介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

個別機能訓練加算における算定要件のチェックすべきポイントとは

 

通所介護施設において個別機能訓練加算の取得はとても重要となります。どのような条件でこの加算を取得できるのか適切に理解することが望まれます。経営、雇用の安定化を目指したい介護事業者の皆様の参考になればと思います。

 

 

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個別機能訓練加算とは?

通所介護施設(デイサービス)にて看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などが施設の利用者個々人の状況に適した個別機能訓練計画をもとに訓練を行った場合に算定することができる加算のことです。

 

算定までの流れ

まず、利用者の状況に合わせた個別機能訓練計画書を作らなくてはなりません。算定までの流れは以下のようになります。

  1. 算定のためにはまず、利用者の身体状況の把握、居宅での過ごし方や今後どんな生活を送っていきたいかなどを知る必要があります。利用者本人やその家族、ケアマネージャーに聞くことでより良い情報収集が可能です。
  2. 次に、情報をもとにアセスメント(分析・評価)し、計画書を作成していきます。この時、多職種で行うことが原則になっているので一人で行わないように気をつけてください。計画書は厚生労働省から通達されている様式があります
  3. 計画書が完成したら利用者と家族への説明を行います。この時大事なこととしては、同意と署名をもらうことです。この作業は後回しにされ、結局忘れてしまう職員もいますが、加算に必要なので都度もらうよう心がけましょう。その後コピーを取り、利用者およびその家族にそのコピーを渡す必要があります。
  4. 同意をもらうことができたら、個別機能訓練計画書に沿って訓練を実施していきます。実施後には訓練内容や日時、担当者のサインを忘れずに記録しておきましょう。
  5. 三カ月に一度、利用者の身体機能を評価します。利用者の身体状況に変化があった場合などには訓練内容の見直しが必要となります。

このように個別機能訓練計画書を作成していきます。

 

個別機能訓練加算ⅠとⅡ  

個別機能訓練加算には、「個別機能訓練加算Ⅰ」と「個別機能訓練加算Ⅱ」があります。

加算を算定できる職員は、看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師に限られます。

 

個別機能訓練加算Ⅰは利用者の選択した機能訓練を通して身体機能の維持することを目的としています。機能訓練とは、しばしばリハビリと間違えられることもありますが、全くの別物です。機能訓練は機能訓練指導員(看護職員、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師)が実施する利用者の身体機能の減退防止、つまりは維持を目的とされたものです。

算定には週一回以上、5人ほどのグループに分かれて個別機能訓練計画の実施することが必要で、単位数は1日42単位です。単位数は、1単位20分として計算します。

また、常勤の機能訓練指導員を1名以上配置する必要があります。なお、看護職員がこの加算を算定したい場合は、看護職員としては人員には含まれません。

 

個別機能訓練加算ⅡはADLの能力とIADLの能力を維持することを目的としています。

ADLとは日常生活動作を意味します。日常生活動作とは例えば、食事をする、入浴する、排泄する等の生活するために行う行動のことを指します。

IADLとは手段的日常生活動作を意味します。先ほどのADLより複雑な動作であり例えば、金銭管理や服薬の管理、買い物等の行動のことを指します。

算定には、週1回以上5人以下の小集団で個別機能訓練計画を行う必要があり、単位数は1日50単位です。

 

個別機能訓練加算ⅠとⅡは算定内容が異なる部分が多々あるため、初めは難しく感じるかもしれません。下記の表で具体的な算定要件をご確認ください。

 

個別機能訓練加算ⅠとⅡの算定要件の違いについて

個別機能訓練加算ⅠとⅡの要件の違いがあり、混乱しやすいため表にまとめたので、参考にしてみてください。

個別機能訓練加算Ⅰ

個別機能訓練加算Ⅱ

・目的

利用者の自立の支援と日常生活の充実が目的です。

身体機能回復を主とする目的とした訓練ではありません。利用者個々人現在の身体機能を活用して、生活機能の向上、維持を目指すものです。

・単位数

42単位/日

50単位/日

・人員配置

サービス提供時間を通して勤務し、機能訓練指導員のみに従事する専従常勤が1名以上必要です。

非常勤の機能訓練指導員が配置される曜日は、加算対象とはなりません。

機能訓練を実施する時間帯に勤務し、機能訓練指導員のみに従事する専従の職員が1名以上必要です。

機能訓練指導員から直接訓練を受けた利用者のみが加算対象となります。

・訓練内容

複数の種類(自立支援と日常生活の充実)の機能訓練項目を準備、項目の選択は機能訓練指導員が利用者の選択を援助していきます。

生活向上を目的とする機能訓練項目が必要となります。実際的な行動そのものや、それを模した行動を反復して行うことにより、段階的に目標の行動ができるような内容にします。

