介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

処遇改善加算における見込額の計算方法とは

介護職員の賃金改善を目的として創設されたのが、介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)です。

介護職員の離職率を下げて安定した人材を確保するためにと、介護事業者の皆様からも注目されています。

今回はこの処遇改善加算の見込額の計算方法や注意点について、詳しく解説していきますので、ぜひご一読ください。

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処遇改善加算の見込額とは

処遇改善加算の見込額の目的

計画書に記載するために事前に払い込まれる金額を予測する

加算を算定しようとしている介護サービス事業所は、「厚生労働大臣が定める基準」

介護職員処遇改善加算計画書の中に処遇改善加算の見込額について記載することと

規定されています。

 

加算算定額の見込額の算定式は下記の通りです。

① 2016年(平成28年)より前に加算を取得していないサービス事業者等または2016年より前に加算を取得していたサービス事業者等の場合。(3(1)ロ但し書きによって届け出た介護サービス事業者等を除いたもの)

介護報酬総単位数(見込数)×サービス別加算率(1単位未満の単数は四捨五入する)×1単位の単価(算定の結果は1円未満の単数を切り捨てる)

② 2016年より前に加算を取得していたサービス事業者等で、3(1)ロ但し書きによって届け出た介護サービス事業者等である場合。

介護報酬総単位数(見込数)×(加算①に係るサービス別加算率-加算②に係るサービス別加算率)(1単位未満の単数は四捨五入する)×1単位の単価(算定の結果は1円未満の単数を切り捨てる)

求人票などに記載する

最近の求人票には「介護職員処遇改善加算対象施設」と記載され、処遇改善加算の

見込額を明示してある事業所も増えてきています。

見込額を明示することで、より透明性のある事業所という求職者へのアピールにも繋がります。

処遇改善加算の詳細はこちらから確認してください。

処遇改善加算について

処遇改善加算の計算方法

処遇改善加算の計算方法については、下記の通りとなります。

① 1カ月あたりの総単位数の算出

② 介護報酬総単位数の算出

③ 単位数→金額への換算

④ 利用者負担額・国保連請求額の算出

では、それぞれについて解説していきます。

1カ月あたりの総単位数の算出

計算式は下記の通りです。

(基本サービス費+各種加算減算)×利用日数=1カ月あたりの総単位数(=A)

基本サービス費とは、サービスごとの介護報酬より各種加算や減算、加算率を無視した値(単位)のことです。

つまり、介護費用にとっての基本料金となります。

また、介護報酬はサービス事業者や施設等により介護サービスが行われた場合において、その対価として支払われる報酬のことです。

各種加算減算とは、基本料以外にサービスの費用単位のことです。

サービスを提供する時間帯や、事業所の人員、緊急時の対応等により様々な加算減算があります。

介護報酬総単位数の算出

介護報酬総単位数は、サービスごとの基本サービス費に各種加算減算を加えた一カ月あたりの総単位数であり、算定を受けようとする年度において介護サービスの提要に係る見込みで算出します。

この際、過去の実績や事業計画などを考慮し、事業の実態にきちんと沿った数を用いましょう。

1カ月あたりの総単位数にサービス別加算率を乗法しましょう。

処遇改善加算区分や事業所のサービスに合った加算率を当てはめ計算します。

  

計算式は下記の通りです。

A×サービス別加算率=処遇改善加算の総単位数(=B)

A+B=介護報酬総単位数(=C)

 

サービス別加算率とは、サービス別介護職員処遇改善加算率のことを言います。

加算率とは、行政によって処遇改善加算における追加の報酬を交付してもらうよう、サービスごとに規定された率のことを言います。

2012年(平成24年)の介護報酬改定で行われた変更点の一つで、職員の給与変動に大きく影響します。

 

例を挙げると、訪問介護では加算Ⅰで13.70%、加算Ⅱで10.00%、加算Ⅲで5.50%、加算Ⅳで加算Ⅲの90%、加算Ⅴで加算Ⅲの80%となっています。

2017年(平成29年)4月以降のサービス別加算率が記載されたURLを添付しておきますので、参考になさってください。

処遇改善加算の計算方法とは 平成27年度最新版

単位数→金額への換算

上記の計算式を用いて計算した介護報酬総単位数を、金額へと換算します。

地域区分により差があるため、事業所が位置している地域区分率を採用するようにしましょう。

  

計算式は下記の通りです。

B×地域区分=処遇改善加算総額

C×地域区分=介護報酬総額(=D)

