介護支援ブログ

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認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の運営基準とは?

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 皆様は、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)についてどこまでご存じでしょうか。

 昨今、地域包括ケアシステムが機能し、地域に根ざした医療介護が推進されています。

 そんな中、認知症状の出ているご高齢の方同士や、  グループホームのサービス提供に注目が集まっています。

 

 今回の記事では、そのグループホームについて紹介していきます。

 

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認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは

 認知症については周知の通りですが、そんな認知症症状を抱えたご高齢の方で、それ以外にもなんらかの病気や障害で、おひとりでの生活に困難を抱えた場合に、専門職員の援助を受けながら共同で生活をしていくための介護福祉施設のことをいいます。

 認知症状を呈している方が入居を検討する施設としては最初に名前があがってくるものです。

 

 グループホームは、専門職員による介護を行いますが、介護という立ち位置よりも、サポートをするという言葉のほうが適切といえるでしょう。

 一緒に買い物に行ったり、ご飯を作ったり、洗濯、掃除など、在宅での生活をしていたこととさして変わりないように取り組みます。

 基本的には起床時間も自由ですし、起床から就寝までの生活の流れにスケジュール等はないところが多いです。

 一律に他の方と合わせたりすることもありませんが、あくまで共同で生活するので、お互いの距離感は一定に保ちながら生活をしていくことが求められます(このあたりはサポート職員の協力体制が整っている必要があります)。

 

 1つのグループホームにつき2ユニット、つまり最大18名の利用が可能であり、利用者の居室は基本的に個室対応になっています。

 共用部分(食堂や居間)もあります。また、日中は利用者3名に対して職員1人の配置が義務付けられています。

 

 

認知症対応型共同生活介護の運営基準

認知症状進行の緩和

 グループホームに入居される方は、認知症状を呈している方です。

 しかし、そのほとんどはサポートがあれば十分に生活していけるレベルの方ですので、グループホームに入居して、認知症状が進行し、サポートがあっても生活が困窮するとなってしまっては元も子もありません。

 そのため、グループホームの運営において、重要視される点には、この「認知症状の緩和」が挙げられます。

 

 認知症状というのは、不安や、ストレスなどの精神衛生上の諸問題によって進行するケースがほとんどですので、グループホームは、利用者の方が安心して日常生活を送ることができるよう、体の状態、心の状態を十分に評価して、サポートにあたる必要があります。

 

個人の尊重

 あくまでグループホームは、在宅生活の延長という枠組みで捉えられていますので、利用されている方の「意思」が生かされるように、また、「意思」を引き出すような関わりが必要です。

 きちんと利用者の方の役割をもって、在宅生活に近い環境で、生活が行われるよう配慮しましょう。

 放置とならないように、必要な援助(働きかけ)は行う必要があります。

 しかし、この場合も、職員の都合に合わせるのではなく、急かさず、本人の自発性を引き出すような関わりをする必要があります。

 

ケースに合わせたサポート

 指定グループホームは、認知症対応型共同生活介護計画に基づき、漫然なサポートにならないよう配慮しなければなりません。

 認知症という枠組みで語ると、みな症状は似たようなものになりますが、個人の性格という枠組みで捉えると、利用者の方各々で考え方も変わってきます。

 症状として捉えた介護計画になると、その人の日常生活に即した、個人を尊重した介護は難しくなります。

 

インフォームド・コンセント

 グループホームにおける職員は、サービス提供にあたって、丁寧に行うこと、また、利用者とその家族様に対して、理解しやすいよう説明を行う義務があります。

 これはグループホームに限られたことではなく、サービス業全体にいえることです。医療介護の現場であれば当然といえるでしょう。

 

無意味な拘束をしない

 病院では、経鼻栄養チューブを抜く、点滴を抜くなどの事故を防ぐため、拘束用ミトンをつけたり、転倒防止のための柵固定など、やむを得ない拘束をすることがありますが、グループホームでも基本的に、生命を脅かす緊急性の高い場合を除き、身体的拘束は行ってはいけません。

