介護支援ブログ

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放課後等デイサービスでもキャリアビジョンが描ける! 福祉・介護職員処遇改善加算の内容と算定方法とは?

放課後等デイサービスは、障害をもつお子さんのための学童保育所です。

利用者である6~18歳のお子さんにとっては、必要なケアを受けられる大切な居場所です。

地域包括支援事業や総合支援事業など、介護サービスの多様化が進む中、障害分野に類する放課後デイ等サービスも今後拡充していくものと考えられます。

そんな中で、人材確保は介護福祉業界の大きな課題です。

働く職員にとって魅力のある職場づくりに役立つのが、今回の記事でご紹介する福祉・介護職員処遇改善加算です。

加算の仕組みはわかりにくいものですが、ぜひご一読されて、今後の経営にお役立てください。

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1 福祉・介護職員処遇改善加算とは

福祉・介護職員処遇改善加算は、福祉や介護現場で働く職員の待遇を改善して職場への定着を図ると同時に、人材不足が続く福祉・介護業界の人材確保を目的として平成24年4月に創設されました。

 

それまでの「交付金」が一時的な手当であるのに対して、「加算」という仕組みになったことで、要件を満たしている限りその事業所が上乗せして報酬を受け取ることができます。

その上乗せ分を職員の給与をアップさせるために使う、というのがこの福祉・介護職員処遇改善加算の概要です。使途については明確に処遇改善のためだけに使うことが求められています。

年を追うごとに加算はより手厚いものへとなっていますが、それに伴い要件も増えています。

職員が自分の将来像をイメージしながら、目標と希望を持って働けるように考えられています。

導入された時点では、もともとは加算という形式は3カ年の一時的な施策でした。

まず目先の人材不足に対応しつつ、将来的には加算分の賃金上昇が可能なくらい基本サービス費をアップさせようという目論見がありました。

しかし、福祉や介護を取り巻く財政には厳しいものがあり、報酬改定には厚生労働省だけでなく財務省など関係各省庁の折衝があるため、思うようには進まず、加算の制度が維持されているという背景もあります。

 

結果的に、平成27年度介護報酬改定においては制度が維持されただけでなく、さらに介護職員の社会的・経済的な評価を高めるサイクルを生み出すために、介護事業者の取組みがより促進されるように加算が拡充されました。

そして平成29年4月より、さらに加算の枠組みが拡大されています。

2 福祉・介護職員処遇改善特別加算とは

福祉・介護職員処遇改善加算と混同されがちですが、「特別加算」は全く別の加算となりますので注意が必要です。

特別加算は、福祉・介護職員処遇改善加算の算定が難しい事業所に対しても、職員の処遇改善を図ることができるように創設された加算です。

通常の加算が区分I~Vに区分され、それぞれ算定に必要な要件が定められているのに対し、特別加算は、職員の処遇改善を図ることが明確であれば算定可能です。

ただし、通常の加算と比べて得られる金額は低く設定されており、放課後等デイサービスにおいては、1.1%の加算率となっています。

加算を算定するために都道府県知事等に届出が必要であることは通常の加算と同じです。

要件を示すための書類については必要ありません。

詳しくは最新の厚生労働省通知をご確認ください。

福祉・介護職員処遇改善加算及び福祉・介護職員処遇改善特別加算に関する 基本的考え方

3 放課後等デイサービスの福祉・介護職員処遇改善加算とは

放課後等デイサービスにおいても、福祉・介護職員処遇改善加算の算定方法や条件は、他のサービスとの違いはありません。

区分ごとに明確な算定要件が定められています。

加算Iに近いほど、加算率が高くその分多くの金額を職員の給与に反映させることができます。

しかし、より要件が厳しくなり、中長期的に職員を育成できる仕組みが必要となります。

それぞれの事業所において身の丈に見合う加算算定が重要です。

まず、5区分の加算区分について、それぞれの加算率と一緒に確認していきます。

①加算I(放課後等デイサービスの加算率8.1%)
キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件 Ⅱ、キャリアパス要件Ⅲ、職場環境等要件の全てを満たすこと。
②加算II(放課後等デイサービスの加算率5.9%)
キャリアパス要件I、キャリアパス要件II、職場環境等要件の全てを満たすこと。
③加算III(放課後等デイサービスの加算率3.3%)
キャリアパス要件I又はキャリアパス要件IIのどちらかを満たすことに加え、職場環境等要件を満たすこと。
④加算IV(放課後等デイサービスの加算率2.7%)
キャリアパス要件I、キャリアパス要件II、職場環境等要件のいずれかの要件を満たすこと。
⑤加算V(放課後等デイサービスの加算率2.4%)
キャリアパス要件I、キャリアパス要件II、職場環境等要件のいずれの要件も満たさ
ないこと(キャリアパス要件IIIのみを満たしている)。

