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平成27年度の通所介護の人員基準にかかる看護師職員配置
平成27年度以前の配置基準
通所介護において、看護職員は単位ごとに専従で「1」以上の配置が必要であるが、事業所の利用定員が10人以下の場合、看護職員は必置ではないとされていました。
当時の現状
この当時の看護職員の配置数は、1人~2人未満が、通所介護事業所全体の45%ほどを占めていました。
さらに、事業実施形態別の看護職員の1日における各業務の比率、平均時間では、小規模事業所において、個別機能訓練に業務を割く割合が10%で、平均44.6%となっている一方、ケア全般の割合は4.6%と低い状況になっていました。
反対に、大規模事業所においては、他と比較して「健康管理」の割合が高く、34.6%と3割を超えていますので、傾向としては、大規模事業所のほうが、看護職員としての職務を全うできる傾向にあると思われていました。
平成27年度以後の配置基準
変更点
平成27年度の介護報酬改定により、看護職員の配置基準が緩和されました。
看護職員については、提供時間帯を通じて専従する必要はないが、当該看護職員は提供時間帯を通じて、指定通所介護事業所と密接かつ適切な連携を図るものとする。
また、病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、看護職員が指定通所介護事業所の営業日ごとに利用者の健康状態の確認を行い、病院、診療所、訪問看護ステーションとして医通所介護事業所が提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図っている場合には、看護職員が確保されているものとする
出典:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001tonu-att/2r9852000001tp0z.pdf
と変更になりました。
変更理由
平成27年度までの看護職員の人員配置は、小規模であろうと、大規模であろうと、看護職員は常勤換算で「1」以上必要でした。
しかし、実際には小規模事業において、看護職員としての職務というよりは、リハビリテーション専門職や、医療技術をもたない介護士等のでもフォローできる職務が大半を占めており、看護師として、専門性の高いケアを発揮できない状況にありました。
そこで、その専門性を効果的に活かすことができるように、専従ではなく、病院、診療所、訪問看護ステーションと連携し、健康状態の確認を行った場合は、人員配置基準を満たしたものと変更になりました。
看護師が休んだ場合の人員基準の取扱い
看護師不在のまま業務を続けた場合に起こりうること
看護師が不在の場合、協定などで連携した事業所または病院、訪問看護ステーションなどから看護師がかけつけて、提供サービス時間帯は専従として従事する必要があります。
仮に、看護師不在のまま、介護職員並びにその他医療スタッフで通所介護を運営した場合、これは紛れもなく、人員基準違反になります。人員基準違反は、30%減算になりますが、例えば、21日の提供日があったとして、看護師が18日しか配置できなかった場合、サービス提供日の配置された延べ人数(18)÷サービス提供日(21)=0.857となりますので、0.9以下は減算の対象になります。
つまり、1日休んだだけでは、サービス提供日に配置された延べ人数によっては減算対象にならないこともあります。
かといって、看護師を配置しなくてもいい日があるという訳ではありませんので注意してください。
必ず、看護師を配置するか、すぐに駆けつけられる体制をつくる必要があります。
このような駆けつけられる体制もなく、さらに人員基準違反を常態的に繰り返している事業所については行政処分の対象となる可能性もあります。
何度も出てきている密接かつ適切な連携という言葉ですが、こちらについては事項のQ&Aでも紹介します。
この密接かつ適切な連携というのは様々な憶測を呼んでおり、色々な解釈がありますので後述させていただきます。
看護師不在の場合、どのような措置をとるべきか
不在になっても看護師を充当できる体制を作っていない事業所は、ほとんどないとは思います。
しかし、病院に付属していない単独のデイサービスにおいては、このように看護師が不在になって困惑するケースが後を絶ちません。
看護師が不在にならないように、必ず、病院や訪問看護ステーションなど、看護師が常勤しているところに、協定などを通じて連携をとり、業務発令のもと、サービス提供時間帯に駆けつけてくれる体制が必要です。
このような体制がない事業所は、まずこの体制をきちんと整備することを早急に開始してください。
この体制がすでにある事業所は、協定に記載されている連絡手段をもとに、サービス提供時間帯は、看護師を専従として受けるようにしましょう。
こうすることで人員基準を満たすことが出来ます。
通所介護の看護師配置に関するよくあるQ&A
Q1. 指定通所介護事業所に看護職員の配置は必要?
A. サービス提供日には看護職員の配置が必要です。
しかし、先述のように、病院、診療所、訪問看護ステーションとの密接かつ適切な連携が図られており、看護職員がサービス提供にあたり、利用者の健康状態を確認できれば、必ずしも看護師を配置しなくても問題ありません。
Q2. 密接かつ適切な連携とは?
A. 密接、かつ適切な連携とは、指定通所介護事業所へ駆けつけることができる体制や、適切な指示ができる連絡体制を確保するということです。
例えば、病院付属のデイサービスの場合、電話ひとつで病院側の看護師がデイサービスにかけつけるなどがこれにあたります(もちろんそのような辞令が出ている看護師)。
Q3. 看護職員はサービス提供時間帯を通じて専従する必要があるのか?
