近年日本は超高齢社会となり、老年人口は増加し続けています。
同時に、介護を必要とする高齢者も増加しており、最期まで在宅で暮らしたいという思いを持っている人も少なくないでしょう。
在宅での介護生活を送るにあたり、家族とともに中心的役割を担うのが、介護支援専門員(ケアマネージャー)です。
その介護支援専門員が立てる居宅サービス計画書に基づいて、担当者がサービスを行っていきます。
今回の記事では、その居宅サービス計画書について、詳しい解説と書き方を再確認していきましょう。
居宅サービス計画書とは
概要
居宅サービス計画書とは、要介護認定を受けた利用者が介護保険サービスを利用したい時に作成されるものであり、利用者のニーズに適したサービスを提供することで、どのように解決していくのかを明確に示します。
その内容に基づいて、実際のサービスが提供されることになります。
主に介護支援専門員が作りますが、本人や家族が作ることも可能です。
居宅介護サービスにおける位置づけと簡単な流れ
介護保険を利用した居宅介護サービスを受ける場合、居宅介護サービス計画書が必要になります。
簡単な流れについて説明します。
利用者やそのご家族がケアマネージャーに相談をすると、利用者本人の心身の状態を分析するため、自宅を訪問して話を伺うこととなります。
そしてケアマネージャーはどのようなサービスが必要なのかを見極めます。
この過程を課題分析(アセスメント)と言います。家族も同席することで、家族の介護状況なども分析することができます。
アセスメントの内容をふまえて、計画書の作成が行われます。
利用者や家族のニーズを元にして、解決すべき課題と期間を明らかにします。
そして必要なサービス内容を選定し、事業所等へ依頼します。
サービス内容のほか、頻度や利用料金など具体的に作成することが求められます。
最後に本人や家族と一緒に内容を確認し、文書によって同意を得る必要があります。
居宅介護サービス計画書・施設サービス計画書・介護予防サービス計画書の違い
まず居宅サービス計画書と施設サービス計画書の違いですが、各様式の種類において居宅が8種類、施設が6種類となります。
居宅サービスでは給付管理業務を行う関係で、サービス利用表とサービス利用表別表が必要となる点が異なります。
また施設サービス計画書の第3表については、週間サービス計画か日課計画表のどちらかを選択できる点も、居宅サービス計画書と異なっています。
次に介護予防サービス計画書ですが、上記2つの計画書とは様式が異なります。
①利用者基本情報、②介護予防サービス支援計画書、③介護予防支援経過記録、④介護予防支援サービス評価表の4種類に加え、サービス利用表と別表、給付管理表が加わります。そして介護予防給付については、訪問介護等が月定額となっている関係で、サービス利用表と別表を簡素化することが可能になっている点も異なります。
居宅サービス計画書の様式
第1表
第1表は計画書全体の方向性を示す役割があります。
利用者本人や家族がどのような生活を望んでいるのか、課題分析の結果を記載します。
利用者の名前や生年月日、介護認定情報といった個人情報に加えて、事業所の情報も表記します。
「本人及び家族の生活に対する意向」において、本人と家族の意向がそれぞれ異なる場合は、別々に書く必要があります。
ケアマネージャーが自分の言葉に置き換えて書くのではなく、利用者本人や家族それぞれが話した言葉をそのまま用いることが大切です。
介護保険被保険者証を確認し、「介護認定審査会の意見及びサービスの種類の指定」欄に記載があれば、そのまま転記します。
「総合的な援助の方針」は課題分析から抽出したニーズに対して、どのようなケアを行っていくかを文章化します。尊厳ある自立を支援するという視点が大切です。また緊急性がある事柄については、対応機関や連絡先なども記載しましょう。
「生活援助中心型の算定理由」は、訪問介護で生活援助を中心に位置づけている場合、理由を明記します。
紹介
第1表の中で、一番上の欄に「初回・紹介・継続」という項目があります。
「初回」は初めて居宅介護支援を受けること、「紹介」は他の居宅介護支援事業所や介護保険施設等から紹介を受けること、「継続」は利用者が既に当該居宅介護支援事業所から支援を受けており、引き続きその当該事業所で支援を受けることを指します。