・実施範囲

グループに分かれて実施。

 5人以下の小集団。(個別対応を含む)

・実施者

制限はありません。

必ずしも機能訓練指導員が直接実施する必要はなく、機能訓練指導員の指導のもとであれば別の従事者が実施しても良いです。

機能訓練指導員が直接実施します。

・実施環境

制限はありません。

浴室設備・調理設備・備品等そろえ実践的な環境での実施環境を整えます。

 

共通の算定要件もご紹介していきます。

  • 多職種で、利用者の心身状況や居宅での過ごし方を重視し個別機能訓練計画を作成します。
  • 個別機能訓練計画に従って、機能訓練項目を準備し機能訓練指導員が適切に行います。

この時、利用者の日々の健康状態、精神状態に配慮することが重要となります。

 

  • その後3カ月に1回以上、利用者の居宅訪問し利用者本人や家族に対して訓練内容、計画の進行状況の説明し、見直しを行います。
  • 目標の達成状況や評価内容について、担当のケアマネージャーに報告、相談し、必要に応じて利用者本人や家族の意向を確認し、利用者の目標の再検討やそれに伴う訓練方法の変更を行います。
  • 個別機能訓練に関する記録は厳密に保管し、事業所の機能訓練指導員が誰でもすぐに閲覧することができる環境を整えます。記録は加算申請時にとても大切な書類なので、記録時に見落とし、書き忘れがないか確認が必要です。

 

算定要件を満たす上での注意事項

Q&A方式にして注意事項をご紹介していきます。

 

Q,個別機能訓練加算ⅠとⅡは並行して行うことができますか?

A,並行して行うことができます。

個別機能訓練加算ⅠとⅡを同じ日に算定することできますが、この場合、個別機能訓練加算Ⅰを行う常勤専従の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練指導員として従事することはできません。そのため、同じ日に算定を行う場合には最低でも機能訓練指導員を2名配置しなくてはなりません。

 

Q,個別機能訓練加算ⅠとⅡを算定する場合、一度の居宅訪問で要件を満たすことはできますか?

A,個別機能訓練加算ⅠとⅡの共通算定要件にもあったように3ヶ月に1回以上の居宅訪問を行わなくてはなりません。併算定する場合、居宅訪問による生活状況の確認を個別に実施する必要はありませんが、もちろん機能訓練の内容は異なるため、両加算の趣旨の違いに注意して、個別機能訓練計画を作成する必要があります。

厚生労働省より通達された居宅訪問チェックシートもあるので、それを使用すると良いかと思います。

 

Q,居宅訪問している時間は、必要な配置時間に含めて良いのか?

A,個別機能訓練計画に支障がない範囲においては、例えば送迎時などの短時間の居宅訪問時も配置時間に含めることはできます。生活相談員は、事業所外の活動が認められるため勤務時間として扱われます。

 

Q,サービスを利用してくれる見込みがある利用者で利用契約前に居宅訪問をし、その後利用契約に至った場合は算定要件を満たすことでできますか?

A,利用契約前に居宅訪問を行った場合も、個別機能訓練加算の居宅訪問の要件を満たすことができます。

要件を満たすためには、居宅訪問時にADL・IADLについて確認する必要があります。

居宅訪問チェック表を使用するとわかりやすく、スムーズに行えます。

 

Q,個別機能訓練加算Ⅰの算定要件の常勤専従の機能訓練指導員として、診療所・訪問看護ステーション・病院との連携による看護職員を1名以上あてることでその加算要件は満たせますか?

A,個別機能訓練加算Ⅰの算定要件が常勤専従の機能訓練指導員の配置が必要なので、常勤でない場合は認められません。連携による看護職員ではなく、専従の看護師または人員が必要となります。

 

Q,個別機能訓練計画作者は居宅訪問者と同一人物の必要はあるのか?また、訪問者は毎回かわっても良いのですか?

A,3カ月に1回以上居宅訪問し生活状況を確認するのは、毎回同一人物で行う必要はありません。なので、多職種が違う視点で見ることでより良い計画書ができると思います。

 

Q,個別機能訓練計画書の居宅時の生活状況の確認は、看護職員・介護職員・生活相談員の機能訓練指導員以外に他の職種を想定していますか?

