今回は処遇改善加算の計算方法についてわかりやすく解説したいと思います。
処遇改善加算に関する基礎知識については「介護職員処遇改善加算とは」にて解説しています。
計算に必要な情報
基本サービス費(介護給付単位数)
基本サービス費とは、介護サービスごとの介護報酬から各種加算減算、加算率を無視した数値(単位)を意味します。簡単にいえば、介護費用の基本料金です。介護給付単位数とも呼ばれます。
なお、介護報酬は介護保険制度により設定されています。介護報酬とは、サービス事業提供者や介護保険施設によって介護サービスが提供された場合、その対価として支払われるべき報酬の事を指します。また、介護支援事業者により居宅介護支援を行った時も対価として支払われるものです。
それぞれのサービスの介護給付費単位数はこちらから確認することができます。
各種加算減算
各種加算減算とは、基本料のほかに利用しているサービス費用単位を意味します。時間帯や事業所のレベル、緊急度によって様々な加算減算があります。基本サービス費が介護の基本猟に対して、加算減算はオプション料金といえるでしょう。
主な加算減算の種類はこちらから確認することができます。
利用回数
月ごとの介護利用者が介護サービスを利用した回数になります。
サービス別加算率
正しくは、サービス別介護職員処遇改善加算率です。加算率とは、行政に処遇改善加算による追加報酬を交付してもらうために介護サービスごとに設定された率を意味します。平成24年度の介護報酬改定での大きな変更点の1つであり、この加算率によって職員の給料がかなり変動します。
最新版のサービス別加算率は以下の通りです。平成28年度より地域密着通所介護が新たに創設されました。
なお、介護予防のあるサービスは同じ項目の率に該当します。
[2017年1月27日追記]
こちらの記事で解説しているように、平成29年度より新たに加算が追加され、5つの区分により加算額が決定することとなりました。改正に伴い、新しいサービス別加算率が平成29年1月18日介護給付費分科会「平成29年度介護報酬改定の概要(案)」にて公表されましたので、こちらで紹介したいと思います。
平成28年度までのサービス別加算率
サービス | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ |
---|---|---|---|---|
訪問介護 | 8.6% | 4.8% | 加算Ⅱの90% | 加算Ⅱの80% |
訪問入浴介護 | 3.4% | 1.9% | ||
通所介護 | 4.0% | 2.2% | ||
通所リハビリテーション | 3.4% | 1.9% | ||
地域密着型通所介護 | 4.0% | 2.2% | ||
短期入所生活介護 | 5.9% | 3.3% | ||
短期入所療養介護(老健) | 2.7% | 1.5% | ||
短期入所療養介護(病院等) | 2.0% | 1.1% | ||
特定施設入居者生活介護 | 6.1% | 3.4% | ||
介護老人福祉施設 | 5.9% | 3.3% | ||
介護老人保健施設 | 2.7% | 1.5% | ||
介護療養型医療施設 | 2.0% | 1.1% | ||
定期巡回・随時対応型訪問看護 | 8.6% | 4.8% | ||
夜間対応型訪問介護 | 8.6% | 4.8% | ||
認知症対応型通所介護 | 6.8% | 3.8% | ||
小規模多機能型居宅介護 | 7.6% | 4.2% | ||
認知症対応型共同生活介護 | 8.3% | 4.6% | ||
地域密着型特定施設入居者生活介護 | 6.1% | 3.4% | ||
地域密着型介護老人福祉施設 | 5.9% | 3.3% | ||
複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護) | 7.6% | 4.2% |
[加算算定対象サービス(参考:介護保険最新情報vol.542)]
平成29年4月以後のサービス別加算率
