介護支援ブログ

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個別機能訓練加算の居宅訪問とは? 注意事項やチェックシートについて解説します

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個別機能訓練加算を適切に算定し、経営を安定させてよい人材を雇用したいと考えている介護事業所の皆さま、これから介護事業に参入予定の方を応援するために、チェックシートや注意事項を含めて解説いたします。

 

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個別機能訓練加算の居宅訪問とは?

介護保険には、様々な「加算」があります。加算とはサービス内容により、基本の単位に加算(または減算)する制度のことです。この加算を積極的に利用することが、通所介護事業所が安定した運営をしていくために、とても重要になります。

デイサービスや通所リハビリテーションといった、通所介護事業所において申請できる加算の一つに「個別機能訓練加算」があります。これは利用者が住み慣れた地域で在宅での生活を続けていくために、機能訓練を行い、サポートしていくことを目的としています。通所介護事業所内における基本サービス利用時に、追加的に個別機能訓練計画書を基に提供されます。

加算申請の際には、算定のための必要要件を満たすことに加え、必要な情報を得るとともに、自宅における環境を確認するために実際の住まいを訪問しなければなりません。

 

個別機能訓練加算の申請に必要な要件とは

個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)があり、それぞれにおいて必要な人員基準と機能訓練の目的が異なるので注意が必要です。

 

個別機能訓練(Ⅰ)

主に身体機能の向上を目的としています。人員基準では、サービス提供時間内にわたって勤務する常勤の機能訓練指導員が1名必要となり、非常勤である場合には基準を満たすことはできないため注意が必要です。

 

個別機能訓練(Ⅱ)

こちらは身体機能そのものの回復が主な目的ではありません。利用者の身体機能を活かしながら、意欲といったことも含めた心身機能の維持及び向上、生活の質、社会参加など、包括的な生活機能の向上を目的としています。機能訓練指導員はサービスを提供する時に勤務していればよく、従って非常勤であっても基準をクリアすることができます。

これらの基準を満たし、機能訓練指導員が中心となって、看護スタッフ、介護スタッフ、生活指導員とともに個別機能訓練計画書を作成しなければなりません。

 

居宅訪問の目的や役割について

では、なぜ居宅訪問が必要なのでしょうか。

その目的は利用者の自宅における実際の能力、問題点や目標を見極めるためです。先に述べましたように、どうすれば利用者が「住み慣れた地域で、在宅での生活を続けていく」ことができるかを考え、利用者の生活環境に見合った機能訓練を実施していくために、生活の現場である住宅を視察することは必要不可欠です。

また、住環境そのものの問題点に気付くチャンスでもあります。また個別機能訓練を始めたなら、3ケ月ごとに自宅を訪問し、利用者本人や、場合によっては家族などに訓練内容と目標の達成状況を説明する必要があります。これにより利用者のモチベーションも上がります。短期目標が達成される、あるいは利用者の心身の状況、環境等が変化した場合には、機能訓練計画の内容と目標をその都度見直します。

 

機能訓練指導員の人員配置について確認しておくべきこと

個別機能訓練加算に必要な人員基準を満たすためには、各通所介護施設において、機能訓練指導員を1人以上確保する必要があります。機能訓練指導員とは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護 職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師を指します。この機能訓練指導員が居宅訪問を行って利用者の心身の状況、住環境を確認しながら、個別機能訓練計画をまとめ、利用者の生活における目標を達成するために、その他のスタッフと協力しながらサービスの提供を進めていきます。

しかしながら、機能訓練指導員に適応する職種にはすべて国家資格が必要であり、そのような方を雇い、サービスに組み込むことが、個別機能訓練加算を取得する際のハードルを上げることにもなっています。

 

平成27年の改正におけるポイントと追加点

介護保険制度はこれまでも度々改正されていますが、平成27年に厚生労働省によって「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドライン」が作成され、さらに全体的な介護保険の国の負担を減らすため、介護報酬の単位についても改正されました。