A,個別機能訓練計画は多職種で作成するため、個別機能訓練計画作成に関わる職員であれば職種は関係なく居宅訪問と計画作成共も行うことができます。計画作成には多職種で担当職員だけではなく、時には担当職員外の人も参加すると今まで気付かなかった部分に気付くきっかけとなるので、是非試してみてください。

 

まとめ

昨今、機能訓練の場を求める高齢者のニーズをうけて、リハビリに特化した通所介護に対する重要が高まってきました。従って事業所にとってもリハビリができる環境は非常に重要であり、それに伴い加算はとても重要な報酬となります。事業所が安定した経営を可能にするために必要な条件の一つではないでしょうか。

また、個別機能訓練実施には他職種との協力や様々な視点で目標達成に向けた取り組みが必要になります。個別機能訓練加算ⅠとⅡの算定条件の違いを正しく理解し、どのような条件においては算定できるのか、もしくはできないのか、適切に把握することが必須となります。今一度、上記内容に関して自身の職場にて確認してみてはいかがでしょうか?

 

個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

人員基準とは 介護事業を開業、継続するうえで守らなくてはならない基準とは

事業所運営にあたり、人材確保が必要不可欠ですが、昨今の介護業界において、人材確保は困難を極めます。そのため、常勤スタッフではなく、パート勤務を多く雇っている事業所が多いと思います。そこで、重要になってくるのはサービス業種別の人員基準かと思います。

今回は、人員基準について詳しく紹介していきます。介護事業を開業予定の方や人員について不安な介護事業者の方はぜひご覧ください。

 

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人員基準とは

介護事業所(居宅介護支援、訪問介護、通所介護など)の開設には、人員基準というものが設けられています。利用者それぞれへのサービスの低下を防ぐ他、施設の健全な運営のためや、指定権者から介護事業所としての指定を受けるために設けられたものを人員基準といいます。

その人員とは、介護支援専門員(ケアマネージャー)やはじめ、看護スタッフ(正看護師、准看護師)、生活相談員、介護職員、機能訓練指導員、常勤管理者など様々な職種のスタッフが携わります。

人員基準は提供サービスによって異なりますので、確認が必要です。また、もちろん開業の際に満たしているだけでは問題があります。実地指導や監査といった行政が介入するとき、人員に不備があれば最悪指定取消となってしまいます。

開業のときのみならず、日々の業務や人員が入れ替わったときなど定期的に確認するようにしましょう。

 

人員基準に頻出する語句と計算方法

・専らとは

専らとは、一般的には1つの事柄に集中すること、専念することを意味します。介護業界や人員基準にとっても同じで、1つの業務に集中することを指します。頻出する「専ら従事する」「専ら提供に当たる」は、原則としてその時に与えられた職務を全うし他の業務に介入しないことを意味します。

複数の資格を持っている職員の場合、能力的に様々な業務ができてしまいますが、人員基準の規定として「専ら」と定められているときには、任せられている業務を全うしなければなりません。

 

・常勤

常勤とは、事業所によって定められている週単位での勤務すべき時間を超えていることを意味します。その数値が32時間を下回る場合は32時間とします。よく正社員と勘違いしている方が見られますが、非常勤の職員であっても規定の勤務時間より長ければ常勤扱いとなります。

しかし、常勤にはイレギュラーが多く、例えば規定就業時間が32時間、勤務時間も32時間の職員が1日有給休暇を取得し、その週の勤務時間が32時間に満たない場合でもその職員は常勤扱いとなります。常勤としてみなされるのは勤務すべき時間であり、実質労働時間ではないからです。このように、細かいルールに配慮する必要があります。

 

・常勤専従

常勤の意味合いは先述の通りです。専従とは、勤務している職員が与えられた業務以外を行わないことを指します。つまり、常勤の要件を満たしながら、一定の職務に従事しているスタッフのことを、常勤専従と呼びます。

 

・常勤換算

常勤換算とは、事業所に勤めている職員全員の勤務時間の合計から事業所の常勤が勤務すべき時間数で割ることで、常勤でない職員を常勤職員数に変換することを意味します。職員全員と記載しましたが、パートや正社員等の職種は全く関係ありません。

常勤換算後の常勤換算人数の計算方法は以下となります。

 

常勤換算人数=

常勤職員の人数(非常勤職員の勤務時間の合計÷常勤職員が勤務するべき時間)

 

例えば、○△×事業所という訪問介護事業所のスタッフが5名いたとします。(この事業所の常勤の所定労働時間が週40時間と仮定します。)