 

ここでの地域区分とは、地域間において人件費に差があることを考え、地域間の介護保険費用を配分する方法を調整していくための区分のことを言います。

2015年の介護報酬改定により、8区分(1級地、2級地、3級地、4級地、5級地、6級地、7級地、その他)となっています。

金額については、1級地(東京都特別区)が最高で、その他(1級地から7級地に入っていない地域が該当します)が最低となります。

地域区分について記載されたURLを添付しておきますので、参考になさってください。

地域区分とは

利用者負担額・国保連請求額の算出

2015年介護報酬改定の際、介護報酬の9割を公的資金が負担し、残りの1割については利用者が負担すると規定されました。

 

計算式は下記の通りです。

D×90%=国保連請求金額

D×10%=利用者負担額

 

尚、国保連請求金額が介護保険における利用者の限度額を超過した場合、その分は利用者が負担します。

まとめ

今回の記事では、処遇改善加算における見込額についてと、その計算方法について見てきました。

計算式が複雑なようにも見えますが、一つ一つ当てはめて行っていくことで、スムーズに処遇改善加算の見込額が導き出されるでしょう。

処遇改善加算計画書を効率的に運営することで、よりスムーズな経営に繋がると良いですね。

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

介護職員処遇改善加算届出の提出書類、計画書と同意書について

介護職員処遇改善加算については、事業者の皆様も関心が高いものと思われます。

今回の記事では、介護職員処遇改善加算届出の提出書類である計画書と同意書について解説していきます。

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介護職員処遇改善加算届出の提出書類

介護職員処遇改善加算届出の提出書類は、原則として年度ごとに提出することが必要とされています。

年度途中に加算を新たに算定したい場合や加算の内容を変更する場合については、加算算定が開始する月の前々月末までに届出を行うこととされていますので注意しましょう。

なお、提出書類については、各都道府県や条件等により異なります。

介護職員処遇改善計画書

介護職員の賃金改善のための費用の見込み額が、加算の算定見込み額を上回る賃金改善のための計画を作成しますが、これを介護職員処遇改善計画書といいます。

加算を取得する年度の前年の2月末日までに、都道府県知事等に届け出ることとされており、計画書の記載事項については以下の通りとなります。

 

① 算定する加算の区分

② 介護職員処遇改善加算算定対象月

③ 介護職員処遇改善加算の見込み額

④ 賃金改善の見込み額

 Ⅰ)加算の算定によって賃金改善を行った場合の賃金総額

 Ⅱ)加算を算定しない場合(つまり元の賃金水準)の賃金総額

  上記二つを記載し、ⅠからⅡを差し引いた額が賃金改善の見込み額となります。

 さらに、賃金改善の見込み額が、加算の見込み額を上回るようにします。

⑤ 賃金を改善実施する期間

⑥ 賃金改善をどのように行うのか。

 賃金改善をいつから実施するのか時期について、また介護職員一人当たり幾ら賃金を改善する見込みなのか、分かる限り具体的に記載することが求められます。

 ただし、2014年度(平成26年度)以前より加算を取得していた事業者等の場合は上記と異なります。

③新しい加算のうち、上乗せ分である12,000円相当分の見込み額

④現在の加算と比べた場合の賃金改善の見込み額

 Ⅰ)新しい加算の算定によって、賃金改善を行った場合の賃金の総額

 Ⅱ)新しい加算を算定する前年度の、現加算によって賃金改善後の賃金の水準である場合の賃金の総額を記載。

なお、前年度に勤務していない介護職員については、同種同等の職員の賃金水準を基にして計算します。

ⅠからⅡを引いたものを賃金改善の見込み額とするようにされています。

また②が①の額を上回るようにしましょう。

 

①②⑤については、上記と同様です。

 

このほかに添付書類として、事業所一覧表、届出対症都道府県内市町村一覧表、都道府県状況一覧表の提出が必要となります。

計画書への同意書

上記のように計画書を作成しただけではなく、サービスを利用している利用者に対して事前に介護職員処遇改善加算の内容についてきちんと説明し、文書にて同意を得なければなりません。

