介護支援ブログ

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介護保険負担限度額認定における改正とは?平成28年の変更点について

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 介護保険制度において、低所得者であると認定されれば食費や部屋代等の減額が受けられる介護保険負担限度額認定ですが、2016(平成28)年8月より審査基準の項目が増えています。

 以前のものと比較し、どのような変更があったかを説明していきたいと思います。

 現在、介護保険負担限度額認定を受けておられる方も段階が変更になることも考えられますので、注意しておく必要があります。

 今後、利用者の方々から相談を受けることもあるかと思いますので、その際にご活用ください。

 

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介護保険負担限度額の認定とは?

 

 まずは、介護保険負担限度額についておさらいをしていきたいと思います。

 介護保険3施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)や、ショートステイを利用する際には、介護保険における利用料の1割負担分(一定所得以上の方は2割)の料金と、食事代・部屋代を合計した額が自己負担となります。

 介護保険負担限度額とは、食事・部屋代について、所得に応じた上限額を定めることで、低所得者の施設利用費の負担軽減を目的に定められた限度額のことを指します。

 標準基準額との差額は、特定入所者介護サービス費として、介護保険から給付されます。

 

 制度を利用するためには、利用者が居住している市区町村の介護保険係等へ介護保険負担限度額認定申請書を提出し、介護保険負担限度額認定証の交付を受けることが必要です。

 認定されれば、所得等の額に応じて3段階の負担軽減をうけることができます。

 例えば、一番負担額が少ない第1段階に認定されれば、多床室の部屋代は無料(負担なし)となり、食費も日額300円が上限となります。

 認定における判定項目は、以前は市町村民税が非課税の世帯であれば介護保険負担限度額の認定が受けられていましたが、預貯金の額や非課税年金の受給額等の項目が加わり、非課税世帯であっても受給できない場合が出てきています。

 

 次の項目で、追加された項目等に関して詳しく説明していきたいと思います。

 

 

平成28年改正における変更点について

 介護保険負担限度額認定を受ける際に必要となった項目について、改正以前と比較して説明していきたいと思います。

  

 改正前は、世帯の全員(世帯を分離している配偶者も含む)が、市町村民税非課税で年金収入等が年額80万円以下、なおかつ預貯金が一定額以上ない人は利用者負担段階第二段階の負担でした。

 その際の収入の判定では、課税年金(老齢年金など)のみが判定基準となっていましたが、平成28年の改正において、非課税の年金(遺族年金・障害年金)の収入も判定に含めることになりました

 変更をされた背景には、自宅で暮らす方や保険料を負担する方、老齢年金を受給する方との公平性を高めたいという狙いがあるようです。

  そのため、2016(平成28)年7月までは第2段階であった方も、第三段階になる場合があります。

 

 改正前と改正後の違いについて表にまとめてみましたので、以下をご参照ください。

 

利用者負担段階

改正前

改正後

 

対象者

第1段階

・世帯構成員全員(世帯を分離している配偶者を含む。)が、市町村民税が非課税であり、老齢福祉年金を受給されている方

・生活保護を受けている方

第2段階

・世帯構成員全員(世帯を分離している配偶者を含む。)が、市町村民税が非課税であり、合計所得金額と課税年金収入額(注①)の合計が年間80万円以下の方

・世帯構成員全員(世帯を分離している配偶者を含む。)が、市町村民税が非課税であり、合計所得金額と課税年金収入額(注①)と非課税年金収入額(注②)の合計が年間80万円以下の方

第3段階

・世帯構成員全員(世帯を分離している配偶者を含む。)が、市町村民税が非課税であり、上記2段階に該当しない方。

第4段階

・上記以外の方

第1~3段階に認定されるには、上記項目を満たしている以外に、預貯金の額が単身で1000万円以下(夫婦合わせて2000万円以下)であることが条件となっています。

 

 注①)課税年金とは、国民年金、厚生年金、共済年金、企業年金、恩給などの、公的年金等雑所得と言われるものを指します。これらは所得とみなされるため、税金がかかります。

 注②)非課税年金とは、障害年金、遺族年金のように、課税されない年金を指します。

 

 この表からもお分かりいただけますように、今まで第2段階で認定されていた方が、障害者年金等を加味されることで、第3段階の負担になるということになります。

 利用者にとっては、収入額は変更がないにも関わらず負担のみが増えることになりますので、段階の変更があった際には、利用状況の見直しも必要になるかもしれません。

 参考に第2段階と第3段階、基準費用額の介護保険負担限度額について比べてみます。

 

 負担限度額(日額)

項目

 

第2段階

第3段階

基準費用額

部屋代

多床室

370円

370円

370円

従来型個室

特養等

420円

820円

1,150円

 

老健・療養等

490円

1,310円

1,650円

ユニット型準個室

490円

1,310円

1,640円

ユニット型個室

820円

1,310円

1,970円

食事代

 

390円

650円

1,380円

 

 多床室に関しては変化がありませんが、個室料金は倍以上になるものもあります。

 食費に関しても、日額260円の増となります。

 

 

介護保険負担限度額認定の申請方法

 介護保険負担限度額認定に関わる書類をまとめて、お住いの市区町村に申請する必要があります。

 ここでは、一例を説明しますが、市区町村によって申請に必要な書類が若干異なりますので、詳しくはお住いの市区町村の介護保険係等にお尋ねください。

 

申請に必要な書類(一例)

  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 預貯金、有価証券、金銀、投資信託、タンス預金等がある場合は、その金額について証明できる書類(通帳や証券のコピー等、タンス預金に関しては自己申告)
  • 負債がある場合は、負債額のわかる書類(預貯金等の金額から差し引いて計算されます)

 

 上記書類を提出して、認定を受けることになります。

 申告に不正があったとみなされた場合には、支給された金額の返納と、最大2倍の加算金の請求が行われますので、書類の提出の際には注意が必要です。

 

 

介護保険負担限度額認定の今後はどうなる?

 ここまでお話した内容で、介護保険負担限度額認定は、低所得の利用者が施設利用で困らないように、住居費や食費の負担をするために創設された制度であることはお分かりいただけたかと思います。

 そして、初期には非課税世帯であれば認定されていたものが、改正のたびに審査基準が厳しくなっていることも感じていただけたと思います。

 2025年問題が目の前に迫っている中、生産人口の減少、膨らみ続ける社会保障費用を考えると、介護保険費用も自己負担額の引き上げ等が起こる可能性が高いと推察されます。

 その中で、介護保険負担限度額認定に関しても、さらに厳格な審査基準が設けられることも考えられます。

 

 

まとめ

  介護保険負担限度額認定について、制度の基礎知識および改善点を説明させていただきましたが、お分かりいただけましたでしょうか?

 今後の展望についてでも触れましたが、2025年問題が目前となった今、介護保険全体の制度改革が行われるでしょう。

 そして、社会全体で支えていくためにも、負担を増やさなければならなくなることは想像がつきます。

 皆さんはどうお考えになりますか?

 この記事が参考になったと思われた方、シェアしていただけますと嬉しいです。 

 

 

介護保険制度改正について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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