介護支援ブログ

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処遇改善加算が返還となるケースは?

 今、日本では超少子高齢化に伴い、労働力の低下が問題となっています。

 その中でも介護業界の人材不足は深刻です。

 「仕事がきつくて安月給」と刷り込まれてしまったイメージを拭うのはそう簡単なことではありません。

 仕事が大変なのはすぐには変えられないかもしれませんが、給与の面では救世主も現れています。

 それが今回のテーマである「介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)」です。

 しかし、加算の算定においては正しい理解と運用が不可欠です。

 せっかく取った加算を返還することになってしまったら、給料の大幅カットにつながるだけに、職員の大量離職が起きてしまうかもしれません。

 ぜひ、この記事をご覧いただき、お役立ていただきたいと思います。

 

 

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処遇改善加算とは

 

 処遇改善加算とは、2012(平成24)年4月より導入された、介護報酬における「加算」の一つです。

 施設サービス・在宅サービスを問わず、全ての介護の仕事で働く職員の待遇改善を目的としています。

 目的がはっきりしている加算であるため、使い道が限定されています。

 

 処遇改善加算で収入が増した場合、得られた金額以上のお金を必ず職員の給料アップや資質向上などに使って、職員に還元しなければなりません。

 制度のスタートから5年の間に加算はどんどん拡充されています。

 2017年では、加算I~Vの5段階となりました。

 最上位の加算Iを算定すると、職員の給与を最大月額で37,000円アップできるだけの収入が得られます。

 

 事業者は、職員の給料を少ない負担でアップすることができます。

 しかし、制度の拡充に伴って要件は細かく、厳しいものになっています。

 2017年に新設されたキャリアパス要件IIIの条件には「昇給」があります。 

 一時金などでの昇給も認められてはいますが、基本給の昇給を想定しています。

 事業所側にとっては、将来的にコスト増が経営の重みになるリスクも含んでいると言えます。

 人材を獲得するためには、他事業所よりも高い加算をとってアピールしたいところですが、身の丈以上の加算を無理に取得することにならないように注意が必要です。

 

 

処遇改善加算の不正

 では、実際にどのような行為が処遇改善加算についての不正請求とされてしまうのでしょうか?

 考えられるケースを挙げていきます。

 

加算を職員の処遇改善に使用していない

 処遇改善加算は、使い道が限定されている加算です。

 加算によって得られた金額以上のお金を、職員の処遇改善に使わなければなりません。

 もし別のことに使ってしまっていると、それだけで不正請求となります。

 

キャリアパス要件に定められた研修を全く行っていない

 処遇改善加算を算定するために必要なキャリアパス要件には、施設全体で職員の育成計画を考え、キャリアアップにつながるOJTやOFFJTを取り入れることが求められています。

 ただし、計画期間については定めがない上、業務に差し支えるような無理な研修計画を作ることがないように、という注意もあります。

 不正とされてしまうケースとしては、「年間を通して全く行っていない」、「計画自体が立てられていない」などが考えられます。

 

昇給の要件を満たしているのに昇給させていない

 新設されたキャリアパス要件IIIには、「経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み」か、「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」を設けなければならないとしています。

 加算の算定にあたって就業規則等でこの仕組みを全職員に明らかにすることが求められます。

 決められた条件を満たしているのに昇給させない、というケースは、明らかに違反とみなされてしまいます。

 

 経営上の理由から職員の給与を維持できない事態となった場合には、「特別な事情に係る届出書」を提出する必要があります。

 ただし、処遇改善加算はあくまでも使い道の決められた加算ですから、届出を行っても他のことに使うことはできません。

 また、加算要件を満たせなくなった場合には、変更届を提出して、加算区分を変更する必要があります。

 これらを怠ってしまいますと、不正請求と判断されてしまう可能性があります。

 

監査時に虚偽の報告をした

 介護サービス事業者に、実地指導を省略して監査が入るということはめったにないことです。

 この時点で、内部通報や利用者からの苦情等により、監査官は目星のついた状態で立ち入りしていると考えなくてはなりません。

 この記事をご覧の方には悪質なケースはないと思いますが、知らなかったでは済まされないこともまた事実です。

 