介護職員処遇改善加算は、事業所に対して介護職員の処遇改善を目的として、賃金改善等の取り組みを行うよう認められた加算であることを利用者に説明しましょう。

そのうえで幾ら増額になるのか、具体的な金額が分かる計算式等記載した文書を利用者に提示します。

加算要件等をしっかりと利用者へ説明し理解を得たうえで、同意書へ署名と捺印をもらいましょう。

場合によっては、重要事項説明書を変更するなどして、利用者が不利益を受けないよう配慮しましょう。

その場合についても、事前に利用者へ説明し、同意を得たうえで署名と捺印頂くことが基本となります。

記入例

介護職員処遇改善計画書

前述した、介護職員処遇改善計画書への記載事項①~⑥までを記載します。

① 算定する加算区分

 介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの中から選びましょう。

② 介護職員処遇改善加算対象月を記載します。

③ 介護職員処遇改善加算の見込み額

 介護報酬総単位数×サービス別加算率(1単位未満の単数四捨五入)×10(1単位の単価)として計算します。

④ 賃金改善の見込み額

 ③の金額を上回るよう記入しましょう。

⑤ 賃金を改善する実施期間

 原則として、4月から3月までを基本として記載します。

 年度途中で加算を取得するような場合は、当該加算を取得した月から開始となります。

⑥賃金改善をどのように行うのか

 例をみてみましょう。

 例)

 常勤介護職員○人に対し基本給を月額○円、非常勤職員○人に対し時給を○円増額する。扶養手当を月額○円から○円に引き上げる。

 全体で介護職員の賃金1人あたり平均月額○円増額する。

 

以上のように、該当職員数や具体的な金額を明示しましょう。

計画書への同意書

例)介護職員処遇改善加算Ⅰを算定

  介護職員処遇改善加算(ひと月あたり)

  介護報酬総単位数(基本サービス費+加算減算)

×サービス別加算率(4%)(1単位未満四捨五入)

  ×1単位の単価(1円未満切り捨て)

  

  利用者負担額 = (上記金額)-(上記額×0.9)(1円未満切り捨て)

 

以上のように、具体的な金額を明示できるようにしましょう。

 

提出書類ファイルのリンク

東京都の2016年(平成28年度)介護職員処遇改善計画書の提出書類について、リンクを貼っておきますので、ご確認ください。

平成29年度介護職員処遇改善計画書の提出について 東京都福祉保健局

まとめ

今回は、介護職員処遇改善加算届出の提出書類、計画書と同意書について見てきました。

提出すべき書類内容や種類について整理できたでしょうか。

加算の届出をしっかり行って、スムーズな運営を行っていきましょう。

 

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

介護職員処遇改善加算の返還とは?

介護事業者の皆様の間でいつも話題に上がる介護職員処遇改善加算。

業界全体で人材の定着が問題視されている中、賃金改善による従業員満足度の向上とても大切です。

しかし、正しく加算や賃金改善を行わなかった場合、行政処分が下されることもあります。今回の記事では、介護職員処遇改善加算の返還に関して詳しくご説明していきます。

ぜひ一読し、正しく加算を行っていきましょう。

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介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは、介護職の職種定着やサービスの質的向上、事業所のイメージアップなどを目的に、一定のキャリアパス要件を満たした事業所に算定される加算のことをいいます。

加算については介護報酬改定ごとに少しずつ変化しており、加算の種類も現在は4種類に増えており、サービス種別に応じて加算のパーセンテージも異なりますので、こちらを参照してください。

障害福祉サービスにおける処遇改善加算について

 

2012年(平成24年)から介護報酬に創設されていますが、改定ごとに処遇改善加算は上乗せされ続けており、2017年(平成29年)にも上乗せが予定されています。

この処遇改善加算は、2011年(平成23年)までに実施された「介護職員処遇交付金」が元になっています。

度重なる改定もあり徐々に処遇は改善されている事業所も確かにありますが、現場の声を聞くと、処遇改善加算はあまり功を奏していないという声が聞こえてきます。

1人あたりのマンパワーも、高齢化社会に伴い増加してきているため、平均して給料は増えているものの、マンパワーに比例するだけの報酬にはまだ到達していないというのが現場の本音のようです。

介護職員処遇改善加算の不正

その1:加算の不正請求

処遇改善加算の算定要件には、加算の種類に応じて満たすべきキャリアパス要件が設けられています。

不正請求といっても、悪意のある場合とない場合があり、前者については厳しい処分が下されるケースがあります。

具体例についてはこちらを参照してください。

介護保険施設等の実地指導 行政処分の事例紹介

 

