介護事業経営者の皆様。
総合事業の説明会には既に参加されましたでしょうか。
平成27年(2015年)の法改正以降、新しい総合事業に関する説明会が各市町村で数回にわたって開催されています。
この記事では、「説明会を逃してしまった」「改めてしっかり把握しておきたい」方に、全国共通のものから各市町村特有の内容まで詳しく説明していきます。
ぜひ、今後の事業展開等にお役立てください。
市町村の説明会とは
平成27年度より総合事業が開始され、総合事業とはそもそも何かについての説明が、市町村から事業所向けに企画されることがあります。
こちらについては年1~3回程度開催されておりますので、市町村ホームページをご確認ください。
説明会では具体的に何が説明されるかというと、”地域の高齢者の方たちを、地域の方々の手によって支えていく”ためには、何が出来るかということを話の根幹に、総合事業の概念や、総合事業がないと、現在の高齢者の方々、今後、高齢者の枠組みに入る方たちがどうなるのかということについて説明がされます。
特に、居宅支援サービスを行っている事業所に対しては、今後の高齢者化社会問題を考えて頂く機会の場となっています。
総合事業とは
背景
総合事業ができた背景に隠れている一番大きな問題点は、今後より進んでいく超高齢化社会にあります。
高齢者が増えると必然的に社会保障費も増加し、若者一人当たりへの負担も増加し、高齢者を支える若者という構図が成り立たなくなってきます。
年を重ねるごとに、体力も低下し、なんらかの介助を要する状態になる可能性が増加してきます。
そこで、少しでも健康寿命を延伸し、若者への介護負担を減らすべく、元気で活発な高齢者の方を増やしていきながら、「高齢者と若者」の支え合いの構図から、「高齢者と、若者+高齢者」という、高齢者本人にも地域で支え合いに参加してもらえるような構図を作るべく、総合事業が開始されました。
この総合事業を推し進めたのは、地域包括ケアシステムという、狭い範囲での支え合いのシステム構想が根幹にあります。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が、住み慣れた地域で、介護や医療、生活支援サポートが受けられるように、「住まい」「医療」「介護」「介護予防」を包括的に体制整備していくことをいいます。
これまで、国主導で行われていたサービスが、市町村レベルでの提供に変化することで、民間企業、ボランティア団体がより自由に、自主的に地域作りをしていくことが求められており、これを実践していくための形が、地域包括ケアシステムといいます。
この地域包括ケアシステムの名のもと、地域支援事業の展開こそが、今後の高齢化社会を乗り切る上で需要な要素になりえるでしょう。
目的
総合事業のそもそもの目的は多々挙げられますが、一番は、年々増加している社会保障費の抑制にあります。
健康寿命を延伸し、健康な高齢者を増加させることは、すなわち、社会保障費を直接的に抑えることができます。
また、一般高齢者に対して介護予防サービスの提供を図ることで、介護業界に他業界からの参入を図り、介護業界のイメージの払拭、職業定着など、様々な理由が挙げられます。
移行による影響(メリット・デメリット)
メリット
通常、介護保険サービスというのは要介護認定を受けてからサービス利用に至りますので、1カ月程度時間がかかることがありましたが、総合事業の基本チェックリストを使った判断はすぐに出ますので、素早くサービスを利用することが可能になりました。
また、要介護認定で「非該当」とされた人でも、生活機能の低下がみられると判断された場合は、訪問型サービス、通所型サービスを利用することが可能です。
デメリット
これは、国主体のサービス提供から、市町村ごとのサービス提供になったことがデメリットと言えるでしょう。
つまり、総合事業というのは、市町村の裁量範囲が大きくなっているため、価格設定に市町村によってムラが生じます。
隣の市は安い、高いや、サービス種類が多い、少ないといった差が生じてしまうため、自治体による格差をどれだけ埋めることができるかが今後の課題と言えるでしょう。
各市町村における総合事業
市町村(保険者)の役割
総合事業は、先述のように、市町村の裁量範囲が大きいため、市町村によって事業展開規模、内容が異なってきますので、市町村は事業所に対して、地域の総合事業の推進の仕方について、各事業所に説明を行います。
よって、各々の事業所は事業所のおかれている市町村ホームページに記載の説明会日程を把握し、出席するようにするのが望ましいでしょう。
しかし、都合が付かず参加できない場合もあるかと思います。
近々の総合事業の説明会であれば、各市町村のホームページに、PDF形式での説明会資料が添付されていたり、説明会で上がった質問のQ&Aがリンクとして貼付されていますので、そちらを参考にしてみてください。
各市町村の事業構築事例
いくつか総合事業の展開例として紹介させていただきます。
全ての市町村において、地域に住む人口や、年齢比を考慮し、市町村の状況に応じて多角的に医療・介護・予防・住まい・生活支援について取り組みを展開しています。
東京都世田谷区の場合
人口、866,063人 高齢化率、65歳以上→19.29% 75歳以上→9.77%
介護領域において、定期巡回、随時対応型訪問介護看護を区内全域で提供できる体制を確保。計画的に整備を推進。
また、介護予防領域において、社会資源を活用した高齢者の居場所作りを推進(喫茶店や大学などを活用)
鳥取県南部町の場合
人口、11,568人 高齢化率、65歳以上→31.05% 75歳以上→17.57%
空き家を借り受けて改修することで、陣経費、家賃を抑え、低所得者にも利用しやすい料金設定を作ったり、地域交流スペースを設けて共同生活を行うことで、独居だった人に安心感が生まれた。
今後、利用者には自分の家の延長として利用してもらうことで、安心感を醸成しながら将来的に住まいとして活用してもらう。
千葉県柏市の場合
人口、404,949人 高齢化率、65歳以上→21.86% 75歳以上→9.03%
行政が中心となって他職種と連携し、在宅医療を推進。
医療・看護・介護の関係団体が、他職種連携のルール作りになどについて議論するために、会議を開催。
関係作りやルール作りを進め、高齢化が進行する将来においても住民が住み慣れた地域で暮らせることを推進。
結果として、住み慣れた自宅にて、ずっと暮らすことにつながっている。
まとめ
今回は、地域包括ケアシステムの名の下に始まった総合事業について説明会や各市町村別の総合事業について簡単に紹介させていただきました。
総合事業は、各市町村ごとに特色ある事業を展開しています。
抱える問題や、特徴なども異なってきますので、参考になる市町村があると思います。
参考になればシェアのほどお願い致します。
総合事業について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)