皆さんは特定施設入居者生活介護についてどの程度ご存じでしょうか?
特定施設入居者生活介護は、有料老人ホームとも呼ばれ、2015年時点で全国に1万箇所ほど存在しています。
高齢者のさらなる増加に伴い、拡充が求められる特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)の運営基準について掘り下げて紹介していきます。
特定施設入居者生活介護の運営基準
特定施設入居者生活介護の指定を受けるためには3つの指定基準を満たす必要があります。
Ⅰ.人員に関する基準 Ⅱ.設備に関する基準 そして、今回の題目でもある、Ⅲ.運営に関する基準です。
今回は、この運営に関する基準については、全32項目あり、厚生労働省令では読解に時間がかかりますので、特に重要なポイントについて、要点をまとめさせていただきました。
全文を確認したい方はこちらを参照してください。
1. 内容及び手続の説明および契約の締結等
基本的にどの事業についてもそうですが、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)に入居される方をはじめご家族に対しても、運営の概要や従業員の体制、利用料などを記載した文書を渡したうえで説明を行い、きちんと契約を文書で行う必要があります。
当然ですが、文書は長いものになってしまうと理解が得られにくいので、分かりやすいものにしましょう。
また、少なくとも介護サービスの内容や、利用料その他の費用、契約解除の条件を記載しなければなりません。
さらに、入居者の権利を守るために、不当と思われるような契約解除の条件を定めてはいけません。
また、入居にあたり、適切な介護を行うために、一時的に介護室に移る場合は、適切な手続きを文書に明記し、説明しておく必要があります。
このような文書間でのやりとりは、後々の介護トラブルを未然に防ぐためにも重要になります。
2. 指定特定施設入居者生活介護の取扱方針
指定特定施設入居者生活介護の場合、取り扱い方針が他事業と特別なものかというとそうでもありません。
基本的に、利用者全ての人権を保障し、QOLを高めるような関わりが基本になります。そのため、利用者の要介護状態を軽減させたり、悪化を防止させたりするよう、認知症状や体の状態を踏まえて適切なサポートをする必要があります。そのため、きちんとしたサービス計画を立て、漫然なサービス提供にならないように配慮が必要です。
また、利用者とご家族から説明を求められた場合、理解しやすいように説明を行わなくてはなりません。
先述のように、QOLを高めるような関わりが基本ですので、生命または身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束も禁止されています。
下記のような身体拘束は廃止すべきですので、管理者および従業員は、正確な事実認識を持つ必要があります。
そのため、シンポジムなどに参加して意識啓発に努める必要があります。
また「身体拘束廃止委員会」などを設置し、事業所全体で廃止にむけて取り組む改善計画を作成しなければなりません。
身体的拘束禁止の対象となる具体的行為 |
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徘徊しないように、車いす、いす、ベッドに体幹や四肢を紐などで縛る。 |
転落しないように、ベッドに体幹や四肢を紐などで縛る。 |
自分で降りられないように、ベッドを柵で囲む。 |
点滴、経管栄養などのチューブを抜かないように、四肢をひもで縛る。 |
点滴、経管栄養のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、ミトン型の手袋をつける。 |
車いすや、いすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字拘束帯や、腰ベルト、車いすテーブルをつける。 |
立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。 |
脱衣やおむつはずしを制限するため、つなぎ服を着せる。 |
迷惑行為を防ぐため、ベッドなどに体幹や四肢を紐などで縛る。 |
行動を落ち着かせるため、向精神薬を過剰に服用させる。 |
自分の意思で開けることのできない居室に隔離する。 |
3. 特定施設サービス計画の作成
入居者に適切なサービスを提供するために、サービス計画を作成する業務に従事する従業員が必要になります。
その従業員は、利用者の問題を明らかにし、自立した日常生活を営めるように課題を把握します。
このためには、ご家族の希望や解決すべき課題、サービス目標、その達成時期などを盛り込んだ、サービス計画の原案を作成しなければなりません。
この原案については、利用者とご家族に説明を行い、必ず文書での同意が必要です。
言うまでもありませんが、サービス計画に盛り込んだ内容は、利用者に交付する義務があります。
場合によっては、そのサービス内容を変更しなければならない時もありますが、その場合も臨機応変に解決すべき課題を把握し、サービス内容を変更します。
4. 利用者のご家族との連携等
特定施設入居者生活介護を利用される、その背景は様々です。
ご自身の判断で入居される方、ご家族の薦めから入居される方など。
どのような背景であれ、利用者やご家族の貴重な意見を吸い上げるためにも、家族との交流の機会を確保するように努めることは、施設として重要な業務と言えるでしょう。
5. 利用者に関する市町村への通知
利用者が正当な理由なしに施設の規約に違反し、介護状態が悪くなった場合や不正な行為により、保険給付を受けたり、受けようとした場合については、遅滞なく意見を付して、その旨を市町村に通知しなければなりません。
6. 運営規定
管理者は、次の事項を運営規定として定める必要があります。
運営規定 |
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事業の目的及び運営方針 |
特定施設従業者の職種、員数及び職務内容 |
入居定員人数及び居室数 |
指定特定施設入居者生活介護の内容及び利用料その他の費用の額 |
離床者が介護居室又は一時介護室に移る場合の条件及び手続 |
施設の利用にあたっての留意事項 |
緊急時等における対応方法 |
非常災害対策 |
その他運営に関する重要事項 |
7. 勤務体制の確保等
利用者に対して適切なサービスを提供するためには、一定人数の従業員が、きちんと働ける体制作りが重要です。
この体制もきちんと定めなければなりません。
当然ながら、その施設に従事している者が利用者に対してサービス提供する必要がありますが、業務管理が確実に行うことが出来る場合は、この限りではありません。
中には、業務の一部を他に事業者に委託している場合がありますが、その場合は委託にあたって文書を通じて取り決めを確認する必要があります。
そして、この業務がきちんとなされているか、当該事業者の実施状況について定期的に確認し、記録しなければなりません。
8. 提示
運営規定、概要などの重要事項については、施設の見やすい箇所に掲示しなければなりません。
9. 地域との連携
運営にあたり、地域の理解があってこその運営ですので、地域住民との自発的な活動と、連携を行うなどの交流に努める必要があります。
また、苦情が発生した場合、当該施設は市町村が実施する事業に協力することが求められます。
まとめ
今回は、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム)の運営基準について、重要なポイントをまとめさせていただきました。
ご紹介した以外にも、20数項目盛り込まれておりますので、全文については上記の厚生労働省発信の指導検査基準を確認しておきましょう。
参考になりましたらシェアをお願いいたします。
運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。