介護保険制度の中でも、医療的な視点から身体機能の改善や維持に必要なリハビリを行うことができる通所リハビリ(以下デイケアと表記します)。
最近は生活ケアにも特化したデイケアがあったり、特色を持ったリハビリを行うところがあったりと、デイケア自体も多様化しています。
今回の記事では、デイケアにおける運営基準をまとめていきたいと思います。
運営基準自体はとても長い文章ですので、デイサービスと間違いやすい点や、デイケアで特に注意したいことなどをピックアップしていきます。
運営基準の見直しや、読み解くうえでのご参考になさってください。
運営基準とは?
デイケアの運営基準を説明していく前に、運営基準という言葉について説明したいと思います。
運営基準とは、サービスを提供するにあたって、事業所が行わなければいけない事項や、留意すべき事項など、事業を行う上で求められる運営上の基準です。
すなわち、事業所が最低限守らなければならない約束事が記載されているものだと、考えていただければ良いと思います。
そのため、運営基準を守らなかった場合には、様々なペナルティーが発生します。
運営基準違反が発覚した場合、改善勧告があります。
それでも改善が見られなかった場合には改善命令が下されます。
それでも改善できない場合や深刻な違反の場合には、指定の取り消しが行われます。
また、違反の種類によっては、発覚した期間は減算になる場合もあります。
減算や指定取り消しなどの事態を招かないように、運営基準を正しく理解しなければなりません。
デイケアにおける運営基準。
それでは実際に、デイケアにおける運営基準を見ていきたいと思います。
運営基準の中から、特に重要と思われる部分をピックアップして解説します。
1.サービス提供内容の説明・同意
- 事業者は、サービス提供の開始時に、本人または家族に対して、運営基準の概要、従業員の勤務体制、事故発生時の対応、苦情の処理の体制など、サービスを選択するにあたって必要な内容を記載した文書を交付して、親切丁寧に説明し同意を得る必要があります。
- 事業者は、利用者からの希望があれば、磁気媒体での文書の交付が可能です。
2.サービス提供拒否の禁止
- 事業者は、正当な理由がない限り、サービスの提供を拒んではいけません。正当な理由とは、定員を超えてしまう場合などのことを指します。また、受け入れ困難な場合には、他の事業所を紹介するなどの対応が必要です。
3.通所介護計画の作成
- 医師、理学療法士、作業療法士、その他専ら通所リハビリのサービスを提供する従業員(以下、「医師等の従業員」)は、診療や運動機能・作業能力検査等の結果に基づいて、利用者の心身の状況や希望に配慮しながら、共同して通所リハビリの目標を決定し、目標を達成するための項目等も記載した、通所リハビリ計画書を作成しなければいけません。
- 通所リハビリ計画書は、先に居宅サービス計画書が作成されている場合は、その内容と整合していなければなりません。
- 医師等の従業員は、作成した通所リハビリ計画を作成する際には利用者もしくはご家族の同意を得なければいけません。また、作成した通所リハビリ計画書を利用者に交付しなければいけません。
- 通所リハビリの従業員は、個々の通所リハビリ計画書に沿った実施の内容を、診療記録に記載しなければいけません。
4.心身の状況等の把握
- 事業者はサービスの提供にあたって、サービス担当者会議に参加するなどして、利用者の心身の状態や、病歴、環境、その他の保健医療福祉サービスの利用状況などを把握しなければいけません。
5.居宅介護支援事業者等との連携
- 事業者は、通所リハビリサービスを提供する際に、居宅介護支援事業所、その他保健医療福祉サービスと、密接な連携をしなければいけません。サービス終了の際にも、利用者およびご家族に適切な指導をするとともに、主治医・居宅介護支援事業所への情報提供や、その他保健医療福祉サービスとも密接な連携をとらなければいけません。
6.衛生管理
- 事業者は利用者の使用する食器や施設、飲用する水などの衛生管理に努めて、衛生上必要な措置を取らなければいけません。食中毒の予防や、感染症発生・まん延を防ぐために、保健所と密接な連携を取らなければいけません。
- 事業者は空調設備などで、施設内の適温の確保をしなければいけません。
7.サービス提供の記録
- サービスを提供した際には、サービス提供日、内容、保険給付額、その他必要な記録を利用者の居宅サービス計画書またはサービス利用票等に記載しなければいけません。
