介護支援ブログ

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介護プロフェッショナルキャリア段位制度とは 

 

はじめに

目まぐるしいスピードで進みつつある少子高齢化。それにもかかわらず、介護の現場では人手不足の状態が続いています。介護職に就く人が少ないばかりか、せっかく資格を取って働き始めても志半ばで辞めてしまう人も多く見られます。そして、そんな問題解決は程遠いのが現状です。

 

平成18年から22年で、全産業の平均離職率は14%から16%台でした。これに対して(財)介護労働安定センターによる「介護労働実態調査」では、17%から21%台という結果が出ています。また、2007年には必要な介護職員の数が120万人弱であったにもかかわらず、2025年には倍増するとの予想もある中、さらなる介護職離れを食い止めつつ、施設によって差がある介護技術の質を高めようと国も動き出しました。

そんな取り組みの1つが「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」です。

 

 

 

 

 

 

介護プロフェッショナルキャリア段位制度の成り立ちと目的

もともとは「実践キャリア・アップ戦略キャリア段位制度」の名で平成24年度からスタートした内閣府補助事業であり、国家戦略プロジェクトの一つ。その狙いは「介護プロフェッショナル」「カーボンマネージャー」「食の6次産業化プロデューサー」という、3つの分野で優れた人材の育成を推し進めようというものでした。

それぞれの分野で職業能力を評価する“共通のものさし”を作り、エントリーレベルからトップ・プロレベルに至る7段階の認定を実施。実践的な職業能力に重きを置いて、知識とともに実践的なスキルを客観的に評価しようという目的があります。

 

特に介護分野においては、優れた人材の育成のみならず、高い離職率の是正や新規参入の促進も目標とされています。それとともに、より実践的なキャリア・アップの仕組み作りを担うための施策でもあったのです。内閣府における検討過程においては、各年度2万人程度のキャリア段位認定者を育成することを目指す一大プロジェクトでした。

 

介護職不足の問題をなんとか良い方向に向かわせようと、内閣府による国家戦略として始まった「実践キャリア・アップ戦略キャリア段位制度」の介護分野。しかし、平成26年度をもって内閣府による実施は終了し、27年度からは厚生労働省に移管されています。

そのうえで、「介護職員資質向上促進事業」として行われるようになりました。しかし、その中身は当初のまま引き継がれて、内容は次の通りです。レベル4以上がプロとみなされ、実際にはレベル4までの認定で運用されています。

- 分野共通の考え方 介護プロフェッショナル
レベル7 その分野を代表するトップ・プロフェッショナルの段階 -
レベル6 - -
レベル5 プロのスキルに加えて、特定の専門分野・業種におけるさらに高度な専門性を持つ、あるいは、その人独自の方法が顧客等から認知・評価されている段階 ・多様な生活生涯を持つ利用者に質の高い介護を実践
・介護技術の指導や職種間連携のキーパーソンとなり、チームケアの改善に貢献
レベル4 一人前の仕事ができることに加え、チーム内のリーダーシップを発揮できる状態 ・チーム内でのリーダーシップ
(例:サービス提供責任者、主任等)
・部下に対する指示・指導
本レベル以上が「アセッサー」になれる
レベル3 指示等がなくても、一人前の仕事ができる状態 利用者の応対像に応じた介護や他職との連携等を行うための幅広い領域の知識・技術を習得し的確な介護を実践
レベル2 一定の支持のもとに、ある程度の仕事ができる段階 ・一定の範囲で、利用者ニーズや、状況の変化を把握・判断し、それに応じた介護を実践
基本的な知識・技術を習得し、決められた手順に従って、基本的な介護を実践
レベル1 エントリーレベル
職業準備教育を受けた段階
初心者研修により、在宅・施設で働くための基本的知識や技術を習得

 

介護プロフェッショナルキャリア段位制度の具体的内容とは?