サービス | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ | 加算Ⅳ | 加算Ⅴ |
訪問介護 夜間対応型訪問介護 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
13.70% | 10.00% | 5.50% | 加算Ⅲの90% | 加算Ⅲの80% |
訪問入浴介護 | 5.80% | 4.20% | 2.30% | ||
通所介護 地域密着型通所介護 |
5.90% | 4.30% | 2.30% | ||
通所リハビリテーション | 4.70% | 3.40% | 1.90% | ||
特定施設入居者生活介護 地域密着型特定施設入居者生活介護 |
8.20% | 6.00% | 3.30% | ||
認知症対応型通所介護 | 10.40% | 7.60% | 4.20% | ||
小規模多機能型居宅介護 看護小規模多機能型居宅介護 |
10.20% | 7.40% | 4.10% | ||
認知症対応型共同生活介護 | 11.10% | 8.10% | 4.50% | ||
介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 短期入所生活介護 |
8.30% | 6.00% | 3.30% | ||
介護老人保健施設 短期入所療養介護(老健) |
3.90% | 2.90% | 1.60% | ||
介護療養型医療施設 短期入所療養介護(病院等) |
2.60% | 1.90% | 1.00% |
加算の対象となる職員について「処遇改善加算の対象者」にて解説しています。
地域区分
地域区分とは、地域間における人件費の差を考慮して、地域間の介護保険費用の配分方法を調整するための区分を意味します。
平成27年度介護報酬改定からは(1級地・2級地・3級地・4級地・5級地・6級地・7級地・その他)の8区分となりました。金額は1級地区分が最も高く、その他区分が最も低くなります。詳しくは下の表を参照してください。
区分 | 都道府県 | 地域 |
---|---|---|
1級地 | 東京都 | 特別区 |
2級地 | 東京都 | 狛江市、多摩市 |
神奈川県 | 横浜市、川崎市 | |
大阪府 | 大阪市 | |
3級地 | 千葉県 | 千葉市 |
東京都 | 八王子市、武蔵野市、府中市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、国分寺市、稲城市、西東京市 | |
神奈川県 | 鎌倉市 | |
愛知県 | 名古屋市 | |
大阪府 | 守口市、大東市、門真市、四條畷市 | |
兵庫県 | 西宮市、芦屋市、宝塚市 | |
4級地 | 埼玉県 | さいたま市 |
千葉県 | 船橋市、浦安市 | |
東京都 | 立川市、昭島市、東村山市、国立市、東大和市 | |
神奈川県 | 相模原市、藤沢市、厚木市 | |
大阪府 | 豊中市、池田市、吹田市、高槻市、寝屋川市、箕面市 | |
兵庫県 | 神戸市 | |
5級地 | 茨城県 | 龍ヶ崎市、取手市、牛久市、つくば市、守屋市 |
埼玉県 | 朝霞市、志木市、和光市、新座市 | |
千葉県 | 成田市、佐倉市、習志野市、市原市、四街道市 | |
東京都 | 三鷹市、青梅市、清瀬市、東久留米市、あきる野市、日の出町 | |
神奈川県 | 横須賀市、平塚市、小田原市、茅ケ崎市、逗子市、大和市、伊勢原市、座間市、寒川町 | |
滋賀県 | 大津市、草津市 | |
京都府 | 京都市 | |
大阪府 | 堺市、枚方市、茨木市、八尾市、松原市、摂津市、高石市、東大阪市、交野市 | |
兵庫県 | 尼崎市、伊丹市、川西市、三田市 | |
広島県 | 広島市 | |
福岡県 | 福岡市 | |
6級地 | 宮城県 | 仙台市 |
茨城県 | 水戸市、日立市、土浦市、古河市、利根町 | |
栃木県 | 宇都宮市、下野市、野木町 | |
群馬県 | 高崎市 | |
