総合事業移行に関しての理解や、準備は出来ていらっしゃいますでしょうか?
超高齢社会を支えるため、今後も介護保険サービスは多様化していくことが予想されます。
事業者はしっかりと法改正の動向を把握し、時代の流れに対応した事業を行っていく必要性があるでしょう。
この記事では、総合事業移行期における他市町村の利用者の受け入れに関して、詳しく説明していきます。今後の事業計画策定にぜひお役立て下さい。
総合事業とは?
まずは基本的な総合事業についての概要を、おさらいしたいと思います。
総合事業とは、現存の介護予防サービスのうち、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」を市町村単位での、「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行する制度です。
現在の予防サービスは都道府県主体であるのに対し、総合事業は市町村主体となります。
市町村の主体に変更したの一つとして、今後予想される認知症高齢者の増加に対応するために、住み慣れた地域ぐるみで高齢者を支えていく制度(地域包括ケアシステム)を作り上げる際に、地域の特性に柔軟に対応していく必要があるという背景があります。
総合事業の対象者は、要支援認定を受けた要支援者、チェックリスト等で判定された(要支援認定を受けていない)介護予防・生活支援サービス対象者になります。
(厚生労働省令「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え」より抜粋)
総合事業の詳しい説明に関してはこちらもご参照ください。
総合事業における、みなし事業者とは?
2014(平成26)年の厚生労働省令により総合事業の概要が明らかにされ、市町村単位で準備が整い次第、総合事業に順次移行されています。
その中で、事務手続きの簡略化を目的とし、2015(平成27)年3月までに、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」の認定を受けている事業所は、総合事業の認定を受けたものとみなして、改めて市町村から認定を受けずに事業を行うことが可能です。これを「みなし事業者」といいます。
みなし事業者の有効期間は、3年(2017年度末まで)となっています。
しかし、都道府県の裁量で短縮も可能であるため、詳細は各都道府県のHP等をご参照ください。
みなし指定中の他市町村の利用者の受け入れ方法は?
それでは、本題の「他市町村からの利用者の受け入れ」について説明します。
みなし事業者であれば、有効期間内はすべての市町村からの指定をうけているとみなされ、新たに指定を受けることなく現行サービスを提供することが可能です。
しかし、総合事業は市町村によって開始時期が異なること、さらに市町村が総合事業に移行後も、個人の介護保険認定の更新までは予防給付でサービスを利用することができることから、様々な形態の利用者が混在することになります。
実際の例を挙げて説明していきます。
(例題設定)
2015年(平成27年)3月以前から「介護予防通所介護」を行っている事業所a(A市に事業所存在)。
利用者はA市、B町、C市からの方がいる。
例題1)
A市が総合事業を開始しておらず、B町、C市が総合事業を開始している場合
届け出の必要性
現行と同じサービスの提供であれば、みなし事業所であるため、B町、C市への届け出の必要はない。
ただし、A市利用者に対して介護予防通所介護を提供するためには、都道府県の指定が切れないよう、更新手続きをする必要がある。
A市利用者
今まで通り介護予防通所介護での利用
B町、C市利用者
介護保険認定期間中は介護予防通所介護での利用。
介護保険認定の更新の際に総合事業での利用に変更。
例題2)
A市、C市が総合事業を開始しており、B町のみ開始していない場合
届け出の必要性
現行と同じサービスにおいては、みなし事業者のため、届け出の必要なし。
A市、C市利用者に対して基準緩和サービスを提供するためには、A市、C市への手続きが必要。
B町利用者に対して介護予防通所介護を提供するためには、都道府県の指定が切れないよう、更新手続きをする必要がある。
A市、C市利用者
介護保険認定期間中は介護予防通所介護での利用。
更新の際に総合事業での利用に変更。
総合事業における現行サービス同様以外の基準緩和サービスも提供可能。
上記のように、事業所内に予防給付の利用者と、総合事業の利用者が存在することになります。
さらに、同じ市町村であっても利用者ごとに介護保険の認定期間が異なるため、注意が必要です。
また、総合事業は市町村独自にルールを設定できることから、各市町村の対応を把握しておく必要があります。
なお、例題は通所介護サービスについてみてきましたが、訪問介護に関しても同様の措置が取られます。
まとめ
総合事業への移行に際して、改めて総合事業とは何かを確認し、注意する部分を説明してきましたが、お分かりいただけましたでしょうか?
制度の変更に関しては様々な事務手続きが発生し、大変なことが多いですね。
しかし、それらの手続き上のことで利用者さんに不利益を与えるようなことが起こらないよう、経営者は細心の注意を払う必要があります。早めの対応で、スムーズな移行が出来ますことを願っています。
最後までお読みくださってありがとうございます。
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(専門家監修:矢野文弘 先生)