介護職として働こうとする人は、介護福祉士の資格を持っていたり、ホームヘルパー研修や初任者研修を修了したりした人が多いのではないでしょうか。そこで学んだ知識、つまり“わかる”というだけでなく、実際に現場で何が“できる”か、ということを客観的に判断しようというのがこの制度です。

 

具体的には食事や入浴、排泄等の介助技術、利用者及びその家族とのコミュニケーション、事故や感染症などへの対応、在宅介護に欠かせない地域包括ケアに必要な関係機関や専門職と連携する能力等について評価を受けます。

OJT(On the Job Training)、つまり実務におけるスキルアップ支援の中で客観的に評価を受けることによって、介護福祉士資格を持っているホームヘルパー研修・初任者研修を修了したというだけでなく、現場で働くにあたって実際に何ができるかを証明します。その段階が、レベル認定という形で表されるというわけです。

 

評価されたレベルが賃金や役職等の重要な判断材料になることが期待されるだけでなく、就職時の実践的な介護スキルのアピールチャンスとなるでしょう。さらに、介護職を目指す人や働く人の目標となる能力を明確にするのにも役立つとされています。

また、自分の目指すレベルがはっきりすることで、仕事に対する“やりがい”が生まれるのではないかとも期待されているのです。離職率の高さが問題視されている介護職ですが、たとえ一度この仕事から離れたとしても、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」によってその人のスキルが証明されます。そのため、介護職への復帰がよりスムーズになるという利点もあるとされるのです。

 

“できる(実践的スキル)”の評価

“できる(実践的スキル)”の評価基準は次の通り。中項目内の各項目が小項目となり、表下の例のように更に細かくチェックする仕組みになっています。

大項目 1.基本介護技術の評価 2.利用者視点での評価 3.地域包括ケアシステム&リーダーシップ
中項目 ・入浴介助
・食事介助
・排泄介助
・移乗・移動・体位変換
・状況の変化に応じた対応
・利用者・家族とのコミュニケーション
・介護家庭の展開
・感染症対策・衛生管理
・事故発生防止
・身体拘束廃止
・終末期ケア
・地域包括ケアシステム
・リーダーシップ

 

 小項目内のチェック項目の一例

  • 食事介助ができる

1.利用者の食欲がわくように、献立や中身などについて声掛けを行ったか

2.利用者の希望を聞きながら介助したか

3.目線の高さを合わせて介助し、咀嚼や嚥下を確認しながら食事を進めたか

4.飲み込むことができる食べ物の形態かどうかを確認したか

5.自力で食べることに配慮し、必要時に介助したか

6.食事及び水分の量を記録したか  など

 

  • 入浴介助ができる

1.バイタルサインの測定や利用者へのヒアリング等による体調確認、意向確認を行い、入浴するか否かについて確認したか

2.バイタルサインや医療職の指示、既往歴などに基づいて、利用者の状態に応じた入浴方法を選ぶことができたか

3.体調や気候に配慮しながら、利用者の好みの洋服を選んでもらったか

4.スクリーンやバスタオルを使い、プライバシーに配慮したか

5.脱衣の際に、健側から患側の順番で行ったか

6.ボタンの取り外し等、自力でできるところは自分で行うよう利用者に促したか

 

中項目内におけるそれぞれのポイントが細かく評価されます。尚、評価形式は以下のようなものです。

 

A:できる

B:できる場合とできない場合があり、指導を要する

C:できない

-:実施していない

 

“わかる(知識)”の評価

“わかる(知識)”の評価基準は次の通りです。

 

レベル 評価
レベル4 介護福祉士の国家資格を有する
※介護福祉士要請施設卒業者で国家試験義務付け前においては、介護福祉士養成過程修了によりレベル4とする
レベル3 介護福祉士養成課程修了
実務者研修修了
レベル2 レベル1と同様
レベル1 ホームヘルパー2級検定修了相当以上
※平成25年度以降は介護初任者研修修了

 

  • レベル評価について

 

“できる(実践的スキル)”の評価については、職場内で介護福祉士として一定の実務経験のある人が「アセッサー」、つまり評価者になり、評価を受けようとする人の仕事の様子や実務記録などを見て行います。“わかる(知識)”の評価は、最低でも平成24年度までの場合はホームヘルパー2級研修の修了、平成25年度以降であれば介護初任者研修を修了していることが条件です。それをもとに、厚生労働省が公募で選んだ実施機関のレベル認定委員会にレベル認定を申請し、認定されるという仕組みになっています。

