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個別機能訓練加算ⅱの計画書とは?知らなければならない算定方法を解説します。

 

昨今、高齢化社会に拍車がかかり、リハビリをしたくてもできない方が多くいらっしゃいます。そんな方のためのリハビリの場として、地域の介護事業所の個別機能訓練が存在します。

個別訓練に際して、個別機能訓練加算を事業所として取得する必要がありますが、今回はその算定に必須である計画所について紹介します。加算を取得予定の方や開業予定のかた、見直したい方はぜひご覧ください。

 

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個別機能訓練加算ⅱの計画書とは

個別機能訓練加算とは

通所介護施設において、所定の要件を満たして、利用者の状況に応じた個別機能訓練を行った場合、算定される加算のことを、個別機能訓練加算といいます。

個別機能訓練加算には、「個別機能訓練加算ⅰ」と、「個別機能訓練加算ⅱ」があります。個別機能訓練加算ⅰを算定する場合、機能訓練指導員は、全体を見渡しながら、機能訓練や日常生活に関してリハビリテーション的視点で助言するような立場であることに対して、個別機能訓練ⅱを算定する場合、機能訓練指導員は、5人程度以下の利用者に実践的な環境で、直接訓練を実施しなければならないので、訓練の専門家として、訓練時間内に、密度の濃い訓練を利用者1人ひとりに確実に提供する必要があります。ⅱのほうが、よりリハビリの専門性が強いという解釈でよいでしょう。

 

個別機能訓練計画書とは

個別機能訓練を行うにあたり、必要となってくるのは「個別機能訓練計画書」と呼ばれるものです。この計画書は、利用者の居宅を訪問し、利用者のニーズや生活状況を確認し、心身機能、日常生活、社会参加、家庭内での役割といったICF評価を行います。

ICFに基づいた評価を行い、厚生労働省より提示されている「個別機能訓練計画書」の様式を参考に計画書を作成します。この計画書はいわば、利用者のリハビリテーションを行う上で、「なぜその機能訓練をするのか」「それは効果があるのか」「利用者が満足するのか」などをきちんと評価し、適切なパフォーマンスが専門職種によって行われていることを証明するためのものといえるでしょう。

 

個別機能訓練計画書と、通所介護計画書の違い

通所介護計画書とは、個別機能訓練計画書と似ており、本人、家族から聴取した生活状況や、ケア希望などから、課題を抽出し、本人が望む生活にむけて目標を定めるために計画を立てたものを言います。

個別機能訓練計画書に相当する内容を通所介護計画書の中に記載することが可能ですので、同一の書類として処理しているケアマネージャーも多くいらっしゃいます。

しかし、これはあまりおすすめできません。なぜなら、通所介護計画書は、介護等級が変更になったり、本人の希望が改めて出たりしたタイミング、つまり、ケアプランの変更時に作り直せばよいのですが、個別機能訓練計画書は、3か月ごとに1回以上見直しを行う必要があるため、同一のものだと必ず更新時期がずれてきます。

そうなると、同じ用紙で2つの計画書を処理しなければならず、更新する側、それを説明される側、両者とも混乱を招いてしまいます。ただでさえ、ケアマネージャーは書類業務が多いので、できるだけ個別機能訓練計画書と、通所介護計画書はわけて処理するようにしましょう。

 

個別機能訓練加算ⅱの計画書の内容

個別機能訓練計画書には、

 

  1. 基本情報
  2. 個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ
  3. 特記事項、プログラム実施後の変化・署名

 

と、大きくわけて3つに分けられています。

以下、それぞれについて、記述内容を紹介していきます

 

基本情報

項目

内容とポイント

計画作成者

計画作成で中心になった職員。多くの場合、理学療法士、作業療法士が記述することが多いです。実際のリハビリテーションを行う人のほうが、より細かな計画を立てることができます。

