2012年(平成24年)より、障害を持つ児童への福祉サービスは、児童福祉法に一本化されましたその際に、それまでは様々な年代の障害を持つ子供たちが通っていた児童デイサービスから、学校に行っている障害児を対象として放課後等デイサービスが新設されました。
以後、放課後等デイサービスも多様化し、色々な特色を持った事業所が増えています。子供たちの未来のために、「より良い放課後等デイサービスを作ってみたい!」と、思っておられる方も多いのではないでしょうか?
ここでは、放課後等デイサービスを運営するにあたって必要な人員基準についての説明をしていきたいと思います。
また、2017年(平成29年)から新基準が適用されるため、その点も合わせて説明していきます。
開設を目指しておられる事業者の方、ぜひご参考になさってください。
放課後等デイサービスとは?
ここでは、放課後等デイサービスの基本的な説明を行いたいと思います。
概要
児童福祉法における、障害児通所支援に基づくサービスです。
学校通学中の障害を持つ児童に対して、放課後や夏休みなどの長期休暇において、生活機能を向上するための訓練を継続的に行うことで、学校教育と共に障害を持つ児童の自立を促していく目的と、放課後などの居場所を確保するという目的で創設されました。
利用する際には、都道府県、政令指定都市単位での申請となります。
対象
児童福祉法における障害児のうち、学校教育法に定められた学校(幼稚園・大学を除く)に通う児童が対象です(引き続き放課後等デイサービスを利用しなければ、福祉を損なう恐れがあると認められるときは、20歳まで延長が可能です)。
ここで指す障害児とは、
"身体に障害のある児童、知的障害または精神に障害のある児童(発達障害児を含む)"
【出典:児童福祉法】
とあり、障害者手帳の有無は問わず、児童相談所、市町村保健センター、医師等により、療育の必要性が認められた児童も対象になります。
基本的には3障害(身体・知的・精神障害)に対応することが望ましいとされていますが、障害の特性に応じた支援も可能です。
定員
10人以上(主に対象とする障害を、重症心身障害とする場合は5人以上)
サービス内容
児童福祉法では、
"学校授業終了後及び休業日において、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進、その他の便宜を供与"
【出典:児童福祉法】
とあります。
具体的には、多彩なメニューを設けて、本人の希望を踏まえたサービスを提供する必要があります。
メニューの作成にあたっては、
①自立した日常生活を営むための訓練
②創作活動、作業活動
③地域交流の機会の提供
④余暇の提供
などを考慮して、作成する必要があります。
また、児童が通う学校と連携・協働して、一貫した支援を行う必要があります。
一貫した支援を行うことが出来ないと、児童が混乱することとなるため、特に配慮が必要です。
上記のような多彩なサービスが求められるため、細かい人員基準があります。
実際の人員基準を見ていきましょう。
放課後等デイサービスの人員基準
放課後等デイサービスを開設するにあたって必要な人員について、厚生労働省令に則して説明します。
しかし、政令都市等で、基準に若干違いがある場合があります。
申請される都道府県、もしくは政令指定の要件を必ずご確認ください。
管理者
常勤で1人必要です。
主に管理業務に従事します。
業務に支障がない場合は、他の職種との兼務が可能です。
児童発達支援管理責任者
厚生労働省令においては、1人以上必要で、業務に支障がない場合は、他の職種との兼務が可能と記載されています(都道府県、政令指定都市等で若干違いがあるようです)。
※児童発達支援管理責任者とは、個々のサービス利用者のアセスメントや個別支援計画の立案などを行い、その後の定期的評価など、一連のサービス提供プロセスにおける責任者であり、他の従業員に対して指導をおこなう立場となります。
都道府県、もしくは政令指定都市ごとに研修があり、その研修を終了し登録されたものが職務に当たることが出来ます。
受講するためには、決められた条件を満たすことが必要です。
受講資格が2017年(平成29年)より若干変更になります。
以前までは、障害者の保険・福祉・医療・教育・相談等に5~10年以上直接携わるもの、もしくは相談支援や対象の国家資格等で10年以上勤務している等でも条件を満たすことになっていました。
