介護支援ブログ

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介護事業所キャリアパス制度導入事例5 株式会社若武者ケア

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多様なキャリアパスを提示し組織の魅力を高める

 株式会社若武者ケアは、平成19年設立と比較的新しい会社です。

 代表取締役の佐藤氏は、スタッフを集めることが介護事業発展の要とみましたが、同社が在宅介護サービスを展開している地区は、登録ヘルパーの採用激戦区であり、思うようにヘルパーを集められませんでした。そこで、大卒を中心とした正規社員を軸とする採用方針を打ち出し、それでも収益が上がる事業計画を推し進めていくことにしました。そのために、社員が集まる会社には“何が”必要なのかを考えて、魅力的な人材育成の仕組みを構築してきました。

 

 

 

 

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【事業所プロフィール】

名称:株式会社若武者ケア

設立:平成19年4月

所在地:横浜市港南区港南台4-24-4-3C

事業:訪問介護、居宅介護支援、訪問看護、通所介護、介護スクール、福祉用具貸与・販売

従業員数:正社員82名、登録ヘルパー約200名

 

 

 

資格取得支援で多様なキャリアパスを設定

 図表1は同社の「キャリアフロー」です。入社後は、まず常勤の訪問介護員としてサービスができるように、全てのサービスに対応できるための基本的なスキルの習得を目指します。基本的な技術指導はしますが、実践の中で気づきを得ながらスキルアップをし、さらに自己の人間性を高める努力も必要です。また、キャリア初期の段階から地域包括支援センター等への営業に同行するなど、管理職になることを見越したトレーニングを積んでいきます。

[図表1:キャリアフロー]

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 その後、半年から1年以内にサービス提供責任者となり、以降は事業所の管理者、さらにはエリアリーダーとなる管理職コースとケアマネージャー、そして主任ケアマネージャーを目指す専門職コースがあります。

 また、若武者ケア独自のキャリアとして、図表1の下段のような様々な選択肢も示されており、社員の成長意欲を刺激するものとなっています。准看護師⇒正看護師や理学療法士の資格取得を支援するため、各事業所から希望者を募り、選抜し、社員として働きながら養成機関へ通ってもらう仕組みもあります。本人にとって専門職の資格取得はキャリア形成の面でも給与の面でも有利です。一方、会社は学費を全額補助し、給料も支払うので、一時的に負担は大きくなりますが、例えば看護職が増えれば訪問看護等を展開でき、地域のニーズにより応えられるようになります。また、管理職となる道筋だけでなく、こうした専門職へのキャリアパスを示すことで、採用時のPRにもなります。

 

人事考課制度

 人事考課の仕組みは平成23年から導入しています。規模が小さい時は、経営側も全社員の働きぶりやキャリア意向を把握することができましたが、50人を超えるとそれが難しくなり、必然的に人事考課の仕組みが必要となってきました。考課表は、コンサルタントにアドバイスを受け基礎を作りましたが、経営層で議論を重ね、その内容もこだわって作成しました(図表2)。例えば、「人の陰口を言わない」のような項目も、意識を持ち続けるために加えられています。人事考課表は階層に応じて2種類(「一般職員用」と「管理者用」)を作成しています。人事考課は、年2回、賞与支給前に実施し、その結果は賞与のみに反映します。差をつけることが目的ではなく、自己評価を通して自分自身を振り返った上で、今後の意識づけをしていくことを大切にしています。一般職員の考課者は管理者、管理者の考課者は取締役で、一人の考課者が4・5人を面接します。評価面接を行うことで社員一人ひとりが見えてくるので重要な機会であると捉えています。

[図表2:人事考課管理表(一般職員用)(抜粋)]

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管理職を育成する研修体系

 図表3に、同社の「採用・教育アクションプラン・スケジュール」(年間研修リスト)を示しました。年間を通して、研修を受ける機会が多く用意されています。まず内定者は、入社前に介護職員初任者研修や実務者研修を会社負担で受講します。また、「管理者研修」「管理者勉強会」「ビジネス塾」等の介護スキル以外の研修も充実され、ケーススタディ等の技法も使い、実践的なトレーニングを行なっています。大卒採用者は基本的には管理職候補であり、売上の管理や営業に関する研修を全員に実施しています。また、管理職には、自分の専門に関するスキルアップのみではなく、リーダーシップとコミュニケーション力も伸ばしてもらいたい代表的なスキルです。「ビジネス塾」や「管理者勉強会」等では代表取締役が講師となり、直接、社員を指導しています。

[図表3:「採用・教育アクションプラン・スケジュール」]

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 もちろん、現場スタッフの介護のスキルアップも重要な育成事項です。同社では「キャリア段位制度」を導入しており、平成26年度は管理者やサービス提供責任者等15名がアセッサー講習を受講しました。介護技術の良し悪しを明確に評価することができ、また段位取得者が何名在籍している、ということも企業のPRポイントになると考えています。

 

年収500万円のキャリアパス

 代表取締役の佐藤氏は、「優秀な人材を集めるには、給与が全てではありませんが、頑張れば年収500万円くらい稼げることが必要」として、介護職の賃金アップの仕組みの必要性を訴えています。同社では年収500万円のキャリアパスを数多く用意することに取り組んでおり、その水準に達するために、「管理職となり、経営幹部を目指すコース」「介護の専門性を高め、主任ケアマネージャーとなるコース」「看護師や理学療法士を目指すコース」が用意されています。

 キャリアパスが見えることの効果もあり、同社は新卒の採用者がよく定着しています。

 

本事例の学びどころ

 

管理職育成を早期から計画的に行う

 事業発展に必要な人材像・スキルを明確にして、管理職に必要な営業やマネジメントに関する教育を早期から行っており、先を見越した育成が計画的に行われています。

 

キャリアアップのコースを多様化して成長を支援

 明確なキャリアップ支援と多様なキャリアパスの仕組みが、同社の魅力を高めており、特に新卒採用の社員の定着がよい大きな要因と考えられます。優秀な人材を集める仕組みとして、参考にしたいポイントです。

ご担当者から一言

 これを勉強しておくと将来の役に立つのではないかということを、育成の仕組みに組み入れています。ここで身につけたスキルで、介護業界で活躍してくれたらいいと思っています。介護業界はますます成長し、サービス体制もさらに変化していく可能性があります。やりたいことを提案できるし、頑張れば幹部にもなれる、やりがいを持てる業界です。

 未経験者でも、素直でやる気のある人であれば一人前の介護職に成長できるだけの育成体制を整えることも重要ですが、さらに本人が目指せるキャリアコースや一定の給与水準を会社が示すことが、本人のモチベーションを引き出していくのに必要だと考えています。

 

 

株式会社若武者ケア 代表取締役社長 佐藤雅樹様

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【出展:静岡県介護事業所キャリアパス制度導入ガイド】

 

キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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