住み慣れた地域での在宅生活を支援するため、通所介護(デイサービス)においても、利用者の状況に合わせた個別のリハビリの重要性が高まっています。個々のニーズにあったリハビリを行うと、個別機能訓練加算が算定できることは皆様ご存知かとおもいます。では、どのような手順で、どのようなリハビリを行えば算定できるのでしょうか?
この記事では、機能訓練加算Ⅰについて、概念や算定要件を詳しく説明し、Ⅱとの違いや、Ⅱとの併用についても説明したいと思います。
通所介護において個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを適切に算定し、経営・雇用の安定化を目指したい介護事業者の皆様は、ぜひこの記事をご覧ください。
個別機能訓練加算Ⅰとは?
概念
厚生労働省令では、
個別機能訓練加算(Ⅰ)は、常勤専従の機能訓練指導員を配置し、利用者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう複数メニューから選択できるプログラムの実施が求められ、座る・立つ・歩く等ができるようになるといった身体機能の向上を目指すことを中心に行われるものである。
[出典:厚生労働省 通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について]
と、個別機能訓練加算Ⅰについて示しています。
これを簡単にまとめると、
「個別機能訓練加算Ⅰは、常勤で専従の機能訓練指導員(※)が利用者の日常生活の充実を目指して、生活基本動作(ADL)の維持・向上を目的として、個別訓練計画に沿いながら行う訓練につく加算である」ということになります。
※機能訓練指導員とは、理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のことを指します。以下の文でも同様。
適用サービス
通所介護(デイサービス)
サービス単位数
46単位(都道府県知事に届け出た利用者に対して、機能訓練を行った場合)
平成27年度の改正による変更点
- 単位数が42単位→46単位に変更されました。
- 個別機能訓練計画を策定する際、必ず利用者を居宅訪問した上で完了させることが義務付けられました。また、その後には3カ月おきに利用者の計画を見直すために居宅訪問すること、その際に利用者やその家族に機能訓練内容や現在の状況を詳しく説明をしなければならなくなりました。
それでは、個別機能訓練加算Ⅱとの違いは何でしょうか?
個別訓練加算Ⅰ・Ⅱの違いは何?
概念の違いは?
個別機能訓練加算Ⅱについて、厚生労働省令では
個別機能訓練加算(Ⅱ)は、専従の機能訓練指導員を配置し、利用者が居宅や住み慣れた地域において可能な限り自立して暮らし続けることができるよう、身体機能の向上を目的として実施するのではなく、①体の働きや精神の働きである「心身機能」、②ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」、③家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加」といった生活機能の維持・向上を図るために、機能訓練指導員が訓練を利用者に対して直接実施するものである。
[出典:厚生労働省 通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について]
と示しています。
これを簡単にまとめると、
「個別機能訓練加算Ⅱは、専従の機能訓練指導員が、単なる身体機能の維持向上だけでなく、地域や家庭で人としてより質の高い生活を送ることを目的として、利用者個々のニーズに合った生活機能に対するリハビリを、個別機能訓練計画に沿いながら行うことに付加する加算である。」ということになります。
すなわち、個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ概念の違いは、「身体機能の維持・向上を目的とするもの」と、「生活機能の維持・向上を目的とするもの」の違いということになります。
サービス単位数の違いは?
56単位(都道府県知事に届け出た利用者に対して、機能訓練を行った場合)
→個別機能訓練加算ⅠよりもⅡのほうが、単位数が多いです。
個別機能訓練加算Ⅰの算定要件とは?
