通所介護施設において個別機能訓練加算の取得はとても重要となります。どのような条件でこの加算を取得できるのか適切に理解することが望まれます。経営、雇用の安定化を目指したい介護事業者の皆様の参考になればと思います。
個別機能訓練加算とは?
通所介護施設(デイサービス)にて看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などが施設の利用者個々人の状況に適した個別機能訓練計画をもとに訓練を行った場合に算定することができる加算のことです。
算定までの流れ
まず、利用者の状況に合わせた個別機能訓練計画書を作らなくてはなりません。算定までの流れは以下のようになります。
- 算定のためにはまず、利用者の身体状況の把握、居宅での過ごし方や今後どんな生活を送っていきたいかなどを知る必要があります。利用者本人やその家族、ケアマネージャーに聞くことでより良い情報収集が可能です。
- 次に、情報をもとにアセスメント(分析・評価)し、計画書を作成していきます。この時、多職種で行うことが原則になっているので一人で行わないように気をつけてください。計画書は厚生労働省から通達されている様式があります
- 計画書が完成したら利用者と家族への説明を行います。この時大事なこととしては、同意と署名をもらうことです。この作業は後回しにされ、結局忘れてしまう職員もいますが、加算に必要なので都度もらうよう心がけましょう。その後コピーを取り、利用者およびその家族にそのコピーを渡す必要があります。
- 同意をもらうことができたら、個別機能訓練計画書に沿って訓練を実施していきます。実施後には訓練内容や日時、担当者のサインを忘れずに記録しておきましょう。
- 三カ月に一度、利用者の身体機能を評価します。利用者の身体状況に変化があった場合などには訓練内容の見直しが必要となります。
このように個別機能訓練計画書を作成していきます。
個別機能訓練加算ⅠとⅡ
個別機能訓練加算には、「個別機能訓練加算Ⅰ」と「個別機能訓練加算Ⅱ」があります。
加算を算定できる職員は、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師に限られます。
◎個別機能訓練加算Ⅰは利用者の選択した機能訓練を通して身体機能の維持することを目的としています。機能訓練とは、しばしばリハビリと間違えられることもありますが、全くの別物です。機能訓練は機能訓練指導員(看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師)が実施する利用者の身体機能の減退防止、つまりは維持を目的とされたものです。
算定には週一回以上、5人ほどのグループに分かれて個別機能訓練計画の実施することが必要で、単位数は1日42単位です。単位数は、1単位20分として計算します。
また、常勤の機能訓練指導員を1名以上配置する必要があります。なお、看護職員がこの加算を算定したい場合は、看護職員としては人員には含まれません。
◎個別機能訓練加算ⅡはADLの能力とIADLの能力を維持することを目的としています。
ADLとは日常生活動作を意味します。日常生活動作とは例えば、食事をする、入浴する、排泄する等の生活するために行う行動のことを指します。
IADLとは手段的日常生活動作を意味します。先ほどのADLより複雑な動作であり例えば、金銭管理や服薬の管理、買い物等の行動のことを指します。
算定には、週1回以上5人以下の小集団で個別機能訓練計画を行う必要があり、単位数は1日50単位です。
個別機能訓練加算ⅠとⅡは算定内容が異なる部分が多々あるため、初めは難しく感じるかもしれません。下記の表で具体的な算定要件をご確認ください。
個別機能訓練加算ⅠとⅡの算定要件の違いについて
個別機能訓練加算ⅠとⅡの要件の違いがあり、混乱しやすいため表にまとめたので、参考にしてみてください。
個別機能訓練加算Ⅰ |
個別機能訓練加算Ⅱ |
・目的 |
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利用者の自立の支援と日常生活の充実が目的です。 |
身体機能回復を主とする目的とした訓練ではありません。利用者個々人現在の身体機能を活用して、生活機能の向上、維持を目指すものです。 |
・単位数 |
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42単位/日 |
50単位/日 |
・人員配置 |
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サービス提供時間を通して勤務し、機能訓練指導員のみに従事する専従常勤が1名以上必要です。 非常勤の機能訓練指導員が配置される曜日は、加算対象とはなりません。 |
機能訓練を実施する時間帯に勤務し、機能訓練指導員のみに従事する専従の職員が1名以上必要です。 機能訓練指導員から直接訓練を受けた利用者のみが加算対象となります。 |
・訓練内容 |
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複数の種類(自立支援と日常生活の充実)の機能訓練項目を準備、項目の選択は機能訓練指導員が利用者の選択を援助していきます。 |
生活向上を目的とする機能訓練項目が必要となります。実際的な行動そのものや、それを模した行動を反復して行うことにより、段階的に目標の行動ができるような内容にします。 |
・実施範囲 |
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グループに分かれて実施。 |
5人以下の小集団。(個別対応を含む) |
・実施者 |
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制限はありません。 必ずしも機能訓練指導員が直接実施する必要はなく、機能訓練指導員の指導のもとであれば別の従事者が実施しても良いです。 |
機能訓練指導員が直接実施します。 |
・実施環境 |
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制限はありません。 |
浴室設備・調理設備・備品等そろえ実践的な環境での実施環境を整えます。 |
共通の算定要件もご紹介していきます。
- 多職種で、利用者の心身状況や居宅での過ごし方を重視し個別機能訓練計画を作成します。
- 個別機能訓練計画に従って、機能訓練項目を準備し機能訓練指導員が適切に行います。
この時、利用者の日々の健康状態、精神状態に配慮することが重要となります。
- その後3カ月に1回以上、利用者の居宅訪問し利用者本人や家族に対して訓練内容、計画の進行状況の説明し、見直しを行います。
- 目標の達成状況や評価内容について、担当のケアマネージャーに報告、相談し、必要に応じて利用者本人や家族の意向を確認し、利用者の目標の再検討やそれに伴う訓練方法の変更を行います。
- 個別機能訓練に関する記録は厳密に保管し、事業所の機能訓練指導員が誰でもすぐに閲覧することができる環境を整えます。記録は加算申請時にとても大切な書類なので、記録時に見落とし、書き忘れがないか確認が必要です。
算定要件を満たす上での注意事項
Q&A方式にして注意事項をご紹介していきます。
Q,個別機能訓練加算ⅠとⅡは並行して行うことができますか?
