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介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

介護事業所キャリアパス制度導入事例7 社会福祉法人三愛会

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管理職の責任と権限を強め人材育成を促進する

社会福祉法人三愛会は、設立から10年あまりの法人です。「職員が全員参加して理想の施設を創ろう」というスローガンを掲げて、組織づくりを進めています。人事管理の基本的な仕組みは開設時からありましたが、これまでの実践を通して、組織に合った使いやすいものに改良を重ねて、現在の制度に至っています。

 

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【事業所プロフィール】

名称:社会福祉法人三愛会

設立:平成15年3月

所在地:静岡県藤枝市大東町58番地

事業:特別養護老人ホーム、通所介護、居宅介護支援、地域包括支援センター

職員数:約97名(正規職員約65名、非正規職員32名)

 

求められる人材像は理解しやすい言葉で

同法人のキャリアパスである「愛華の郷の職員として求められる人材像」(図表1)では、職員は「経営職層(施設長、事務長)」「管理職層(主任等)」「監督職層」「一般職層」の4つの職層で区分され、それぞれ「役職」「求められる役割と業務」「求められる行動能力」で規定されています。

[図表1:愛華の郷の職員として求められる人材像]

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「求められる行動能力」は、全ての階層に共通の6つの項目ごと(「目標達成のための行動力」「受容と利用者支援力」「コミュニケーション能力」「チームワーク構成力」「客観性と専門的思考力」「使命感と自己覚知」)に示されており、各職層で求められる具体的な能力として記述されています。

「愛華の郷の職員として求められる人材像」はこの中身が職員に浸透し、実践されることが目的であるため、この表をまとめるにあたり、使用する言葉はできるだけ平易で、咀嚼されたものを使うことにこだわりました。今後も制度を運用する中で変更していくことで、より実践的なものになっていくと考えています。なお、昇格は直属の上司が提出する推薦書(推薦理由:人物評及び業務の取組姿勢・実績等を明記)に基づき決定されます。

 

人事考課制度における評価決定までの流れ

人事考課は年2回、賞与の前に実施します。考課結果は、賞与と昇給に反映される仕組みです。第1次考課者は主任等の管理職が担います。ここでは、正規職員の人事考課制度の流れを説明します。まず、第1次考課者が「愛華の郷の職員として求められる人材像」をもとに、「評価の仮決定」を行い、「愛華の郷 職員評価シート」(図表2)を記入します。第1次考課者が評価をする際には、直近の出来事に大きく影響されずに、半期を通した正当な評価をするよう指導しています。そのためには管理職が日頃からよく職員の行動を把握し、必要に応じて記録をすることも有効です。

  [図表2:愛華の郷 職員評価シート]      f:id:kaigo-shienn:20160809164356p:plain

 

次に、第2次考課者である経営層(施設長、事務長)と第1次考課者が、評価について協議し「本決定」されます(評価段階はA・B・C・Dの4段階)。その協議は、まず第1次考課者が「評価の仮決定」を説明し、それについて、第2次考課者が意見を述べる形で行われます。ただし、第1次考課者を評価の主体者と位置づけ、評価の決定に大きな権限を持たせています。これは管理職(主任等)に、現場での直接的なマネジメントや人材育成を行う責任と、評価をする権限の両方を持たせて、施設の中核的な位置づけを明確にするためです。経営層は、主任が法人理念や事業計画等の経営方針に沿って部下をリードしていけるように、支援をする形をとっていますので、この協議が考課者育成の場としても機能しています。

図表2の下段部分にある加算項目は管理職から見たその職員の頑張りや貢献度に応じて評価され、前述の評価とは別に賞与に加算ができる仕組みです。加算項目の1つ目「シフトに協力的」は、急な欠勤者が出た時に、率先して出勤したり、欠勤や遅刻が皆無であることを評価します。2つ目の「委員会活動に積極的」は、委員会活動や施設研修優秀者を、3つ目の「挨拶が出来る」は、利用者や家族だけでなく職員同士や、施設に来る業者さん等に対してもきちんとした挨拶ができる人を評価し、それぞれA評価であれば10,000円が賞与に加算されます。また、その他管理職が特に評価できる点がある場合にも加算がされます(金額は、平成26年度冬期賞与の実績)。

 

