介護事業者の皆様、ご自身の事業所に見合った処遇改善加算の取得はされているでしょうか?
処遇改善加算の取得には、キャリアパス要件を満たす必要があります。また、要件を満たすためには事業所ごとにキャリアパスを構築し、文書化・職員に周知・提出する必要があります。
今回は、実際にキャリアパス制度を構築した後、どのように届出を行うか解説をしたいと思います。
処遇改善加算を取得するための一連の事務作業が少しでも楽になれば幸いです。
キャリアパス要件についての詳しい解説は「キャリアパス要件とは」をご覧ください。
キャリアパス要件の届出書とは
まず、キャリアパス要件を記入する書類を紹介します。キャリアパス要件独自の書類は恐らくどの地域にも存在せず、処遇改善加算の申請をする際にキャリアパス要件について記載する必要があります。
「別紙様式2(処遇改善計画書)」という書類にキャリアパス要件の欄があります。
上記の通り、処遇改善加算を取得するために必要な書類です。キャリアパス要件としては、職員資質向上のための目標や取組、労働環境や処遇の改善の内容を記載します。キャリアパス要件について記載することが処遇改善加算を取得するための第一歩となります。
また、処遇改善加算の取得区分を変更する際にも、書類を再度提出しなければなりません。
提出期限
次に、書類の提出期限に関してです。提出期限は、新たに処遇改善加算を取得したい場合(新規申請)と次年度も引き続き処遇改善加算を取得したい場合(年度更新)によって時期が異なります。
- 年度更新の場合
まず、年度更新をしたい場合です。この場合、多くの地域では2月末日〆が多いようです。2月末日までに地域によって定められた書類の準備をし、行政に提出を完了させましょう。万が一、提出が遅れてしまった場合、次年度初頭の加算額は受け取ることが出来ないので注意が必要です。
- 新規申請の場合
次に新規申請をしたい場合です。この場合、加算が適用される前々月の末日〆が多いようです。例えば、9月から加算を取得したいのであれば7月末までに書類の提出を完了させる必要があります。こちらも、万が一提出が遅れてしまった場合には、翌月まで遅れ手しまうことになるので十分注意しましょう。
届出書の書き方
では、実際に構築したキャリアパス制度、職能資格制度をどのように書類に記入すればよいのでしょうか。
残念ながら、この問いには一概に答えを定めることはできません。
なぜなら、介護職員処遇改善計画書には地域によって細かい差異があり、全国に共通する事例を示すことはできないからです。
とはいえ、地域によって多大な差異があるわけではないので 、今回は、地域を問わず記載しなければならない事項と計画書の記入例を紹介したいと思います。
地域によっては、記入例を示していることもあるので、詳しくは各地域のWEBページをご覧ください。
届出書に記載しなければならない事項
- 賃金改善実施期間
まず、いつからいつまで職員の賃金を改善する予定なのか、記載をします。
一部例外を除いて、原則次年度の4月~3月となります。この例外とは、事業所によっては年度途中で処遇改善計画書に大きな変更が生じる場合です。主な理由としては事業所の増減が挙げられますが、この場合は、変更が適用される月~年度末となります。
- 賃金改善を行う賃金項目
どの給付体制に対して改善加算額を組み込むかを決定する項目です。主に基本給、各種手当て、賞与等が考えられます。処遇改善加算はもともと、職員に安定した処遇改善を提供する、という目的の基で施行されています。よって、毎月の給与に反映される基本給に対しての賃金改善が望ましいでしょう。
- 賃金改善を行う方法
処遇改善加算の特徴の1つとして、給付された加算額の振り分けは事業所に決定権があることが挙げられます。もちろん、設備や備品などに使用することは違反ですが、極端な話、ある職員に対しては0円、ある職員に対しては満額支給することも可能です。その際の何を根拠にどの職員に対していくら支給するかを定める必要があります。例を1つ紹介したいと思います。
例 加算Ⅰ取得の場合
週40時間勤務の常勤職員については、基本給を月額15.000円増額し、処遇改善加算として月額12.000円支給する。
非常勤職員については、基本給及び処遇改善手当を勤務時間数に応じて支給する。
週30時間勤務の場合:基本給…15.000円×30時間/40時間=11.250円
処遇改善手当…12.000円×30時間/40時間=9.000円
なお、上記の賃金改善に関する計画、実施期間、実施方法などの内容は全ての介護職員に書面で周知されている必要があります。
- キャリアパス要件、職場環境等要件に該当しているかどうか
冒頭でも記載したとおり、キャリアパス制度を構築したとしてもそれが実際に要件を満たせなくては、処遇改善加算を取得するためには意味がありません。以下の該当する項目にしたがって、要件を適切に満たせているかチェックする必要があります。
まず、取得したい加算によって満たすべき項目が異なるので、ご自身の事業所が取得できる加算をチェックします。
加算(Ⅰ):要件Ⅰ・要件Ⅱの両方とも記入
加算(Ⅱ):要件Ⅰ・要件Ⅱのどちらかを記入
加算(Ⅲ):要件Ⅰ・要件Ⅱ・職場環境等要件のいずれかを記入
加算(Ⅳ):記入不要
その後、それぞれのキャリアパス要件を満たせているかチェックします。
・キャリアパス要件Ⅰ
①介護職員の任用の際における職位(役職)、職責または職務内容に応じた任用等の要件を定めていること
②1.に掲げる職位(役職)、職責または職務内容に応じた賃金体系について定めていること
③1.および2.の内容について就業規則などのもので書面で明確にし、周知していること
[参考:厚生労働省 介護人材の処遇改善の充実に向けて]
就業規則等で定めた①②の内容に変更がある場合は、その変更分を記載しなければなりません。
また、キャリアパス要件Ⅰを満たすことができない場合、その理由を記載します。
「キャリアパス要件1について」 にて詳しい解説をしています。
・キャリアパス要件Ⅱ
①次のア)またはイ)の条件を満たした計画を作成していること
ア) 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供または技術指導等を実施 (OJT、OFF-JT)するとともに介護職員の能力評価を行うこと
イ) 資格取得のための支援(金銭、休暇の取得など)を行うこと
②上記の内容をすべての介護職員に周知していること
[参考:厚生労働省 介護人材の処遇改善の充実に向けて]
また、介護職員の資質向上のための目標や資質向上のための計画、実施予定内容を記入します。
こちらは、介護職員の仕事内容、状況、能力に見合った計画案が求められており、職員との意見交換が推奨されています。
届出書の記入例
こちらでは、処遇改善計画書の記入例をまとめました。是非ご参考にした上で処遇改善加算の取得に挑戦してみてください。
その他必要な書類について
以下の場合は添付書類を用意する必要があります。(地域によって異なります)
- 複数の事業所の計画書を同時に提出する場合
- 事業所が位置する都道府県の圏域を超えて計画書を作成した場合
- 事業所が位置する市町村の圏域を超えて計画書を作成した場合
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キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。