 

レベル認定を受けるためには、申請手数料が必要になります。ただしそれを介護事業者が負担する場合、負担額の二分の一が助成されます。また、平成27年度からはアセッサー講習の受講料が必要になりました。これについても、「地域医療介護総合確保基金」により一部が補助されます。

 

 第二部、「介護プロフェッショナルキャリア段位制度② ~介護プロの効果と現状~」に続きます。

 

介護プロフェッショナル段位制度の活用と効果

内閣府で立ち上げられた当初から厚生労働省に引き継がれた現在に至るまで、この制度は介護職で働く人はもちろん、事業所や施設でも活用できるとうたっています。では、「介護プロフェッショナル段位制度」はどのように活かされているのでしょうか。

 

介護の現場で働く職員による活用

これまで述べてきたように、働く人にとっては自分の介護スキル及び知識レベルが明確になります。そのため「待遇の目安にできる」「スキルアップの目標が立てやすい」「新たな職場で働く際のアピールになり得る」「生きがい・やりがいにつながる」といった利点が挙げられるでしょう。レベル認定時のアセッサーや被評価者アンケートによると、次のような声が見られるようです。

 

「評価し評価されることで、互いに質の高い介護を目指すように意識が変わった」

「内部評価、レベル認定を経て専門職としての自覚が芽生え、仕事に取り組む姿勢が変わった」

「評価を受けることで、スキルのランク付けになり他者との差別化が図られる」

出来ていない部分が明確になり、日々の介護を通じてスキルアップに努めることができた」

「具体的に目標を設定したことで、目標達成までの手段や手順を整理することができた」

「自分の今のレベルがどの程度であるか、見直すことができ、仕事に対するモチベーションが上がった」 など

 

事業所や施設側による活用

事業所や施設ではOJT(On the Job Training)、つまりスキルアップ支援を通じて職員の能力向上を図ることができます。特にベテラン職員に対する再教育ツールとして活用する事業所や施設もあり、長年の経験の中で我流となりつつある介護技術について、再確認と気付きを促すチャンスとしています。

また、レベル認定を受けた職員やアセッサー業務を行う職員について、処遇改善の根拠として活用している事業所もあるようです。さらには利用者やその家族に対し、サービス水準のアピール材料にすることも可能となります。

 

つまりレベル認定を受けた職員が多ければ、より質の高いサービスを提供していることを利用者にアピールできるということになります。また、職員のスキルだけでなく、やりがいの向上や働きやすい職場環境に繋げることができれば職場への定着率も上がり安定した施設運営を図ることも期待できるとされています。

利用者やその家族の立場からすると、介護を受ける上で「介護技術が高く知識も豊富な職員がたくさん働いている事業所や施設を選びたい」と考えるのは当然のこと。そのような声に応えるためにも、活用できる制度ということが言えるでしょう。

 

介護プロフェッショナル段位制度の現在

平成24年度に内閣府の肝いりで始まり、平成27年度からは厚生労働省に引き継がれた「介護プロフェッショナル段位制度」。では丸3年が経過した現在、その実態はどうなっているのでしょうか。

 

いかなる実績を上げているのか

さまざまな介護事業所や施設において、職場での実務の中でのOJT(On the Job Training)、つまりスキルアップ支援を通じて職員の介護技術の向上を図るだけでなく、同時に知識も含めた能力を評価・認定する仕組みとして役立てられてきました。ただ、目を見張るほどの即効性があったかどうかには疑問があるようです。その理由は、アセッサー数とキャリア段位認定を受けた人の数に表れているといえます。

現在の事業実施主体である「一般社団法人 シルバーサービス振興会」によると、2015年11月25日現在のアセッサー数は11,863名、2016年5月2日現在のレベル認定見込み者数は4,571名、2016年5月30日現在のレベル認定者数は1,641名となっています。内閣府が目標にしていた各年度のキャリア段位認定者数2万人には及ばない状況です。

 

しかし、知識も含めた介護スキルについて一定の基準が示されたことで、介護事業所・施設によっての格差がなくなりました。介護職員全体の能力向上が図られ、アセッサーを務める職員の意識改革、より高い水準のサービス提供やリスクマネジメントといったことへの積極的な取り組みを外部にアピールできるようになったことには、ある程度評価する声も聞かれます。