しかし、2017年(平成29年)からは、障害者・障害児・直接支援の経験(3年以上)が必須化される予定です。
そのため、実務期間は短縮されますが、直接支援に当たらない職種のものや、国家資格により対象となっていた人は、受講資格を満たさないこととなります。
指導員または保育士
サービスを提供する時間帯を通してサービス単位ごとに、指導員または保育士の合計が、
・障害児が10人以下の場合 2人以上(うち1人以上は常勤)
・障害児が10人を超える場合は、2人に加え、障害児が5人またはその端数を超えるごとに1人を加えた数以上
となっています。
※指導員または保育士の割合については特に記載はありませんでしたが、2017年(H29年)から基準が厳格化されます。児童指導員または保育士、障害者福祉の経験のあるもの(指導員)に分けられ、保育士または児童指導員の数が半数以上になるように義務付けられます。児童指導員と指導員の違いは以下の表をご参照ください。
(厚生労働省令より抜粋)
機能訓練担当職員
(機能訓練を行う場合のみ)
放課後等デイサービスにおいて、陥りやすい人員基準違反について
上記を踏まえた上で、陥りやすい人員基準違反について考えていきたいと思います。
常勤時間について
勤務時間が32時間以下であれば、常勤とはみなされません(育児時間短縮等の場合は30時間でも可能)。
児童デイサービスにおいては平日の提供時間が短いことが多いため、注意が必要です。
サービスの重なる時間帯の人員欠如
サービス単位ごとに人員が必要であり、サービス単位ごとの時間が重なる場合には注意が必要です。
例えば、17時までのサービス対象児10名と16時からのサービス対象児10名がいる場合、それぞれが重なる1時間には、常勤の指導員または保育士が2名以上必要です。
また、同じ時間帯であっても、違うサービス単位での活動であれば、各々に常勤が1人必要となるため注意しましょう。
児童発達支援管理責任者の人員欠如
一部の都道府県や政令指定都市では、児童発達支援管理責任者は常勤専従で1人以上であることが求められている場合があります。
その際には管理者との兼任が出来ない為、注意しましょう。
詳しくはご自身が開業される都道府県もしくは政令指定都市にお問い合わせください。
放課後等デイサービス事業所が陥りやすい人員基準欠如減算について
それでは、人員欠如があった場合にはどのような減算があるのでしょうか?
サービス提供職員欠如減算
サービス提供単位における指定基準の人員数を満たしていない場合、1割を超えて欠如した場合には翌月から、1割未満であれば翌々月から、人員基準を満たすまでの期間において基本単位数の70%の減算となります。
上記の陥りやすい人員基準でも書いたように、サービス提供職員はサービス単位ごとに必要な人員数が決まっているので、注意しましょう。
児童発達支援管理責任者欠如減算
児童発達支援管理責任者が急遽辞めてしまったなどの場合、その翌々月から人員基準を満たすまでの期間において、基本単位数の70%に減算されます。
児童発達管理責任者の資格受給基準が厳しくなるため、今後資格を取ろうとされていた方は注意しましょう。
まとめ
この記事では、放課後等デイサービスの人員基準について見てきました。
2012年(平成24年)の制度改正により始まった、放課後等デイサービスですが、利用児童数は年々増えつつあります。
発達障害などを持つ児童が社会生活において自立できるよう手助けする施設として、ますます需要は増えていくと思われます。
そのような背景から、2017年(平成29年)から、人員基準の厳格化がされます。
正しい情報を得ながら、適正な経営が出来るように注意しましょう。
障害を持ちながらも社会で生活する児童は、大きなストレスを抱えて生活していると言われています。
そのストレスを取り除き、児童の笑顔あふれる放課後等デイサービスが出来ますことを願っております。
最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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人員基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。