評価結果のフィードバックの実施

評価が決定したら面接を行いますが、その前に職員には「成長記録カード兼面接結果記録表」(図表3)が配布され、「自己目標」「自己目標に対して心掛けた点、または努力した点」を記入して上司に提出します。そして、下段の「評価結果のフィード」欄を第1次考課者が、第2次考課者との協議内容を踏まえて記入します。そして、それを元に評価結果を面接で丁寧にフィードバックします。面接は原則として年1回、冬期に実施しますが、希望者や評価結果が低かった職員には夏期も実施します。面接時間は約30分から1時間です。面接では、評価結果のフィードバックのほか、施設方針の説明、職場環境や個人の処遇についての考え、その他プライベートも含めた心配事等を話し合います。

 [図表3:成長記録カード兼面接結果記録表]

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評価結果については、決定に至る根拠も合わせて率直に伝えるようにしています。評価は6 ヶ月という期間全体を通しての評価であることや、今後どうすれば評価が上がっていくのかをしっかりと説明します。第1次考課者、つまりその職員の直属の上司である主任等が責任を持って評価していることを被考課者にしっかりと伝えるようにさせており、ここでも管理職に責任と自信をつけさせ、またリーダーシップの裏づけをする仕掛けとしています。面接を終えたら、面接の内容を記録し、施設長に提出します。

 

人事考課結果の給与への反映

(平成26年10月実施の定期昇給のケース)

定期昇給は年1回、10月に実施されますが、その昇給額は、年2回の人事考課の結果の組合せで決定され、基本給と職能手当に振り分けて昇給されます(図表4)。この年は、基本昇給額が1回の評価あたり、A評価1,500円、B評価1,000円等と決まっており、例えば、図表中の2段目のパターンは、2回の評価がA評価とB評価であれば、昇給額はA評価1,500円+B評価1,000円=2,500円と決定し、それを基本給で2,000円昇給、職能手当で500円昇給と振り分けられ、合計2,500円の昇給となります。

人事考課の目的・対象者・考課期間等は年2回の評価前に、評価結果による基本の昇給額とパターン別昇給額は10月に職員に文書で周知しており、職員の納得性の高い制度運用をしています。

 

組織の成長と人事管理の変化

開設当初は介護福祉士等の資格取得者は少なかったため、資格取得を推奨してきました。約5年前までは、資格を取得すると受けられる研修が増えるという仕組みにしていた時期もありました。その後、資格を取得した際に3万円のお祝い金制度をつくり、現在では、資格取得者が増え、職員の介護の専門性はより高まっています。

 

また、組織も成熟していく中で、人事管理も変化していくことが必要です。特に、厳しいことも含めて、フィードバックをしっかりと行う等、管理職の役割はより重要になってきました。職員には、評価結果を1回聞いて変わっていく人もいますし、そうでない職員もいます。法人としては、何度でも丁寧に説明を重ねていくことが必要だと考えています。

厳しいことを伝える際も、そのベースとなっているのは信頼関係であることは当然です。そこには、双方に理解しようとする姿勢が必要です。人事考課とは別に、職員のことを知るために、年1回(12月)に異動希望や職場環境についての考え、健康・家庭問題で知っておいてほしい点を「自己申告表」に記入し、直接施設長に提出する仕組みがあります。これは施設長のみが見られる情報で、内容により施設長が直接本人と話し合うこともあります。

 

本事例の学びどころ

  • 階層別の役割分担で、管理職層の権限を強化

大きな権限を持つ管理職(主任等)と、全体の統括をする経営職(施設長・事務長)それぞれの役割を明確にして、業務管理や人材育成が行われています。特に管理職の役割や権限は大きく、その半面で責任も重くなっています。キャリア階層における権限移譲という点で参考になります。

 

  • 制度の構築はシンプルに、分かりやすく

人事管理に関する制度はまだ課題も感じられており、これから徐々に熟成され、精緻にしていく部分もありますが、基本は“職員”が運用できる、理解できる仕組みづくりです。できるだけわかりやすい言葉を使用し、できるところから実施していくという、制度を実践的に運用しているかたちも参考にしたい点です。

 

ご担当者から一言

一法人一施設であることから、規模的な制約はありますが、地域に必要な施設を、職員とともに創っています。地域貢献や地域のネットワークづくりを重要視しており、地域活動を増やして、職員にとっての活躍の場を広げていきたいと考えています。

また、近隣の施設間で共同の勉強会を開催しており、そのようなネットワークの中で活躍したり学んだりすることが、職員のキャリアアップの一つになればいいと思います。

キャリアパスの仕組みはまずは無理のない範囲で実施して、そして組織の成熟度に合わせて、徐々に仕組みを高めリードすることが、経営職の役目と考えています。

 

 

社会福祉法人三愛会 施設長 阿井孝和様

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【参考:静岡県介護事業所キャリアパス制度導入ガイド】

 

キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。