経済面など様々な理由により自宅での生活が困難な高齢者のサポートを行う養護老人ホーム。
昨今の不況下において、養護老人ホームは重要なサービスの一つです。
今回の記事では、養護老人ホームの運営基準に関して詳しく解読していきます。
一読し、今後の経営にお役立てください。
養護老人ホームのおさらい
養護老人ホームは、要介護高齢者のための施設になります。
行政の判断と老人福祉法に基づく施設です。
65歳以上の高齢者が対象で日常生活において最低限の生活が送れるかが基準となります。
現在介護が必要であるが、後に自立した生活を送れるようになるのが目標です。
入居を希望する場合、入居申し込み等は市区町村が窓口になっています。
よく混同される特別養護老人ホームは、環境、経済的に困窮した方を養護するための施設をいいます。
介護保険で、原則として要介護3~5までの認定をうけた方が対象であり、利用者と施設が直接契約を交わし入所できます。
養護老人ホームにおける運営基準
基本方針
1、養護老人ホームは、入居者の処遇計画に基づき、必要な援助を受ける権利があります。
自立や社会復帰を目標とし、そのために必要な訓練を行うことで利用者が以前の様な日常生活を送ることができるようになる必要があります。
2、養護老人ホームは、利用者の意思、人格を尊重しなければならない。
常に利用者の立場になって処遇に努めます。
3、養護老人ホームは、地域や家庭との絆を重視し運営します。
家庭的で明るい雰囲気の中で運営を行います。
社会福祉事業に適した人材とその処遇に努めるとともに、老人福祉の増進を目的とする事業者、その他保健医療サービス、福祉サービスを提供する者との連携に努める必要があります。
運営規定
- 施設の目的及び運営の方針
- 職種,数及び職務の内容
- 入所定員
- 入所者の処遇内容
- 施設利用に当たっての留意事項
- 非常災害対策
- その他施設の運営に関する重要事項
記録整備
養護老人ホームは,利用者の記録を入居から2年間の記録を整備、保存しておく必要があります。
主な内容は以下の通りになります。
- 処遇計画
- 日常生活の具体的な内容記録
- 緊急時の処置、第16条第5項に規定する身体拘束等の記録。時間、心身の状況、やむを得ない理由の記録
- 苦情内容の記録。第27条第2項に規定
- 事故内容の記録。第29条第3項に規定
入退所
- 養護老人ホームは、入居予定者に際して、心身の状況、生活状況、病歴等の把握をしておかなければならない。
- 養護老人ホームは、入居者の置かれている環境から考えて常に日常生活を営む事が可能であるかどうかを配慮してみなくてはならない。
心身の状況等を充分に観察することが必要です。 - 養護老人ホームは、現在おかれている環境の心身状況などからみて、居宅での生活が営むことが出来るか否か定められた入居者に対して、その利用者及び、家族の希望を必要に応じて援助に努めます。
利用者が退居後に円滑な生活が送れるよう生活環境等を整える支援を行います。 - 養護老人ホームは、入居者が退居する際に保健医療サービス、福祉サービスを提供する者を結びつけるよう連携に努めます。
- 養護老人ホームは、入居者が退居した後も本人、家族に対して相談支援等を行うことや、その状況に応じて適切な援助に努めます。
処遇の方針
- 養護老人ホームは、入居者が持っている能力に応じて自立した日常生活が送れるよう援助していきます。
社会復帰の目標に対して、その方の心身状況を把握し自立のために何が必要なのかを見極めます。
その場に応じて必要な援助や指導、訓練を適切に行う必要があります。 - 入居者の処遇に関して、処遇計画に沿って行います。
漫然なものにならぬよう配慮しなければならない。 - 養護老人ホームは、入居者の処遇に関して正確に行う必要がある。
入居者、家族に関して処遇上確認しておいて欲しい重要事項等は、専門用語などは使わず、理解しやすいよう説明をしなければならない。 - 養護老人ホームは、身体拘束、その他入居者を制限する行為をしてはならない。
入居者等の生命、身体を保護のためどうしても緊急やむを得ない場合を除く。 - 養護老人ホームは、身体的拘束を実施する場合には、その対応、時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録すること。
生活相談等
- 養護老人ホームは、利用者の環境等の的確な把握に努めます。
日々の心身の状況などを入居者、家族に対して相談、助言、その他の援助をする必要があります。 - 養護老人ホームは、処遇計画に基づき入居者に対し自立した生活を送れるよう、必要な指導、訓練、援助を行います。
- 養護老人ホームは、第19条第1項に規定する要介護認定の申請等、入居者、またはその家族が行政機関に対する手続きにおいて困難である場合は、入居者の意思を尊重して迅速に必要な支援を行う必要があります。
- 養護老人ホームは、入居者と家族の連携を図ると同時に、交流等の機会をつくるよう確保するよう努めます。
- 養護老人ホームは、入居者の外出をサポートするだけでなく、きっかけを確保するよう努めます。
- 養護老人ホームは、入居者が退居後も自立した日常生活が送れるよう必要な支援を適切に行います。
- 養護老人ホームは、入居者を1週間に2回以上の入浴又は清拭をしなければいけない。
- 養護老人ホームは、年間行事を通じてレクリエーションなどを行う必要があります。
衛生管理
- 養護老人ホームは、入居者の食事、その他の使用する設備について衛生面には充分に配慮しなければならない。
衛生上必要な医薬品や医療機器についても管理をする必要があります。 - 養護老人ホームは、感染症や食中毒などが発生した場合、被害が最小限に留まるよう下器の措置を行わなければならない。
イ 感染症や食中毒の予防や蔓延防止策を検討する委員会を設置する。
感染症が発生しやすい時期、3月に1回以上開催すると良い。
そしてその結果を職員に周知すること。
ロ 感染症や食中毒の予防、蔓延防止の指針を整備すること。
ハ 養護老人ホームの職員に対し、感染症や食中毒についての研修会を定的に実施すること。
ニ 厚労省が定める感染症、食中毒の発生が疑われた際には、対処の手順に沿い適切に対応する必要がある。
事故発生
- 養護老人ホームは、事故の発生や再発を防止するために下記の通りの措置
を講じなければならない
イ 事故が発生した際には次号に規定する報告、記載された事故発生防止の指針を整備すること。
ロ 事故が発生した場合又は、それにあたる危険な事態が発生した場合には、当該事実を報告すること。
そしてその原因を分析し、改善策についてでた議案を職員に周知する体制を整備すること。
ハ 事故発生を防ぐ為に、職員に対し研修を定期的に実施すること。 - 養護老人ホームは、入居者の処遇により発生した事故の場合、迅速に市区町村や家族に連絡します。
- 養護老人ホームは、事故に対してとった行動を記録する必要がある。
- 養護老人ホームは、利用者に対する賠償すべき事故が合った場合、迅速に損害賠償を行う必要がある。
まとめ
他の介護施設に比べて低価格であることが、養護老人ホーム魅力の一つです。
入居金等の入居する際にかかる費用が抑えられることや、申込み窓口が市区町村となっているため安心して手続きをする事ができるのも利用者目線で考えられます。
ホームの魅力やメリット、デメリットを把握しどのように提供していくか、近隣施設との比較などを通じて把握しておき、利用者やご家族へスムーズに説明出来るようにしておきましょう。
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運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)