安定した経営を目指し、良い人材を雇用するには、加算を積極的に算定することが必要となります。ここでは、介護予防通所介護事業所を対象とした事業所評価加算の取得方法に悩んでいる方に、届出の流れや注意事項を解説致します。加算の算定や申請などで悩んでいる介護事業者の皆様はぜひこの記事を参考になさってください。
事業所評価加算とは?
まず、事業所評価加算についておさらいしておきましょう。
対象となるのは介護予防の通所介護や通所リハビリテーションといった事業所です。「介護予防」と名前が付いているように、要支援などの軽度な介護を必要とする方を利用者としたサービスが対象です。
これらの施設において、効果的なサービスを提供していると評価された場合に加算が算定できます。選択的サービスである運動機能向上サービス・栄養改善サービス・口腔機能向上サービスを提供、評価対象となる毎年1月1日から12月31日において、利用者の要支援常態の維持、改善の割合が一定以上であると評価されれば、翌年度において1年間、介護予防通所サービスの提供につき、1ケ月あたり120単位の加算を行うことができます。
選択的サービスについて
対象となる3つの選択的サービスについて、それぞれ簡単に説明します。
運動機能向上サービス
予防給付では、
要介護認定において要支援 1・要支援 2 と判定された利用者のうち、運動器の機能向上が必要と判断された場合に、要介護状態に陥ることを予防することを目的としてサービスの提供がなされます。
厚生労働省 運動器の機能向上マニュアル(改訂版)
要介護認定者は毎年増え続け、介護保険の財政を圧迫しています。そこで要支援の方が、より費用のかかる要介護1、2などに進まないようサポートするため、主に介護予防通所介護であるディサービスや介護予防通所リハビリテーションの場を通じてサービスを提供します。
具体的には、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師といった国家資格を持つスタッフを機能訓練指導員として登録、これら機能訓練指導員が運動向上サービスのプログラムを作成し、全体の進行を管理します。
これには、事前のアセスメントと住環境の確認のための居宅訪問、アセスメントを基にした個別の目標の設定と機能訓練計画の作成、その後3ケ月毎に運動機能の向上度合いや計画の進捗具合の評価を行います。介護予防通所リハビリテーションにおいては、さらに医師が指導して、医学的管理の下でプログラムを提供します。
このような医療職には国家資格が必要であり、そのような方を雇い、サービスに組み込むことが、個別機能訓練加算を取得するハードルを上げている一面もあります。
栄養改善サービス
予防給付における栄養改善サービスとは、
現に低栄養状態にある利用者や低栄養状態に陥るおそれが高い利用者に対して、日常生活において「食べること」を通じて利用者自らが自立した生活を続けていけるよう、低栄養状態を改善できるように支援するもの
厚生労働省 栄養改善マニュアル(改訂版)
となっております。独居の利用者は日々の食事の内容や量について注意を払ってくれる人がおらず、食事を作る意欲や、「食べる」ことそのものに対する関心が薄れていく方も多いので、これを改善していきます。
管理栄養士が看護職員、介護職員等と協力して、食事の好みや内容、回数などのアセスメントを基に、栄養状態を改善するための個別の計画を作成します。その計画 に基づいて個別的な栄養相談や、生きていくために何より大切な「食べること」について集団的な栄養教育等を行います。
利用者の健康状態を見ながら、3〜6ケ月毎に評価を行います。実際のところは規模がよほど大きいか、病院や入所施設に併設されている事業所でない限り、管理栄養士を配置するのは経営上難しいと判断する事業所が多いようです。
口腔機能向上サービス
その内容としては、介護予防通所介護において、なぜ口腔機能を向上させることが健康のために必要なのかを説明し、また自身で適切な口腔清掃を行えるようになるための指導、肺炎にもつながることのある誤嚥を予防するために、食べ物をよく噛み、飲み込む機能の向上させることで、要介護状態へ陥らないよう図っていきます。
言語聴覚士、看護師、歯科衛生士、准看護師が、個別に口腔機能改善管理指導計画を作成しますが、気を付けなければならないのは、利用者が既に口腔機能の向上を目指して歯科医師の治療や指導を受けている場合は、介護予防ではなく、医療サービスと判断され、加算の対象とならない点です。
