加算減算については適切に理解し、健全な財務基盤・経営基盤を築きたいと考えている介護事業者の皆さんはぜひご覧になってください。
運営基準減算とは
居宅介護支援費(ケアマネージャーの報酬)は事業所の運営によって加算減算される場合があります。加算や減算にはいろいろな種類があり、居宅介護支援事業所として加算については詳しい場合が多いのですが、減算については完璧に理解している方はそう多くはないのではと思います。
数ある加算減算の中でも今回ご説明する運営基準減算は、文字通り減算に当てはまります。減算を算定してしまうと、居宅介護支援事業所として利益を失うだけでは済まされず、利用者様からの信用も失ってしまうことが懸念されます。正しく加算減算ついて理解し、信頼を失わないようにすることが事業所として求められます。
運営基準減算とは・・
運営基準減算とは、居宅介護支援事業における運営基準に反したことをしたときに介護報酬額を一定量減らされてしまうことを意味します。
居宅介護支援事業の運営とは、主にケアマネージャーの業務になるかと思います。業務を詳しく記載すると、利用者の方へのアセスメント、ケアプラン設定、利用者本人やその後家族または利用者に介護サービスを提供している事業所への説明・ヒアリング挙げられ、業務の流れも含めこれらに支障をきたした場合、運営基準減算が適用されてしまいます。
適用されてしまった場合、初月の算定額は5割減算されてしまいます。また、万が一運営基準減算を2ヶ月続けて算定してしまった場合、その算定額は0となってしまいます。報酬を受け取ってから運営基準減算が発覚した場合は、その報鍬額は返還しなければなりません。
運営基準減算の一例を挙げたいと思います。
要介護1の利用者が居宅介護支援Ⅰのサービスを利用したとします。この場合、1ヶ月の単位数は1042単位となります。いま、この利用者を担当しているケアマネージャーが利用者へのモニタリングを怠ってしまいました。この場合、減算が適用されその月の単位数は半分の521単位となってしまいます。また、次月のモニタリングも怠ってしまったとしましょう。この場合、算定額はゼロと変化します。要は、無報酬ということです。
正直、ケアマネージャーの仕事を忘れるということは起こり得ないのではないかと思います。運営基準減算が起こってしまう場合としては、運営基準を履き違えてしまうことでしょう。
日々の業務では、慣れてくるに連れて簡略化してしまうことや自己流となってしまうことが部分的にあるかと思います。業務の効率化を図るためには、多少仕方のないことだとは思いますが、運営基準減算に引っかかってしまっては大きな損害となってしまいます。
次の項目では、具体的に居宅介護支援事業所として何に気をつければよいか解説したいと思います。
居宅介護支援事業所は何に気をつけるべきか
ケアマネージャーとして、利用者のために運営基準にのっとり誠実に、健全に仕事をこなすことが必要です。運営基準減算が適用ということにならないように、再度気をつけるべきこと、いわゆる運営基準減算はどのような時に適用されるのか確認しましょう。
【 アセスメントについて 】
・居宅サービス計画を立てるときに(変更時も含まれる)、利用者の居宅を訪問し、利用者や家族との面接を行っていない場合。
【 サービス担当者会議について 】
・サービス担当者会議を開いていない場合(居宅サービス計画を新規作成時・変更時、要介護認定を受けている利用者が要介護更新認定を受けた場合、要介護認定を受けている利用者が要介護状態の区分変更の認定を受けた場合)
【 ケアプランの作成・交付について 】
・居宅サービス計画の原案の内容について利用者またはその家族に対して説明し、文書により、利用者の同意をもらっていない場合や、居宅サービス計画を利用者および担当者に交付していない場合(変更時も含まれる)。
【 モニタリングの実施について 】
・1カ月に1回利用者の居宅を訪問して利用者にモニタリングをしていない場合(モニタリング結果を1カ月以上記録していない場合も該当)。 など
※都道府県によって異なる場合があります。
※やむを得ない理由で実施されていない場合は、報告が必要になります。
※運営基準違反が2ヶ月以上続く場合は、最悪、報酬ゼロになることもあり得ます。
引用[カイポケ 運営基準について]
減算にならない特段の理由については、利用者の容態が急変したときや災害時などのやむをえない理由がある場合であり、ケアマネージャーの体調不良などの理由はあてはまりません。
ケアマネージャーとして、業務を行うために自分の体調の管理、環境整備を行うことも、大切な仕事のひとつとなるでしょう。
居宅介護支援事業所として気をつけることとしては、ケアマネージャーが上記のような事態にならないようサポートすることでしょう。事業所のケアマネージャー一人ひとりに運営基準を把握してもらうこと、かつ、誠実に行ってもらうこと、体調管理の徹底、もし体調を崩してしまったらどのように対応するか、です。
これらをごまかして仕事を進めていくことは、利用者の不利益になり、最終的には居宅介護支援事業所全体の不利益となります。また、ケアマネージャー個人に対する不利益を生み出すことにもつながるので、事業所全体として責任感を高めていかなければなりません。
さて、運営基準減算についてご理解いただけたなら、他の加算との関係についても知っておきましょう。
基本的には加算減算は別々のものと考えますが、場合によっては同時に算定できないときがあります。
運営基準減算と初回加算の関係
居宅支援介護に係る加算減算の同時算定に関する相関図
Aの加算減算を算定する場合は、Bの加算減算で×がついたものは算定できません。 |
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B |