第2表
第2表は計画全体の中心となる様式です。
課題分析によって明らかになった利用者本人のニーズを元に、達成可能と思われる目標を立てます。
そしてその目標を達成することに、どれ程の期間必要なのか、また利用するサービス内容や頻度についても具体的に示します。
ニーズ
第2表には課題分析を行った結果導き出された、利用者本人や家族のニーズを記載します。
解決すべき課題のポイントがどこにあるかを明らかにし、優先順位の高いものから記載していきます。
ここで大切な視点は、ニーズの原因や背景要因そのものを解決しようとすると、サービス主体の計画になりやすいということです。
困った状況を解決することで、よりよい生活が送りたいという視点に立ち、利用者と家族が自分たちで課題を解決していけるよう配慮しましょう。
短期・長期目標
長期目標は、個々の解決すべきニーズに対応した内容になっています。
現実的に達成が可能な目標であることが求められます。
達成するためにどうしていったら良いか、利用者本人や家族と相談しながら、一緒に目標を決めることが望ましいとされています。
短期目標は、その長期目標を段階的に対応する内容であり、解決に結びつけるものとなっています。
またモニタリングを行う際、達成度が分かりやすいよう具体的な内容になっていることが大切です。
ニーズによっては段階的ではなく、一度に複数を解決しなければならない場合もあることを理解しておきましょう。
また短期目標は、それぞれのサービス事業所が計画を立てる際、その目標にもなります。
ケアマネジメントを進めて何度も目標を見直していくことで、利用者本人と家族が、実現可能な生活についてイメージしやすくなってきます。
この時、第1表の生活に対する意向も変化してくるので、改めて確認してみてください。
短期・長期目標の期間
長期目標の期間は、ニーズをいつまでに解決するかという期間を明らかにします。
短期目標の期間は、長期目標を達成するために必要な期限を記入します。
開始時期と終了時期を記載するとともに、認定の有効期間を考慮して決める必要があります。
達成できる程度で、モニタリングの目安とするぐらいの期間が適当です。
サービス内容
短期目標を達成するために必要なサービスを記載します。
介護保険を利用したサービスだけでなく、家族や隣人、ボランティア等インフォーマルなサービスも記載しましょう。
ただしこの場合は、実現できる程度の内容にして、無理のないようにしましょう。
次のサービス種別のところで、例えば家族であれば誰が行うのか具体的に明記します。
専門的な言葉ばかりにならないよう、利用者や家族が理解できるよう分かりやすい言葉で書くことも大切です。
第3表
第3表は「週間サービス計画」と呼ばれるものです。週単位で行われるサービスの曜日や時間を表へ記載することで、いつどんなサービスが行われるかが見えやすくなっています。利用者や家族が現在のサービス内容を確認できることによって、空いている時間を使って何ができるだろうなど、一週間の過ごし方を具体的にイメージしやすくなります。
介護保険サービスだけでなく、家族やボランティアの支援等も記載しましょう。
第4表
第4表はサービス担当者会議の要点を記載します。会議の参加者やどんなことを話し合ったか重要なポイントを入力します。
サービス担当者会議
サービス担当者会議は、利用者本人と家族、ケアマネージャーに加えてサービス事業所が一堂に会して行われます。
ケアプランを元にして、ニーズの確認や目標の達成度とその見直しなどについて、協議と調整が行われます。
尚、会議に出席できない者に対しては、第5表の「サービス担当者に対する照会(依頼)内容」にて事前に書面にて回答を得ておきましょう。
サービス担当者会議にて検討した項目について、第4表にその内容を記載します。
話し合った結果、いつまでに誰がどのようにするのか、具体的に明記しておきましょう。
決定事項については、関係者に周知することで、共通認識ができるよう配慮することが必要です。
残された課題や、次回の開催時期についても話し合って明確にしておきましょう。
第5表
