介護事業者の皆様の間でいつも話題に上がる介護職員処遇改善加算。
簡単な流れ等は理解しているけど詳しくは…などとお思いの方も多いのではないでしょうか。
スムーズに処遇改善加算を取得し、賃金改善に充てましょう。
賃金改善は既に働いているスタッフのモチベーションを上げるとともに、新たに優秀な人材を確保する際に有利となります。
この記事では、処遇改善加算の取得における流れと、各々の期限を詳しくご説明していきます。
ぜひ一読し、今後の経営にお役立てください。
処遇改善加算とは
処遇改善加算とは、介護職員処遇改善交付金が前身であり、介護職員の給与底上げの仕組みづくりにより雇用の安定化を図ろうという目的で定められた制度です。
現行の制度では2015年(平成27年)の改正により月額27,000円相当が加算されます。
2017年(平成29年)より、これまであった4つの区分の上にさらに区分を設け、最も厳しい要件を満たす事業所については、さらに10,000円上乗せされた月額37,000円相当が支払われることが決定されています。
処遇改善加算の背景・目的
介護職員は、高齢者の心身の状態に常に注意を払いながら、他の専門職と協力して高齢者を支えていく重要な職種です。
資格取得には専門知識を学び、経験、研修も必要とされます。
夜勤やシフト勤務が多く、なおかつ重労働と臨機応変な対応を求められます。
こういった仕事の内容や労働環境に対して低賃金であることが、離職率を高めていると言われており、求人を出しても応募が少なく、慢性的な人手不足に陥っている現状があります。
増え続ける介護を必要とする高齢者に対して、介護の担い手が少ないという問題は早くから指摘されており、まずは介護職員処遇改善交付金が導入されました。
しかしこの制度は全額税金からの支給であり不公平であるといった批判、さらには実際に介護職員の給与が上がっていないのでは、内部保留や他の支出に使われているのではという疑問の声もありました。
このためより明確に護職の給与や労働条件を改善するために、介護保険の制度内において介護職員処遇改善加算を実施することになりました。
このように、処遇改善加算は介護職員の賃金改善を目的としています。
2015年(平成27年)4月より、処遇改善加算の金額はそれまでの月額15,000円からアップして27,000円となりました。
他の職種の平均給与と比べると給与水準の低い介護職において、12,000円の増額は大きいです。
介護職員のモチベーションも上がるのではないでしょうか。2017年(平成29年)より、新基準を満たせばさらに10,000円アップの可能性があることは、現場のスタッフにとって明るいニュースです。
これまでの4つの区分加算Ⅰ〜Ⅳの上に新しい区分を設けるとのことですから、新設の区分が加算Ⅰになり、これまでのⅠがⅡへ移動する見込みとなっています。
新加算 37,000円相当
現行の加算Ⅰ 27,000円相当
加算Ⅱ 15,000円相当
加算Ⅲ 加算Ⅱ×0.9(13,500円相当)
加算Ⅳ 加算Ⅱ×0.8(12,000円相当)
となり、新加算と加算Ⅳでは3倍の違いが出ます。
新設の一番厳しい算定要件においては、経験年数や勤務年数、資格や研修履修、評価等によって昇給する仕組みを作ることが要求されるようです。
事業者の皆様にとっては、算定基準をクリアし、各種書類を整え加算の申請を行うのは大変ですが、処遇改善加算取得によって良い人材が長く働けば、長期的にみれば事業所にとってもサービス利用者にとってもプラスに働きます。
事業所にとっては、頻繁にスタッフが入れ替わっていると、新スタッフの教育や求人広告、事務処理など、様々な面で時間とコストがかかるので、それらが抑えられます。
処遇改善加算の特徴
上で説明したように、処遇改善加算が支給されると、事業者は全額を対象職員へ還元させて賃金水準を改善させることが義務付けられています。
つまり、交通費や福利厚生、研修の参加費用など、他の目的や用途に使用された場合は全額返還する義務があり、違反した事業者に対しては厳しい指導も予想されます。
明確に賃金改善を目的としていることが処遇改善加算の特徴です。
分配方法については事業者に委ねられていますが、制度本来の目的をしっかり意識し、賃金改善を行いましょう。
処遇改善加算の詳細については処遇改善加算についてをご覧ください。
賃金改善の流れと期限
加算取得に関する作業から実施報告まで、賃金改善までの流れは、
介護職員処遇改善計画書を作成する
→介護職員1人あたりの平均の賃金改善見込み額を盛り込んだ計画内容をすべての職員へ周知させる(事業者と介護職員間の透明性確保のため)
→行政への計画書の届出を行う
→賃金改善を行う
→実績報告書を提出する
となっています。
ここでは介護保険法で定められている、必要書類の提出や実施の期限について説明します。
介護職員処遇改善計画書の提出
介護職員処遇改善計画書を作成し、処遇改善加算届出書などと共に、都道府県または市町村に提出します。
各都道府県において提出先が異なるので確認してください。
これらの提出期限について、これまでは新規申請の場合は、算定予定月の2カ月前の末日までに提出が必要となっています。
つまり、4月から算定を受けようとする場合 には2月末日が提出期限となります。
すでに介護職員処遇改善加算を受けている事業者が、更新する場合は、毎年2月末日までに介護職員処遇改善計画書を提出する必要がありました。
2017年(平成29年)から処遇改善加算の新しい加算区分が設けられるにあたって、2017年(平成29年)3月以降、厚生労働省から様式や提出期限の変更が提示される予定です。
そのため、多くの自治体では2017年(平成29年)においては4月15日ごろを提出期限としているようです。
変更から提出期限まで期間が短いため、常に最新の情報を入手する必要があります。
賃金改善の実施
4月から翌年の3月までの12ヵ月間が一般的な実施期間であり、年度の途中で加算を申請した場合には、届出の2カ月後から年度末の3月までとなっています。
賃金改善の実績報告
賃金改善の実績報告は、介護職員処遇改善加算実績報告書とともに、賃金総額の積算根拠となる資料を添えて行います。
最終支払い月の翌々月の末日までに実績報告書を提出する必要があり、例えば、2018年(平成30年)3月まで加算を算定していた事業所は、最後の加算の支払いがあった 2ヵ月後、つまり7月末までに実績報告書を提出します。年度途中で事業を廃止した事業所は、廃止後も同様に、最終支払い月の2ヵ月後の末日までに実績報告書を提出する義務があります。
最後に
介護職員処遇改善加算導入後、少しずつではありますが、離職率が低下してきているようです。
全職種の離職率の平均が2014年(平成26年)に15.5%である中、それより高いとはいえ、2007年(平成19年)の21.6%から2014年(平成26年)には16.5%になっています。
複数の要因が重なった結果でしょうが、賃金改善の効果も出てきているのかもしれません。
厚生労働省の試算によれば、増え続ける要介護高齢者に対応するため、2020年代初頭には、介護を担う人材が25万人の増員が必要だそうです。
しかし、労働人口は減っていくため、人材の確保がますます難しくなります。
対応策としては、介護職員にとって、より魅力的な職場することです。
そのためにも処遇改善加算を取得し、賃金に反映させていかなければなりません。
あなたはこれについてどう思われますか?
処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。