介護事業者の皆様。
介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)の算定は行っておりますでしょうか。
賃金改善を行う上で、とても重要であり、従業員満足度の向上及び従業員の定着につながるので、しっかり行いましょう。
この記事では、いつ賃金改善の実施を行うのかについて詳しくご説明いたします。
一読し、今後の経営にお役立てください。
処遇改善加算による賃金改善とは
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する
と労働契約法で規定されています。
使用者が労働者に支払う義務を怠ると、労働者は裁判でその支払いを求める訴えを起こせます。
賃金については、使用者は、毎月1回以上、一定の期日に労働者に直接支払わなければならないと定められており、こうした規定に違反した場合、使用者は労働基準監督官に指導を受けたり、刑事罰を受けたりします。
では、処遇改善加算による賃金の改善とは一体どういうことなのでしょうか。
平成23年度以降、度重なる介護報酬改定毎に、処遇改善加算が上方修正され、賃金は徐々に伸びてはいますが、実際にはまだ対価に見合った労働力とは言いにくい状況です。
高齢化社会に伴って年々人材が必要になってくるにも関わらず、さらに人が集まらなくなるという負のスパイラルに陥っている現状を打破すべく国の打ち出した苦肉の策が、この処遇改善加算になります。
一定の条件を満たせば、当該施設に加算され、その加算分が介護職員の給与として上乗せされる仕組みです。
賃金改善実施期間とは
処遇改善加算の賃金改善実施期間とは、文字通り、介護職員に対して給与として追加して払う期間のことです。
給与の額は、加算の収入の充当額によって異なります。
原則として、4月から翌年の3月までの最長12カ月間となります。
※年度の途中で加算の算定を受ける場合は、その算定を受けた月からの計算になります。
例えば、6月から算定を受けたのであれば、7月~12月までの6カ月間が賃金改善実施期間となります。
設定期間の詳細については後述します。
賃金改善実施期間の設定条件
先述のように、実施期間は原則4月から翌年の3月までの最長12カ月ですが、賃金改善実施期間は、次の条件を満たす期間の中から設定は可能です。
賃金改善実施期間の長さ
実施期間の長さは、加算の算定月数と同じ月数であることと、連続した期間であることが条件になっています。
例えば、加算算定要件(キャリアパス)を満たした月数が、6カ月間だった場合、4月から9月まで賃金改善期間となります。
賃金改善実施期間の最初の月
また、賃金改善実施期間の最初の月は、最初のサ-ビス提供があった月以降の月でなければなりません。
つまり、4月にサービス提供を行い、4月末の支払いに賃金改善をすることはシステム上不可能なのです。
4月を賃金改善期間として設けるためには、前年度のサービス提供期間月数が、翌年度の4月をまたぐように期間を設定する必要があります。
賃金改善実施期間の最後の月
賃金改善実施期間の最後の月に関しては、最終の加算の支払いがあった月の翌月以前である必要があります。
例えば、サービス提供期間が4月~3月までだった場合、加算支給月は、同年6月~翌年5月でも可能になります。
サービス提供期間月数分だけ、加算支給月も増減します。
連続した月で支給月を数えていれば、問題なく、最終の加算の支払いがあった月の翌月以前になります。
賃金改善実施期間の設定例
加算算定期間を仮に平成29年4月サービス提供分~平成30年3月サービス提供分とします。
まず、この場合、賃金改善実施期間は、サービス提供月数に比例しますので、12カ月間連続で設定する必要があります。
さらに、賃金改善実施期間の最初の月は、サービス提供があった月以降である必要があるため、設定できるのは5月以降~となります。
そして、賃金改善期間の最後の月は、支払いがあった月の翌月以前である必要があります。
そのため、この事業所の賃金改善実施期間は、平成29年5月~平成30年4月までの賃金改善実施期間となります。
賃金改善実施期間における注意点
賃金の支払
賃金の支払いが月末締め翌月10日支払いの場合、この「翌月」が賃金改善実施期間内に入っていなければなりません。
例えば、サービス提供月が4月~翌年3月だった場合は、12カ月間は賃金改善実施期間として連続月数を設けることができます。
つまり、6月から賃金改善を開始したと仮定するのであれば、翌年の5月までは賃金改善期間となります。
しかし、月末締めの10日支払いの場合、上記の賃金改善期間だと、6月10日に5月分の賃金改善額が上乗せされた給与が支払われる必要がありますので、賃金改善期間外の支給という形になってしまいます。
このように、月末締め10日払いの形、もしくはそれに近似した支払い形式をとっている事業所は、賃金改善期間には注意してください。
実績報告での指導
処遇改善加算については、実績報告に基づいて実施確認を行政は行っています。
処遇改善加算の算定要件は、賃金改善額が加算による収入額を上回ることですので、処遇改善交付金の時のように、賃金改善額が収入額を下回ることは想定されていません。
算定要件を満たしていない不正請求については、全額返還となりますので注意してください。
さらに、よくあるケースとして、賃金改善実施期間内に支給されないケースがありますが、この場合も不正請求の対象となりますので、全額返還になります。
まとめ
今回は、処遇改善加算の賃金改善期間についてまとめさせてもらいました。
処遇改善加算は、介護報酬改定毎に上方修正されており、徐々に介護職の賃金アップ、職イメージアップにつながっています。
それに比例して、処遇改善加算を算定するのに必要な要件も厳しく、実地調査もより厳密になってきています。
徐々に厳しくなってきてはいますが、度重なる不正請求の報道も聞かれ、処遇改善加算の上方修正も賛否両論なのが現実です。
今回は、賃金改善実施期間内に支給されていないことを不正請求として挙げましたが、これ以外にも、介護職員ではない職員に支給されていた、役員報酬にあてられていたなど、悪意ある請求があとを絶ちません。
今一度、処遇改善加算について熟考してみてはいかがでしょうか。
参考になりましたらシェアの程宜しくお願い致します。
処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)