A,並行して行うことができます。
個別機能訓練加算ⅠとⅡを同じ日に算定することできますが、この場合、個別機能訓練加算Ⅰを行う常勤専従の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練指導員として従事することはできません。そのため、同じ日に算定を行う場合には最低でも機能訓練指導員を2名配置しなくてはなりません。
Q,個別機能訓練加算ⅠとⅡを算定する場合、一度の居宅訪問で要件を満たすことはできますか?
A,個別機能訓練加算ⅠとⅡの共通算定要件にもあったように3ヶ月に1回以上の居宅訪問を行わなくてはなりません。併算定する場合、居宅訪問による生活状況の確認を個別に実施する必要はありませんが、もちろん機能訓練の内容は異なるため、両加算の趣旨の違いに注意して、個別機能訓練計画を作成する必要があります。
厚生労働省より通達された居宅訪問チェックシートもあるので、それを使用すると良いかと思います。
Q,居宅訪問している時間は、必要な配置時間に含めて良いのか?
A,個別機能訓練計画に支障がない範囲においては、例えば送迎時などの短時間の居宅訪問時も配置時間に含めることはできます。生活相談員は、事業所外の活動が認められるため勤務時間として扱われます。
Q,サービスを利用してくれる見込みがある利用者で利用契約前に居宅訪問をし、その後利用契約に至った場合は算定要件を満たすことでできますか?
A,利用契約前に居宅訪問を行った場合も、個別機能訓練加算の居宅訪問の要件を満たすことができます。
要件を満たすためには、居宅訪問時にADL・IADLについて確認する必要があります。
居宅訪問チェック表を使用するとわかりやすく、スムーズに行えます。
Q,個別機能訓練加算Ⅰの算定要件の常勤専従の機能訓練指導員として、診療所・訪問看護ステーション・病院との連携による看護職員を1名以上あてることでその加算要件は満たせますか?
A,個別機能訓練加算Ⅰの算定要件が常勤専従の機能訓練指導員の配置が必要なので、常勤でない場合は認められません。連携による看護職員ではなく、専従の看護師または人員が必要となります。
Q,個別機能訓練計画作者は居宅訪問者と同一人物の必要はあるのか?また、訪問者は毎回かわっても良いのですか?
A,3カ月に1回以上居宅訪問し生活状況を確認するのは、毎回同一人物で行う必要はありません。なので、多職種が違う視点で見ることでより良い計画書ができると思います。
Q,個別機能訓練計画書の居宅時の生活状況の確認は、看護職員・介護職員・生活相談員の機能訓練指導員以外に他の職種を想定していますか?
A,個別機能訓練計画は多職種で作成するため、個別機能訓練計画作成に関わる職員であれば職種は関係なく居宅訪問と計画作成共も行うことができます。計画作成には多職種で担当職員だけではなく、時には担当職員外の人も参加すると今まで気付かなかった部分に気付くきっかけとなるので、是非試してみてください。
まとめ
昨今、機能訓練の場を求める高齢者のニーズをうけて、リハビリに特化した通所介護に対する重要が高まってきました。従って事業所にとってもリハビリができる環境は非常に重要であり、それに伴い加算はとても重要な報酬となります。事業所が安定した経営を可能にするために必要な条件の一つではないでしょうか。
また、個別機能訓練実施には他職種との協力や様々な視点で目標達成に向けた取り組みが必要になります。個別機能訓練加算ⅠとⅡの算定条件の違いを正しく理解し、どのような条件においては算定できるのか、もしくはできないのか、適切に把握することが必須となります。今一度、上記内容に関して自身の職場にて確認してみてはいかがでしょうか?
個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。