 

続いて、それぞれの区分で求められる3つのキャリアパス要件と職場環境等要件を

確認していきましょう。

 

キャリアパス要件(I)

次のイ・ロ・ハすべての要件を満たすことが必要です。

 

イ 職員の職位、職責又は職務内容等に応じた任用等の要件を定めている。

 

施設には様々な職種の職員が働いています。その中で、特に昇進すると仕事内容がどのように変わるのかを明らかにするのは難しいことです。

規模の大きな一般企業であれば、昇進のための試験を設けているところもあるでしょう。

試験を行うことで、一定の水準に達していればその職責に足る、という判断が可能です。

福祉や介護の事業所において、試験を行うような仕組みづくりは難しいと思われます。

そのため、業務分掌を作成して、職種・職位ごとの担当業務の明確化を図ること等が必要となります。

 

 

ロ 職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系について定めている。

 

給与について、職種ごとの基本給や手当について、明確にされていることが必要です。

 

同じ職位であっても年齢や経験年数によって給与に差がつくケースは多いと思われます。

その場合、その違いの根拠が示せるような基準が必要となります。

 

給与は本来、需要と供給のバランスによって成り立つものであり、人手不足であれば高く、就職難の場合は低くなるものです。

そのため就職したタイミングで給与に差が付く場合がありますが、本来よりも高い水準の給与が支払われている場合は、上乗せ分を特別手当とするなど、明確にしておく必要があります。

 

 

ハ 就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、すべての福祉・介護職員に周知している。

 

1と2の内容も含めて、誰でもが自由に確認できる場所に就業規則を書面の形で設置して、その存在についても周知している必要があります。

昇進したら給料がいくらアップするのかがわかるようにしておくことは、職員のモチベーション向上のためにも有効です。

ですが、逆に知られてしまうことで将来性を感じてもらえずに職員に見切られてしまうというリスクもあり、経営サイドとしては苦しいところです。

 

キャリアパス要件(II)

次のイ・ロのどちらの要件も満たすことが必要です。

 

イ 福祉・介護職員の職務内容等を踏まえ、福祉・介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及び一又は二に掲げる具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。

一 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)するとともに、福祉・介護職員の能力評価を行うこと。

ニ 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、 休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。

 

OJTとは、職場内で業務中に行う研修のことを言います。

具体的にはプリセプター制度やスーパーバイザー制度と呼ばれる、職員の育成方法が当てはまります。

経験の浅い職員を指導することは、同時に指導役の職員の育成でもあります。

OFF-JTとは、職場を離れて研修会や勉強会などに参加することを言いますが、注意すべきはあくまでも「業務内」であるということです。

職員が自分の休みを使って自分でお金を払って参加したものは含まれません。

資格取得支援も含めて、研修に参加するための費用や、参加している間に現場の人員が不足することで生じる人件費も、計画的に予算に組んでおくことが必要となります。

 

ロ イについて、全ての福祉・介護職員に周知していること。 

 

業務に追われがちな職員にとって、一時的にでも持ち場を離れて研修に参加することはリフレッシュにもなります。

また活かすことのできない資格に時間を割こうという職員はいませんから、事業所全体で応援しているという姿勢も重要です。

そのような仕組みがあること、積極的に利用してほしいことを伝え、利用につなげていることが求められます。

 

キャリアパス要件(III)

次のイ及びロのどちらも満たしていることが必要です。

 

イ 福祉・介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。

具体的には、次の一から三までのいずれかに該当する仕組みであること。 

 

一 経験に応じて昇給する仕組み

   「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること 

 

二 資格等に応じて昇給する仕組み

  「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組みであること。ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みで あることを要する。 

 

三 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み

 「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき、昇給する仕組みであること。

ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。

 

 

ロ イの内容について、就業規則等の明確な根拠規定を書面で整備し、全ての福祉・介護職員に周知していること。 

 