Aさん:40時間(正社員)

Bさん:40時間(正社員)

Cさん:30時間(パート)

Dさん:20時間(パート)

Eさん:10時間(パート)

と仮定するのであれば、この場合の常勤換算式は以下のようになります。

2 + {(30 + 20 + 10) ÷ 40}=3.5

訪問介護事業所における運営規定では常勤換算で2.5人以上という基準がありますが、この事業所ではそれをクリアしていますので、人員基準を満たしていることになります。 

 

人員基準に含まれる職員と、そうでない職員

人員基準に数えられる職員

派遣社員や有給取得者

仮にある派遣職員を雇っている事業所の常勤の所定労働時間が月40時間とするとしましょう。契約社員として1年間、1日8時間週5日勤務の契約になっている場合、正社員ではありませんが、月に40時間以上の勤務になっているので派遣社員でも常勤という扱いになります。

また、上記のような月40時間勤務の労働者が有給休暇を取得した場合、実質の労働時間は月40時間未満になります。人員基準以下の勤務体系のように思えますが、この場合でも常勤扱いになります。あくまで常勤の定義として、勤務すべき時間と定められているので、実際に働いた時間は人員基準上関係ありません。

 

人員基準に満たされない職員

産休・育休取得者

産休・育休などで、1月以上勤務しない人については、常勤換算に含めることはできません。しかし、勤務時間を0として、職員の氏名に掲載し、運営規定などにおける員数に含ませることは可能です。

 

その他

非常勤勤務者

非常勤勤務者の場合、その事業の形態によって人員基準が変わるため、必要な人員によっては非常勤では人員基準を満たさないケースがあります。

例えば居宅介護事業所の場合、管理者は常勤かつケアマネージャーである必要がありますが、利用者35人以上になるとケアマネージャーが1名増員しなければなりません。その追加のケアマネージャーは非常勤でもあってもよいとされています。非常勤勤務者の人員基準については、展開する事業によって扱いが様々ですので、事業別の人員基準を確認しましょう。さらに、監査指定期間により、人員基準の取り扱いが異なることもあるので、スタッフの配置については、管轄する監査指定窓口で確認しましょう。

 

 

 

人員基準違反について

人員基準違反とは?

介護事業者は、厚生労働省や指定権者によって通告された介護保険法や基準を適切に守り、運営することが義務付けられています。また、常にその事業の運営向上に努める必要があるとされていますが、中には上記を守りきることができない事業所も存在します。このように、その事業所に定められた人員要件を満たせずに虚偽の人員報告を行い、行政から処分されてしまうことを、人員基準違反といいます。

 

いつ発覚するのか

各事業所にて定期的に行われる「実地指導」と呼ばれるものがあります。実地指導とは、指定更新期間内(6年)に1度、都道府県の担当者が直接介護事業所を訪問し、適正な事業運営がなされているか確認する機会のことです。実地指導はおおよそ2週間前に告知してから行われるため、突然訪問されることはまずありません。また、日ごろから健全な経営を心がけている事業所であれば、この実地指導で基準違反が発覚するケースは稀です。

一方、実地指導以外に担当者が事業所に訪問するものとして「監査」があります。これは実地指導で違反と危惧される箇所が見つかったときや、利用者や家族からの苦情や相談などが原因となり行われます。行政側の勧告や命令に従わなかった場合や違反が実際に見つかった場合、指定を取り消すなどの強制的な措置を行う必要があるか判断するものです。この監査で、人員基準違反が発覚するケースがほとんどです。

 

違反するとどうなるのか

違反した場合、事業所の指定の取り消しや請求の一部制限、新規利用者の受け入れ停止、期限付きでのサービス停止などの処分を受けます。

 

事例

平成25年2月度の処分例

  • A訪問介護事業所:人員基準違反例

サービス提供責任者が常勤専従ではなく、併設事業所の業務を兼務していたため。

  • B通所介護事業所:人員基準違反例

生活相談員、看護職員及び介護職員について、不在日も出勤したように加工した出勤簿を監査時に県に提出。

このような事例は都道府県等のホームページに掲載されていることもあります。反面教師として事業所の適正な運営に努める必要があるでしょう。これくらいならバレないだろうと安易な気持ちで事業を運営していると、最終的に被害を受けるのは利用者の方々です。また、そのような事業所はいずれ内部告発や利用者からの訴えで必ず監査が入り、違反が発覚するでしょう。

 

 

人員基準欠如減算について

人員基準欠如減算とは?