A. 提供時間を通じて専従する必要はありません。
密接な連携がとれる体制は作っておく必要があります。
また、提供日ごとに、事業所において利用者の健康状態の確認を行う際には、その時間帯は専従が必須です。
Q4. 利用者の健康状態の確認等には、どれくらいの時間が必要なのか。
A. その日の利用者の数や、利用者の身体状況に応じて必要とされる看護職員の仕事量は異なってきます。
そのため、利用者の状況に応じて、全ての人の健康状態を把握するために必要な業務量に設定し、各事業所、各看護師が適切な時間を設定してください。
Q5. 看護職員が、当該指定通所介護事業所の機能訓練指導員として兼務することは可能?
A. 機能訓練指導員と兼務する場合、提供日ごとに、看護職員として専従する時間を確保することと、密接かつ適切な連携をとることが条件です。
しかしながら、出来るだけ機能訓練指導員は、看護師ではなく、リハビリ専門職を従事させるようにしましょう。
看護師とリハビリテーション専門職とでは、知識領域が異なります。
Q6. 同一法人他事業所にて、従事しているような場合は、「密接かつ適切な連携」として認められるのか。
A. 同一法人事業と兼務する場合は、提供日ごとに、看護職員として専従する時間を確保することと、密接かつ適切な連携をとることが条件です。
Q7. その他看護職員の配置について、留意する事項は?
A. 他事業所(訪問看護ステーションや病院など)との協定等で確保した看護職員を配置する場合は、必ずその事業所との協定は、文書により行ってください。
また、訪問看護ステーションの看護職員が業務を行う場合は、指定訪問看護事業所の看護職員として勤務時間に含めることはできません。
Q8. 事業所に駆けつけることが出来る体制とは、距離的にどの程度まで離れた範囲までを想定しているのか。
A. 地域の実情に応じて対応するため、一概に距離で示すことは困難です。
Q9. 病院、診療所または訪問看護ステーションとの協定などにて注意する事項は?
A. 先述しましたが、協定においては必ず文書で行う必要があります。
具体的な文書内容を明記しておきます。
ⅰ.提供日ごとに利用者の健康状態の確認を含め、必要な業務を行う旨
ⅱ.提供時間を通じて、必要に応じて看護職員が駆けつけられるような態勢を確保する
旨と、その具体的な運用方法
ⅲ.当該協定などに関して利用者に賠償すべき事故が発生した場合における責任の所在
ⅳ.その他、協定などの適切な実施の確保のために必要な事項
Q10. 病院、診療所または、訪問看護ステーションとの契約で、確保した看護職員が、提供日ごとに通所介護事業所において、利用者の健康状態の確認などを行った際、当該看護職員の氏名や、業務内容がわかる記録は必要になるのか。
A. サービス提供記録の中で、利用者の健康状態の確認を行ったことを記載するなど、契約が確実に行われた記録が必要です。
Q11. 新規指定申請時、変更届提出時に注意する点はどのようなこと?
A. 病院、診療所または訪問看護ステーションの協定などに基づき看護職員を確保する場合
①勤務形態一覧表
②勤務者氏名及び勤務時間(指名が特定されない場合、氏名は書かなくてもよい)
③協定書の写し
この3点の届出が必要になります。
看護職員が併設・近接する同一法人の他事業所と兼務する場合は、勤務形態一覧表に当該看護職員の氏名、勤務時間などを記載し、備考欄に「併設・・・兼務」などと記載してください。
密接かつ適切な連携について
看護師のいない通所介護事業所は、この密接かつ適切な連携のもと、提供サービス時間帯を通じて、看護師を充当し、人員基準を満たす必要があります。
この密接かつ適切な連携というのは、具体的に見えて、案外あやふやな面を合わせもっています。
例えば、看護師が不在の事業所で、利用者が何らかの身体的不調を訴えたとしましょう。
この時、看護師が不在ですので、協定を結んでいる病院に連絡し、看護師にバイタル等を報告した結果、「すぐに、病院にくるように指導された」場合、これは事業所からすれば連絡を行い、連携をとったと思われます。
また、病院側としても、直接的な医行為はないにしても、医学的見地のもと、看護師としての判断を提供したと考えられるため、密接な連携がとれたともいえます。
逆に、オンコールはできたが、急変等にすぐに対応できない状況には変わりないため、適切な看護師としての処置がなされていないとも考えられます。
つまり、この密接かつ適切な連携・・・については様々な意見や解釈があり、個人だけでなく都道府県によってもその解釈が異なります。
都道府県よっては、看護師が帰宅していても、連絡が取れれば密接な連携とするとしている場所もありますので、一概に、直接的に医行為が必要なのかについては議論が絶えません。
一般的に、連絡がとれれば可というのは規則として緩すぎると思われますが、こういった緩く、曖昧な言葉だからこそ助かっている事業所もあるのも事実です。
実際、単独型デイサービスで、15名程度の小規模事業所で、地方の事業所だった場合、協定を結んでいる病院や訪問看護ステーションが、遠方にあるケースも珍しくありません。
こうなると、急変に対して素早い対応をとることは物理的に難しくなります。
このような場合、オンコールでの対応をすることで、密接かつ適切な連携とされるのであれば、単独型デイサービスからすれば非常に助かると考えられます。
まとめ
今回は、通所介護における看護職員の人員基準についてまとめさせてもらいました。
看護師は、医療知識を幅広く習得しており、これから総合事業の展開に伴い、地域で働く看護師のニーズはさらに高まることが予測されます。
それと同時に、こうした事業所間での密接な連携を行っていかなければ、ヒューマンエラーが生じる原因にもなりかねます。
参考になればシェアのほど宜しくお願いします。
人員基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。
(専門家監修:矢野文弘 先生)