介護認定

要介護1,2,3~などの等級を記載します。等級がまだ判断されていない場合は、「申請中」「暫定」と表記します。

本人の希望

多くの場合、身体機能の維持・向上です。中には人と会話をしたい、認知症になりたくないなど、身体面以外にも、精神面のフォローを依頼されることがあります。

家族の希望

介護負担の軽減が主です。自分のことは最低限自分でできるようになりたいと思うご家族が多いので、ここはきちんと聴取しましょう。

運動時のリスク

脳卒中の場合は血圧や、転倒のリスクなどを考慮しましょう。骨折の場合は痛み、再受傷などが挙げられます。

生活環境

一人で暮らしている、犬が多い、転倒が多いなど、介助が必要になってしまっている生活環境について記載しましょう。

在宅環境

段差が多い、浴槽が高い、階段が急など、一人で生活するのに支障が出ると考えられる在宅環境について記載しましょう。

障害老人の日常生活自立度

高齢者が日常生活をする際の自立度をランク付けしたものがこの指標です。要介護認定や主治医意見書をつくる際に使われます。別名、寝たきり度とも呼ばれています。

詳しくは、こちらのP.155を参照してください。

平成28年度第2回日進市地域包括ケア検討会議 資料2

認知症老人の日常生活自立度

認知症となった高齢者の介護の必要度合い、また職員への負担をランク付けしたものがこの指標です。こちらも要介護認定や主治医意見書をつくる際に使われます。

詳しくは、こちらのP.157を参照してください。

平成28年度第2回日進市地域包括ケア検討会議 資料2 

個別機能訓練加算Ⅱ欄

長期目標、短期目標

長期目標、短期目標は、その利用者の方が利用すると考えられる期間を考慮し、長期、短期の期間を決めるため、一般的にどれくらいの期間が「長期」「短期」になるかは定められていません。

しかし、書類上、長期目標は6か月程度で達成可能と思われるものが好ましいとされています。特に不備がない場合は初回作成日より6か月後の年月を記載することが無難と思われます。短期目標は3か月程度で達成可能と思われるものが好ましいので、初回作成日より3か月後の年月を記載しましょう。

プログラム内容

目標を達成するための動作訓練内容を具体的に記載しましょう。

例)

  • ベットサイドでの上肢下肢可動域訓練
  • 玄関の上がり框を利用した立ち上がり練習、着座練習
  • 庭先、玄関前道路を利用した歩行練習 など

できるだけ場所や道具など、具体的に記載するのが望ましいです。

留意点

プログラム用を実施するにあたって留意すべきことを記載します。例えば、可動域訓練を実施するにあたり、利用者の方が痺れ、痛みの訴えがある方であれば、留意点の書き方として下記のような記述が望ましいです。

(例)右肩の可動域訓練時、屈曲120度程度で痛みの訴えがあるため、疼痛自制内での可動域訓練に終始する。また、疼痛が出た場合は必ずその程度や部位について確認を行う。

頻度

少なくとも週1回以上行いましょう。

 

特記事項欄

特記事項

各利用者の特別な事柄について記載しましょう。

(例)

  • 些細なことで激昂されるため、否定しないような関わり方を行う。
  • パーキンソン病が持病のため、服薬後、震戦症状が出ていない時間帯に介入を行う
  • 頻尿であるため、リハビリテーション前後でのトイレ誘導を行う
  • 家の前は坂道であるため、歩行訓練時には最大の注意を行う。

プログラム実施後の変化

再評価日は3か月以内に設定しましょう。コメント部分として初回は空欄、2回目以降は長期・短期に対する評価、機能訓練実施援護の変化も記載しましょう。

 

個別機能訓練加算ⅱの計画書を提出するには

個別機能訓練計画書を提出するためには、先述のように、まずは「個別機能訓練評価書」を記載することから始まります。こちらについては、上記内容を参考にしながら実際に記載をしましょう。提出先は、利用者担当のケアマネージャーになります。

ケアマネージャーが計画書の提出を求めてくることがほとんどですが、機能訓練員は、提出をしなければならないという義務感を持っていればケアマネージャーとの齟齬もなくなるでしょう。ケアマネージャーは書類業務が多いため、他職員と助け合うことが安定的に個別機能訓練加算を算定するためには重要となります。

提出期限については先述の通り、初回評価日から3か月以内になりますので、注意してください。

 

まとめ

個別機能訓練を行うためには、まずは機能訓練員の充実化が必要不可欠です。加算を算定しているから充実した個別機能訓練が提供できているという訳ではありません。昨今、理学療法士、作業療法士の養成校も増えており、有資格者も増加しています。

その反面、地域へのリハビリテーション介入が後手に回っています。このような事態を早急に解決するためにも、まずは各介護事業所の個別機能訓練の考え方を改める必要があります。

できるだけ多くのリハビリテーションを行いたいと考えている利用者の方のためにも、今一度、個別機能訓練について考えてみませんか?