 

今後の課題

数字の面でも効果の面でも、当初の目標達成に向かって徐々に進んでいる「介護プロフェッショナル段位制度」。しかし、この制度をさらに有効なものにするためには、改善すべき問題が少しずつはっきりしてきたようです。

では、具体的にどのような点について改善が求められているのか。制度を運用するうえでの基本も含め考えていきましょう。

 

もっとも大きな問題となっているのは、「アセッサー・段位認定を受ける人・事業所や施設のすべてにとって事務的な負担が重い」ということです。特にアセッサーが内部評価を行う際には、評価される人の介護行為について評価の根拠を全て記載することが求められています。そのため、膨大な時間がかかることが挙げられるのです。

また、評価される人の実際の介護行為について評価するわけですから、その人と評価を行うアセッサーを同時にシフトに入れることが必要になります。

つまり、他の職員も含めたシフト調整をしなければならないため、これについても手間がかかるでしょう。特にギリギリの職員で運営している事業所や施設には、負担が重いという現状も報告されています。

そうでなくても人手不足が叫ばれる介護現場。事務的な業務、あるいはそれに付随する業務に時間や人員を割かなければならないのは、本末転倒と言わざるをえないという意見も多いのです。

 

とはいえ「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」が続き、レベル認定されることで処遇が改善されるのであれば、将来的にはレベル認定を希望する人が増加する可能性もあります。

そうなると、アセッサーや事業実施主体に設置されたレベル認定委員会及び認定委員の負担はさらに増えることになるでしょう。厚生労働省、つまり国としては、介護の質を上げるとともに介護に従事する人を少しでも増やしたいはず。 しかし介護現場や認定委員会の負担増により、その逆の状況になりかねないことに危機感を募らせているようです。

厚生労働省は制度全般の運営についての反省や問題点、今後の在り方について話し合うため、有識者をまじえた「介護プロフェッショナルキャリア段位制度の在り方に関する検討会」を立ち上げました。このプロジェクトを、今後さらに有用な制度にするべく議論する場を設けています。

 

「介護プロフェッショナルキャリア段位制度の在り方に関する検討会」で取り上げられた課題

最初から完全無欠な施策などあるはずがありません。いくら検討に検討を重ねてスタートしたものでも、制度実施の年数を重ねるにしたがってさまざまな課題が浮き彫りになってくるのは当然のことです。では、どのようなことが改善すべき課題として議論されているのか。ここで例を挙げてみましょう。

 

内部評価・レベル認定

  • アセッサーが内部評価を行う際、評価の根拠を全部記載しなければならず時間がかかり過ぎる。
  • レベル認定の際、レベル認定事業実施主体に設置されたレベル認定委員会が、アセッサー記載による評価の根拠について確認を行うが、これに時間がかかり過ぎるため現状以上の認定が難しい。
  • 職員だけでなく、介護福祉士養成施設に在学中の実習生の内部評価も行っている現状があり、実習期間中に認定に必要な項目全部の評価は困難である。
  • 評価項目の確認にメリハリをつけ、項目自体の見直しをするなど介護事業所・施設の負担軽減とレベル認定事務の効率化を図り、今後のレベル認定希望者の増加に対応する必要がある。

 

介護場面が限定的な場合

  • 例えばデイサービスの場合、評価項目にある「終末期ケア」について対応するケースが少ないため、評価を終えるまでに時間がかかる。
  • 入浴や食事といった場面別に認定する仕組み(ユニット認定)を組み合わせてもレベル認定とならないことから、ユニット認定取得数が一定になったらレベル認定を行うなどの見直しを要する。

 

外部評価

  • もともとは内部評価が適正に行われているかを確認するためだが、介護事業所・施設を評価することに繋がることから、レベル認定委員会で判断するのは難しい。
  • 一度レベル認定された人に対して事後評価によって認定を取り消すことができる仕組みは、人材を育成するという本来の目的にそぐわないのではないか。
  • 外部評価を行うという仕組みを見直し、介護事業所・施設の人材育成の取り組みを外側からサポートするべきである。

 

 

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