中重度者ケア体制加算を取る際に、皆さま一度は悩まれると思われる、「中重度者ケア対象者に対するプログラム」。
この記事では、中重度者ケア体制加算について改めておさらいをし、そこからプログラムの在り方、計画書の書き方について考えていきたいと思います。
プログラムについてお悩みになっている方、ご参考になさってください。
中重度者ケア体制加算のおさらい
プログラム・計画書について説明する前に、中重度者ケア体制加算についておさらいをしたいと思います。
1.中重度者ケア体制加算とは?背景・目的は?
2015年(平成27年)介護報酬改定の際に、新設された加算です。
超高齢社会の到来で要介護者が増えることを背景に、介護度が中重度の者であっても、できるだけ住み慣れた在宅で長く生活できる体制を整えることを目的として創設されました。
そのため、対象となるサービスは「通所介護」「通所リハビリ」の2つとなります。
そして、その中でも、中重度者ケアを行うことができる(算定要件をクリアしている)施設にのみ加算されます。
加算される単位数は、通所介護では45単位、通所リハビリでは20単位です。
基準を満たしている施設では、すべての利用者に対して加算が適応になります。
2.中重度者ケア体制加算の算定要件
①利用者の要件
利用者の要件は、通所介護・通所リハビリ共通です。
前年度、もしくは算定を行う月を含めた前3カ月の利用者(前年度の実績がない事業所に適用)のうち、要介護3以上の利用者が3割を占めることが条件です。
計算方法は、要支援者を除いて、要介護者の延べ人数のうちの要介護3以上の者の割合を算出します。
前3カ月の実績で計算したものは、その後も要件を満たしているか確認し、要件を満たさなくなった場合、直ちに届け出が必要になります。
②施設の人員要件
通所介護の人員要件
1)人員基準で定められている介護職員・看護職員の人数に加えて、介護職員もしくは看護職員を常勤換算で2以上配置していること。
2)サービス提供時間内において、看護職員を専従で1人配置していること。
通所リハビリの人員要件
1)人員基準で定められている介護職員・看護職員の人数に加えて、介護職員もしくは看護職員を常勤換算で1以上配置していること。
2)サービス提供時間内において、看護職員を専従で1人配置していること。
③プログラムに関する要件
通所介護
中重度のもので合っても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なケアを計画的に実施するプログラムを作成すること。
通所リハビリ
中重度のもので合っても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なリハビリを計画的に実施するプログラムを作成すること。
次に、この③の項目のプログラムに関する要件について、詳しく説明していきます。
中重度者ケア体制加算におけるプログラムとは?
上記③のプログラムの要件は、厚生労働省令に記載されている要件になります。
しかし、実際にはどのように解釈し、プログラムを作成・実行すれば良いのでしょうか?
プログラムについて詳しく説明していきます。
1.プログラムの概容
2015年(平成27年)介護報酬改定の際の中重度者ケア体制加算の加算要件で
中重度のもので合っても、社会性の維持を図り、在宅生活の維持に必要なケア(ケアは通所介護、通所リハビリではリハビリ)を計画的に実施するプログラムを作成する事。
とあります。
介護報酬改定におけるQ&Aでは、通所介護における解釈が説明されており、
今までその人が築いてきた人間関係、社会関係を維持し続けられるように、家庭内の役割作りのための支援や地域の中で役割や生きがいを持って生活できるような支援をすることなどの目標を通所介護計画または別途作成する計画に設定し、通所介護を提供する必要がある
と、記されています。
言い換えると、
「介護度の高い人でも、何かしら家庭や社会での役割を持つことで、生きがいを見出し、有意義な在宅生活をできるだけ長く維持したい。そのために介護者は、その人の希望や状況に合った出来ることを共に考え、ケア(リハビリ)計画を立てて、実行しましょう。」
ということではないでしょうか?
2.プログラムの計画・例
次は、プログラムを行うための計画について、例を挙げながら考えていきたいと思います。
上記でも説明したとおり、プログラムは実現可能なこと(あまり高すぎる目標でないこと)をあげて実行していく必要があります。
目標設定の際には、
1)家庭や社会生活における希望や役割
2)本人が行いたいと望むこと、行っていることの維持
この2点を考えるとわかりやすいかと思います。
例えば、「本当は家族に自慢の手料理をふるまいたい」と望む方がいるとします。
要介護3以上の方で、1人で作ることは難しいことは容易に想像がつきます。
その中で、その人の残存機能に焦点を当ててみましょう。
例えば、野菜の皮むきが出来るなど、何かしら料理に関わることがでてくると思います。
次は、それを行うための、ケアやリハビリを考えていくとわかりやすいのではないでしょうか?
そこで、長期目標を「家族に自慢の手料理をふるまいたい」
短期目標を「レシピを思い出して、紙に書きだす。」
と、設定したとします。
実際の計画は、座位の保持、手先のリハビリや、書字の練習などでも良いと思います。
そして、期間の設定を行い、期間が来た際には評価も記載します。
レシピの共有による周りの反応などが、本人の望みを少しでも叶え、やる気の向上につながることになれば、要件を満たしたと言えるのではないでしょうか?
3.プログラムの記載方法・作成者は?
書式に関しては、具体的な指定はありません。
記載先に関しては、別紙で記載しても良いし、計画書内に記載してもよい、とのみ書いてあります。
どこに記載しても、中重度者ケア体制加算のためのケアとわかるように記載しておくほうが良いと思います。
内容に関しては、上記例をご参照ください。
作成者に関しても、特に記載はありません。
サービス情報提供書を作成する職員が、一緒に記載しても問題ありません。
まとめ
家庭内での生きがいやや社会参加を促すプログラムというと難しいように思いますが、その人がどのように生きてきたのか、どんな人物像であったのかなどを知り、本当にうれしかったこと、したいことなど、心が嬉しくなるようなことなどを聞き出すことで、目標は見えてくるのではないでしょうか?
楽しい話題は、人の心を温かくしてくれます。
素敵な計画が立てられる手助けになりましたら幸いです。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)