中重度者ケア体制加算を取ろうと思われた際に、加算に必要な職員数の計算がややこしく、頭を悩ませておられる方も多いのではないかと思います。
制度について読んでいくと、加配職員などの聞きなれない言葉も出てくるため、さらに戸惑うことでしょう。
この記事では、中重度者ケア体制加算について基本的な制度の内容から説明し、その上で職員数の計算方法、注意点を説明していきます。
中重度者ケア体制加算とは?
中重度者ケア体制加算について、制度のできた背景や基本的な内容をおさらいしていきたいと思います。
1.中重度者ケア体制加算の背景・目的
中重度者ケア体制加算は、2015年(平成27年)の介護報酬改定の際に新設された制度です。
これから高齢化社会が進む際に、中重度者ケアが必要な高齢者が増えることは、容易に想像がつきます。
中重度者ケアの必要な高齢者は施設介護を利用する割合が増え、介護保険財政への負担が大きくなってきています。
そのため、中重度のケアが必要なものであっても、できるかぎり在宅での生活を維持できるように、制度自体もシフトしています。
その流れを受け、在宅からの通いサービスでも中重度者を積極的に受け入れられる施設を増やすことを目的に中重度者ケア体制加算が創設されました。
2.中重度者ケア体制加算の概要
先述したように、中重度者ケア体制加算は在宅生活を支えるサービスのため、適応となるのは「通所介護」と「通所リハビリ」の2つになります。
さらに、中重度者を支えるという観点から、利用者の介護度や職員の配置に対しても規定があります。
詳しくは以下の表をご覧ください。
通所介護 | 通所リハビリ | |
---|---|---|
利用者の要件 | 前年度、もしくは加算を行う月の前3カ月の全利用者(※)から、要支援者を除いたうえで、要介護者のうちの要介護3以上の利用者が占める割合が、3割以上。(※)前年度実績のない事業所のみ適応 | |
職員の要件 | 人員基準で定められている介護職員および看護職員の人数に加えて、介護職員もしくは看護職員を常勤換算で、2以上配置する事。 | 人員基準で定められている介護職員および看護職員の人数に加えて、介護職員もしくは看護職員を常勤換算で、1以上配置する事。 |
サービス提供時間内において、専従の看護職員を1以上配置していること。 | ||
その他の要件 | 中重度の者であっても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なケアを計画的に実施するプログラムを作成すること。 | 中重度の者であっても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なリハビリを計画的に実施するプログラムを作成すること。 |
上記のように大まかに3つの条件を満たす必要があります。 以下で、その中の利用者の要件、職員の要件の計算方法について詳しく説明していきます。
中重度者ケア体制加算の計算方法
1.利用者における要介護3以上の割合の計算方法
この項目は、通所介護、通所リハビリ共に共通です。
例)通所介護(リハビリ)事業所の利用者状況
要介護度 | 利用実績 | |||
---|---|---|---|---|
1月 | 2月 | 3月 | ||
利用者① | 要介護1 | 7回 | 4回 | 7回 |
利用者② | 要介護2 | 7回 | 6回 | 8回 |
利用者③ | 要介護1 | 6回 | 6回 | 7回 |
利用者④ | 要介護3 | 12回 | 13回 | 13回 |
利用者⑤ | 要介護2 | 8回 | 8回 | 8回 |
利用者⑥ | 要介護3 | 10回 | 11回 | 12回 |
利用者⑦ | 要介護1 | 8回 | 7回 | 7回 |
利用者⑧ | 要介護3 | 11回 | 13回 | 13回 |
利用者⑨ | 要介護4 | 13回 | 13回 | 14回 |
利用者⑩ | 要介護2 | 8回 | 8回 | 7回 |
要介護3以上合計 | 46回 | 50回 | 52回 | |
合計(要支援者を除く) | 46回 | 50回 | 52回 |
(2015年の介護報酬改定Q&Aより抜粋)
①延べ人数で計算する方法
まず、利用者の総数(要支援者除く)を計算します。
(ここでは3カ月になっていますが、前年度実績の際には12カ月分で計算して下さい。)
82人(1月)+81人(2月)+88人(3月)=251人
同様に、要介護3以上の人の数を計算して下さい。
46人+50人+52人=148人
そして、要介護3以上の延べ人数を、利用者の総数で割って、割合を計算します。
148÷251=0.5896・・・となります。
少数第二位以下は切り捨てのため、58%となります。
30%以上であることから、基準を満たしていることとなります。
②実人数で計算する方法