人員基準欠如減算とは、通所介護にかかる減算の一種です。通所介護の必要人員数は厚生労働省によって明確に定められていますが、その基準に達しなかった場合に算定されます。

減算の目的としては、一定の介護サービスの質を担保することと考えられます。職員が少ないということは、職員1人あたりがケアを担当する利用者の数が増えることになります。必然的に利用者1人あたりが享受するサービスの質は下がることなり、利用者は適切なケアを受けることができなくなってしまいます。人員基準欠如減算はこのような事態を防ぐために存在します。

下記の計算式では、実際にどの程度の人員が必要か割り出すことができます。

 

介護職員の場合

1ヶ月に配置された職員の総勤務時間数 ÷ 1ヶ月に配置すべき職員の総勤務時間数

計算結果が0.9を下回った場合に算定

 

看護職員の場合

サービスが提供された日に配置された総看護職員数 ÷ サービス提供日数

計算結果が0.9を下回った場合に算定

 

人員基準違反との違い

人員基準違反は介護事業所立ち上げに際した必要スタッフ全職種対象にしていいますが、人員基準欠如減算は看護・介護職員のみ対象となっています。つまり、相談員や栄養士などは、この人員欠如減算対象職種ではないということなります。

しかし、減算されないからといて、これらの職員を配置しなくて配置基準を守らなくてもよいという意味ではありません。人員基準について、また事業所内のサービスを考えた上で、配置するか否かを判断しましょう。

  

いつ発覚するのか

人員基準違反とは異なり人員基準欠如減算は、事業所の必要書類の不手際から発覚する場合や、実地指導から計画書の確認を通して発覚する場合など様々です。

介護事業所では実地指導などの際、利用計画書の提出を求められる場合があります。このような機会に人員基準欠如減算の対象となる事業所の多くは以下のようなケースに陥っているようです。

 

  • 計画作成担当者が配置されていない
  • 介護支援専門員の資格を持っている人が計画作成担当になっていなかった
  • 厚生労働省が定める研修を受講していない計画作成担当者を配置して、当該職員が研修を受講しないまま退職した

 

 

まとめ

人員基準は事業を展開する上で常に確認しておくべき事項です。この人員基準を満たさずに事業展開すると、最悪の場合は指定取り消し、業務停止などの行政処分になる可能性がありますので、必ず確認をしておきましょう。

また、昨今の介護業界では利用者が増加の一途を辿る反面、スタッフの数は伸び悩んでいる実情があります。そのため、人員基準は満たしている、でも、人が足りないと嘆いている事業所は多く存在します。

そのため、利用者から満足した声を得られないことや、介護職員の一人当たりの負担増大に伴い、離職が加速するなど、悪循環に陥るケースも多々見受けられます。人員基準は、あくまで”最低これだけの人数はいないと厳しいですよ”という目安であるということを忘れないでください。人員基準分だけ職員を用意すればいい、という解釈は推奨しません。あくまで利用者目線となり、サービスの質を高められるような人員配置ができるような事業所が望ましいですね。

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人員基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

事業所評価加算ってなに?意味や申請手順は?

事業所評価加算について、皆さんはどの程度熟知していますか?

算定要件を理解し、適切な時期に各都道府県に届出を出せているでしょうか。

今回は、事業所評価加算の意味や算定要件、手順、よくある質問などについて、いくつか紹介させて頂きます。

 

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事業所評価加算とは

事業所評価加算を端的に説明すると、選択的サービス(※)を実施している介護事業所を評価するための加算です。

事業所がしっかりとしたサービスを提供できているかどうか確認し、サービスを利用されている方の身体機能が維持されていることや、サービス利用者が一定以上となったときに算定できます、詳しくは各都道府県ホームページに記載されておりますので、正しい文言については各都道府県ホームページをご確認ください。

※選択的サービスについては後述しております。

 

どのようなサービス業種に関係がある加算なのか

冒頭でも記述しましたが、この加算の対象となるサービス業種は「介護予防通所サービス事業所」となります。

「介護予防通所サービス事業所」とは、「介護予防通所介護事業所」と「介護予防通所リハビリテーション事業所」を指します。算定要件を満たしている事業所かつ、一定の条件を満たしていれば、加算の対象になります。

 

算定すると何単位取得できるのか

1ヶ月に120単位を加算することができます。

算定にあたる評価対象期間については下記を参照してください。

 

