個別機能訓練加算の記録とは
個別機能訓練加算とは、通所介護において所定の要件を満たし、利用者の状況に応じた個別機能訓練を行った場合に算定される加算のことをいいます。
利用者ごとにアセスメントを行い、目標設定や計画を作成し、その結果を報告する義務があります。
この加算には2種類あり、個別機能訓練加算Ⅰと、個別機能訓練加算Ⅱが存在します。
それぞれ算定基準が異なりますので、確認してください。
参考までにこちらも参照してみてください。
http://www.kaigo-shien-blog.com/entry/2017/02/20/102734
この加算を算定するにあたり、いくつかの記録が必要になってきますが、各書類がどのようなものかを紹介していきます。
居宅訪問チェックシート
個別機能訓練を提供開始前に、必ず聴取・記載するのがこの「居宅訪問チェックシート」です。
このチェックシートは、いわば面接を通して、その人がなぜ個別機能訓練を必要としているのかを浮き彫りにするために用いるものです。
利用を開始する理由は人それぞれですが、その多くは利用者のご家族が、介助量を減らしたいというケースが多いです。
つまり、利用者本人はいまいち乗り気ではないケースが多々あります。
そのような場合に、なんとなく個別機能訓練を受けてしまっている、提供してしまっている、という怠惰な相互関係を未然に防ぐ意味合いもあります。
内容には主に3項目あります。
- ADL項目
- IADL項目
- 基本動作項目
上記3項目について、それがどの程度の介助量なのか、必要性はあるのか、どんな環境で行っているのかについて記載します。(ADL,IADLについては後述します)
興味・関心チェックシート
こちらは、その利用者がどんなことに深く関心を寄せているのかついて聴取するものになります。
よく似たものに、リハビリ専門職種が用いる、COPM(Canadian Occupational Performance Measure)や、ADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice)といった、生活動作聴取のためのキットがありますが、そちらを簡略したものになります。
内容は主に、具体的な生活行為が書かれており、それを「しているのか」「してみたいのか」「興味があるのか」の3つの中から選択し、具体的に何を目標にしているのかを傾聴していきます。
実際全ての項目を聴取していると、多大な時間を要しますので、会話の中から聞き出せるような、聞き手側のスキルもある程度求められます。
実際の訓練内容(実施時間、訓練内容、担当者など)の記録
個別機能訓練加算の算定のためには、個別機能訓練計画書(後述します)が必要になってきます。
その計画書の中に、実際の訓練内容についての記載や、訓練時間、頻度、留意点、
主な実施者について記載する必要があります。
こちらについては、ケアマネジャーが記載したり、担当の理学療法士または作業療法士が、記載したりすることがほとんどです。
個別機能訓練計画書
先述の通り、個別機能訓練加算算定にあたり必要になるのがこの個別機能訓練計画書です。
利用者の心身機能、身体構造、個人背景に加えて、どのようなリハビリが必要で、どの程度介入する必要があるのか、その利用者に合わせた個別の計画書になります。
通所介護計画書
個別機能訓練計画書と似た形式になりますが、訓練プログラムとは、どういったケア方針のもと、どんな内容を行う予定にしているか、その期間について記載します。
その他、長期目標や短期目標も合わせて記載し、利用者に合わせた個別の介護計画書を作ります。
個別機能訓練加算、通所介護計画書ともに、利用者をはじめ、ご家族に説明を行った上で、同意の署名をもらう必要があります。
計画書に必要な記録用紙
上記に挙げた計画書において、計画書を完成させるために必要なものがあります。
それが、個別機能訓練計画書の項目に挙げられる「個別機能訓練加算Ⅰ」「個別機能訓練加算Ⅱ」という項目です。
こちらについては、どちらを算定するのか、もしくは両方算定するのかによって、計画書の量も変わってきますので注意してください。
仮に両方とも算定する場合は、個別機能訓練計画書Ⅰ、Ⅱともに記載する必要がありますので注意してください。
記録様式の一覧
居宅訪問チェックシート
このチェックシートで注意すべき点は、ADLとIADLの項目だけにとらわれないという
ことです。
まず、ADLとは、Activities of Daily Livingの略で、日常生活動作を指します。
ここでいう日常生活動作とは、食事・排泄・入浴・更衣・整容の5大ADLが挙げられます。
居宅訪問チェックシートでは、この5大ADLに移乗という項目を足して、6つの項目の記載が求められています。
では、IADLとは一体何なのでしょうか。
IADLとはInstrumental activities of daily livingの略で、手段的日常生活動作をさ
します。
手段的日常生活動作とは、簡単に説明すると、セルフケア以上の在宅生活で必要なことです。
例えば、調理、洗濯、掃除などの家事動作もこのIADLに含まれます。
このADL、IADLの項目だけにそって、自立しているか、介助なのかを分別していると、なぜこの人が、ADL動作に介助が必要なのかを見落としてしまいます。
そのため、介助が必要と判断された場合、必ずなぜ必要なのかについて詳しく考察をする必要があります。
こちらについてはリハビリ専門職の中でも、作業療法士が、分析を得意としていますので、事業所内に作業療法士が勤めている場合は積極的に相談をしてみてください。
興味・関心チェックシート
先述しましたが、この興味・関心チェックシートは、全部で50項目もあり、訪問時間内に全てを興味があるのか、ないのか聴取することは不可能です。
そのため、全てを聴取する姿勢ではなく、あくまで日常会話の中から、自然な流れで聞き出すということが重要になってきます。
こちらは、本人だけでなく、ご家族を巻き込みながら実施すると短時間で多くの情報が得られますが、最初はうまくいかないことが多いと思います。
聞き手の傾聴スキルが求められますので、少しずつ練習していく他ありません。
個別機能訓練計画書及び通所介護計画書
これらの計画書で注意しなければならないのが、長期目標と短期目標についてです。
よくあるミスが、長期目標の設定期間と短期目標の設定期間の逆転現象や、短期目標なのに、明らかに設定期間が短いなど、利用者の評価が出来ていないケースです。
こちらは新人に多く見受けられますので、訪問支援経験が浅い方々は注意するようにしてください。
例えば、長期目標→ズボンを自分で上げられる。 短期目標→排泄動作が自立する。と記載してしまうと、長期と短期の区別が全くできていません。
読み手側からすると理解に苦しむ内容になってしまいますので、注意してください。
まとめ
今回、個別機能訓練加算に必要な諸記録について紹介させていただきました。
昨今、リハビリテーション業界において、目標設定等支援管理シートなど、期限までに記載しなければ減算になるものが増えてきていますが、こういった個別機能訓練加算については、施設の状況に応じて、加算の種類を選択でき、かつ、書類自体もサービス提供をすれば書くことが出来るため、職員はさほど負担にはなりません。
また、計画書の量も多くもなく、利用者にきちんと説明ができて、かつ、利用者も何をされているのか書面で残してもらえるという点では、Win-Winの関係を作れる書類といえます。
リハビリテーション職は、徐々に訪問看護、介護の現場に職域を広げています。
こういった個別機能訓練加算については、リハビリ職増加に伴い、また変化するとは思いますので、関係事業所は、しばらく注視しておく必要がありそうです。
参考になりましたらシェアのほど宜しくお願いします。
個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)