 車椅子のブレーキが外れない、利用者の補聴器の電源を切るなど、冷酷な拘束をしていたという話も耳にしますが、これらは言語道断です。

 グループホームとは、その人がその人らしく生活する場でありますので、拘束は基本的に’ゼロ’が目標になります。

 

 しかし、認知症状というのは予測できない場合が多々あります。

 急に暴れ出し、共同生活の場で他者に迷惑をかけたり、包丁などの危険物の扱いが難しい方の場合は、場合によっては使用物に制限をかけたりする必要もあります。

 そういった場合の拘束は仕方ありませんが、こういった場合は、その状況や、拘束した時間など、拘束した理由について記録をしておく必要があります。

 

基本的に拘束を必要とする場合は、そのご家族に対して身体的拘束の理由を説明しなければなりませんが、緊急性の高い場合はこの限りではありません。

先に拘束をして、その後ご家族に説明をする形をとっても問題はありません。

 

第三者評価が必要

 グループホームの質の評価を行うために、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常にその改善を図る必要があります。

 この結果については、入居されている方だけでなく、そのご家族へも提供し、事業所の掲示板(見やすい箇所)に提示したり、インターネット上に公開するなど、開示義務があります。

 

 

運営基準を満たす上での注意事項

医行為について

 医行為とは、医師法や看護師法等により、医師や看護師といった医療職のみが行うことが許されている行為で、介護従事者は行ってはならない行為です。

 医行為ではないと考えられているものや、規制対象外である行為についていくつか挙げられていますが、こちらにまとめていますので参考になれば幸いです。

 行ってよい行為については原則的に条件がありますので確認をしながら介入するように心がけて下さい。

 

原則として医行為ではないと考えられるもの

行為

条件

一般的な方法による体温測定

水銀体温計、電子体温計による脇下での計測

耳式電子体温計による外耳道での測定

自動血圧測定器による血圧測定

 

パルスオキシメータの装着

新生児以外のものであって入院治療の必要がないもの

SPO2の測定を目的とするもの

軽微な切り傷、擦り傷、火傷等の処置

専門的な判断や技術を必要としない処置であること

皮膚への軟膏の塗布

褥瘡の処置を除く

医師等が以下の3条件を満たしていることを確認していること

①    入院・入所の必要なく容態が安定している

②    副作用の危険性・投薬量の調整等のため、医師等による連続的な様態の経過感圧が必要でない

③    誤嚥・出血など、医薬品の使用にあたり医師等の専門的な配慮が必要でない

皮膚への湿布の貼付

点眼薬の点眼

一包化された内服薬の内服

肛門からの座薬挿入

鼻腔粘膜への薬剤噴霧

 

 

規制対象外であるもの

行為

条件

爪切り・やすり掛け

爪に異常がない

爪周辺の皮膚に化膿・炎症がない

糖尿病などの疾患で専門的な管理が必要でないこと

日常的なオーラルケア

重度の歯周病などにかかっていないこと

耳垢の除去

耳垢塞栓の除去を除く

ストーマ装具の処理

肌に接着したパウチの交換を除く

カテーテル準備

自己導尿の補助のためであること

市販の浣腸器による浣腸

挿入部の長さが5~6cm程度

グリセリン濃度50%

成人用40g以下、小児用20g以下、幼児用10g以下であること

 

 

介護職員等によるたんの吸引・経管栄養について

 2015年から介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員においては、安全が確保されている場合、一定の条件下で「たんの吸引等」の行為を実施できるようになりました。

 痰の吸引となると、いかにも医行為と思われてしまいますが、身近に吸引が必要なケースは意外と多いのです。

 

 特にご高齢になってくると、息を吐く力や、お腹に入れる力が弱くなり、喀痰(痰を外部へ排出すること)が出来なくなるケースがあったり、嚥下機能の低下に伴い、唾をうまく飲む込むことができず、口腔内に溜めてしまうケースもあります。