新設のキャリアパス要件(III)は、「昇給」についての規定です。 

勤続年数や資格などによって昇給する仕組みか、定期昇給のいずれかの仕組みが必要です。

資格取得によって行う昇給は、資格を失うことはないために将来的にずっと財源が必要となります。

人件費のアップだけを招かないように、職員が資格を得ることによって加算の算定が可能となるなど、事業所にも増収が期待できる資格について、昇給する仕組みであることが重要です。

定期昇給については、職員ごとの評価の差があることがモチベーションのアップのためにも重要です。

人事評価制度を基にきちんと評価できる仕組みを作りましょう。

定められた期間のはじめに、「何を求めているのか」を明らかにしておかないと、期末の評価があいまいなものとなってしまいますので注意が必要です。

 

加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)に必要な職場環境等要件

平成27年4月から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金

改善を除く。)の内容を全ての 福祉・介護職員に周知していること。

 

加算(Ⅲ)及び(Ⅳ)の職場環境等要件

 平成20年10月から届出を要する日の属する月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く。)の内容(別紙1表4を参照)を全ての 福祉・介護職員に周知していること。 

 

加算Iもしくは加算IIを算定するためには、継続的に職場の労働環境を改善していることを実績として示す必要があります。平成27年4月から取り組んでいるものを明らかにする必要があるため、それ以前に行われて取り組みだけでは加算IまたはIIには該当しません。

 

 

※キャリアパス要件は区分ごとに細かく設定されており、複雑に感じる方も多いと思います。詳細については、こちらのサイトも参考にされてください。

キャリアパス要件について 介護職員処遇改善加算マニュアル - 介護支援ブログ

 

4 福祉・介護職員処遇改善加算の計算方法

福祉・介護職員処遇改善加算は、サービス種別ごとに定められた加算率を、処遇改善加算以外のサービス費の合計単位に乗じて算定されます。

では、事業所のモデルを用いて、実際の加算額について解説していきます。

 

定員10名の放課後等デイサービス事業所

平日・放課後のみで月21日稼働。児童発達支援管理責任者と児童指導員がともに

常勤で勤務している場合

上記の条件で運営されている放課後等デイサービスの場合、一日・一人当たりの合計単位数は891単位となります。内訳は以下の通りです。

 

内訳

基本単位:491(有資格者配置加算9単位含む)

児童発達支援管理責任者専任加算:205

指導員加配加算(児童指導員等の場合):195単位

 

 

では、稼働が100%であったと仮定して、一ヶ月あたりの実際の加算額について計算してみましょう。1単位は10円としています。

 

○加算の算定がない場合

891(単位)×21(日)×10(人)×10(円)=1,871,100円

 

○加算I(加算率8.1%)の場合

891×1.081(加算率)×21×10×10=2,022,609円

 

○加算II(加算率5.9%)の場合

891×1.081(加算率)×21×10×10=1,977,753円

 

○加算III(加算率3.3%)の場合

891×1.081(加算率)×21×10×10=1,932,864円

 

○加算IV(加算率2.7%)の場合

891×1.081(加算率)×21×10×10=1,921,620円

 

○加算V(加算率2.4%)の場合

891×1.081(加算率)×21×10×10=1,916,006円

 

*特別加算(加算率1.1%)の場合

891×1.011(加算率)×21×10×10=1,891,682円

 

 

いかがでしょうか。最も高い加算Iを算定することができれば、一ヶ月当たり15万円程度の増収が見込めることとなります。実際の計算時には、ご利用者一人一人の単位数に四捨五入が生じる関係上、金額は一致しませんので、あくまでも参考とお考え下さい。常勤の職員が4名と考えると、満額の加算であれば昇給には十分な増収が得られる計算になります。

 

5 まとめ

放課後等デイサービスにおける福祉・介護職員処遇改善加算について解説してきました。

処遇改善加算には、職員の働く意欲を高めて介護と福祉の分野により多く、より質の高い人材を集める呼び水の効果があります。

しかし、経営サイドからは、昇進基準や昇給金額など、明確にしておかなければならない項目も多くあります。

処遇改善は決してその場しのぎものではありません。

長期的なビジョンも求められているのです。

取得にあたっては、がんばっている職員ひとりひとりの未来図と、事業所の未来図を重ね合わせながら考えていきたいものですね。

 

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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