居宅介護支援事業所の皆さん加算を取ろうと必死になるあまり、減算について知らないことがあったりしませんか。
うっかりミスによる減算は利益のみならず信用も失ってしまいます。正しく介護報酬を得るために減算について正しく理解し、健全で円滑な事業所づくりを目指しましょう。
運営基準減算とはそもそも何なのか
加算(プラス)があれば減算(マイナス)も当然存在します。国として、定めている基準にあてはまらない事業所にプラスのお金を払うわけにはいきません。運営基準減算とは、居宅支援事業所のケアマネージャーが一利用者に対しきちんとアセスメントしケアプランを立て本人と家族、介護サービスを提供している事業所(通所介護や訪問介護など)に説明しているか。月に1度、訪問し利用者に対してモニタリングをしているか。ケアマネージャーとしてやるべきことを怠った場合に減算され、尚且つその状態が継続すると報酬がゼロになります。報酬を受け取ってから発覚した場合には、もちろん返還となります。詳しく下記にまとめてみました。
こちらのいずれかに該当した際に、運営基準減算となります。
介護サービス利用計画書について・ケアプランの新規作成・変更にあたり利用者宅に訪問して本人・家族と面談していない場合・利用者の健康状態や日常生活の状況・問題点の把握などのアセスメントを行っていない場合新規利用時はもちろん、変更時も含まれます。
●介護サービス利用計画書について |
・ケアプランの新規作成・変更にあたり利用者宅に訪問して本人・家族と面談していない場合 ・利用者の健康状態や日常生活の状況・問題点の把握などのアセスメントを行っていない場合 新規利用時はもちろん、変更時も含まれます |
●サービス担当者会議について(ケアマネージャー・本人・家族・各事業所の担当者・主治医などの意見交換の場) |
・新規利用時・更新時・変更認定の決定時のサービス担当者会議を行っていない場合(利用者の容体急変や災害時などのやむを得ない理由がある場合は意見照会を行っていれば含まれない) ・利用者に書面にてケアプラン原案の説明、同意の署名と捺印がない場合 ・利用者と各事業所に書面にて同意を得たケアプランの交付がない場合 |
●モニタリング(再アセスメントについて) |
・毎月最低1回以上、利用者の居宅に訪問してモニタリングを行っていない場合 ・訪問時のモニタリング記録が1か月以上ない場合 |
※やむを得ず実施できない場合は、その理由を記録し報告する義務があります(利用者本人に起因する場合のみ)。 |
対象者は?
ひとりの利用者が運営基準減算に該当したとしても、それによって全員が対象になるわけではありません。その他の利用者は上記に当てはまらなければ、該当利用者のみの減算算定となります。
加算減算の種類によって該当利用者のみなのか全員が対象になるかは、それぞれ異なります。
算定方法は?
1か月目は該当利用者の基本単位数が5割減算され、2か月目も同じ状態であればその利用者に対する算定はゼロになります。例えば居宅介護支援費Ⅰの要介護1・2の方は1か月1042単位です。減算が決定し1か月目が521単位、2か月目が全くもらえないということになります。1度減算されているのに対処しないという事態にならないように、2か月目は算定なしになるわけですね。
どのようなサービス業種に適用されるか
ここまで読んで頂ければ分かるように、運営基準減算は居宅介護支援費に該当しますので居宅介護支援事業所のケアマネージャーや 請求担当者に理解いただければと思います
他の加算との関係性
基本的には加算・減算はお互いに全く別々のもの、いわば独立国家のようなものです。しかし、場合によっては同時に算定できないということがあります。理由の1つとして考えられるのは、国の財政面です。単位数が大きすぎるもの同士を加算算定可能にしてしまうと財政的には厳しくなってしまいます。
下記の表を見ていただくと同時算定できるものと、できないものが分かります。
「居宅支援介護に係る加算減算の同時算定に関する相関図」
Aの加算減算を算定する場合は、Bの加算減算で×がついたものは算定できません。 |
B
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運営基準減算 | 特定事業所集中減算 | 初回加算 | 特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | 退院・退所加算 | |||
対象 | 個人 | 全員 | 個人 | 全員 | 個人 | ||
A | 運営基準減算 | 個人 | ○ | × | × | ○ | |
特定事業所集中減算 | 全員 | ○ | ○ | × | ○ | ||
初回加算 | 個人 | × | ○ | ○ | ○ | × | |
特定事業所加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | 全員 | × | × | ○ | ○ | ||
退院・退所加算 | 個人 | ○ | ○ | × | ○ |
運営基準減算と初回加算居宅の相関
結論からいうとその月に運営基準減算が算定された場合、初回加算は算定できません。まずは初回加算から説明します。
居宅介護支援費における初回加算とは
その利用者が新しく介護サービスを利用する際、または要支援者の要介護認定が決定した場合、要介護者の介護度に2区分以上の変更が発生した際のケアプラン(居宅サービス計画)が作成されたときに算定される加算を初回加算といいます。ただし、新規利用や変更から2か月以上期間が開いた場合は算定できません。