いくつかの項目で介護報酬の減額が行われた中、個別機能訓練加算(Ⅰ)は46単位、個別機能訓練加算(Ⅱ)は56単位(各1日あたり)とアップしているのは、厚生労働省が通所介護事業における個別の機能訓練を後押ししているとも言えます。

社会保障費を抑え介護保険を安定して維持していくためには、高齢者が入所施設ではなく、できるだけ自宅で生活できることが重要になります。この点を踏まえ、平成27年度の改正では、より個別機能訓練やリハビリテーションを推奨するとともに、通所介護事業において個別機能訓練加算を算定するためには、居宅訪問の際に、ADL及びIADLを確認することが新しく要件に加えられました。

 

居宅訪問の際に確認すべきこととチェックシート

機能訓練指導員は居宅訪問の際に、利用者の生活状況や住環境を確認し、ニーズを掘り起こしておかなければなりません。各利用者の状況はそれぞれ異なり、1回の訪問ですべてを完全に聞き出すことは難しいです。

そこで役立つのが各種チェックシートです。

その様式は、厚生省のホームページ上において作成されており、これをダウンロードして活用することができます。このチェックシートの項目ごとに、自立の度合い(自立、見守り、一部介助、全介助)や課題の有無、興味の有無を確認し、効率よく問題点を見つけることができます。

 

興味・関心チェックシートについて

初回アセスメントにおいて、利用者のニーズを把握することが義務付けられています。このためのツールとして、興味・関心チェックシートが挙げられています。高齢者は生活意欲が低下してくると、どの機能を向上させたいのか、どの能力を今後も維持していきたいのか、どういう風になればやる気を持って生活していけるのかといった、具体的な目標を明確に表さないことがあります。このような場面において、高齢者の持つ興味や関心を引き出すために興味・関心チェックシートが役立ちます。

 

居宅訪問チェックシートについて

居宅訪問時におけるアセスメントにおいてもう1つ使用するのが、居宅訪問チェックシートです。このシートは、利用者の自宅におけるADL・IADL状況を確認するための書類です。

ADL(Activities of Daily Living)とは、自宅で日々行っている食事、更衣、移動、排泄、整容、入浴といった日常生活動作のことです。

IADL(Instrumental activities of daily living)とは、洗濯、掃除や調理といった家事、買い物やその他の金銭管理、薬の管理や受診、外出時の交通機関の利用といった手段的日常生活動作を指します。

個別機能訓練作成するにあたり、必要なニーズや情報を効率的にアセスメントできるようになっています。利用者が、自力でどこまでできるのか、どの程度の介助が必要なのかを判断して、その他生活環境や住環境においての気づきも随時記入しながら、居宅訪問チェックシートの項目を埋めていきます。

 

個別機能訓練計画書と通所介護計画書について

通所介護計画書は、ケアマネージャー(介護支援専門員)の作成した居宅サービス計画(ケアプラン)に記載されている利用者や家族の希望、方針、目標等に沿って、通所介護事業所の生活指導員が具体的なサービス内容や目標も含めて作成します。居宅サービス計画、通所介護計画、個別訓練機能計画の目標やニーズなどは、通常、相互に連携する内容になります。

居宅訪問時に記入した興味・関心チェックシート及び居宅訪問チェックシートを基に、心身機能や日常活動におけるニーズや介助の必要性、更には社会参加の機会や家庭内における利用者の役割、本人の興味や関心などを幅広く確認します。

そして厚生労働省により作成された個別機能訓練計画書の様式を参考にして、計画書を作成していきます。利用者の意欲を削がないよう、段階を踏んで、少しずつステップアップできるような現実的な目標や訓練メニュー設定する必要があります。

ADLにおいては、「自分で上着のボタンが留められる」「床から立ち上がる」といった1つの動作を目標として挙げます。IADLにおいては、いくつかの動作が合わさった動作ですので、例として「趣味の書道ができる」「歩行器を使いながら、室内を安全に移動できる」などになります。

また、注意すべきこととして利用者本人やその家族、またケアマネージャーから病名や医療提供状況について情報を得ておく必要があります。これは心身の状況を的確に理解し、それに配慮した計画を作成するためです。また、リスクについても記載しておきます。