よくあるケースとして、処遇改善加算要件には、資質向上のための計画にそって、研修機会の提供または技術指導などを実施するとともに、介護職員の能力評価を行うことと記されていますが、こういった教育・評価計画を立てずに、研修等の機会を作らないまま加算請求をするケースが見受けられます。

また、計画は作っていたけど、職員、施設の都合等で、研修が延期し、そのまま実施されないまま翌年度まで持ち越されたのにも関わらず、キャリアパス要件を満たしたとして加算請求してしまうこともあります。

こういった場合は全て不正請求とみなされますので注意が必要です。

その2:監査時の虚偽報告

監査(実地指導)は、通常、事業所には入りません。

利用者やご家族からの訴えや、内部告発などを理由に行政が事業所に立ち入って、書類の確認や、業務の実態について確認し、問題が発覚すれば行政処分となります。

事業所に来る段階で、「不正をしている可能性がある」ということですので、下手に誤魔化すとより重い行政処分が下りますので、虚偽報告は絶対にやめましょう。

 

虚偽報告事例は多々ありますが、例えば、訪問介護の資格を有していない人が訪問介護サービスを提供していたのにも関わらず、資格のある人がサービス提供していたと虚偽の報告を行政職員に行い、それが発覚し、スムーズな実地指導を妨害した場合、指定事業所の効力を期間付で停止処分になったり、最悪の場合、事業所の指定取り消し処分になります。

不正による返還処分

一般的に、行政処分の形には以下のようなものが挙げられます。

  • 新規利用者の受け入れ停止処分 
  • 事業所の指定取り消し処分
  • 返還金請求

などが挙げられますが、今回は、返還金請求について紹介します。

そもそも返還処分とは一体なんなのでしょうか。

処遇改善加算は、事業所ごと、かつ、加算の種類に応じて、加算申請できる額が異なってきますが、処遇改善加算のキャリアパス要件を満たすと思われる事業所からの申請を受け、加算額が支給された事業所が、なんらかの理由によって、行政に加算額をそのまま返金することを返還処分といいます。

そもそも、加算の算定要件は、賃金改善額が、加算による収入額を上回ることを指すため、加算による収入額を下回ることは予想されませんが、加算による収入額を下回っている場合は、一時金や賞与として支給することが望ましいとされてます。

これも、悪質なケースは、加算の算定要件を満たしていない不正請求として、全額返還処分の対象になりますので、加算による収入額を下回る賃金改善額だった場合は、上記のような対処で進めるようにしましょう。

また、基本的に処遇改善加算の算定期日が設けられていますが、その当該期間において、実績報告がない場合でかつ、行政からの再三の実績報告の提出勧告が出ているにも関わらず、実績報告の提出を行わない場合、加算の算定要件を満たしていない不正請求として、これも全額返還処分の対象になります。

このように、行政処分で最も多いのが不正請求になりますが、不正請求についても「公益侵害の程度」や「故意性」「反復継続性」「組織性」などを考慮し、厳重注意で済むものから、指定取り消しと重い処分になるものまで様々です。

不正による返還の事例

例1)訪問看護、介護予防訪問介護事業

このA事業所は、処遇改善加算の算定要件を満たしながらも、改善額を受け取りながら、当該職員に対して賃金補助は行わず、施設の利益として献上。

従業員からの内部告発があり、行政による実地指導が入りました。

さらにその際、行政には「待遇を改善した」と虚偽の報告を行ったとして、指定の取り消し及び返還処分となりました。

先述しましたが、行政が事業所に立ち入るという段階で、ある程度行政は目星をつけて監査に踏み切っていますので、実地指導が入る場合は素直に報告するのが望ましいでしょう。

 例2) 訪問介護

B事業所はキャリアパス算定要件を満たしているとのことで、処遇改善加算を算定しました。

介護職員への技術指導計画や能力評価についても年間予定表を作成し、スケジュール通りに遂行していましたが、介護職員の都合や、施設の都合等により、計画していた技術指導(OJT,OFF-JT)が延期及び中止になってしまい、実施しないまま翌年度を迎えました。

退職した職員の通達により、行政による実地指導の結果、不正請求として返還処分の行政指導が入りました。

まとめ

今回は、処遇改善加算の返還処分について紹介させていただきました。

介護事業所における行政処分のほとんどは、不正請求による処分がほとんどです。

そのうち処遇改善加算における返還処分も含まれていますが、処遇改善加算について介護報酬改定ごとにその金額は増加しています。

それに比例して、その基準要件も厳しくなっているため、不正請求が増加する懸念があります。

 

処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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