 指摘事項があった際は、真摯に受け止めることが大切です。

 「知らなかった」と「知っていて故意にしていた」では悪質さの度合いが大きく異なります。

 虚偽報告を行ってしまうと、不正請求よりもそちらの方が重い処分の対象となってしまいます。

 取り繕うとして、あることないことを口走ってしまわないように十分注意してください。

 

 

処遇改善加算の返還処分

 介護サービス事業者における行政処分には、以下のような種類があります。

 

  • 一部効力の停止
  • 介護サービス事業者としての指定取り消し
  • 介護報酬の返還

 

 事業所の運営についての処分として、一部効力の停止または指定取り消しが行われます。

 一部取り消しには、新規利用者の受け入れ停止や介護報酬の一部減額などが該当します。

 また、指定取り消しは事業の継続ができず、「廃業」を意味します。

 指定取り消しとなるのは「虚偽」や「隠蔽」など極めて悪質と判断されたケースとなります。

 ここでは、「不正による返還」について解説していきます。

 

 介護サービス事業所において、不正に得た介護報酬は返還を求められます。

 通常、不正に得た金額の4割増の金額が請求されます。

 この返還金は「公法上の債権」となるため、支払われないと税金と同じく「滞納」の扱いとなります。

 監査の結果返還を求められる場合には、同時に指定取消し処分なども受けていると考えられるため、事業が継続できない上に返還を迫られるという厳しい状況になってしまいます。

 

 処遇改善加算は、単位数が事業所のサービス種別ごとに異なりますが、金額の大きな加算と言えます。

 その金額に4割の追徴金が課せられますので、事業規模が大きな事業所で不正が長期間に渡っていた場合、請求金額が億の単位となってしまうことも考えられます。

 

 返還には、自主的な返還と命令による返還の2つがあります。

 自主的な返還は、自らが申し出て返還を行う場合や、実地指導において指摘されたことについて修正した結果で生じる返還するケースが当てはまります。

 

 通常、悪質でないケースであれば、実地指導において違反が見つかっても即処分とはならず、是正するための猶予期間が与えられます。

 この間に算定が難しい加算を取り下げることも可能です。

 しかし、不正の可能性が高いと判断されれば、実地指導中に監査に切り替わることもあります。

 そうなれば処分は逃れられません。

 

 自主的に返還する場合には処分までは受けずに済むケースが多いため、「間違いに気づいても放置せずにすぐに修正する」姿勢が何よりも大切です。

 施設の管理者だけでなく、会計担当者についても制度についてしっかりと理解しておく必要があります。

 

 

 

不正による処遇改善加算返還の事例

では、実際に不正請求と判断された事例を見てみましょう。

 

事例1:徳島県のヘルパーステーション

 内容:処遇改善実績報告書に、実際の賃金額とは異なる虚偽の内容を記載して、加算を不正に請求した。

 処分:

  • 不正に受給した介護報酬の返還
  • 事業書指定取り消し

 

事例2:北海道A市の法人が運営するグループホーム7事業所

 内容:処遇改善加算を一部しか職員の給料として支払わなかったのにも関わらず、実績報告書には虚偽の記載をしてそれを隠蔽していた。

 不正受給額:約1800万円

 処分:

  • 不正に受給した介護報酬の返還
  • 3か月月間新規利用者の受け入れ停止、介護報酬20%減額。

 

 事例1については、処遇改善加算の不正以外にも、行っていないサービスの報酬を不正に請求し、記録を改ざんするなど、数多くの悪質な不正があり、指定取り消しとなったものです。

 事例2については、処遇改善加算についてのみの不正ですが、やはり金額が大きなものとなっています。

 この事例は新聞などでも大きく取り上げられており、基準や書類審査の厳格化の流れにつながりました。

 

 

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか?

 不正な行為は慎まなければならないことはもちろんですが、制度に対する正しい理解と知識を持つことも重要です。

 知らなかったでは済まされません。

 

 また、業務が忙しいからと、必要な書類の作成を後回しにしないことも大切です。

 処分を受けると、入るはずのお金が入らないばかりでなく、イメージダウンによるダメージも大きいものとなります。

 事業所を利用しているご利用者と職員を守るためにも、襟を正して業務に当たりましょう。

 

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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