 

機能訓練に関する説明と利用者の同意

以上のことを踏まえて個別機能訓練計画書を作成できたら、利用者(場合によっては家族)に内容を説明します。計画書に同意を得られれば捺印やサインをもらい、コピーを渡します。同意及び捺印のない場合には加算を申請することはできません。監査等に必要になりますから、捺印をもらった計画書は適切に保管します。

 

居宅訪問する際の注意事項

居宅訪問にかかる注意事項を、厚生労働省発令の「通所介護の個別機能訓練加算」に沿って説明いたします。

 

・利用者が自宅に入れてくれず、訪問自体が難しい時。

利用者によっては機能訓練指導員が家の中へ入ってくることを強く拒否する場合もあります。もちろん拒否しているので押し入ることはできません。

平成27年の改正以降、「実際に利用者の居宅を訪問し個別機能訓練計画に反映させること」を、加算を取るための条件としています。このため住居の中に入れなければ事業所が加算を申請できないばかりか、利用者が在宅で過ごすことの手助けとなり得る機能訓練計画を作成して、個別機能訓練を提供することもできません。

徐々に利用者との信頼関係を構築し、なぜ家の中に入れてもらう必要があるのかを十分に説明します。また、家族に同席してもらうなど、利用者が安心、納得できる形で居宅訪問ができるように働きかけていきます。

 

・利用契約締結前の居宅訪問について

利用契約は結んでいないが、利用見込みのある利用者について事前に居宅訪問を行い生活状況の確認した後、利用契約に至るケースもあります。この場合にも居宅機能訓練加算の居宅訪問要件を満たします。

 

・個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)を併算定する場合

同一の利用者について、個別機能訓練(Ⅰ)と(Ⅱ)を提供し、どちらも加算申請する場合には、自宅でも状況確認は1回にまとめてもよいことになっています。しかしながら、チェックする項目は同じでも、先に「申請に必要な要件とは」の項目で述べたように、身体機能の向上を目指す、あるいは包括的な生活機能の向上を目指すのかを明確にしながら、個別機能訓練計画を作成します。

 

・利用者の送迎時において居宅訪問を行う場合

デイサービス利用後、利用者を自宅へ送り届けます。その際に機能訓練指導員が送迎車に同乗し、そのまま一緒に家屋へ入り、生活状況を確認した時も、居宅訪問1回として認められています。

 

・居宅訪問担当者と個別機能訓練の作成者

個別機能訓練を加算する時の居宅訪問は、利用者の居宅での日常動作や手段的日常動作の状況を確認し、在宅生活の継続支援を行うことを目的としています。この「継続性」がキーワードとなっているため、居宅訪問した機能訓練指導員が自分で計画書を作ります。また訪問担当者が毎回変わるような場合には継続的な状況の観察や評価が難しくなるため、この加算を申請することはできません。

 

・居宅訪問中の人員配置基準

“個別機能訓練加算(Ⅰ)で配置する常勤・専従の機能訓練指導員は、機能訓練プログラムにおける支障がない範囲において、居宅訪問により事業所を離れている時間も配置時間として含めることができる。生活指導員については今回の見直しにより、 事業所外における利用者の地域生活を支えるための活動が認められており、勤務時間として認められる。” となっていますから、デイサービスなどのサービス提供時間外に居宅訪問しなければならないものではありません。例えば、おやつの時間とそのあとの送迎時など、個別機能訓練のプログラムが行われていない時間帯に、居宅訪問を行うことができます。勤務時間内に居宅訪問を行うことができれば、事業所と担当者双方にとって負担が少なくなります。

 

最後に

個別機能訓練加算を算定するには、居宅訪問がいかに重要な算定条件であるか、ご理解いただけたかと思います。注意点を意識しながら、算定要件を満たす居宅訪問を行い、加算を適切に、そして簡単に算定したいものです。また、利用者ができるだけ長く在宅生活を続けていくのに役立つ、利用者が意欲的になれるような個別機能訓練計画を作成したいですね。

 

個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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