介護事業に関わる職種は様々ありますが、管理栄養士も忘れてはいけない大切な専門職の一つです。
その管理栄養士について、算定用件に基づいて加算が設定されています。
しっかりと用件を満たすことで、正しく加算が取得できるよう、今回の記事で解説していきます。
管理栄養士に関する加算一覧
栄養改善加算
栄養改善加算では、通所介護または通所リハビリを利用する者で、低栄養状態にある者またはその恐れのある者に対して、栄養状態の改善を図ることを目的としています。
「食べること」を通じて、高齢者の栄養状態を良好にするとともに、自立した生活を確保できるよう支援することが求められています。
加算の単位は150単位で、要介護と要支援ともに同じ単位が設定されています。
栄養状態の評価を3カ月ごとに行い、その結果、低栄養状態が改善せずにサービスを引き続き行うことが求められる場合は、引き続いて算定することが可能です。
要支援者で、栄養改善加算とともに口腔機能向上加算や運動機能向上加算を算定する場合は、選択的サービス複数実施加算として別に単位数が設定されています。
管理栄養士が1名以上配置されていなければいけないなど、算定用件について定められていますので、しっかり確認しておきましょう。
この加算の対象となるのは、要支援1又は要支援2と判定された者で、以下のいずれかが該当する者です。
- BMIが5未満の者
- 1~6カ月の間に3%以上の体重減少が認められる者。または6カ月の間に2~3kgの体
- 重減少がある者。
- 血清アルブミン値が5g/dl以下の者
- 食事摂取量が不良の者。(75%以下)
- その他、低栄養状態にあるか、その恐れがある者
療養食加算
療養食加算は、管理栄養士や栄養士が食事提供の管理を行っていることが条件となります。
単位数は23単位/日です。
対象の療養食は以下の9つです。
- 糖尿病食
- 腎臓病食(心臓疾患等に対して減塩食療法を提供する場合はこれに準じます。ただし総量7.0g以下の減塩食である必要があります。なお、高血圧症に対して行う減塩食療法は対象となりません)
- 肝臓病食(肝庇護食や肝炎食など)
- 胃潰瘍食(十二指腸潰瘍や侵襲の大きな消化管手術の術後で胃潰瘍食に準じた内容の食事を提供する場合です。ただし、手術前後に与える高カロリー食は対象となりません)
- 貧血食(血中ヘモグロビン濃度が10g/dl以下であって、その原因が鉄分の欠乏に由来している者に対して提供した場合です)
- 膵臓病食
- 脂質異常性食
- 痛風食
- その他特別な場合の検査食(潜血食など)
この加算において留意する点は、この加算は主治医から「食事箋」の発行を受けた日から開始することとなり、発行日以前の算定はできないという点です。
また、貧血食等で算定用件に検査値が含まれている療養食においては、検査値が要件を満たしていない場合は算定不可となります。
他に、経口移行加算や経口維持加算を算定している場合や、入居者の入院や外泊期間中においては算定ができません。
栄養マネジメント加算
栄養マネジメント加算は、管理栄養士による個々の入所者等の栄養状態や健康状態に着目して、栄養管理することを評価した加算で、平成17年10月の介護報酬改定時に創設
された加算です。
単位数は12単位/日です。
施設入所者が低栄養状態にある場合で、管理栄養士が栄養計画を作成したり、栄養食事相談を受けたりするなどの栄養改善サービスを行った場合に算定できます。
単位数は14単位/日です。
常勤の管理栄養士が1名以上配置されている必要があります。
関連職種と連携を図って、必要に応じて当該計画を見直していきます。
栄養ケアマネジメントの流れとしては、まず、主治医から情報提供を受けるなど情報収集を行うとともに、栄養ケアに関して本人や家族の希望を聴取します。
そして、管理栄養士とサービスの管理責任者等が協力して、栄養スクリーニングが行われます。
利用開始時の栄養状態のリスクの程度を確認しておきましょう。
その後、栄養ケア計画原案の作成を行い、医師に確認したり、関連職種と調整を図ったります。
サービス担当者会議を経て、本人と家族へ説明と同意を受けます。
そして、栄養ケアを実施し、経過を記録していきます。
モニタリングを行って、総合的な評価と計画変更の必要性を判断しましょう。
経口移行加算
経口移行加算は、経管栄養を行っている者の経口移行を目的とした栄養管理に加えて、咀嚼能力などの摂食、嚥下機能面への対応の取り組みを評価するための加算です。
単位数は28単位/日です。
経管によって食事を摂っている者それぞれに経口移行計画を作成します。
その計画に沿って、医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士が、経口によって食事ができるための栄養管理を行った場合、計画が作成された日から起算して180日以内に限って算定が可能となります。
ただし、栄養マネジメント加算が算定されていない場合は算定できません。
そして、医師の指示に基づいて、継続して経口による食事摂取を進めるための栄養管理や支援が必要とされる場合で、経口による食事摂取が一部可能である時には、180日を超えても算定ができるとされています。
この場合でも、医師の指示は概ね2週間ごとに受けましょう。
具体的な摂食・嚥下訓練の内容としては、口腔清掃、介助方法の工夫、口腔機能訓練や咀嚼能力に応じて食形態を検討するなどが行われています。
しかしながら、摂食・嚥下訓練の実施にあたっては、困難を感じている職員もいます。
利用者にあった訓練の方法がわからない、誤嚥などのリスクが不安で行えない、外部の歯科や言語聴覚士等から協力を得ることがなかなか難しい、などの理由が挙げられます。
経口維持加算
経口維持加算は、摂食・嚥下障害がある入所者や、食事摂取に関して認知機能が低下している入所者に対する経口維持支援を充実する観点を持っています。
他職種による食事の観察(ミールラウンド)や会議などによる取組みのプロセスと、咀嚼能力等の口腔機能を含んだ摂食・嚥下機能を踏まえた経口維持支援を充実させていくことが求められています。
単位数は、経口維持加算(Ⅰ)が400単位/日、経口維持加算(Ⅱ)が100単位/日で
す。
摂食機能障害を有しており、誤嚥が認められる入所者ごとに、摂食・嚥下機能に配慮した経口維持計画を作成します。
その計画に沿って、医師や歯科医師の指示を受けた管理栄養士または栄養士が、継続して経口による食事摂取を進めるための特別な栄養管理を行った時に、加算が受けられることになります。
計画が作成された日から起算して、180日以内の期間に限って算定が行えます。
経口維持加算(Ⅰ)と経口維持加算(Ⅱ)に分かれ、それぞれ算定用件が異なります。
経口維持加算(Ⅰ)は、栄養マネジメント加算を算定していない場合は算定しません。
経口維持加算(Ⅱ)は、経口維持加算(Ⅰ)を算定していない場合は算定しません。
経口摂取維持の取り組みを検討している職種としては、看護師や管理栄養士、介護職員がほとんどであり、歯科医師や歯科衛生士は、ほとんど関与していないという実情があります。
まとめ
今回は管理栄養士に関する加算を解説しました。
一口に加算といっても、背景や目的が異なり、また加算の要件についても細かく規定されています。
正しい運営を行って、スムーズに加算が受けられるといいですね。
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栄養改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)