埼玉県 | 川越市、川越市、行田市、所沢市、加須市、東松山市、春日部市、狭山市、羽生市、鴻巣市、上尾市、草加氏、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市、蓮田市、坂戸市、幸手市、鶴ヶ島市、吉川市、ふじみ野市、白岡市、伊奈町、三芳町、宮代町、杉戸町、松伏町 | |
千葉県 | 市川市、松戸市、柏市、八千代市、袖ヶ浦市、酒々井市、栄市 | |
東京都 | 福生市、武蔵村山市、羽村市、奥多摩町 | |
神奈川県 | 三浦市、秦野市、海老名市、綾瀬市、葉山町、大磯町、二宮町、愛川町、清川村 | |
岐阜県 | 岐阜市 | |
静岡県 | 静岡市 | |
愛知県 | 岡崎市、春日井市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、稲沢市、知立市、愛西市、北名古屋市、弥富市、みよし市、あま市、大治市、蟹江町 | |
三重県 | 津市、四日市市、桑名市、鈴鹿市、亀山市 | |
滋賀県 | 彦根市、守山市、栗東市、甲賀市 | |
京都府 | 宇治市、亀岡市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、大津川市、精華町 | |
大阪府 | 岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、富田林市、河内長野市、和泉市、柏原市、羽曳野市、藤井寺市、泉南市、大阪狭山市、阪南市、島本町、豊能町、能勢町、忠岡町、熊取町、田尻町 | |
兵庫県 | 明石市、猪名川市 | |
奈良県 | 奈良市、大和高田市、大和郡山市、生駒市 | |
和歌山県 | 和歌山市、橋本市 | |
広島県 | 府中町 | |
福岡県 | 春日市、大野城市、太宰府市、福津市、糸島市、那珂川町、粕屋町 | |
7級地 | 北海道 | 札幌市 |
茨城県 | 結城市、下妻市、常総市、笠間市、ひたちなか市、那珂川市、筑西市、坂東市、稲敷市、つくばみらい市、大洗町、阿見町、河内町、八千代町、五霞町、境町 | |
栃木県 | 栃木市、鹿沼市、日光市、小山市、真岡市、大田原市、さくら市、壬生町 | |
群馬県 | 前橋市、伊勢崎市、太田市、渋川市、玉村町 | |
埼玉県 | 熊谷市、飯能市、深谷市、日高市、毛呂山町、越生町、滑川町、川島町、吉見町、鳩山町、寄居町 | |
千葉県 | 木更津市、野田市、茂原市、東金市、流山市、我孫子市、鎌ヶ谷市、君津市、八街市、印西市、白井市、山武市、大綱城里市、長柄町、長南町 | |
東京都 | 瑞穂町、檜原村 | |
神奈川県 | 箱根町 | |
新潟県 | 新潟市 | |
富山県 | 富山市 | |
石川県 | 金沢市 | |
福井県 | 福井市 | |
山梨県 | 甲府市 | |
長野県 | 長野市、松本市、塩尻市 | |
岐阜県 | 大垣市 | |
静岡県 | 浜松市、沼津市、三島市、富士宮市、島田市、富士市、磐田市、焼津市、掛川市、藤枝市、御殿場市、袋井市、裾野市、函南町、清水町、長泉町、小山町、川根本町、森町 | |
愛知県 | 豊橋市、一宮市、瀬戸市、半田市、豊川市、蒲郡市、犬山市、常滑市、江南市、小牧市、新城市、東海市、大府市、知多市、尾張旭市、高松市、岩倉市、豊明市、日進市、田原市、清須市、長久手市、東郷町、豊山町、大口町、扶桑町、飛島村、阿久比町、東浦町、幸田町 | |
三重県 | 名張市、いなべ市、伊賀市、木曽岬町、東員町、朝日町、川越町 | |
滋賀県 | 長浜市、野州市、湖南市、東近江市 | |
京都府 | 城陽市、大山崎町、久我山町 | |
大阪府 | 岬町、太子町、河南町、千早赤坂村 | |
兵庫県 | 姫路市、加古川市、三木市、高砂市、稲美町、播磨町 | |
奈良県 | 天理市、橿原市、桜井市、御所市、香芝市、葛城市、宇陀市、山添村、平群町、三郷町、斑鳩町、安堵町、川西町、三宅町、田原町市、曽爾村、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町 | |
