介護事業者のみなさんは、既に新しい総合事業への移行戦略は固まりつつあるでしょうか。
そうでない方、総合事業のみなし指定について理解が深まっているでしょうか。
みなし指定のルールは市町村によって異なる可能性があります。万が一、みなし指定の有効期間や対象事業所について、誤った理解をしている場合、総合事業への移行時期を逃すことになり、指定を受ける時期が遅れてしまう可能性があります。
今回は、新しい総合事業について議論が為された「全国介護保険担当課長会議」に沿って、総合事業のみなし指定について解説したいと思います。
総合事業への移行を滑らかに完了させ、地域に根付いた事業所をに近づきましょう。
総合事業のおさらい
みなし指定を紹介する前に、総合事業について軽くおさらいし対と思います。
総合事業は介護予防・日常生活支援総合事業の略称で、地域支援事業の内の1つです。その役割について厚生労働省は以下のように定義しています。
総合事業は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すもの
また、総合事業が生まれた背景としては、以下のように考えられています。
- 多様な生活支援の充実
- 高齢者の社会参加と地域における支えあい体制づくり
- 介護予防の推進
- 市町村、住民等の関係者間における意識の共有と自立支援に向けたサービス等の展開
- 認知症施策の推進
- 共生社会の推進
あと1つ忘れてはならないのは、介護にかかる社会保障費の抑制・節約が主に挙げられるでしょう。きたる2025年の超高齢化社会に向けて、現在のように社会保障費を消費していては、国の財源が必ず枯渇してしまいます。限りある財源を有効に使うためにも、総合事業は施行されました。
平成27年度までの総合事業では、これから介護を必要とするであろう人を減らしたいという目的が主で、その名の通り「介護予防事業」が施行されています。介護事業予防では、一次予防と二次予防に分類され、介護予防教室や講演会、専門職による訪問指導・カウンセリングが行われています。また、多少の不自由であれば介護を受けずとも生活できるようにするための生活支援サービスも施行されており、介護予防事業とあわせて、「総合事業」と呼ばれていました。
[参考:別紙資料1-1 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案(概要)より]
一方、平成27年度からは、新しく介護予防給付事業の一部が総合事業へと移行することになりました。その一部とは、要支援者への通所介護・訪問介護事業です。
そして、この平成27年度までの介護予防事業を「一般介護予防事業」、生活支援サービスと27年以後からの一部の介護予防給付事業を合わせて「介護予防・生活支援サービス事業」と呼び、それら2つの総称を「新しい総合事業」と呼んでいます。
総合事業のみなし指定とは
では、上記の新しい総合事業を踏まえて、みなし指定について解説します。
総合事業には、提供するサービスの指定申請をする必要があります。これは、居宅介護支援や通所リハ等他の介護サービス種でも同様です。平成27年度4月より新しい総合事業が始まり、介護予防通所介護・介護予防訪問介護は総合事業に含まれることになったので、この2つのサービスを元々提供している事業所では、総合事業の指定を取得しなければサービスを続けることができなくなってしまいます。しかし、こんな制度が施行されてしまっては、全国の介護予防通所介護・介護予防訪問介護を提供している事業所は大打撃を受けてしまいます。そこで、考えられたのが総合事業のみなし指定です。
みなし指定とはその名の通り、事業所を総合事業における指定事業所として「みなす」ことです。みなし指定期間をつくることにより、介護予防事業から総合事業への移行を滑らかに行うことが意図として考えられます。これにより、介護予防通所介護・介護予防訪問介護を提供していた事業所は、総合事業としてサービスを提供し続けることができるようになりました。
では、みなし指定の対象事業所やその有効期間はいつまでなのでしょうか。
みなし指定の対象事業所
みなし指定の対象事業者は、平成27年3月31日までに介護予防通所介護・介護予防訪問介護の指定を取得している介護事業者です。上記に該当する事業所は全て総合事業のみなし指定を受けることができ、総合事業の第1号事業(介護予防・生活支援サービス事業)としてサービスを提供し続けることができます。
また、万が一事業者がみなし指定を辞退したい場合は、平成27年3月31日までに申し出をすることにより、総合事業への指定を取り消すことができます。この申し出は、厚生労働省が発信した「地域密着型通所介護に係るみなし指定を不要とする旨の申出書」を適切に提出する必要があります。
みなし指定の有効期間
次に、みなし指定の有効期間についてです。みなし指定を受けたからといって、既存のサービスをずっと提供し続けられるわけではありません。
みなし指定の基本的な期限は、平成30年3月末までとなります。新しい総合事業は平成27年4月からですので、有効期間は3年間ということになります。しかし、例外も考えられます。一部の市町村ではこの有効期間が3年未満の場合があります。その理由の1つとして、介護予防・生活支援サービスの体制がしっかりと整っていることが挙げられます。つまり、うちの市町村は制度が整っているから3年使わなくても総合事業へ移行できるよ、ということです。総合事業の裁量は基本的に市町村に一任されているため、3年未満のほうが有益であると考えられた場合には、平成30年3月末以内に総合事業への移行が完了する市町村もあります。詳しくは各市町村のホームページをご覧ください。
なお、介護予防給付から総合事業への移行期間である平成27年4月~平成30年3月末までは、総合事業の指定を自動的に受けると共に、現行の介護予防給付の指定も受け続けている状態となります。介護保険請求はどちらでも行うことができますが、総合事業への移行を
考えている事業所では早め変更されることをお勧めします。
みなし指定の効力範囲
みなし指定は全国の市町村に適用されることとなります。これは、全国的に現行の予防給付から総合事業への移行を完了させたいがためといえます。そのため、総合事業移行に関して厚生労働省が定めた有効期間やその他基準と逸脱するような取り扱いをする場合には、市町村内の事業所に通知するだけでなく、近隣の市町村の事業所にもその旨を知らせる必要があります。これは、別の市町村の事業所を利用している被保険者がいるからです。
みなし指定の更新
先ほど記載したとおり、総合事業のみなし指定は基本的に平成30年3月末までとなっていますが、その後、総合事業に関して更新を行う場合には、事業所が存在している市町村ではなく、事業所を利用している被保険者を基準として指定更新手続きを完了させる必要があります。例えば、サービス利用者の住所が3市町村にわたる場合、その3市町村全てから指定を受けなければなりません。その際、総合事業は市町村が主体となって事業を構成するので、各市町村ごとのローカルルールには十分注意する必要があります。
まとめ
総合事業のみなし指定について、いかがでしたでしょうか。
移行戦略を構築することも非常に重要ですが、事業所が現在どのような扱いなのか、ということを知ることも同じくらい重要かと思います。冒頭でも記載したとおり、みなし指定は市町村によって異なる可能性があります。ローカルルールについても理解し、何のトラブルもなく総合事業へ移行できたら事業所としても手間が省けるのではないでしょうか。
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