なぜ介護福祉士に加算がされているのかの理由についても理解が深まったと思います。
今後も介護福祉士に関する加算をこまめにチェックして、正しく加算の算定が受けられるようにしましょう。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)