参考になりましたらシェアをよろしくお願いします。

 

個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

個別機能訓練加算の居宅訪問とは? 注意事項やチェックシートについて解説します

個別機能訓練加算を適切に算定し、経営を安定させてよい人材を雇用したいと考えている介護事業所の皆さま、これから介護事業に参入予定の方を応援するために、チェックシートや注意事項を含めて解説いたします。

 

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個別機能訓練加算の居宅訪問とは?

介護保険には、様々な「加算」があります。加算とはサービス内容により、基本の単位に加算(または減算)する制度のことです。この加算を積極的に利用することが、通所介護事業所が安定した運営をしていくために、とても重要になります。

デイサービスや通所リハビリテーションといった、通所介護事業所において申請できる加算の一つに「個別機能訓練加算」があります。これは利用者が住み慣れた地域で在宅での生活を続けていくために、機能訓練を行い、サポートしていくことを目的としています。通所介護事業所内における基本サービス利用時に、追加的に個別機能訓練計画書を基に提供されます。

加算申請の際には、算定のための必要要件を満たすことに加え、必要な情報を得るとともに、自宅における環境を確認するために実際の住まいを訪問しなければなりません。

 

個別機能訓練加算の申請に必要な要件とは

個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、それぞれにおいて必要な人員基準と機能訓練の目的が異なるので注意が必要です。

 

個別機能訓練(Ⅰ)

主に身体機能の向上を目的としています。人員基準では、サービス提供時間内にわたって勤務する常勤の機能訓練指導員が1名必要となり、非常勤である場合には基準を満たすことはできないため注意が必要です。

 

個別機能訓練(Ⅱ)

こちらは身体機能そのものの回復が主な目的ではありません。利用者の身体機能を活かしながら、意欲といったことも含めた心身機能の維持及び向上、生活の質、社会参加など、包括的な生活機能の向上を目的としています。機能訓練指導員はサービスを提供する時に勤務していればよく、従って非常勤であっても基準をクリアすることができます。

これらの基準を満たし、機能訓練指導員が中心となって、看護スタッフ、介護スタッフ、生活指導員とともに個別機能訓練計画書を作成しなければなりません。

 

居宅訪問の目的や役割について

では、なぜ居宅訪問が必要なのでしょうか。

その目的は利用者の自宅における実際の能力、問題点や目標を見極めるためです。先に述べましたように、どうすれば利用者が「住み慣れた地域で、在宅での生活を続けていく」ことができるかを考え、利用者の生活環境に見合った機能訓練を実施していくために、生活の現場である住宅を視察することは必要不可欠です。

また、住環境そのものの問題点に気付くチャンスでもあります。また個別機能訓練を始めたなら、3ケ月ごとに自宅を訪問し、利用者本人や、場合によっては家族などに訓練内容と目標の達成状況を説明する必要があります。これにより利用者のモチベーションも上がります。短期目標が達成される、あるいは利用者の心身の状況、環境等が変化した場合には、機能訓練計画の内容と目標をその都度見直します。

 

機能訓練指導員の人員配置について確認しておくべきこと

個別機能訓練加算に必要な人員基準を満たすためには、各通所介護施設において、機能訓練指導員を1人以上確保する必要があります。機能訓練指導員とは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護 職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師を指します。この機能訓練指導員が居宅訪問を行って利用者の心身の状況、住環境を確認しながら、個別機能訓練計画をまとめ、利用者の生活における目標を達成するために、その他のスタッフと協力しながらサービスの提供を進めていきます。

しかしながら、機能訓練指導員に適応する職種にはすべて国家資格が必要であり、そのような方を雇い、サービスに組み込むことが、個別機能訓練加算を取得する際のハードルを上げることにもなっています。

 