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運営基準減算 |
特定事業所集中減算 |
初回加算 |
特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
退院・退所加算 |
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対象 |
個人 |
全員 |
個人 |
全員 |
個人 |
A |
運営基準減算 |
個人 |
|
○ |
× |
× |
○ |
特定事業所集中減算 |
全員 |
○ |
|
○ |
× |
○ |
|
初回加算 |
個人 |
× |
○ |
○ |
○ |
× |
|
特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
全員 |
× |
× |
○ |
|
○ |
|
退院・退所加算 |
個人 |
○ |
○ |
× |
○ |
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介護保険の利用者が介護サービスを始めて利用するときや要支援者の要介護認定が決定したとき、また要介護者の介護度に2区分以上の変更が発生したときに、ケアプラン(居宅サービス計画書)がつくられることで算定される加算です。初回加算とは算定すると300単位が取得できる加算です。
「居宅支援介護に係る加算減算の同時算定に関する相関図」をみていただければわかるとおり、A運営基準減算とB初回加算が×となっていますので、その月に該当利用者の運営基準減算が算定されれば、初回加算が算定できません。
また上掲の表をご覧いただければわかるように、対象者が個人のみと事業所全員の場合があります。個人のみであれば損失は少なく済みますが、事業所全員となるとかなりの損失が生じてしまうでしょう。
初回加算については個人のみが対象となりますので、運営基準減算が適用された利用者のみ、初回加算が算定できないということになります。
初回の際には、アセスメントして基本情報を作りサービス調整をするなど、利用者に関わる時間は多くケアマネージャーにとっては大変な時期です。ここで運営基準減算が適用され初回加算が算定できないとなれば、苦労も水の泡となってしまいますので注意したいところです。
運営基準減算と退院・退所加算の関係
退院・退所加算とは、利用者が病院または診療所の施設から退院・退所する際に、病院側と面談を行い、利用者の情報共有を行うことで、介護・医療の連携を図り、円滑で早期名在宅生活に戻ることを目的とした加算です。
退院前に、病院・診療所・施設の職員と面談し情報交換を行い、(退院前の調整のためのカンファレンスだが退院・退所後の7日以内なら算定可能)退院・退所後に必要な療養上の説明を受けることが条件となります。
この場合、ケアマネージャーとして居宅サービス計画書を作成しなければなりません。居宅サービスの利用に関しての調整を行い、居宅サービスの利用は翌月末までに開始することが必要となります。
退院・退所加算は、ケアマネージャーが利用者の退院前にカンファレンスに参加することが必要なため、時間を要します。
急な退院のときもあれば、調整して退院したけどすぐに再入院、なんてことも多々あります。病院との連携を図りながら支援することで利用者にとってスムーズな退院を迎えられるよう配慮しましょう。
病院との連携がうまくいっていない場合、気がついたら利用者が退院していた、という事態を経験した方もいらっしゃるかもしれません。
利用者としても不安を抱えたまま病院から帰るというケースがあります。加算算定の前に、利用者が困らずに在宅へ帰ってきてもらうためには、ケアマネージャーとして医療とどれだけ連携を取れるかということが肝心となります。
条件に合えば退院・退所加算を算定することができますが、まずは不安なく利用者が在宅復帰できるように配慮する必要があります。
A運営基準減算とB退院・退所加算の関係は○なため、必要に応じ加算はとることができます。
運営基準減算と特定事業所加算の関係
居宅介護支援の特定事業所加算とは、一般の事業所では対応が難しいような分野・事例に関してサービス提供ができる環境を整えている事業所に対して算定される加算です。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと区分が分かれており、それぞれ特定事業所加算Ⅰが500単位、Ⅱが400単位、Ⅲが300単位となります。
特定事業所加算は運営基準減算と同時算定することができません。よって運営基準減算が適用されてしまった月には特定事業所加算は諦めなければなりません。
また、上掲の表のとおり、運営基準減算を算定してしまうと事業所内全ての特定事業所加算が算定できなくなってしまいます。初回加算では個人のみでしたが、特定事業所加算の影響範囲は非常に広いです。十分に注意しましょう。
たった一人のケアマネージャーの怠慢により、その事業所全体に大きな損失が・・・という事態にもなりかねません。
もちろん、個人のケアマネージャーの信頼はもちろん、事業所全体の損失と信用を失うということになります。1人のケアマネージャーが行ってことにより、他のケアマネージャーにも迷惑をかけてしまうこととなります。
まとめ
運営基準減算が適用になると、個人の減算だけではなく、全員の減算につながってしまうこともありますので、しっかりと運営基準を確認し、誠実で健全なケアマネージャーの仕事をしていきましょう。
運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。