どのくらいの事業所が算定できているのか

事業所評価加算は平成18年度の介護報酬改定において、事業所の目標達成度に応じた介護報酬を設定するといった観点から設定されたものです。

算定開始から10年ほど経ち、徐々に加算を取得している事業所は増加してきましたが、平成20年度8月審査分の介護給付実態調査による算定実績では、下記のような算定割合となっています。

 

 

①加算対象事業所

②全事業所

事業所の割合(①÷②)

介護予防通所介護

48事業所

6609事業所

0.7%

介護予防通所リハ

36事業所

3350事業所

1.1%

合計

84事業所

9959事業所

0.8%

 

介護予防通所介護の算定をとっている事業所は、全事業所、約6600事業所に対して、加算対象事業所はわずか48事業所で、その割合は0.7%でした。

さらに、介護予防通所リハビリテーション算定をとっている事業所は、3350事業所のうち、36事業所で、全体の1.1%であり、平均にして0.8%と低い割合に留まっていることがわかります。

 

どうすれば算定要件を満たせるのか

加算を取得している事業所が少ないですが、増えてきていることは確かです。具体的に算定要件を知り、ご自身の事業所では取得できる可能性があるのか、見ていきましょう。

 

算定要件

 算定要件は以下となります。

  1. 定員利用・人員基準に適合しているものとして、都道府県知事に届け出て運動機能サービス、栄養改善サービス、口腔機能サービスを行っていること
  2. 利用実人員数が10名以上であること
  3. 利用実人員数のうち、60%以上に選択的サービスを実施していること
  4. 評価基準値が0.7以上であること

 

算定要件内の数式の解説

加算要件に含まれる評価基準値の計算については、下記の数式を利用します。

(要支援度の維持者数+改善者数×2)÷評価対象期間内に選択的サービスを3月以上利用後に更新・変更認定を受けた者の数」>0.7

 

数式を言葉にすると難しく感じますが、実際そんなことはありません。

例えば、A事業所の要支援者数が15名、(この15名が能力低下していないと仮定)当該期間中の4月初旬~7月下旬までの連続した期間、選択的サービスを使用したと仮定します。

この場合の計算式は以下のようになります。

(15 × 2)÷ 15 = 2 > 0.7

となりますので、この場合は、このA事業所は、翌年度からの事業所評価加算対象となります。

※実際には、利用者100%が維持・向上することはほぼあり得ません。なんらかの事業でサービスを途中で止めてしまうことや病気等が原因となり、能力が低下する可能性もあります。評価加算対象になっている事業所の多くは、0.7~1.5程度の数値となっています。

 

算定にあたる評価対象期間

評価対象となる期間は、各年1月1日~12月31日です。この期間内に、利用者の要支援状態の維持、改善の割合が一定以上になった場合が対象となります。

 

届出申請の手順のまとめ

申請手順の詳細

事業所評価加算を算定するためには、まずは然るべく申請を行う必要があります。条件が整っている事業所が事業所評価加算の算定を希望する場合には、各事業所が各年1015日までに、各都道府県へ「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(※)」を用いて「事業所評価加算(申出)」の届出を行う必要があります。

※介護給付費算定に係る体制等状況一覧表…こちらについては、各都道府県のホームページ(健康福祉課など)を参考に、記述を進めてください。

 

各都道府県の庁が閉庁している場合、直近の前閉庁日が期限となりますので、安易に10月15日までに提出すればいいと考えていると加算が算定できないこともありますので、前もって準備、なるべく早く申請するようにしましょう。

届出を行った翌年度以降に再度算定を希望する場合には、その旨の提出する必要ありません。しかし、届出を行った翌年度以降に算定を希望しなくなった場合には、その旨の届出が必要となりますので注意してください。

 

各事業所の提出書類については、上記に挙げた「事業所評価加算(申出)になります。ひとまず都道府県に提出さえすれば、あとは都道府県、行政の評価待ちとなります。事業者の皆様は期限内に提出することをまずは心がけてください。

 

総合事業によって事業所評価加算はどう変わるのか

総合事業とは

総合事業とは、市区町村が中心となりそれぞれの地域の高齢者に適した『生活支援』『介護予防』を『総合』的に実施してゆく事業のことです。

総合事業の背景には、日本の他国には例を見ることができない超高齢化社会があります。2042年には65歳以上の高齢者が3900万人に上るといわれ、現在の医療介護システムでは十分なサービスを確保できないという、非常に緊急性の高い問題を抱えています。

