介護事業者の皆様。
ご利用者の方の些細な変化にも最適化された介護サービスを行うには、ケアプラン改善のために行う「モニタリング」が非常に大切となります。
そのキーマンとなるのが、介護支援専門員(ケアマネージャー)。
本記事では、モニタリングにおけるケアマネージャーの役割等について、事例を交えながら詳しくご説明していきます。
ぜひ一読し、今後の運営にお役立てください。
モニタリングのおさらい
まずはモニタリングの概要についておさらいします。
介護保険におけるサービスはケアプランに沿って提供されます。
ケアプランでは、利用者の状態と希望に合った短期目標と長期目標を設定します。
おおむね短期目標は1〜3カ月、長期目標は6カ月くらいに設定されます。
モニタリングは、この短期目標の進捗状況を確認するとともに、提供されているサービスが現状やニーズとマッチしているか判断するためにケアマネージャーが行います。
厚生労働省は
“短期目標を達成するために位置づけたサービスの提供期間が終了した際に、その評価・検証を行う”
としており、具体的にどの頻度で行うか定められてはいませんが、利用者の心身の状態や家庭内の状況が変化した時などは、必要に応じてその都度行うので、1月に複数回行うこともあります。
入所型の介護施設では、大きな変化がなければ3ケ月に1度行っているところが多いようです。
ケアマネジメントの流れ
ケアマネジメントの流れは以下のPDCAサイクルで表されます。
P=PLAN :アセスメントを行い、それに基づいた介護計画の作成
D=DO :介護計画によるサービスの提供
C=CHECK :短期目標の評価
A=ACTION :介護計画の評価に基づいて目標やサービスの変更
まず、PLANから。
ケアマネージャーは利用者を訪問し、ニーズや問題点を把握します。
この時に聞き取った情報を基にして、利用者に合ったケアプランの原案を作成します。
次のDOでは、各サービスを提供する事業者と連絡を取り、サービス担当者会議を開きます。
利用者本人や場合によっては家族にケアプランの内容を十分に説明し、同意を得ます。ケアプランに基づいて、実際の介護サービスの提供を開始します。
CHECKでは、ケアプランのチェックを行います。
利用者宅への訪問や、サービス提供事業所の介護スタッフなどからの情報を通して、提供されているサービスが利用者の現在のニーズ合っているか、短期目標は達成されているかなどを確認し、目標やサービス内容を継続するのか、または変更するのか判断します。
ACTIONでは、CHECKに基づいたフィードバックを行い、介護計画に変更があれば、サービス提供事業所と調整します。
また、新しい介護計画について利用者本人や家族と再度面談し、了承を得ます。
このように、ケアマネージャーは、利用者と各サービスを結びつける総合的なプランナーの役割を果たしています。
ケアプランの評価
事前評価としてのアセスメント
ケアプランの評価には2種類あります。
まずは事前評価という意味のアセスメントです。
これは上に書いたPDCAサイクルのPにあたります。
アセスメントとは、利用者の心身の状態、持病や既往歴、居住環境、家族や介護者の有無、これまでどのような経過をたどってきたのかといった客観的な情報と、本人の希望や好み、意欲といった主観的な情報を得るために行われます。
ケアマネージャーは実際に自宅を訪問し、利用者本人や場合によっては家族とも面談して、これらの情報から問題点やニーズを探り、目標を設定していきます。
アセスメントを通して事前に情報収集をすることで、利用者にとって最適な介護計画を作ることができます。
事後評価としてのモニタリング
モニタリングはPDCAサイクルのCの部分になります。
介護サービスの提供によって、できるだけ自立した生活が送れているのか、短期目標をクリアできているのかをチェックします。
また、利用者本人の希望と合致しているのか、身体や精神の状態に変化はないのか、家族や自宅といった環境面において変更はないのかも合わせて確認します。
利用者を訪問するだけでなく、日ごろ利用者の介護をしている介護スタッフやサービス提供者、家族からも情報を得て、総合的に判断します。
短期目標が達成されていれば、新たな目標を設定します。
達成されていなければ、目標が現状と合っているのか、問題点はないのかを調査し、継続または変更します。
モニタリングによって介護計画自体に変更がなくても、利用者や家族に報告し、目標の達成度などを説明します。
モニタリングの重要性
なぜモニタリングが重要なのかというと、大きく2つ理由があります。1つは、利用者である高齢者は、病気や衰弱などによって、少し前までできていたことが、急にできなくなることが多々あるからです。
そうなると、当初のニーズや希望に基づいて提供されているサービスと、現在のニーズにずれが生じてしまいます。
このずれを修正するために定期的にケアプランを評価する必要があるのです。
もう1つの理由は、介護の根本的な理念が「できるだけ自立した生活が送れるよう援助する」という点にあります。
短期目標が本人の希望や意欲とともに、自立や介護予防を目的としているので、目標が達成されていないとなれば、効果的なサービスが提供されていないともとれます。
逆に達成されていれば新たな目標を設定し、要介護度が重くなるのを防いでいきます。目標が達成できたということは、利用者にとって励みになり、さらに意欲を引き出すことにもつながります。
モニタリングによるケアプラン改善事例
では、モニタリングの重要性を裏付けるため、ケアプランの改善事例を挙げてみます。
利用者:80代女性 介護度2 一人暮らし
認知症があり同じ話を繰り返し、好きだった読書が急にできなくなったが、問題行動等は見られない。
トイレは自立しており、家の中は歩けるが、息切れがひどく外はほとんど歩かない。
長女が片道1時間半かけて週1〜2回訪ねてきては、食量や調理したものを届けており、入浴も見守るが、月1回程度の入浴にとどまっている。
長女自身が杖を使って歩行しており体調もすぐれないため、利用者は介護認定を受け、サービスの利用を開始する。
内容は、週1回のホームヘルプで調理と安否確認と、同じく週1回入浴付のデイサービス。
ここでモニタリングを行い、家族やホームヘルパーにも聞き取りをすると、自宅ではテーブルに乗っているものは食べるが、「冷蔵庫にある食料品や調理したものを食べる」ということが急に分からなくなっており、1週間あたりの食事量が減っているとのこと。
そこですぐにケアプランを変更し、デイサービスの代わりにホームヘルプサービスを増やした。
これによって利用者の食事摂取量も増えてきている。
このように、モニタリングによって利用者の急な状態の変化にも迅速に対応することができます。
また、アセスメント時には同レベルだった入浴と食事のニーズが、モニタリングによって食事の優先順位が上がったことがわかります。
まとめ
事例を通して、ケアプランにおけるモニタリングの重要性をご理解いただけたかと思います。
ケアマネージャーには、モニタリングを行いながら、家族やサービス提供事業者と連携して、利用者にとって最適な内容にケアプランを改善していくことが求められています。
モニタリングについて、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。