まず、要支援者を除く利用者の人数を計算します。
9人(1月)+9人(2月)+9人(3月)=27人
同様に、要介護3以上の人の人数を計算してください。
4人+4人+4人=12人
そして、要介護3以上の人数を利用者の人数で割って、割合を計算します。
12÷27=0.44444・・・
となります。
少数第2位以下は切り捨てのため、44%となります。
こちらも30%以上であることから、基準を満たしていることとなります。
実際はどちらかが満たしていれば、基準を満たしたことになります
2.職員の配置数の計算方法
次に、加配職員の計算の方法を説明します。
ここでは通所介護を例に挙げて説明します。
通所リハビリでは、加配職員は常勤換算1以上ですのでご注意下さい。
例)ある通所介護事業所の1週間の職員配置です。
定員は20名で、提供時間は7時間。
常勤が必要とされる勤務時間が週40時間。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
利用者数 | 18人 | 17人 | 19人 | 20人 | 15人 | 16人 | 105人 |
必要時間数 | 11.2時間 | 9.8時間 | 12.6時間 | 14時間 | 7時間 | 8.4時間 | 63時間 |
職員A | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 0時間 | 40時間 |
職員B | 0時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 40時間 |
職員C | 7時間 | 7時間 | 7時間 | 7時間 | 7時間 | 0時間 | 35時間 |
職員D | 8時間 | 8時間 | 0時間 | 0時間 | 8時間 | 8時間 | 32時間 |
計 | 23時間 | 31時間 | 23時間 | 23時間 | 31時間 | 16時間 | 147時間 |
加配時間数 | 11.8時間 | 21.2時間 | 10.4時間 | 9時間 | 24時間 | 7.6時間 | 84時間 |
(2015年の介護報酬改定Q&Aより抜粋)
ここでは1週間を例に挙げていますが、実際は月単位で計算して下さい。
まずは表中の必要時間数の計算方法について説明します。
必要時間数は、利用者数に対して必要な介護職員の数を、提供時間で換算して割り出した時間数となります。
月曜日を例に説明しますと
必要な介護職員数は ((利用者数-15)÷5+1)で計算されます。
よって、月曜日は1.6人となります。
そこに提供時間数をかけて、必要時間数を求めます。
1.6×7=11.2
となり、必要時間数は11.2時間となります。
もう1つ、表中の加配時間数について説明します。
加配時間とは、先ほど割り出した必要時間数よりも実際に職員が多く確保された時間数を指します。
職員の延べ勤務時間から必要時間数を引いて求めます。
月曜日を例に説明しますと、
延べ勤務時間(合計)23-11.2=11.8時間となります。
ここで割り出された加配時間を常勤の必要とされる勤務時間数で割ったものが、加配人数となり、それが2以上であれば基準を満たすことになります。
ここでは、週全体で84時間の加配時間があり、常勤の必要な勤務時間40で割ると、2.1人となるため、基準を満たしたことになります。
中重度者ケア体制加算の計算における注意点
以下に、計算するうえで間違いやすい項目を記載します。ご一読ください。
利用者の要件について)
- 利用者の要件を、前月までの3カ月で申請した場合は、その後も要件を満たしているか隔月ごとに確認し、要件を下回った場合には直ちに申請を取り消さなければなりません。
毎月注意して計算していきましょう。
職員の要件について)
- 常勤換算時間を計算する際の勤務延べ時間数に関しては、サービス提供時間前後の延長加算を算定する際に配置する、介護職員および看護職員の勤務時間は含めることが出来ませんので、注意が必要です。
- 加配の延べ勤務時間数に、加算の算定要因となる「専属で必要となる看護師の勤務時間数」を含めてはいけません。
専従の看護職員以外に、看護職員が配置されている場合には、加配時間に含めてもかまいません。 - 看護職員が1人も勤務できていない場合(体調不良等)その日に限って、加算は算定できません。
まとめ
中重度者ケア体制加算の利用者・職員の要件は、お分かりいただけましたでしょうか?
いずれも集計や計算がややこしいですが、計算用のエクセルシート等を利用すると、比較的簡単に割り出すことが出来ます。
看護師の配置などの細かい点に注意して、確実に加算をとれるようにしたいものです。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)