サービス担当者会議を開催できない場合や、出席できない者がいた場合に、サービス担当者の意見を照会し記載する様式です。
この時、会議を開催できない理由や、出席できない理由は明記しておきましょう。
第6表
第6表は居宅介護支援経過です。ケアマネージャーが利用者や家族、事業所等との専門的な関わりなどを記載します。
モニタリングを行い得られた利用者と家族の意向や満足度について、また援助目標の達成度などについて項目ごとに整理して記載しましょう。
モニタリングは事実を書き、その結果ケアマネージャーがどう判断してどうしたのかを書きます。
ニーズとして考えられるにも関わらず、利用者本人や家族がニーズとして認識していない場合は、この表へ詳細を記します。
個人的なメモではなく、公的な記録として責任を持って記載し、記録には日付や名前等を入れるよう心がけましょう。
第7表
第7表は「サービス利用票(兼居宅サービス計画)」です。
利用者の一カ月分の介護保険サービスの時間や日程が示されています。下半分はカレンダーになっているので、予定が見やすくなっています。
第8表
第8表は「サービス利用票別表」です。
第7表で示されたサービスの予定について、その単価や総額がまとめられています。
保険で賄われる分に加えて、自己負担の金額も示されます。
区分支給限度額に対して、どのサービスがいくらかかるかが書かれています。
1分の金額が明示されるので、利用者や家族と一緒に確認して、この金額で良いか確認しておくことが大切でしょう。
居宅サービス計画書の記入例
本項では、実際に計画書へどのように記入していくかを見ていきましょう。
参考までに、神戸市役所のホームページで掲載された居宅サービス計画書雛形をご覧ください。
第1表
利用者名、生年月日、住所や介護保険情報など間違いのないよう記載します。
認定がまだ降りておらず、要介護状態区分が分からない場合は空欄で結構です。「利用者及び家族の生活の対する意向」へ、利用者や家族の意向を記載します。
それぞれに分けて書き、話した言葉をそのまま使って書くようにしましょう。
「総合的な援助の方針」へ、自立支援の観点をもって、利用者と家族の意向を反映したチームケアの指針と緊急連絡先もここへ書きます。
第2表
一番左に利用者及び家族のニーズを記載します。
優先順位の高いものから書くようにしましょう。
続いて長期・短期目標です。長期目標はニーズに即した内容で、短期目標は長期目標に即した内容で書きましょう。
期間も忘れずに記載します。
そして短期目標の内容を達成するために必要なサービス内容を書きます。
家族などインフォーマルな支援についても、必要であれば書きましょう。
そのサービス内容を行う種別、頻度と期間を書きます。
第3表
提供サービスを計画表に組み込みます。
インフォーマルな支援も書きます。
「主な日常生活上の活動」に、利用者の生活リズムを記載します。この計画表に組み込めないサービスなどについて、「週単位以外のサービス」へ記載します。
第4表
サービス担当者会議を行った日付、場所、時間と累積回数を記載します。
続いて出席者と、その会議で検討した項目と内容について書きます。
結論では、検討した内容を項目ごとにまとめます。
結論がでなかったものについては、「残された課題」へ書きましょう。
次回の開催時期も書いておきます。
第5表
サービス担当者会議に参加できない者に対して、記述を依頼し書いてもらいます。
第6表
日付と経過記録を残します。
その手段について、電話したのか訪問したのかを「内容」へ記載しましょう。
項目ごとに分けて書く方が、見やすく分かりやすくなります。
第7表
毎月のサービスの予定を記載します。
利用者や家族と一緒に確認してもらい、了解が得られれば、右上の「利用者確認」のところへ押印してもらいます。
欄外に日付を書いてもらいましょう。
第8表
第7表のサービス内容について、利用料金をまとめましょう。
まとめ
今回は居宅サービス計画書の解説と書き方について見てきました。
利用者や家族とよく相談しながら作成することで、利用者や家族が主体的に関わり、自立支援に向けた計画書作成に繋がると良いですね。
居宅サービス計画書について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。