平成27年の改正におけるポイントと追加点

介護保険制度はこれまでも度々改正されていますが、平成27年に厚生労働省によって「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」が作成され、さらに全体的な介護保険の国の負担を減らすため、介護報酬の単位についても改正されました。

いくつかの項目で介護報酬の減額が行われた中、個別機能訓練加算(Ⅰ)は46単位、個別機能訓練加算(Ⅱ)は56単位(各1日あたり)とアップしているのは、厚生労働省が通所介護事業における個別の機能訓練を後押ししているとも言えます。

社会保障費を抑え介護保険を安定して維持していくためには、高齢者が入所施設ではなく、できるだけ自宅で生活できることが重要になります。この点を踏まえ、平成27年度の改正では、より個別機能訓練やリハビリテーションを推奨するとともに、通所介護事業において個別機能訓練加算を算定するためには、居宅訪問の際に、ADL及びIADLを確認することが新しく要件に加えられました。

 

居宅訪問の際に確認すべきこととチェックシート

機能訓練指導員は居宅訪問の際に、利用者の生活状況や住環境を確認し、ニーズを掘り起こしておかなければなりません。各利用者の状況はそれぞれ異なり、1回の訪問ですべてを完全に聞き出すことは難しいです。

そこで役立つのが各種チェックシートです。

その様式は、厚生省のホームページ上において作成されており、これをダウンロードして活用することができます。このチェックシートの項目ごとに、自立の度合い(自立、見守り、一部介助、全介助)や課題の有無、興味の有無を確認し、効率よく問題点を見つけることができます。

 

興味・関心チェックシートについて

初回アセスメントにおいて、利用者のニーズを把握することが義務付けられています。このためのツールとして、興味・関心チェックシートが挙げられています。高齢者は生活意欲が低下してくると、どの機能を向上させたいのか、どの能力を今後も維持していきたいのか、どういう風になればやる気を持って生活していけるのかといった、具体的な目標を明確に表さないことがあります。このような場面において、高齢者の持つ興味や関心を引き出すために興味・関心チェックシートが役立ちます。

 

居宅訪問チェックシートについて

居宅訪問時におけるアセスメントにおいてもう1つ使用するのが、居宅訪問チェックシートです。このシートは、利用者の自宅におけるADL・IADL状況を確認するための書類です。

ADL(Activities of Daily Living)とは、自宅で日々行っている食事、更衣、移動、排泄、整容、入浴といった日常生活動作のことです。

IADL(Instrumental activities of daily living)とは、洗濯、掃除や調理といった家事、買い物やその他の金銭管理、薬の管理や受診、外出時の交通機関の利用といった手段的日常生活動作を指します。

個別機能訓練作成するにあたり、必要なニーズや情報を効率的にアセスメントできるようになっています。利用者が、自力でどこまでできるのか、どの程度の介助が必要なのかを判断して、その他生活環境や住環境においての気づきも随時記入しながら、居宅訪問チェックシートの項目を埋めていきます。

 

個別機能訓練計画書と通所介護計画書について

通所介護計画書は、ケアマネージャー(介護支援専門員)の作成した居宅サービス計画(ケアプラン)に記載されている利用者や家族の希望、方針、目標等に沿って、通所介護事業所の生活指導員が具体的なサービス内容や目標も含めて作成します。居宅サービス計画、通所介護計画、個別訓練機能計画の目標やニーズなどは、通常、相互に連携する内容になります。

居宅訪問時に記入した興味・関心チェックシート及び居宅訪問チェックシートを基に、心身機能や日常活動におけるニーズや介助の必要性、更には社会参加の機会や家庭内における利用者の役割、本人の興味や関心などを幅広く確認します。

そして厚生労働省により作成された個別機能訓練計画書の様式を参考にして、計画書を作成していきます。利用者の意欲を削がないよう、段階を踏んで、少しずつステップアップできるような現実的な目標や訓練メニュー設定する必要があります。

ADLにおいては、「自分で上着のボタンが留められる」「床から立ち上がる」といった1つの動作を目標として挙げます。IADLにおいては、いくつかの動作が合わさった動作ですので、例として「趣味の書道ができる」「歩行器を使いながら、室内を安全に移動できる」などになります。