個別機能訓練加算Ⅰを算定するために、必要な条件は何でしょうか?厚生労働省令に記載されている内容と、実際の具体的な例を交えて説明したいと思います。
人的要件
通所介護を行う時間帯を通して、
- 専従で機能訓練指導員として動く
- 常勤
- 理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師または、あん摩マッサージ指圧師
- 1名以上配置
上記1~4すべての条件を満たすように人員を配置する必要があります。
→専属で従事する常勤の職員が必要なため、非常勤の職員では要件を満たすことはできません。さらに、看護職員が機能訓練指導員となる場合には、看護師であっても機能訓練指導員として算定されるため、その日の看護職員としての人員基準の算定には含まれません。
個別機能訓練計画に関する要件
機能訓練指導員等が、利用者の居宅を訪問した上で利用者や家族、その他様々な環境の状況を加味して、個別機能訓練計画を作成する必要があります。その後も少なくとも3ヶ月に1回は利用者の居宅を訪問した上で、利用者や家族に対して、機能訓練の内容や状況を説明し、訓練内容の見直しを行わなくてはなりません。
→利用者の状況を把握するため居宅訪問チェックシート等を用いて、誰がチェックをしても同じように評価が出来るようにする必要があります。さらに、少なくとも3か月に1回は個別機能訓練計画の評価・見直しを行う必要があります。その上で居宅を訪問し、その内容を利用者や家族に説明し、サイン等で同意を得たことを明確にしておく必要があります。
個別機能訓練計画の作成・評価に関する要件
・機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活指導員、その他利用者に関わる職種が協働して、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、計画に基づいた機能訓練を行っている必要があります。
→居宅等で得た情報も加味して、関係職種が協働しながら、利用者ごとに、目標・実施内容・実施時間等を記載した個別機能訓練計画を作成する必要があります。そして、これにもとづいて訓練を行い、実施方法・効果・時間等の評価を利用者個々に記載する必要があります。
個別機能訓練実施に関する要件
・実際に個別機能訓練を実施するときには、何種類かの機能訓練のメニューを準備します。メニューの選択には利用者のADLや生活の状況に合ったものを一緒に選ぶなど、意欲が湧くように配慮して心身の状況に応じた機能訓練を行う必要があります。
→数種類の機能訓練の項目を用意し、利用者本人にどの訓練を行いたいかを選択してもらったうえで、選択された項目ごとのグループにわけて活動を行う必要があります。個別機能訓練加算Ⅰでは、グループ人数の制限は設けられていません。
個別機能訓練加算Ⅰ、Ⅱの併用算定はできるの?
ここまで紹介した通り、個別機能訓練加算ⅠとⅡは基本的な目的や趣旨の違う加算となります。
そのため、個別機能訓練加算ⅠとⅡは併用算定することが可能です。
しかし、併用算定する場合は、個別機能訓練加算ⅠとⅡそれぞれに個別機能訓練計画が必要です。そして、同日に個別機能訓練加算ⅠとⅡを算定したい場合は、同じ機能訓練指導員では算定できないため、注意が必要です。(個別機能訓練加算Ⅰは、専属の機能訓練指導員が必要なため、個別機能訓練加算Ⅱの指導員とかけ持つことはできないからです。)
個別機能訓練加算Ⅰの計画書制作の手順
それでは、実際に個別機能訓練加算Ⅰの計画書を作成する手順を説明していきます。
①利用者の日常生活や、ニーズを把握する。
まず居宅を訪問して、利用者の居宅での生活状況(ADL、IADL、起居動作等)を確認します。ニーズ、ADL、IADLの確認にはチェックシートを利用し、誰が訪問してももれなく同じ項目をチェックできるようにすると効率よく計画の作成が行うことができます。
かかりつけの医師からは、利用者のこれまでの医療提供の状況について情報を得た上で、訓練にあたっての注意事項はないか確認します。
介護支援専門員からは利用者や家族の意向、総合的な支援方針、目標(長期・短期)、問題の有無、サービス内容などについて情報を得ます。
②個別機能訓練開始時におけるアセスメント・評価、計画の作成、説明・同意等
①で把握した利用者のニーズと居宅での生活状況を参考に、多職種協働でアセスメントと評価を行い、個別機能訓練計画を作成します。計画書には、目標、実施プログラム内容、実施時間の記載が必須です。
個別機能訓練計画は、通所介護においては、個別機能訓練計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載することで、個別機能訓練計画の作成に代替することができます。
また、居宅サービス計画、通所介護計画及び短期入所生活介護計画と連動して、これらの計画の内容にそった、個別機能訓練計画を作成することが重要です。
③利用者や家族への説明と同意
個別機能訓練計画の内容については、利用者やその家族に分かりやすく説明を行い、同意を得ることが必要です。その際には、個別機能訓練計画の写しをお渡しする必要があります。
上記を行ったうえで、実際に個別機能訓練を実施・評価します。そして、3か月ごとに1回以上(利用者の心身の状態変化等により、必要と認められる場合はその時に)、個別機能訓練計画の進捗状況等に応じて、利用者やその家族の同意を得た上で、訓練内容の見直し等を行い、同じように文章を交わす必要があります。
おわりに
この記事では、個別機能訓練加算Ⅰについて、基本的な概念から、計画の作成までの内容を紹介してきました。これならご自身の事業所でもできる!と思っていただけましたら幸いです。通所介護事業所の皆様は、日々、利用者様一人一人の状況を見ながら、レクリエーションや機能訓練の方法に心を砕いておられることと思います。その思いが、加算という形で評価されると、さらにモチベーションも上がるのではないでしょうか?
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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