- サービス事業者間の密接な連携をするために、利用者から求めがあればその情報を文書その他の適切な方法等(連携ノートの利用など)で利用者に提示しなければなりません。サービス提供記録に関しては、2年間の保管が義務付けられています。
8.緊急時の対応
- 事業者はサービスの提供中に利用者の病状の急変等が生じた場合には、運営規定に定めて方法により、速やかに主治医への連絡を行う等の措置を取らなければいけません。
9.運営規程の整備
- 次の項目について記載しなければいけません。
① 事業の目的及び運営の方針
② 事業者の職種、員数及び職務内容
③ 営業日及び営業時間
営業時間とサービス提供時間を分けて記載する必要があります。
また、6時間以上8時間未満の通所リハの利用時間前後に延長サービスを行う事業所は、提供時間とは別に、延長サービスを提供する時間を明記しなければいけません。
④ サービスの内容、利用料及びその他の費用額
入浴や食事の提供がある場合には、その額も記載しなければいけません。
⑤ 通常の事業の実施範囲
⑥ 緊急時における対応方法
病状急変時の対応方法を明記しなければなりません。
⑦ その他運営に関する重要な事項
⑧ 利用定員
⑨ 非常災害対策
10.秘密保持
- 事業者は正当な理由なく、利用者およびご家族の秘密を漏らしてはいけません。
- 従業員が従業員でなくなった後にも、秘密を漏らすことのないように、必要な措置を取らなければいけません。例えば雇用時に説明し、必要であれば違約金の取り決めをしておくなどのことになります。
- サービス担当者会議などで、個人情報を利用することについて、あらかじめ利用者およびご家族に説明し、文書で同意を得なければいけません。
11.苦情処理
- 苦情が発生した際に迅速に対応できるように窓口を設置するなど、適切な措置を講じなければいけません。その措置の方法について重要事項説明書に記載して、掲示しておかなければいけません。
- 苦情の内容、日時について記録し、苦情の内容を踏まえて、サービスの質の向上にむけた取り組みを行う必要があります。
- 苦情に関して、国保連の調査や、市町村からの内容の文書の提出や調査等で、改善・助言を受けた際には改善しなければいけません。
12.事故発生時の対応等
- サービス提供による事故発生の際には、居宅介護支援事業所、家族、市町村等に連絡を行う必要があります。また、あらかじめ事故発生時の対応について、マニュアル等を作成しておく必要があります。
- 事故が起こった場合には、事故の内容について記録しておかなければいけません。記録は2年間の保管が必要です。また、事故の再発防止策を講じなければいけません。
- サービスの提供により損害が起こった場合には、速やかに賠償を行う必要があります。
損害賠償保険に加入するなどの措置が必要です。
13.会計の区分
- 事業者は、事業所ごとに経理を分けて、サービス事業とその他の事業の会計を区別しなければいけません。
以上、注意しておきたい運営基準について、ピックアックしました。
運営基準全般で言えることは、各職種との連携の重要性や、サービス提供に関して、事前説明の重要性を謳うものが多いようです。
デイケアの指定申請の方法は?
指定申請は、都道府県によって方法が若干異なりますので、事業所が存在する都道府県に確認をお願いします。
ここでは、東京都の例で説明します。
① 介護保険指定事業者になる要件を満たしていることを確認する。
- デイケアでは、病院・診療所であることが必須です。
- 申請までに、人員基準・設備基準を満たしていること。
- 運営基準に沿った運営が行えること。
② (指定予定日3カ月前の末日までに、)新規指定前研修の申し込みをする。
③ 新規指定前研修の受講。
④ (指定予定日2カ月前の末日までに)新規指定申請書の提出・受理
⑤ 書類等の審査
⑥ 基準等満たしていた場合、指定介護事業所に認定。
上記のような流れを取るようになります。
提出書類や提出方法も都道府県により異なります。
各都道府県のHP等で確認することが出来ますので、ご確認下さい。
まとめ
今回はデイケアの運営基準について、特に重要と思われるものをピックアップして解説しました。
何かと読みづらい運営基準ですが、改正のたびに新たな解釈が付け加えられるなど、制度と同じように変化しています。
事業運営の上ではとても重要な項目ですので、これを機にぜひご一読いただければと思います。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。