多様化が進んでいる有料老人ホーム。
その一方で、運営にあたって課題が生じているという実態もあります。
今回の記事では、そんな有料老人ホームの運営基準に関して詳しく解説していきます。
一読し、今後の経営にお役立てください。
有料老人ホームのおさらい
厚生労働省の定める老人福祉法29条第1項の規定に基づき、有料老人ホームは、心身の健康維持と生活の安定のために設けられました。
有料老人ホームの設置に当たり都道府県知事への届け出が必要となりますが、その設置主体は、株式会社や社会福祉法人であっても特に問いません。
有料老人ホームは2000年(平成12年)の介護保険制度の創設により年々増加しています。
その背景として、民間事業者による介護事業参入により、運営しやすい環境が揃い整ったこと。
また、2006年(平成18年)に老人福祉法の改正があり有料老人ホームの定義が見直されたことにより、対象者が増えたと考えられます。
今後も届け出数は増加傾向にあります。高齢者向けの住まいやニーズが拡大されている中で、需要は高まるばかりです。
有料老人ホームにおける運営基準
有料老人ホーム事業の運営
管理規程の制定
有料老人ホームには、以下の管理規定があります。
- 入居者の定員
- サービス利用料
- サービス内容と費用負担
- 介護を基準
- 医療を要する際の対応等
上記の他に、入居者に関する情報等を正しく説明出来る資料を掲示していれば、その事業所での管理規程として扱ってもいいこととしています。
管理者が保管をしますが、すぐに確認できる事務所等に置いておくことをおすすめします。
名簿の整備
入居者が緊急の事態に至った場合、まず大切なのは緊急時に適切な対応ができるかどうかです。
その対応一つが生命を左右することにもなりかねません。
誰がどのような状況にあっても、入居者やご家族、又はその身元引受人等の連絡先を明記した名簿は必ず整備しておくようにしましょう。
古い情報や変更等が合った場合については、すぐに差し替えておきましょう。
また、更新した日付を書いておくといいとされています。
帳簿の整備
施設への入居が決まれば、その作成の日から2年間は帳簿を保存する決まりになっています。
内部監査等があった際、これらの書類を提示することもあるので、間違っても処分しないよう保管しておきます。
これは老人福祉法第29条第4項に定められています。
帳簿の記載内容は以下の通りです。
イ 有料老人ホームの修繕又は改善の実施について
ロ 入居者が負担する費用についての受領記録
ハ 入居者への供与サービス
- 入浴、排泄、食事介護
- 食事提供
- 洗濯、掃除等の家事供与
- 健康管理
- 安否確認、状況把握
- 生活相談
ニ 入居者の緊急時やむを得ない理由で身体拘束を行った場合、その様子と時間、入居者の心身の状況を詳しく明記する必要がある。
ホ 入居者及び家族からの苦情内容
へ 入居者に事故が発生した場合、その状況や事故に際してとった処置内容
ト 他事業者にサービスを供与する場合に至っては、当該事業者の名称、所在地、委託の契約事項及び業務の実施状況を記録
チ 入居者の関する設備、職員、会計事項
個人情報の取り扱い
個人情報に関する取り扱いに関しては、個人情報保護に関する法律「平成15年法律第57号」を尊重する必要があります。
外部や関係者以外の情報漏洩には十分注意が必要です。
現在ではインターネット上で写真を添付したことにより他人に情報を漏洩している事例が多発しているので、ネット上での利用にも注意が必要です。
緊急時の対応
避難訓練を定期的に実施すること。
災害及び急病、事故、負傷等に迅速かつ適切に誰もが対応出来るよう指導する必要があります。
特に、具体的な計画所を作成し避難場所やルートなどを確認しておくこと。
また災害に至っては、非常食を必要な分量保管する必要があります。
賞味期限が過ぎていたり、数量が不足していたりすることが無いよう確認しておきます。
管理者は、どのような時も情報収集出来るような体制を整えておきましょう。
医療機関等との連携
イ 入居者の急変に備え、事前に医療提携先と内容を取り決めておくこと
ロ 歯科医療機関と事前協力内容を決めておくこと
ハ 医療、歯科機関との診療科目について入居者や家族に周知しておくこと
ニ 入居者が健康相談や診断を受けられるよう、提携医療機関による医師の訪問日などを確保しておく
ホ 入居者が医療機関を選択する際妨げてはいけない。
医療機関はあくまで入居者の選択肢として事業者が提示する者であり、診療に誘引するためではない
へ 医療機関から入居者を紹介する対価としての金品は、保健事業の健全な運営を損なうことに繋がる恐れがあります。
そのため入居者が当該医療機関において診療を受けるよう誘引してはいけない
介護サービス事業所との関係
イ 介護サービス事業所は、近隣住人に情報提供すること
ロ 介護サービスの利用にあたり、設置者は関係事業者からのサービス提供に限定誘導してはいけない
ハ 入居者が希望する介護のサービス利用を妨げてはいけない
運営懇談会の設置等
有料老人ホームを運営するにあたり、運営懇談会を設置する必要があります。
入居者にも積極的に参加を促すことが望まれます。
他にも、外部との連携をより透明性に確保する要素も含まれています。
万が一、入居者定員が少ないことや運営懇談会の設置が困難と思われる場合は、代替えとなる設置が必要となります。
例えば、地域との定期的な交流の場をつくることや、入居者家族との個々の連絡体制が確認出来る様な行事を作成する必要があります。
運営懇談会の運営に関しては下記を参照してください。
イ 運営懇談会は、事業者、管理者、職員、入居者により構成される
ロ 入居者に周知し必要に応じて参加を促す
ハ 運営にあたり外部からの点検が入るよう努めること(職員、入居者以外の第三者の立場にある民生委員等)
ニ 運営懇談回は次の事項を報告、説明すること。また、入居者の希望・要望、意見を運営に反映させるよう努める。
- 入居者の状況
- サービス提供の状況
- 入居者が支払う金銭に関する収支報告(管理費、食費)
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運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)