また、注意すべきこととして利用者本人やその家族、またケアマネージャーから病名や医療提供状況について情報を得ておく必要があります。これは心身の状況を的確に理解し、それに配慮した計画を作成するためです。また、リスクについても記載しておきます。

 

機能訓練に関する説明と利用者の同意

以上のことを踏まえて個別機能訓練計画書を作成できたら、利用者(場合によっては家族)に内容を説明します。計画書に同意を得られれば捺印やサインをもらい、コピーを渡します。同意及び捺印のない場合には加算を申請することはできません。監査等に必要になりますから、捺印をもらった計画書は適切に保管します。

 

居宅訪問する際の注意事項

居宅訪問にかかる注意事項を、厚生労働省発令の「通所介護の個別機能訓練加算」に沿って説明いたします。

 

・利用者が自宅に入れてくれず、訪問自体が難しい時。

利用者によっては機能訓練指導員が家の中へ入ってくることを強く拒否する場合もあります。もちろん拒否しているので押し入ることはできません。

平成27年の改正以降、「実際に利用者の居宅を訪問し個別機能訓練計画に反映させること」を、加算を取るための条件としています。このため住居の中に入れなければ事業所が加算を申請できないばかりか、利用者が在宅で過ごすことの手助けとなり得る機能訓練計画を作成して、個別機能訓練を提供することもできません。

徐々に利用者との信頼関係を構築し、なぜ家の中に入れてもらう必要があるのかを十分に説明します。また、家族に同席してもらうなど、利用者が安心、納得できる形で居宅訪問ができるように働きかけていきます。

 

・利用契約締結前の居宅訪問について

利用契約は結んでいないが、利用見込みのある利用者について事前に居宅訪問を行い生活状況の確認した後、利用契約に至るケースもあります。この場合にも居宅機能訓練加算の居宅訪問要件を満たします。

 

・個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)を併算定する場合

同一の利用者について、個別機能訓練(Ⅰ)と(Ⅱ)を提供し、どちらも加算申請する場合には、自宅でも状況確認は1回にまとめてもよいことになっています。しかしながら、チェックする項目は同じでも、先に「申請に必要な要件とは」の項目で述べたように、身体機能の向上を目指す、あるいは包括的な生活機能の向上を目指すのかを明確にしながら、個別機能訓練計画を作成します。

 

・利用者の送迎時において居宅訪問を行う場合

デイサービス利用後、利用者を自宅へ送り届けます。その際に機能訓練指導員が送迎車に同乗し、そのまま一緒に家屋へ入り、生活状況を確認した時も、居宅訪問1回として認められています。

 

・居宅訪問担当者と個別機能訓練の作成者

個別機能訓練を加算する時の居宅訪問は、利用者の居宅での日常動作や手段的日常動作の状況を確認し、在宅生活の継続支援を行うことを目的としています。この「継続性」がキーワードとなっているため、居宅訪問した機能訓練指導員が自分で計画書を作ります。また訪問担当者が毎回変わるような場合には継続的な状況の観察や評価が難しくなるため、この加算を申請することはできません。

 

・居宅訪問中の人員配置基準

“個別機能訓練加算(Ⅰ)で配置する常勤・専従の機能訓練指導員は、機能訓練プログラムにおける支障がない範囲において、居宅訪問により事業所を離れている時間も配置時間として含めることができる。生活指導員については今回の見直しにより、 事業所外における利用者の地域生活を支えるための活動が認められており、勤務時間として認められる。” となっていますから、デイサービスなどのサービス提供時間外に居宅訪問しなければならないものではありません。例えば、おやつの時間とそのあとの送迎時など、個別機能訓練のプログラムが行われていない時間帯に、居宅訪問を行うことができます。勤務時間内に居宅訪問を行うことができれば、事業所と担当者双方にとって負担が少なくなります。

 

最後に

個別機能訓練加算を算定するには、居宅訪問がいかに重要な算定条件であるか、ご理解いただけたかと思います。注意点を意識しながら、算定要件を満たす居宅訪問を行い、加算を適切に、そして簡単に算定したいものです。また、利用者ができるだけ長く在宅生活を続けていくのに役立つ、利用者が意欲的になれるような個別機能訓練計画を作成したいですね。

 

個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

事業所評価加算の届出方法とその注意事項とは?