そこで厚生労働省は2025年を目途に、高齢者が重度介護者になったとしてもその人の尊厳を大切に、人生を最後まで充実したものにするためのシステムを構築する必要があると発表しました。そこで構築案として提案されたのが、「地域包括ケアシステム」というものです。この地域包括ケアシステムの名のもと、その内の1つとして事業展開が始まっているものが、この「総合事業」となります。

総合事業は、2つに分類されます。

 

○介護予防・生活支援サービス事業

ここには訪問型サービスや通所型サービス、その他の生活支援サービスが含まれます。

 

○一般介護予防事業

これは一般の全ての高齢者が利用可能なサービスです。介護予防普及啓発事業(例えば、第1号被保険者に対しての体操教室など)や、地域リハビリテーションなどもこれに含まれます。

昨今では市役所の講堂などを利用し、「理学療法士による高血圧予防体操」「理学療法、作業療法を自分で」というような、リハビリテーション関連職種の講演会が開催されている地域も増えてきました。

 

総合事業の目的

つまり、総合事業をより簡潔に、よりわかりやすく言えば

「介護をなるべく必要としない体を作りたい」

「いつまでも元気でいられるようにしたい」

といったメッセージが含まれています。これらを体現化するために、今まで介護が必要だった人にしか受けられなかったサービスを徐々に一般高齢者に裾を広げて、幅広く高齢者をサポートしていきましょう、ということです。

住み慣れた地域の方々であれば、医療介護職員がその人のパーソナリティを理解し、よりその人に適した関わりができるでしょう。地域の支え合い作りを推進してその人がより元気に余生を過ごせるようにしたい、というのが表向きの理由です。

 

先述しましたが、2042年には65歳以上の高齢者が3900万人に上ります。このうち、高齢者の中の高齢化に伴い元気に活動することができる高齢者割合はますます低下することが予測されています。

さらに医療発展に伴い、平均寿命は延びていますので、どんどんサービス提供側の利用者1人に対する力が足りなくなってきます。こうなってしまうと、社会保障費の問題を蔑ろにすることはできません。

この地域包括ケアシステムの名のもと始まった「総合事業」には、“お金の問題”も理由として挙げられます。正直この事業、もしくはこれに変わる別の地域サポートシステムが機能しないと、日本はただの高齢国家に成り下がってしまいます。

 

お金の問題も裏にはありますが、後は、元気な高齢者にも他の高齢者の介護をできるような世界にしたいこと(介護労働力の確保)やサポートに伴う健康寿命の延伸、サービス購入に対する価値観の変革なども理由として挙げられます。

 

 

総合事業による事業所評価加算の取り扱い

結論ですが、総合事業の提供実績は事業所評価加算の対象になりません。

そもそも、事業所評価加算は予防給付を目的とした介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション対象の加算ですので、一般介護予防事業を対象にした総合事業に関しては算定されないのは当然と言えるかもしれません。

しかし市によっては、介護予防通所介護の提供実績のみを評価、その基準値を満たしていれば翌年度から総合事業に対する事業所評価加算を算定することができるように施している市もあります。これについては現在、国と国保中央会との間で対応を検討中とのことです。今後の取り扱いとしても変更となる可能性があるので注意してください。

 

よくあるQ&A

選択的サービスって何?

選択的サービスの定義・意味

「介護予防を目的」とする要支援者が、本人の希望に応じて選択的に受けられるサービスのことを選択的サービスと言います。では、どのようなサービスがあるのでしょうか。

 

○運動機能向上

機能訓練指導員(主に理学療法士です)による、生活トレーニングを行います。

理学療法士とは国家資格を有し、身体障害者に対して、主に基本動作能力の改善を運動療法にてリハビリを行う人のことを指します。主に病院や施設で働いています。作業療法士は理学療法士とよく似た職種になりますが、一般的に応用的な生活動作の改善に向けてトレーニングを行う人のことを指します(着替えや、排泄など)。作業療法士も、理学療法士同様、国家資格が必要です。

 

○栄養改善

管理栄養士らが、栄養不足を予防するための食事作りや食材の購入方法などを指導します。

 

○口腔機能向上

歯科衛生士や言語聴覚士などが口腔内を清潔に保つような指導、施術者ブラッシングを行います。言語聴覚士とはこのような口腔機能向上だけでなく、発声練習や脳機能トレーニングなど、認知予防訓練も携わっています。

 

事業所評価加算に係るQ&A

事業所評価加算に関して、算定要件から申請方法まで全て厚生労働省のホームページにアップロードされており、質問についてもまとめられたものがあります。

こちらでは、その中でもよくある質問についてまとめておりますので参考にしてください。

※質問、回答については要約している部分がございますので、全文参照したい方はこちらをご参照ください。

 

Q1.翌年度の事業所評価加算の評価対象になるのは、いつの時期までに提供されたサービスか?