新規や介護度が著しく変更された場合、日常生活において普通の状態よりも手助けがより必要となるのでしっかりとアセスメントしなくてはなりません。
上記の表を見ればわかるように、Aの運営基準減算とBの初回加算が×になっていますので、その月に該当利用者の運営基準減算が算定されれば初回加算(300単位)も取れないということになります。こちらでは、運営基準減算の方が優先されます。せっかく新規にアセスメントし介護サービス計画書を作成したとしても、加算が取れないというもったいない事態に陥ることになってしまいます。
運営基準減算と退院・退所加算の相関
居宅介護支援費における退院・退所加算とは
退院・退所加算は、利用者が病院または診療所や施設から退院・退所する際、病院側と面談を行い利用者の情報共有を行うことで介護・医療の連携を図り、円滑で早期な在宅生活に戻ることを目的としています。いくつか算定用件があります。
1、病院・診療所・施設の職員と面談し情報交換を行う(退院前の調整のためのカンファレンスだが退院・退所後の7日以内なら算定可能) |
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2、退院・退所後に必要な療養上の説明を受ける |
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3、ケアマネージャーは居宅サービス計画書を作成する |
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4、カンファレンスの記録を厚生労働省指定の様式またはそれに示されている項目を基本とした様式にケアマネージャーが記入 |
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5、地域密着型サービスもしくは居宅サービスの利用に関しての調整を行う |
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6、地域密着型・居宅サービスの利用は翌月末までに開始する |
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7、利用者の必要な情報、カンファ内容、参加者、日時など記入した居宅サービス計画書を利用者本人と家族に交付する |
1のカンファレンスを入院・入所中、担当医等が3名以上と行い上記の要件を満たした場合は3回を上限に算定が可能です。こちらの3名以上とは、入院中の担当医プラスかかりつけ医や看護師、訪問看護師、ケアマネージャー、薬剤師などを指します。
300単位×3の900単位になりますので大きな加算です。
さて表1の運営基準減算と退院・退所加算の関係は○になっていますので加算は取れます。どちらの加算も対象はその利用者のみになります。
ちなみに初回加算と退院・退所加算は×になっており同時には算定できません。この場合どちらを優先しないといけないということはなく時に応じて算定できる方を選ぶことが出来ます。この組み合わせも対象はその利用者のみです。
運営基準減算と特定事業所加算の相関
今までの加算・減算の組み合わせの対象はその利用者のみなのでマイナスはまだ少ないのですが重要なのは
運営基準減算と特定事業所加算Ⅰ・Ⅱの関係です。表1のとおり×になっていますので、一人の利用者が運営基準減算になった場合その居宅支援事業所の全員の利用者の特定事業所加算Ⅰ・Ⅱが算定できなくなるという大変な事態になりますので注意しましょう。Ⅰが500単位、Ⅱが400単位、Ⅲが300単位ですので大きなマイナスです。
特定事業所加算は、専門性やスキルの高い人材を雇用している場合や一般的な介護施設ではサービス提供が難しい利用者へのケアを実施するなど、事業所として一定の基準以上のケアマネジメントを実施している居宅介護支援事業所が算定することができる加算です。
専門性の高い人材の確保や支援困難ケースへの対応など、事業所全体としてより質の高いケアマネジメントを実施している居宅介護支援事業所に対して、一定単位数を加算するものです。この要件からもわかるように、どの事業所でも算定できる加算ではなく難易度が高いため、その加算単位も大きくなっています。恐らく、特定事業所加算を取得する前に運営基準減算を見直すことのほうに重きを置いているからではないかと思います。繰り返すようですが、特定事業所加算の加算額は非常に大きいので、運営基準減算により取得を逃さないよう十分注意しましょう。
最後に
読んで頂ければ分かるとおり減算は利益がゼロになるどころかマイナスになります。万が一、書類などの不備で(サインや印鑑漏れ等々)減算かもと感じたら、いち早く上司に報告、保険者に報告・自己申告し対処方法など相談しましょう。下手に隠して後に監査が入りペナルティーを課せられてしまい、最悪の場合、法令違反・営業停止になる恐れもあります。ケアマネージャーとして利用者の立場に寄り添い然るべきタイミングで訪問や担当者会議を行いきちんと書類業務を行っていれば問題ないかと思いますが、減算項目に関して日々チェックを行っていきましょう。
運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。