介護支援ブログ

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総合事業における第2号被保険者にはどのように対応すべき?

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介護事業者の皆様、総合事業の移行に際し、事業者全体の理解や万全の準備はできておりますでしょうか。これまで以上にサービス提供の対象者範囲が広がり、複雑に細分化された新しい制度への移行に伴い、経営でも介護現場においてもより多様な対応が必要となります。そのためには、範囲の広がった様々な対象者への理解が大切です。本記事では、総合事業における第2号被保険者に関して、詳しくご説明していきます。

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そもそも総合事業って何?

総合事業の目的と背景

本記事の「総合事業」とは、平成27年度から新しく導入された介護予防・日常生活支援総合事業のことを指します。要支援や要介護の認定を受けていない高齢者に行われていた地域自治体の生活支援サービスと、要支援1と要支援2の介護認定を受けている方を対象とした予防給付にあたる介護予防サービスを統合させた事業です。

総合事業への移行前は、デイサービスやホームヘルプサービスの予防給付を受けている要支援1と要支援2の方は、どちらかというと要介護1の方に近いイメージがありましたが、今後は財源上、自立に振り分けられる高齢者のカテゴリーに近くなります。(予防給付のうち、訪問看護と福祉用具等については、以前のように介護保険における予防給付となります。)総合事業は、この2つのグループを対象に地域密着型の様々なサービスを提供し、これまで以上に「予防」や「自立」に重点をおくこと、また地域のボランティアなどを活用して、地域全体の支援を推進していくことを目的としています。

 

この背景には、社会保障費が毎年増加し続けている点にあります。介護保険から市区町村主体の事業に移行させ、介護保険の財源からではなく市区町村の財政から拠出させることで国の負担を減らそうという狙いもあります。しかし、市町村も税収が減っており、簡単に拠出できない現状もあります。そこで、その市町村の負担軽減の対策として、定年を迎え、余力のある方々におけるボランティア支援などの施策が挙げられますが、元気な高齢者の方々は嘱託やパートで働き続ける場合も多く、どこまで抜本的な負担軽減対策になるのか不確実なところです。

総合事業の提供サービスの種類

総合事業は、これまでのように要支援認定を受けた方と基本チェックリストで該当すると判断された方への介護予防・生活支援サービスと、一般の高齢者および第1号被保険者全てを対象とした一般介護予防事業とで構成されています。

   

介護予防・生活支援サービスでは、これまで予防給付となっていた要支援1と2の方への訪問介護や通所介護が対象となるほか、配食や安否確認、老人会のような交流の場の運営、お出かけ支援サービス、雪下ろしなど地域のニーズに合わせたサービスが提供されるようになります。また、一般介護予防事業では、介護予防についての啓発活動などが含まれます。

サービスの種類が地域のニーズに対応して増えることが利点として挙げられていますが、税収の多い市町村と、逆に少ない市町村では、同じニーズに対して、提供できる介護サービスや報酬が異なり、利用者にとって不公平がでるのではといった問題も指摘されています。

 

総合事業についての詳細はこちらをご覧ください。

新しい総合事業で何が変わる!? 介護事業所がすべきこととは 

総合事業の対象者区分について

・対象者は、総合事業を構成する2つの事業においてそれぞれ定められています。

⑴ 介護予防・生活支援サービス事業   

①居宅要支援者

②基本チェックリストにより事業対象者と判断された第1号被保険者(2号被保険者は含まない)  

⑵ 一般介護予防事業    

全ての第1号被保険者及びその支援のための活動に関わるもの

 

【参考:いわき市 総合事業の対象者について

つまり、介護予防・生活支援サービスの対象者は、要支援1と要支援2の介護認定を受けている方と、65歳以上の方で、基本チェックリストで対象とみなされた方に限られます。 基本チェックリストとは、65歳以上の高齢者のうち、介護予防が必要になりそうな方を25項目における質問でふるい分け、従来よりも早いサービス利用開始につなげていくためのものです。高齢者が、何らかの介護サービスや情報を求めて、市町村の福祉課、地域包括センター、あるいはケアマネージャーのいる事業所に相談に訪れた場合、原則として本人と対面しながら、このチェックリストを使用します。

第1号被保険者と第2号被保険者の違い

例えば総合事業の基本チェックリストのように、介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者では受けられるサービスの種類が異なっていることがわかりますが、その他にも異なる点があるので、それぞれの内容について総合事業と絡めながら説明します。

第1号被保険者について

第1号被保険者は65歳以上の方です。保険料は原則として、年金から徴収されます。総合事業に関しては、このうち既に要支援認定を受けている方、基本チェックリストでサービスの提供が必要と判断された方は介護予防・生活支援サービスの対象になります。さらに65歳以上であれば要介護認定の有無にかかわらず、一般介護予防の対象になります。

第2号被保険者について

第2号被保険者は、40歳以上、64歳以下です。40歳の誕生日の前日が属する月から健康保険料とともに介護保険料が徴収されます。このうち介護サービスを受けられる人は、介護保険法に定める特定疾病によって介護が必要になった方です。