A1.事業所評価加算の対象となる期間は、各年1月1日から12月31日までとなります。

しかし、9月までに選択的サービスの提供を受け、10月末までに、更新・変更認定が行われた方が、翌年度の事業所評価加算の対象になります。国保連合会による処理の都合上、12月31日までに評価対象者を確定させる必要があるためです。

 

Q2.事業所評価加算の評価対象者について、選択的サービスを3ヶ月以上利用することが要件となっているが、連続して3ヶ月必要なのか?

また3ヶ月の間に、選択的サービスの種類の変更があった場合はどうなるか?

A2.選択的サービスの標準的なサービス提供期間は概ね3ヶ月です。そのため基本的に評価対象者については、選択的サービスを3ヶ月以上連続して受給する方を対象としています。

 

Q3.評価対象事業所の要件に「利用者実人員数が10名以上であること」とありますが、10名以上の方が連続する3ヶ月以上の選択的サービスを利用する必要があるのか?

A3.連続3か月使用でなくても可。延べ人数が10名以上であれば要件を満たします。

 

Q4.4月にA事業所、5月にB事業所、6月にC事業所から選択的サービスの提供があった場合は評価対象になるのか?合算してC事業所で加算が算定できるのか?

A5.対象になりません。ひとつの事業所からの選択的サービスの提供が必要です。合算はできません。

 

事業所評価加算の実情

今回は、「事業所評価加算」にスポットをあてて紹介いたしました。事業所評価加算は、その加算対象事業所独自の効果的なサービスを評価する観点からできた加算のひとつです。

できるだけ加算を算定したいところですが、実のところ、選択的サービスという文言はあるものの、実際に安定した人材供給が、この選択的サービスに対してなされているかというと疑問を感じざるを得ません。

それは、運動機能向上、口腔機能向上など、専門的な知識を持った理学療法、作業療法、言語療法士(リハビリテーション職種)の特別な職種が、まだ地域に浸透していないという現実があるからです。そのため、運動機能向上というサービスを行ったとしても、利用者側からすると「ただバイクを漕いだだけ」「棒で体操しただけ」など、実入りの少ないサービス提供に留まるケースも多いようです。

これらコメディカルの主な職域は、まだ急性期、回復期病院に留まっています。これからの職域拡大が選択的サービスをさらに充実化させていく必要要素となりえるでしょう。

 

将来的には、リハビリ難民と呼ばれる「リハビリをしたくても経済的余裕、人員不足で専門スタッフのいる非保険リハビリ施設に通えない人」が続出します。高齢者割合の増加とは反対に、リハビリを提供する側の人間が増えないので当然です。

そのため、選択的サービスを充実させていくためには、このようなスタッフの増員だけでなく、選択的サービスの根本的なシステムから変えていく必要もあります。

 

総合事業の開始に伴い、徐々にコメディカルの地域への浸透は始まってはいますが、まだまだ時間はかかると思われます。そのため、現行のサービス体系で、よりよい選択的サービスを提供するためには、その事業所の選択的サービスに対する在り方を熟考する必要があります。

昨今の介護業界では常に人材を募集しており、就職難から介護業界に逃げ込んできた人、仕事を追われ介護職しか仕事がなかった人、海外から来ている人など、非常に多様な方がいらっしゃると思います。

今後は上記のような方々が、介護予防の観点を持ったリハビリに興味を持つことが非常に重要になってきます。加算を算定することも非常に重要ですが、最も重要なことは利用者のための事業所であることであると思います。利用者のための事業所としてありながら事業所評価加算も算定できることが最も好ましいでしょう。

 

まとめ 

事業所評価加算について、いかがでしたでしょうか。

算定されている事業所が少ないことは事実ですが、ただ加算額がもらえるだけが事業所評価加算のメリットではありません。解説しましたが、事業所評価加算を算定するためには、通常の事業所にはないサービスの提供環境を作ることが必要となります。

すなわちそれは、利用者のよりよいケアにつながります。

加算の中には、事業所をよりよくするための仕掛けとなっているものも多くあります。

よりよい事業所運営のためにも、加算について理解し、どの加算なら算定できそうか把握しましょう。

 

事業所評価加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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