安定した経営を目指し、良い人材を雇用するには、加算を積極的に算定することが必要となります。ここでは、介護予防通所介護事業所を対象とした事業所評価加算の取得方法に悩んでいる方に、届出の流れや注意事項を解説致します。加算の算定や申請などで悩んでいる介護事業者の皆様はぜひこの記事を参考になさってください。

 

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事業所評価加算とは?

まず、事業所評価加算についておさらいしておきましょう。

対象となるのは介護予防の通所介護や通所リハビリテーションといった事業所です。「介護予防」と名前が付いているように、要支援などの軽度な介護を必要とする方を利用者としたサービスが対象です。

これらの施設において、効果的なサービスを提供していると評価された場合に加算が算定できます。選択的サービスである運動機能向上サービス・栄養改善サービス・口腔機能向上サービスを提供、評価対象となる毎年1月1日から12月31日において、利用者の要支援常態の維持、改善の割合が一定以上であると評価されれば、翌年度において1年間、介護予防通所サービスの提供につき、1ケ月あたり120単位の加算を行うことができます。

 

選択的サービスについて

対象となる3つの選択的サービスについて、それぞれ簡単に説明します。

運動機能向上サービス

予防給付では、

要介護認定において要支援 1・要支援 2 と判定された利用者のうち、運動器の機能向上が必要と判断された場合に、要介護状態に陥ることを予防することを目的としてサービスの提供がなされます。

厚生労働省 運動器の機能向上マニュアル(改訂版)

 

要介護認定者は毎年増え続け、介護保険の財政を圧迫しています。そこで要支援の方が、より費用のかかる要介護1、2などに進まないようサポートするため、主に介護予防通所介護であるディサービスや介護予防通所リハビリテーションの場を通じてサービスを提供します。

具体的には、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師といった国家資格を持つスタッフを機能訓練指導員として登録、これら機能訓練指導員が運動向上サービスのプログラムを作成し、全体の進行を管理します。

これには、事前のアセスメントと住環境の確認のための居宅訪問、アセスメントを基にした個別の目標の設定と機能訓練計画の作成、その後3ケ月毎に運動機能の向上度合いや計画の進捗具合の評価を行います。介護予防通所リハビリテーションにおいては、さらに医師が指導して、医学的管理の下でプログラムを提供します。

このような医療職には国家資格が必要であり、そのような方を雇い、サービスに組み込むことが、個別機能訓練加算を取得するハードルを上げている一面もあります。

 

栄養改善サービス

予防給付における栄養改善サービスとは、

現に低栄養状態にある利用者や低栄養状態に陥るおそれが高い利用者に対して、日常生活において「食べること」を通じて利用者自らが自立した生活を続けていけるよう、低栄養状態を改善できるように支援するもの

厚生労働省 栄養改善マニュアル(改訂版)

となっております。独居の利用者は日々の食事の内容や量について注意を払ってくれる人がおらず、食事を作る意欲や、「食べる」ことそのものに対する関心が薄れていく方も多いので、これを改善していきます。

管理栄養士が看護職員、介護職員等と協力して、食事の好みや内容、回数などのアセスメントを基に、栄養状態を改善するための個別の計画を作成します。その計画 に基づいて個別的な栄養相談や、生きていくために何より大切な「食べること」について集団的な栄養教育等を行います。

利用者の健康状態を見ながら、3〜6ケ月毎に評価を行います。実際のところは規模がよほど大きいか、病院や入所施設に併設されている事業所でない限り、管理栄養士を配置するのは経営上難しいと判断する事業所が多いようです。

 

口腔機能向上サービス

その内容としては、介護予防通所介護において、なぜ口腔機能を向上させることが健康のために必要なのかを説明し、また自身で適切な口腔清掃を行えるようになるための指導、肺炎にもつながることのある誤嚥を予防するために、食べ物をよく噛み、飲み込む機能の向上させることで、要介護状態へ陥らないよう図っていきます。