特定疾病には、リウマチや糖尿病による障害、初老期の認知症(若年性認知症)、脳血管障害や脳梗塞など16種類の疾病が指定されています。加齢に伴って出現しやすくなるこれらの特定疾病が原因で、日常生活において何らかの援助が必要になる状態が3〜6ヶ月以上にわたって続く場合に、介護サービスの申請をすることができます。ただし、事故やその他の疾病で介護が必要な状態になった場合は、介護保険の適用外となります。

総合事業において、第2号被保険者は基本チェックリストを用いて総合事業を利用できるかどうかという判断をすることはできませんが、市町村の担当窓口で申請し、介護認定を受けることで、ホームヘルプやその他の介護予防・生活支援サービスを受けることができます。一般介護予防事業は対象外となっています。

第2号被保険者が総合事業を受ける場合

第2号被保険者は総合事業のサービスを受けられるのか

結論から言えば、40歳以上65歳未満である第2号被保険者の方も総合事業のサービスを受けられます。ただし、65歳になれば自動的に介護保険被保険者証が送られてくる第1号被保険者と違い、まずはこれを申請して交付された後に、要支援の認定を受ける必要があります。

第2号被保険者が総合事業のサービスを受けるためのプロセス

第2号被保険者の場合、新規認定申請に先立って、居住する市町村から介護保険被保険者証の交付を受ける必要があります。第2号被保険者は、まずは市町村の福祉課などの窓口に申請書と共に、医療保険証、パスポートや運転免許証などの身分証を持参して、介護保険被保険者証発給のための申請を行います。被保険者証が交付されて初めて要介護・要支援認定を受けることができます。要介護認定審査会では、通常の介護度の二次判定の他に、主治医意見書の記載内容に基づいて、実際に介護保険上における特定疾病の定義に該当するかの確認を行います。これらのプロセスを経て要介護・要支援認定がされれば、ケアプランに沿って総合事業の中の対象のサービスが受けられるようになります。

予想される第2号被保険者の利用者受け入れについて

介護サービス提供事業者にとって、経営や運営上、顧客理解が大切であり、前の章では利用者の立場から必要な条件等詳しく説明してきました。総合事業においては対象者が広がったため、個々の利用者への対応も多様化し、事業所全体の受け入れ態勢も整備する必要があります。次に、第2被保険者の特性や予想される介護サービスについてお話します。

第2号被保険者の特性

第2号被保険者が介護保険の被保険者証を受給する際、40歳以上65歳未満であり、特定疾患にかかっているという条件が必要です。特定疾病患者ゆえ、医療寄りの対応が必要なケースもありますが、第2号被保険者は、訪問看護、福祉用具の貸与/販売などは従来の介護予防のままなので、総合事業として提供されるサービスのうち、第2号被保険者に想定されるサービスは、訪問サービス、通所サービス、配食などの生活支援サービス、ケアマネジメントとなります。

疾病が進んでくると、介護度が上がって総合事業の対象ではなくなる、あるいは医療保険でのサービスに切り替わっていく、または介護保険と医療保険の併用といったことが予想されます。そのため、ケアマネージャーとの連絡をより密にとらなければならなくなります。第2号被保険者にとって、特定疾病の内容によっては、体調の突然の変化にそなえ、看護士が常駐している事業所は心強い存在です。また、事業所のスタッフにも、その疾患に対するおおまかな知識を持ち、その病に対する理解を広めるため、事前に資料を配る、勉強会をするなど前もって現場研修を行っておくと、安心ですね。

被保険者証について

65歳になれば自動的に送付されてくる第1号被保険者の被保険者証と違い、第2号被保険者は、特定疾患のある方は自ら申請して交付を受けます。介護保険被保険者証は次のような時に提示する必要がありますので、事業者の方々もご留意ください。

―要介護認定の申請や更新を行うとき。

―地域支援包括センターや居宅支援事業所のケアマージャ―、または各種介護サービス事業所に、サービス計画の作成を依頼するとき。

―介護サービスを利用するとき。

―保険料や利用者負担などの減免申請をするとき。

【参考:八王子市 介護保険被保険者証について

介護保険被保険者証の色やデザインは、市町村によりわずかに異なりますが、記載項目は同じです。3つ折りになった被保険者証は、表紙が住所・氏名・生年月日と介護保険被保険者番号と交付日が記載されます。2ページ目には要介護状態区分や期限、限度額などが記載され、最後のページはケアプラン作成の担当事業所名などの欄になっています。コピーしたものは使用できませんから、提示が必要な際には現本を持参する必要があるので、サービス変更時などは利用者に前もって知らせる必要があります。

最後に

総合事業が導入されたことで、サービス提供の範囲が広がったと同時に、サービス提供までの時間が短縮され、支援開始の時期を早められるようになりました。今後、さらに事業所の経営を安定させていくためにも、新しい利用者に対して積極的にサービスを提供することも必要です。総合事業においても第2号被保険者を受け入れて、事業所全体で柔軟に対応していきたいものですね。

 

総合事業について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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