岡山県 | 岡山市 | |
広島県 | 東広島市、廿日市市、海田町、坂町 | |
山口県 | 周南市 | |
香川県 | 高松市 | |
福岡県 | 北九州市、飯塚市、筑紫野市、古賀市 | |
長崎県 | 長崎市 | |
その他 | その他の地域 | 1級地から7級地に入っていない地域が該当 |
[地域区分詳細表]
要介護・要支援度
利用者が介護保険を使って介護サービスを受けるためには、行政から要介護認定を受ける必要があります。要介護とは、利用者がどの程度の介護を受ける必要があるのかを5段階に分類したものです。また、要支援とは、介護は必要ではないものの日常生活に不便をきたしている方を2段階に分類したものです。
合わせて7段階に分類された要介護度、要支援度は処遇改善加算の計算には直接関係ありません。しかし、それぞれの分類によって介護保険の利用者限度額が設定されており、利用者負担額を計算する際に必要となります。
介護度 | 利用限度額 | 自己負担額 |
---|---|---|
要支援1 | 49,700円 | 4,970円 |
要支援2 | 100,400円 | 10,040円 |
要介護1 | 165,800円 | 16,580円 |
要介護2 | 194,800円 | 19,480円 |
要介護3 | 267,500円 | 26,750円 |
要介護4 | 306,000円 | 30,600円 |
要介護5 | 358,300円 | 35,830円 |
[1ヵ月あたりの利用限度額と自己負担額の目安]
計算方法
基本的な処遇改善加算の計算方法は以下の通りです。
- 1ヶ月あたりの総単位数の算出
- 介護報酬総単位数の算出
- 単位数→金額への換算
- 利用者負担額・国保連請求額の算出
①1ヶ月あたりの総単位数の算出
まず、1ヶ月あたりの総単位数を計算します。
計算式は、
(基本サービス費+各種加算減算)× 利用日数
=1ヶ月あたりの総単位数…A
となります。
②介護報酬総単位数の算出
次に、介護報酬総単位数を計算します。
①で算出した1ヶ月あたりの総単位数にサービス別加算率を乗算します。取得した処遇改善加算区分、事業所のサービスに合致した加算率を表から照らし合わせ、計算しましょう。
※注意:②での計算結果の小数点以下の端数は四捨五入。
計算式は、
A × サービス別加算率
=処遇改善加算の総単位数…B
A + B
=介護報酬総単位数…C
となります。
③単位→金額への換算
次に、②で計算した介護報酬総単位数を金額へ換算します。
この換算レートは地域区分によって差があるため、事業所が位置する地域区分の率を採用する必要があります。
※注意:②での計算結果の小数点以下の端数は切り捨て。
計算式は、
B × 地域区分
=処遇改善加算総額
C × 地域区分
=介護報酬総額…D
となります。
④利用者負担額・国保連請求額の算出
最後に、利用者負担額と国保連請求額の計算をします。
平成27年度の介護報酬改定により、介護報酬の9割を公金が負担、1割を利用者が負担することになりました。
※注意:④での計算結果の小数点以下の端数は切り捨て。
計算式は、
D × 90%
=国保連請求金額
D × 90%
=利用者負担額
となります。
また、国保連請求金額が介護保険の利用者限度額を超えてしまった場合は、その超過分は利用者が支払うことになります。
計算ソフト
「とき」は、毎月行政に提出する書類を簡単に作成することができるフリーソフトです。
提出書類を作成するためには、介護サービスごとの単位計算や要介護度の把握、加算減算などの選択を事業所ごとに行わなければなりません。
このソフトでは、そんな事務作業を簡単に、所定欄に数値を打ち込むだけで計算することができます。
また、印刷機能にも優れているので、完成した書類をすぐに文書化することができ大変便利な仕様となっています。
フリーソフトなので、是非一度試してみてください。
処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。