言語聴覚士、看護師、歯科衛生士、准看護師が、個別に口腔機能改善管理指導計画を作成しますが、気を付けなければならないのは、利用者が既に口腔機能の向上を目指して歯科医師の治療や指導を受けている場合は、介護予防ではなく、医療サービスと判断され、加算の対象とならない点です。

事前のアセスメント時に確認しておく必要があります。医療サービスとの兼ね合いと、上に挙げた国家資格を持つスタッフの配置もあり、加算の申請は今のところ低調に留まっているようです。

 

届出の流れ

事業所評価加算は算定要件を満たしてからの届出となります。それぞれの段階において必要な要件について述べながら、届出の流れについて解説していきます。

 

算定要件を満たすこと

まずは、ご自身の介護事業所が算定要件を満たしているか確認しておく必要があります。

  1. 市町村の介護保険課など担当の部署に届出(体制届)を済ませます。その後選択的サービスを開始し継続的に行うこと。
  2. 算定対象期間における介護予防通所介護または介護予防通所リハビリテーション事業所における実際に利用した方の数が、10名以上いること。登録はしていても入院等で利用していない人は含めません。
  3. 利用者の 6 割以上に選択的サービスを実施していること。1〜12月までの選択的サービス利用者のうち、対象となるのは10月末までに3ケ月以上サービスを利用し、12月までに更新や変更認定を受けた方のみです。11月以降に認定を受けた利用者は翌年の評価対象となり、ここに含めません。
  4. 評価基準が0.7以上であること。国保連により、上記3の数値を基に算出されます。(要支援度の維持数+改善者数×2を、評価対象期間内に上記選択的サービスを3か月以上利用し、その後に更新・変更認定を受けた者の人数で割って計算されます。)

 

申し出をすること

上記要件に該当する事業所で、事業所評価加算の算定を希望する事業所は、市町村の担当課に各年 10 月 中旬ごろまでに加算(減算)の体制届をもって申請しなければなりません。提出期限は市区町村により異なりますので、必ず問い合わせてください。この期限までに必要な書類、提出先、提出方法を確認する必要があります。必要な書類とは、

  1. 変更届出書
  2. 介護給付加算算定に係る体制等に関する届出書
  3. 介護給付加算算定に係る体制等状況一覧表
  4. 介護給付加算算定に係る体制等に関する届出書
  5. 介護給付加算算定に係る体制等

などになります。これら必要書類は市区町村のホームページからダウンロードすることができます。書類記入に関する質問や書類提出先は、市区町村の介護保険課や福祉部法人指導課などになります。こちらも各市区町村にご確認ください。

 

国保連による評価をクリアすること

必要書類が提出されると、国民健康保険団体連合会によって地域支援センターに利用者確認等の審査及び事務処理が行われます。これにより事業所評価加算の適合事業所であるかどうか判定されます。基準に適合し、算定可能と判定された場合には、翌年度の1年間、事業所評価加算が算定可能となります。また、一度提出された届出は翌年度以降も引き継がれます。加算算定可否の通知は、届け出翌年の2月頃に発送されるようです。

万一、要件を満たしてはいるが、加算を算定したくないという場合には、これらの届出は不要です。ただし、前年度以前にすでに申出を行っており、市町村において「申出有り」と登録されている事業所については、加算(減算)の体制届で、事業所評価加算の申出を取り下げる必要があります。

 

届出をする上での注意事項

しっかりと準備し、申請をした場合にも基準を満たせないことがあります。その場合には加算を算定できません。また、保険者によりローカルルールが存在するので、十分に注意してください。市区町村により提供されている通所介護相当サービスなど、介護予防通所介護に当たらないものは対象外となります。

 

最後に

いかがでしたでしょうか?

ご覧頂いた事業者様の中には、素晴らしい理念のもと、質の高いスタッフと共に介護事業所を運営されている方も多いかと思います。しかし、事業所そのものの経営が行き詰まってしまうと、安定して良いサービスを提供することが難しくなってしまいます。そうはならないよう、加算を積極的に取得することが重要です。経営が安定すれば、介護スタッフも安心して働くことができます。皆が笑顔で働いている事業所では、更なるサービスの向上といった、良い循環が生まれるのではないでしょうか。

 

事業所評価加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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