事前のアセスメント時に確認しておく必要があります。医療サービスとの兼ね合いと、上に挙げた国家資格を持つスタッフの配置もあり、加算の申請は今のところ低調に留まっているようです。
届出の流れ
事業所評価加算は算定要件を満たしてからの届出となります。それぞれの段階において必要な要件について述べながら、届出の流れについて解説していきます。
算定要件を満たすこと
まずは、ご自身の介護事業所が算定要件を満たしているか確認しておく必要があります。
- 市町村の介護保険課など担当の部署に届出(体制届)を済ませます。その後選択的サービスを開始し継続的に行うこと。
- 算定対象期間における介護予防通所介護または介護予防通所リハビリテーション事業所における実際に利用した方の数が、10名以上いること。登録はしていても入院等で利用していない人は含めません。
- 利用者の 6 割以上に選択的サービスを実施していること。1〜12月までの選択的サービス利用者のうち、対象となるのは10月末までに3ケ月以上サービスを利用し、12月までに更新や変更認定を受けた方のみです。11月以降に認定を受けた利用者は翌年の評価対象となり、ここに含めません。
- 評価基準が0.7以上であること。国保連により、上記3の数値を基に算出されます。(要支援度の維持数+改善者数×2を、評価対象期間内に上記選択的サービスを3か月以上利用し、その後に更新・変更認定を受けた者の人数で割って計算されます。)
申し出をすること
上記要件に該当する事業所で、事業所評価加算の算定を希望する事業所は、市町村の担当課に各年 10 月 中旬ごろまでに加算(減算)の体制届をもって申請しなければなりません。提出期限は市区町村により異なりますので、必ず問い合わせてください。この期限までに必要な書類、提出先、提出方法を確認する必要があります。必要な書類とは、
- 変更届出書
- 介護給付加算算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付加算算定に係る体制等状況一覧表
- 介護給付加算算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付加算算定に係る体制等
などになります。これら必要書類は市区町村のホームページからダウンロードすることができます。書類記入に関する質問や書類提出先は、市区町村の介護保険課や福祉部法人指導課などになります。こちらも各市区町村にご確認ください。
国保連による評価をクリアすること
必要書類が提出されると、国民健康保険団体連合会によって地域支援センターに利用者確認等の審査及び事務処理が行われます。これにより事業所評価加算の適合事業所であるかどうか判定されます。基準に適合し、算定可能と判定された場合には、翌年度の1年間、事業所評価加算が算定可能となります。また、一度提出された届出は翌年度以降も引き継がれます。加算算定可否の通知は、届け出翌年の2月頃に発送されるようです。
万一、要件を満たしてはいるが、加算を算定したくないという場合には、これらの届出は不要です。ただし、前年度以前にすでに申出を行っており、市町村において「申出有り」と登録されている事業所については、加算(減算)の体制届で、事業所評価加算の申出を取り下げる必要があります。
届出をする上での注意事項
しっかりと準備し、申請をした場合にも基準を満たせないことがあります。その場合には加算を算定できません。また、保険者によりローカルルールが存在するので、十分に注意してください。市区町村により提供されている通所介護相当サービスなど、介護予防通所介護に当たらないものは対象外となります。
最後に
いかがでしたでしょうか?
ご覧頂いた事業者様の中には、素晴らしい理念のもと、質の高いスタッフと共に介護事業所を運営されている方も多いかと思います。しかし、事業所そのものの経営が行き詰まってしまうと、安定して良いサービスを提供することが難しくなってしまいます。そうはならないよう、加算を積極的に取得することが重要です。経営が安定すれば、介護スタッフも安心して働くことができます。皆が笑顔で働いている事業所では、更なるサービスの向上といった、良い循環が生まれるのではないでしょうか。
事業所評価加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。