サービスの質が高い事業所を評価する制度として、特定事業所加算があります。
加算を取ることによって、より信頼性が高く、安心感のある事業所として地域住民に
アピールすることが可能となります。
今回の記事では、特定事業所加算ⅲについて解説していきます。
特定事業所加算のおさらい
特定事業所加算は、専門性の高い人材が確保されているか、困難なケースを取り扱っているか等により、加算が受けられる制度です。
種類は「特定事業所加算ⅰ」「特定事業所加算ⅱ」「特定事業所加算ⅲ」の3種類があります。
それぞれ、500単位、400単位、300単位がひと月ごとに加算されることになります。
加算を受ける事業所として想定されるのは、人員体制が整備されており、中重度者や支援が困難な事例を積極的に対応するような模範的な事業所です。
この事業所の取り組みをきちんと評価することによって、地域全体におけるケアマネジメントの質を向上させることを目的としています。
特定事業所加算ⅲとは?
先述の通り、特定事業所加算には「特定事業所加算ⅰ」「特定事業所加算ⅱ」「特定事業所加算ⅲ」の3種類があります。
平成18年4月に行われた介護報酬改定の中で、特定事業所加算が新設されました。
平成21年4月の介護報酬改定では、従来の算定要件を一部見直す形となり、事業所ごとの実態に即した2段階評価(特定事業所加算ⅰと特定事業所加算ⅱ)になりました。
平成24年4月の介護報酬改定では、特定事業所加算ⅱの要件が追加となっています。
そして、平成27年4月の介護報酬改定では、質の高いサービスを実施している事業所の評価を推進しようという背景から、それまでの特定事業所加算ⅱが分かれる形で特定事業所加算ⅲが新設されることになり、三段階によって評価する仕組みが作られました。
特定事業所加算ⅲでは、法定研修等によって実習受け入れ事業所となるなど、人材育成について協力体制を整備することとなっています。
特定事業所加算ⅲはまだ新しい加算であり、増加する事業所の実態に応じて、また情勢を判断した上で生まれた加算といえるでしょう。
この三種類について、三つ同時に算定するようなことは認められていません。
あくまで一つだけの加算を受けられることになります。
特定事業所加算のⅰとⅱで該当していた場合、上位であるⅰの加算を受けることとなります。
なお、そのような場合であっても、入院時情報連携加算(ⅰとⅱの2種類あります)や退院・退所加算、また、初回加算については特定事業所加算と同時に算定することが可能となります。
居宅介護における特定事業所加算ⅲとは?
居宅介護における特定事業所加算ⅲの単位数は、ひと月ごとに300単位です。
その300単位を取得するために必要な算定要件は、以下の通りとなっています。
- 常勤専従の主任介護支援専門員が1名以上配置していること(ただし、兼務が可能な場合があります)。
- 常勤専従の介護支援専門員が2名以上配置していること(当該事業所の管理者と兼務することは可能です)。
- 利用者の情報、またサービス提供上の留意事項などの伝達等を目的とした会議を開催していること。
なお、議題については、現在抱えている処遇困難ケースに対する具体的な処遇方針であったり、地域における事業者や活用できるような社会資源の状況確認、利用者等からの苦情内容の整理とその処遇方針などを含めたものがよいとされています。
おおむね週に1回以上など、定期的に開催していることが必要です。
- 常に担当者が電話等で連絡を取ることが可能であるよう24時間の連絡体制が確保されていることや、相談対応体制が確保されていること。
- 介護支援専門員に対して、計画的に研修が実施されていること。
これについては、介護支援専門員一人一人が研修を受けることでの具体的な目標、期間、実施時期等について、毎年次年度が始まるまでに計画を定めることとされています。
なお、年度途中で加算取得の届出をする際は、届出を行うまでに計画の策定が行われていれば大丈夫です。
- 支援が困難な事例に対しても、対応可能とする体制が整えられていること。
常時、地域包括支援センターと連携を図って、困難ケースを受け入れていきます。
- 運営基準減算または、特定事業所集中減算の適用がないこと。
特定事業所加算の趣旨である、中立公正を確保している必要があります。
- 介護支援専門員1名(常勤換算)あたりの利用者数が40件未満であること。介護予防の委託件数を含みます。
これは事業所単位で平均した数でよいとされています。
ただし、特定の介護支援専門員だけに人数が偏るなど、適正なケアマネジメントに支障がでるようなことは避けなければいけないとされています。
- 介護支援専門員実務研修において、実習科目等への協力体制が整えられていること。
これは単に実習等の受け入れがされているということだけではなく、いつでも受け
入れられる体制が整えられていることをいいます。
その際、研修を実施する主体との間で、実習生を受け入れることを同意しているとする書面を提示できるようにしておきましょう。
訪問介護における特定事業所加算ⅲ
訪問介護においても特定事業所加算があり、ⅰからⅳまでの四種類あります。
加算の最も大きい特定事業所加算ⅰでは、体制要件、人材要件、重度対応要件7つすべてを満たすことが求められますが、大変ハードルの高い内容となっています。
特定事業所加算ⅲはその7つの中で5つを満たせば良いとされています。
一回ごとの単位数は、所定単位数の100分の10に相当する単位となっています。
算定要件については、以下の通りです。
-
計画的な研修の実施
当該指定訪問介護事業所の全訪問介護員に対して、それぞれ個別に研修計画を作成し、計画に従って研修を開催または予定していること。
計画については、個別の具体的な研修の目標や内容、期間や実施する時期が定められている必要があります。
-
会議の定期的な開催
サービス提供責任者が、当該利用者を担当する訪問介護員に対して、当該利用者に関しての情報や留意事項などを、文書等確実な手段によって伝達してからサービスを始めていること。
また、サービス終了後に担当した訪問介護員から適宜報告を受けていること。
-
定期健康診断の実施
指定訪問介護事業所における、全ての訪問介護員について、健康診断等を定期的に実施すること。
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緊急時における対応方法の明示
緊急時において、どのような対応方法をとるのか、サービス担当者会議等で明らかにしておきましょう。
-
重度要介護者等対応要件
前年度もしくは前3カ月のすべての利用者数の中で、要介護4または5である者であっ
て、かつ認知症(日常生活自立度Ⅲ以上)である者、そしてたんの吸引等行う必要がある者の割合が100分の20以上であること。たんの吸引等行う事業所は、該当業務を行うための登録を受けている必要があります。
居宅介護支援事業所と信頼関係が築かれており、この事業所なら重度者であっても対応が可能であると見込まれて紹介を受けることで、上記要件を満たすことが可能となり
ます。
そのため、訪問介護員として求められることは、介護技術が高いことはもちろん、認知症利用者に対しての対応方法を熟知して実践できること、たんの吸引等に関して一定の研修を受けて登録を受けていることなどがあります。
まとめ
今回は特定事業所加算ⅲについて解説してきました。
居宅介護と訪問介護それぞれにおいて要件が決められていますので、しっかりと確認を行い、加算の取得に繋げましょう。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)