 このような場合、医行為だからといって医師や看護師に任せてしまうと、対応が後手に回ることもありますので、出来る限り研修を受けて、いつでもサポートできる体制を作っておくほうがよいでしょう。

 

入退居支援について

 基本的に、入居されている方のほとんどは、サポートがあれば生活を送れる認知症利用者の方々ですが、場合によっては急性増悪に伴い、共同生活が送れなくなる場合があります。

 そのような場合、共同生活に支障をきたしますので、事業者は、速やかに、その利用者の状況に応じた適切な転居先(病院・施設など)を紹介するなどの義務があります。

 また、退居する際には、その利用者が退居に必要な最低限必要な援助を行う必要があります。

 その利用者の方が どのような生活を送っており、どのようなことを在宅生活で求めているのかなど、福祉サービスを提供するものとの密接な情報共有が義務付けられています。

 

退去に関する留意事項の取り決めについて

 入居の留意事項作成・説明だけでなく、退居に関する留意事項の作成・説明も必須です(後々のトラブルを防ぐため)。 

 

グループホーム利用中の住所変更について

 グループホームは、地域密着型サービスですので、原則として、その利用者の居住されている市町村の被保険者のみが利用できることになっています。

 そのため、サービス継続利用中に、なんらかの理由でその市町村から移動された場合、そのサービスが利用できなくなります。

 これについては事業者側がきちんと説明をするようにしましょう。

(グループホーム利用中に、その家族が引っ越ししてしまい、気が付かないまま利用者の利用権がなくなってしまうというケースは多くあります)

  

非常災害対策

 事業者は、非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害に備えるため、定期的な避難・救出訓練を行わなければなりません。

 これは、グループホームに以外にもいえることですが、認知症状を呈している方の場合、個人が臨機応変に立ち回ることは不可能です。

 そのため、大切なのは、その方々をサポートする人間が、臨機応変に立ち回り、非常災害から命を守る立ち回りが必要なのです。

 

 高齢者にとって、雨風が激しい中での避難は心理的、肉体的にも大変です。

 こういった場面を想定した模擬訓練も非常に大切になってきますので、グループホームなどの施設は、消防法により、年2回以上の訓練実施が義務付けられています。

 出来るだけ、夜間想定など、避難が困難となる場合を想定した訓練を、所定回数以上実施するようにしてください。

 

よくある運営基準違反

 運営基準違反とは、その事業所を安全に運営するための規則を破って、行政から指導が入ることを指します。

 場合によっては元職員の内部告発から、その事業所に監査が入り、サービス停止まで至るケースも存在します。

 サービス停止、取り消し以外にも、期間を設けたサービス停止や、勧告・注意で済む場合など、措置については違反の程度や行政によって様々です。

 介護サービス業者は、介護保険等に定められた基準を遵守し、適性に事業所を運営するとともに、常に運営向上に努める必要があります。

 

 グループホームの場合、介護報酬、利用料の徴収、運営基準等での改善指導が入ることが多いですがその多くはサービス停止に至るものは目立ちません。

 しかし、家族に説明をしていない、訓練をしていないなど、最終的に大事故に繋がりかねないヒヤリハット報告は散見されるため、常日頃から注意は必要です。

 

 

まとめ

 今回は、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)について紹介させていただきました。

 グループホームというのは、病院や、特別養護老人ホームとは違い、あくまで在宅生活の延長で捉えられています。

 そのため利用者には、QOL向上を図って共同生活を送ってもらう必要があります。

 そのためには、そこで従事するスタッフの、関わるための最低限の心構えと、知識が必要不可欠です。

 

 グループホームを運営しようとしている方など、この記事を通して、グループホームについて深く考える機会になれば幸いです。

 参考になればシェアをお願い致します。

 

 

運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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